明久達のSAO (凍結)   作:セイイチ

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第二十話

僕は今、雄二について来たことに対して猛烈に後悔していた。

「‥‥‥ねぇ雄二?」

「なんだ?」

「何で僕は、ゴリラみたいなむさ苦しい男と一緒にドワーフみたいな顔の男をストーキングしないといけないの?」

僕は第一層のボス戦で手に入れた《コート・オブ・ミッドナイト》を着ながら夜道を雄二と一緒に歩いていた。それも男のネズハをストーキングしながらである。

「誰がゴリラだ、バカの代名詞。それとストーキングと言うな。尾行と言え尾行と」

言い方を変えたところでやってる事は全く一緒だと思う。

とりあえずバレたらアウトなのは変わらないわけだし‥‥‥

「さっき言った、おそらく四つ目のペナルティーは存在しないってのを覚えてるか?」

さっき? あーあ優子達と別れて直ぐの話の時か。

「うん。存在しないはずのペナルティーなのに、どうやって優子の剣を消滅させたのかを確かめるって話でしょ?」

僕の記憶正しければ、大体こんな感じだったと思う。

「‥‥‥その通りだ。バカなくせに良く覚えてたな? 正直忘れてると思ってたから驚いたぞ」

こいつは僕を馬鹿にしないと説明する事ができないんだろうか?

「ゴホン。で、だ。お前はシステムとして存在しない武器消滅が起こった理由としては、どんな事を思いつく?」

「うーん、‥‥‥武器のメンテナンスをしてなくて耐久値が尽きたとか?」

武器や防具には耐久値というものがあって、それが0になると武器や防具は消滅してしまう。

僕に思いつく武器が消滅するなんて現象はそれ位しか思いつかない。

「それは俺も思いついたが、それだと優子の剣が消滅した理由を説明できない」

ふむ。確かに優子は僕達が武器のメンテナンスをする時に一緒にメンテナンスを行っているから、武器の耐久値が減っていたなんて事はないだろう。

それに強化してる最中に耐久値が切れるなんて早々起こるとは思えない。

ネズハは前にも一度武器が消滅した事があったと言っていた。それなら優子は二人目の被害者ということになる。

仮に、二人がメンテナンスをしっかりやっていなかったとしても、二人もの人が鍛冶屋に強化を依頼している間にタイミング良く耐久値が切れるなんて確立1%たりともないだろう。

ペナルティーでもなければ耐久値の問題でもない。なら、どうして武器が消滅したんだろうか?

僕が原因が何なのか頭を捻っていると、雄二が先に自分の考えを話してくれた。

「俺は、剣はネズハに何らかの方法で意図的に消滅させられたんじゃねーかと思う」

「‥‥‥‥‥‥‥」

‥‥‥‥え? ネズハが意図的に消滅させた? なんで?

どうやって?

僕は少しの間の思考停止した後、直ぐに疑問で頭がいっぱいになる。

「意図的に消滅させたって、何でそんな事する必要があるの!?」

僕が雄二に詳しい説明を求めると同時にネズハは酒場へと入って行ってしまう。

「これはあくまで俺の推測に過ぎないし、今は理由なんてどうでもいい。大事なのはどうやったかだ」

「いや、理由も知るのも十分大事な事だと思うよ?」

方法を知るのも大事だけど、何でそんな事するのか知る事も大事だと思う。

「そんなのは方法を知ってから、後で本人に直接聞けばいいだろうが? それよりも今は方法を探るのが先だ」

そうは言っても理由が気になるものは気になってしまう。

本当にネズハは何の為に武器消滅なんてさせたんだろうか?

なんて僕が考えていると

「ところで明久、どうにかしてネズハの様子を伺う方法はないか? 完全にドアが閉まってるから、ここで聞き耳立てていても全く声が聞こえてこないんだが、どうにかしてネズハの様子を伺いたい」

とネズハが入った店の扉に耳をつけて中の声を聞こうとする雄二に声をかけられる。

‥‥‥いつの間に移動したんだろうか?

「聞き耳スキルを取ってれば聞こえると思うよ? 因みに僕は取ってないからね?」

「俺もだ。まぁ最前線で攻略に勤しんでる奴らが、聞き耳スキルなんて滅多に使うことのないスキルを取得してるわけねぇか」

雄二の言う通り、聞き耳スキルなんてものは今のところ、攻略には何の役にも立たないスキルだ。

聞き耳スキルなんて誰かの話を盗み聞きしたい人、つまり盗賊系のプレイヤーしか取らないだろうから、今のアインクラッドで聞き耳スキルを取ってる人はおそらくいないだろう。

「聞き耳スキル以外で中の様子を伺うには中に入るしか方法はねぇのか? 今はまだネズハとあまり接触したくねぇんだが、何か方法はねぇか?」

雄二はできる限りネズハと接触したくないようで、ネズハに悟られる事なくネズハの様子を伺う方法を僕に聞いてくる。

「‥‥‥バレる確立は高いし、バレると僕たちの印象が凄く悪くなるけどそれでもいいなら」

「それでもイキナリ接触するよりかはマシだな。明久、お前の言った方法で中の様子を伺う事にする。バレても構わないが、できればバレるな。まだ警戒されたくない」

「分かった。頑張ってみるよ」

そう言って僕は扉に手をかけ少しずつ前に押して行き、扉を開け行く。

すると

「ーーーーで? 今日の成果は?」

「‥‥‥‥作成武器が十二個‥‥‥‥強化の依頼もそこそこ‥‥‥‥」

「そこそこってどれ位だ?」

中から声が聞こえてくる。

‥‥‥どうやらネズハは一人ではないみたいで、仲間といるみたいだ。

扉が完全に遮断されていなければ、中の声は外にいる僕達にも聞こえるようになっているので、僕は中の声が聞こえるギリギリのところまでドアを開けたのだ。

「‥‥‥‥普通のが二回でアレは‥‥‥‥三回‥‥‥」

「す、すげぇーじゃねぇか!!」

「今回のは新記録だな! よっしゃ! またインゴット集め行かねーとだな!」

ネズハの仲間は叫んだり、拍手を送ったりして、ネズハの事を労っている。

(‥‥‥‥ねぇ雄二。アレってなんだろう?)

僕にはネズハが言った意味が全く分からなかった。

普通じゃない強化? アレって一体何のことなんだろうか?

(後で説明してやる今は黙ってろ)

どうやら雄二は今のところついて行けているようだ。

それなら今は雄二の言う通りにするべきだと判断した僕は再びネズハ達の会話を聞くことにする。

「‥‥‥でも、アレはもう限界だよ。もう止めた方が‥‥‥」

「まだまだ大丈夫だって、全然噂にすらなってねーんだから、しばらくは絶対バレねぇって」

絶対にバレない? って事はバレたらマズイってことだよね?

‥‥‥あれ? そう言えば、僕は雄二がネズハは意図的に武器消滅をさせたかもしれない。って言ったから、こんな事をしてるんだよね?

僕はここで何でこんな事をしているのかを思い出した。

それを踏まえた上で、さっきのネズハの言っていたアレと合わせて考えると、僕でもアレの正体に気づくことができた。

(アレって武器消滅の事だったのか!)

やっぱり優子の剣は、雄二の言う通り意図的に消滅させらていたようだ。

「これ以上は、本当に危ないよ‥‥‥もう元は十分に取れて‥‥‥」

「何言ってんだよ? 本番はこれからだろう? ガンガン稼いでこの層でトップの連中に追いつこうぜ」

前線の皆の武器を消滅させておいて、自分達がトップに追いつく? ふざけるな!

僕はこれを聞いて我慢できずに店の中へ突撃しようとした。

のだが

ガシッ!

と雄二に腕を掴まれてしまう。

「離して雄二。僕はあいつらに言わなきゃならない事が山のようにあるんだ」

僕は声を小さくする事も忘れて、普通のトーンで話してしまったが、そんな事はどうでもいい。

どうせ今からあいつらに直接文句を言いにいくんだから、隠れる意味なんてない。

「いいから来い。(優子の剣はもしかしたら取り返せるかもしれねぇ)」

「‥‥‥‥え?」

僕は雄二の言葉を聞いて体が固まる。

優子の剣が取り返せる? なんで? 武器は完全に消滅したはずなのに?

前にも言ったが、武器が完全に粉々になってしまえば、それを修復するのは不可能だ。

当然雄二もその事は分かってるはずなんだけど、それでも雄二ほ取り返せるかもしれない、と言ったんだ。

幾度なく雄二に騙されことがあるけど、雄二はこんなところで何の意味もない嘘をつくような奴じゃない。

なら、本当に優子の剣を取り返す事ができる可能性があるという事になる。

(‥‥‥本当にそんな事ができるの?)

雄二のおかげで僕は冷静さを取り戻して再び声を小さくして、雄二に問いかける。

「(可能性としてはな。だが方法は分からない。俺にはSAOの知識が足らないからな。とりあえず奴らにそろそろ気づかれる頃だ)走るぞ」

そう言って雄二は僕の腕を離してもと来た道を全力で走って行き、僕も雄二の後を追いかけて、ネズハ達から離れて行った。

 

 

雄二が走っていき、ようやく止まったのは、さっき優子達と別れた公園だった。

「で? 取り戻せるかもしれないってどういう事?」

僕はイキナリ本題を雄二にぶつける。

僕は突撃するのを止めてこの話を聞きに戻ってきたんだから、余計な事なんて話さずイキナリ本題に入っても、それは仕方ない事だろう。

なんせ僕は雄二の言う通りじゃなかったら、もう一度あの店に戻って、今度こそ突撃するつもりなんだから。

「そう急かすなよ。ちゃんと説明してやるから。まず、優子の剣は消滅したりなんかしていない」

色々言いたいけど、今は早く話を聞きたいので我慢することにしよう。

「じゃあ優子の剣は消滅してないならどうなったの?」

結局僕は極めて大切な事だけを雄二に聞いて行く事にした。

「優子の剣は消滅したんじゃない盗まれたんだ」

「盗まれた!? 盗むも何も僕等の目の前で粉々に砕けたじゃないか! ネズハは粉々にした剣を盗んだって事? ん? 僕は何を言ってるんだ?」

粉々に砕けた剣を盗むもクソもない。完全に消滅してしまうんだから盗むなんてできるはずがない。

「安心しろ。普段からお前は常にわけの分からん事を口走ってる事があるからな。それと、盗まれたのは砕ける前だ。炉の中に素材を突っ込んだ時には既に盗まれていたと考えるべきだな」

あの時に既に盗まれてた? わけが分からない。

ネズハはあの時確かに剣を持っていた。そしてその剣が粉々に砕け散ったんだから盗まれたなんて事が起こるはずがない。

僕が、訳も分からず首をひねっていると雄二が更に説明してくれる。

「あの時に武器を入れ替えたんだよ。優子の渡した剣と同じ剣をな。で粉々に砕けたのは元々ネズハが持ってた方の剣ってわけだ」

「奴らは仲間同士の会話で、『元は取れた』だの『ガンガン稼ぐ』だの言ってだろう? だがネズハは今日の昼間にリュフィオールの剣を相場よりも高い値段で買い取っている。そんな奴が、どれほどの元金か知らないが、元は取れただのガンガン稼ぐだの言うだけの売上があったと思うか?」

確かにその通りだ。ネズハの報告の話を聞いた限りじゃ、ネズハがしっかりと稼げているとは思えなかった。

「以上の結論からネズハ達は武器を消滅させるのを目的としてるんじゃない。そう思わせて、盗んだ剣を金に変えるのを目的としてるわけだ。つまり詐欺だな」

「そんな!! じゃあ金に変えられる前に剣を取り戻さないと!」

「だから、その方法が思いつかん! どうやって自分の手元からなくなったものを取り戻せってんだ! ストレージにも入ってないもんオブジェクト化する事すらできねぇじゃねぇか!」

雄二は頭をかいて、必死に取り戻す方法を考えていた。

盗まれたという事に気づいても、取り戻す方法はどうしても思いつけないようだ。

「雄二、盗まれたっていうのは確実なんだね?」

「あ? 九分九厘な。じゃなきゃ奴らに売上なんてもんはないからな。これはほぼ間違いない」

「なら、取り戻す方法はあるよ!」

「本当か明久!?」

僕には雄二みたいな頭の良さはない。けど、僕にはSAOの知識がある。

雄二は盗まれた事に気がついた。

なら、次の取り戻す方法を思いつくのは僕の領分だ。

なんせ、取り戻すにはシステムを使う必要があるんだから。

「雄二! 武器が消滅した時間覚えてる!?」

「正確には覚えてないが‥‥‥もうじき一時間ってとこじゃないか?」

一時間? それはまずい。

「雄二! 一時間以内に取り戻さないと、二度と帰ってこなくなる! 急いで優子の部屋に行くよ!!」

「何!? 一時間だと!? くそっ! もう殆ど時間ねぇじゃねぇか!」

僕と雄二は自分のステータスを超えてるんじゃないかと思う程のスピードで、優子達の泊まっているホテルへと走って行く。

 

僕と雄二は驚異的なスピードでホテルへと辿りつき、急いで優子の部屋へと向かう。

優子の部屋の前まで来た僕は走ってきた勢いを殺すことなく、ダンダンダン! とノックする。

扉が閉まっていても、ノックをした後は何十秒かは声を通すので

「優子、僕だよ! 開けるからね!」

と声をかけて返事を待たずに部屋へと突撃する。

雄二も勢いでそのまま部屋の中へと入ってきて、すぐさま扉を閉める。

部屋の中には翔子も一緒にいた。

そう言えば翔子も一緒に泊まるって言ってたっけ?

僕達が部屋に入ると

「キャアアアア!!」

と優子が悲鳴を上げる。

僕と雄二はこれを想定していたから、部屋に入って扉を閉めたのだ。

ドアを閉めてしまえば、中の声は外にまで響かないので先に手を打たせてもらったのだ。

まるで犯罪者みたいな思考だけど、今は優子のためにこんな事をしてるんだし、多少の事は勘弁願いたい。

実際優子も翔子もラフな格好をしてはいるが、下着姿ではないので、イキナリ部屋に入ってもギリギリセーフだと‥‥‥いう事にしてもらえるとありがたい。

「優子、時間がない! 超緊急事態なんだ! 僕の言う通りにして!」

そこで優子の悲鳴は一時停止したが、優子は更なるボリュームで再び悲鳴を上げるか、直接攻撃にでるか思案してるように見える。

けど、今はそれに付き合ってる時間は本当にないので、優子が言葉を発する前にイキナリ本題に入る。

「まずウインドウを出して! そして直ぐに可視モードに! 早く!」

「え‥‥‥え‥‥‥‥?」

「本当に急いで! ほら、早く!」

「は、はい!」

優子はいつになく僕が真剣なのが分かったのか、とりあえずいう事をきいてくれる気になったようだ。

「あ、あの? 明久? なんで‥‥‥」

「ごめん説明は後で! 今は言う通りにして」

僕は優子の出したウインドウの右側、装備アイテム一覧のとこを凝視しながら優子に答える。

ここで僕が見たいのは、優子がネズハに武器を渡して以降、別の武器を装備してないかどうかだ。

結果は

「良し! 条件クリア! 後は時間との勝負だ」

優子は何の装備もしていなかった。

これで第一条件はクリアされた。

「優子、次はストレージ・タブに移動して!」

「え‥‥‥う、うん‥‥‥」

優子は未だ思考が完全に働いていないのか、僕の指示に素直に従ってくれる。

「そこのセッティングボタンを押して、次はサーチボタン、でそこのマニュピレート・ストレージってボタン」

優子は僕が支持するボタンを次々と押して行き、どんどんメニューの階層を潜っていき、

「そのボタン! 《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクタイズ》それ押して!」

遂に僕は目的のボタンを発見する。

優子は今まで通り僕の指示通りに指を動かして、そのボタンを押す。

すると直ぐに確認のイエス/ノーと表示される。

「イエーーーーース!!」

ポチっ。

「うん? オールアイテム‥‥‥オブジェクト‥‥‥化? コンプリートリィ‥‥‥全‥‥‥?」

そこまで押してから優子は自分が何を押したのか、気がついたように我に返る。

「ねぇ? 明久? 全ってどこまで全‥‥‥なの?」

「完璧に。優子のアイテム全てを」

僕がそう言うと同時に、優子のアイテムが何もない空間からドサドサっという音と共に現れる。

今の音からして重いものは下の方で、軽いものが上の方になっているようだ。

現に上の方にあるアイテムは服や、下着類が殆どだった。

「「「‥‥‥‥‥‥‥」」」

僕は雄二にも何をするか説明していなかった為、雄二を含む三人はこの状況に絶句していた。

そんな中僕は

「失礼! 下着に関しては着けてる状態のやつじゃないからセーフって事で!」

アイテムの山から目的の物を探して、優子のアイテムを調べていく。

「‥‥‥‥明久、お前‥‥‥‥何て言うかその‥‥‥命は大事にしろよ?」

僕の行動を見て雄二が一番最初に口を開く。

普段から僕を見捨てるのに何の躊躇いもない奴が、こんな状況で何を言うか‥‥‥‥‥‥やば

僕はそこでようやく、後ろからビンビン伝わってくる殺気に気がついた。

や、やばい殺される! 早く目的の物を見つけないと!

「ねぇ明久? 圏外で関節技とかすると、加減がいらない分、リアルと同じ位、うんうん、それ以上に痛いらしいわよ?」

‥‥‥それはつまり僕にそれを受けろって事ですか‥‥‥?

「それか、圏内で足を紐で結んで窓からぶら下げられてみる? きっと痛くもないし、死ぬこともないから安心でしょ?」

確かにそれなら痛くないし危険もないし安全だろう。だが安心な事なんか何もない。

もしそんな事されたら、僕は二度とこの町を歩けない事になりかねない。

いや、他の町にも噂が広がれば、僕は他の町の中も歩けない事になってしまう。

どちらを選んでも僕に待っている未来は真っ暗だ。

これを回避するためにも、何としても目的の物を見つけなければ!

と僕が必死でアイテムの山を漁っていると

「あった!」

遂に僕は目的の物を見つけて、優子達の目の前に失われたはずの優子の剣、カッツバルゲルを差し出した。




久しぶりに投稿したような気がする‥‥‥

もう一個の方は割と直ぐに書けるのに、なんでこっちは全然書けないんだうか‥‥‥?

とまぁ、最近こっちを書くスピードがかなり遅くなっている気がしますが、何とか今回の話は投稿できました!

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