明久達のSAO (凍結)   作:セイイチ

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第二十三話

 僕等が迷宮区に向かう道中で「おりゃぁぁぁああ!!」なんて声が遠くの方から聞こえてきて、僕達は一度その場で足を止めることになった。

 「ねぇ、もしかしてまだフィールドボスと戦ってるのかな‥‥‥?」

 「みたいね‥‥‥」

 二層のフィールドボスは、そんなに強くないから、もうとっくに倒してると思ってたんだけど、どうやらフィールドボスは未だ倒せてないみたいだ。

 一層のフロアボスみたいに少し強くなってるのかな?

 「とりあえず近くまで行ってみるぞ。ここで立ち止まってても、しょうがねえしな」

 僕達は、雄二の言う通り、ずっと立ち止まってるわけにもいかなかったので、先へ進むことにする。

 ‥‥‥雄二はどうするつもりなんだろうか?

 迷宮区へ入るには、地形の関係上絶対に戦わないといけない。

 今もなお、フィールドボスとの戦闘が続いてるなら、僕達も迷宮区にはたどり着けない。そんな事は雄二も知ってるはずなんだけど‥‥‥

 と、僕がアレコレ考えていると

 「ん? あれは‥‥‥キバオウ達か? なんだよ、やっぱりまだフィールドボスと戦ってたのか。ってあれは!! 全員止まれ!」

 雄二は予想通り、まだキバオウ達がボスを倒してない事に文句を言ってると、急に驚きだして、僕達に止まるように命じてくる。

 僕は反射的に停止して、一瞬でその場でうつ伏せになり体を低くする。

 「明久、アンタ何で止まれの一言で、そこまで動けるのよ‥‥‥?」

 いや、なんか体が勝手に動いちゃったんだから、そんな事僕に言われても‥‥‥‥

 「あー、それも多分、反射だな。俺や明久、Fクラスの連中は、身を守るための動きは完璧に体に覚えさせてるから、こういう時は体が勝手に動くんだろう」

 「‥‥‥前から思ってたけど、アンタ達おかしいわよ?」

 「‥‥‥優子、そんな事言ってたら、雄二達とは付き合えない」

 「‥‥‥要するに、コイツ等にとってはこれが普通って事ね? しかも、この程度で驚くのはまだ早いって事かしら?」

 翔子は優子の問いかけに頷き、肯定の意思を伝える。

 そんなに僕達って変かな?

 これくらい普通だと思うんだけど‥‥‥

 「‥‥‥雄二達は他のFクラスの人達より、危機察知能力が高い。だから、そこら辺は、あまり気にしない方がいい」

 「‥‥‥分かったわ。アタシも翔子みたいに、できるだけ気にしないようにするわ。こんなの一々気にしてたら、きりがなさそうだしね‥‥‥ところで、明久はいつまでそうしてるつもりなの?」

 おっと、優子に言われるまで気付かなかったけど、僕は未だうつ伏せしたままだった。

 さっきは反射的に体が動いたけど、雄二は『止まれ』としか言ってないんだから、何も伏せる必要はない。

 僕は皆が伏せていないの見て、ようやくその事に気づき、うつ伏せを止めて皆と同じ目線になるように立ち上がる。

 「ところで雄二、さっきの『止まれ』はなんだったの?」

 「ん? ああ、そうだった。‥‥‥明久、ボス戦やってる連中の後ろの方で待機してる奴らに見覚えないか?」

 「え? どの人達の事?」

 「今は戦ってない3人組みの奴らだ」

 僕は雄二の言っている3人のプレイヤーに意識を集中させて、自分の記憶を呼び起こしてみる。

 ‥‥‥はて? 3人とも見たことあるような、ないような‥‥‥どっちにせよ自信はあんまりないな‥‥‥。

 しいて言えば

 「あの真ん中に立ってる、頭にタマネギみたいに尖ったバシネットを被った人は、どっかで見たことある気がする。他の2人もどっちか分かんないや」

 美人な女の人ならともかく、男のプレイヤーなんて、深く関わらないと覚えられないし。

 「じゃあ、その真ん中に立ってる男、見たのは昨日の晩だったりしないか? より厳密に言うと、ネズハを尾行した時に酒場にいなかったか?」

 昨日の晩? 酒場? 

 僕は雄二に言われた事を気にしつつ、昨日の晩の記憶を思い出していく。

 えっと、昨日の晩は、優子の下着を見たな。

 「明久、鼻の下が伸びてるんだけど、もしかして思い出したらいけない事思い出してる? もしそうなら、速やかに腕を差し出しなさい」

 はっ! しまった! これは失われたはずの記憶だった!

 「‥‥‥ソンナコトナイヨ?」

 「凄い片言になってるわよ?」

 くそっ! どうして僕はスムーズに誤魔化せないんだ!

 僕は自分が情けなくて、涙を呑んで腕を差し出そうと思ったんだけど

 「はぁ。まぁ、いいわ。今回はそういう事にしといてあげるわ。けど、次はないわよ?」

 何故か僕の腕は差し出さなくて良くなった。

 なんで? と僕が不思議に思ってると雄二に急かされる。

 「おい、明久、早く思い出せ」 

 「分かってるよ! て言うか、そこまで分かってるなら僕が思い出す必要ないんじゃない?」

 「いや、正直、俺も自信がない。なんせ見たのは一瞬で、しかも相手は野郎だからな。美人な女性プレイヤーならともかく野郎の顔を一瞬見ただけじゃ自信が‥‥‥って翔子、俺が何をしたって言うんだ!? 何度も言うが俺の腕はそっちには曲がらないんだぞ!?」

 「‥‥‥浮気は許さない」

 「俺がいつ浮気した!?」

 「‥‥‥さっき、女の人なら一瞬見ただけで覚えられるって言った」

 「それだけで!?」

 あ、思わず突っ込んじゃった。

 雄二を助ける気なんて更々ないのに、雄二と一緒に突っ込むなんて僕は何をしてるんだか‥‥‥

 さ、雄二なんてほっといて、僕は早く昨日の事を思い出さなくちゃ

 「待て明久! お前も今おかしいと思っただろ!? なら、先に俺を助けろ!! というか翔子! 俺は野郎の顔を一瞬見ただけじゃ、自信がないと言っただけで、女なら一瞬見ただけで覚えられるなんて言ってないだろう!」

 「もう! 静かにしてよ! ちゃんと思い出せないじゃないか!」

 「だから、今はそれより先に俺をー」

 「翔子、手段は問わないから、雄二を黙らせて」

 「‥‥‥分かった」

 「明久テメェなんて事いいやがる!! 待て翔子! 落ち着け! 話せば分かりあえーぎゃあああぁぁぁああ!!」

 えっと、昨日は優子の部屋に突撃する前に、雄二と公園にいて‥‥‥その前に酒場に行ったんだったな‥‥‥

 僕はその時の酒場の光景をできるだけ思い出せるように、脳をフル回転させる。

 すると、ぼんやりとだけど、タマネギみたいに尖ったバシネットを被った男がいたのを思い出す。

 「あ! いた! 確かに、タマネギみたいなバシネット被った‥‥‥タマネギ頭(本名しらないし、見た特徴を一々説明すのも面倒くさいし、これからはタマネギ頭と呼ばせてもらおう)は確かにネズハと一緒に酒場にいたよ! って雄二? どうして、こんなところで倒れてるの?」

 タマネギ頭を思い出して、それを雄二に伝えようとしたら、雄二は地面で倒れていた。

 まったく、人が一生懸命、タマネギ頭を思い出してる時に、なにしてるんだか‥‥‥

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥お前の‥‥‥せいだ‥この野郎‥‥‥」

 「え? 僕のせい? なんで?」

 どうして雄二がこうなったのが僕のせいになるんだろうか?

 「‥‥‥明久、自分で言った事も覚えてないの? ‥‥あれを素で言うって、どんだけよ‥‥‥」

 ふむ。どうやら優子の言い方からするに、僕のせいで雄二はこうなったみたいだ。

 なんでだろう? 確かに、翔子に雄二を黙らせるように言った気がするな‥‥‥‥もしかして、これのせい?

 なら、僕は悪くないね! どうせ僕が何も言わなくても、その内雄二は今と同じようなカッコウをしてだろうしね。

 それになにより、別に相手は雄二なんだから、この程度なら問題ないし。

 以上の結論から、僕はこの話を強制的に終わらせる事にした。

 「まぁ、そんな事は置いといて」

 「そんな事だと!?」

 「自分でしかけといて、そんな事って‥‥‥ここまでくると、なんだか清々しいわね」

 なんだか、雄二は突っかかってきて、優子は呆れてるけど、これってそこまで反応する事なんだろうか?

 まぁ、いいや。面倒だし、スルーしちゃおう。

 「あのタマネギ頭だけど、僕も昨日酒場でネズハと一緒にいたと思うよ? 雄二」

 「この状況で、そんな事が言えるお前の神経が分からん! が、やっぱりそうか‥‥‥」

 雄二にだけは神経がどうのこうの言われたくない。

 「(雄二って普段から明久に対してはこんな感じの態度じゃなかったかしら?)」

 「(‥‥‥自分の事を棚に上げてる)」

 この時、雄二を除く、全員の思いが一つになったのは、言うまでもないだろう。

 「翔子、優子。あのタマネギ野郎の事知らないか? おそらく奴も、強化詐欺に関わってる。‥‥‥それどころか」

 「ええ。あなた達の言う通りなら、ネズハも彼らの仲間って事よね? それならあの人がネズハに命じてる。なんて事も可能性としては充分あるわね」

 「‥‥‥名前はオルランド。その隣の両手剣持ってるのはベオウルフ。反対の痩せてる槍を持ったのはクフーリン」

 凄いな、翔子の記憶力は‥‥‥

 僕と雄二なんて、タマネギ頭の顔すら思い出すのに時間がかかったっていうのに、翔子は一瞬で名前を言えるなんて‥‥‥しかも、隣の男達の事まで把握してるし‥‥‥

 僕は、ここにきて改めてAクラス代表の凄さを思い知らされることになった。

 「オルランド、ベオウルフ、クフーリン‥‥‥か。どいつもこいつも英雄の名前じゃねぇか‥‥‥」

 「因みにギルド名も先に決めてるみたいね。確か‥‥‥”レジェンド・ブレイブス”だったかしら?」

 えっと、確かオルランドって‥‥‥誰だ?

 僕は、今雄二の言った英雄が誰なのか、一人たりとも分からず、首を傾げていた。

 当然、僕以外の三人は分かってるみたいだけど‥‥‥

 まぁ、別に細かい事はいっか。

 要するに、あの3人の名前は英雄から取ってるって事だけ分かれば問題ないしね!

 というか

 「なんで、2人はそんな事まで知ってるの?」

 2人の交友関係はいったい、どうなってるんだろうか?

 名前を知ってただけでも驚きなのに、ギルド名まで知ってるなんて‥‥‥

 ちょっと何も知らない自分が嫌になる。

 僕が落ち込みかけたところで、優子はさっきの僕の疑問に答えてくれる

 「アンタ達が消息不明になってた時に、キバオウとリンドにフィールドボスの攻略会議に呼ばれたのよ。まぁアタシ達は、明久も雄二もいなかったから参加しないって言ったんだけど‥‥‥で、その時会議中に乗り込んできたのよ、あの”レジェンド・ブレイブス”が」

 あー、僕等が岩を割ってた時か‥‥‥

 それにしても、いきなり攻略組に混ぜろ! なんて大胆な事をしたもんだ。

 その時の攻略組の平均レベルに近いステータスを持ってないと、フロアボス攻略の時はボス戦に参加できないとは考えなかったんだろうか?

 まぁ、今あそこにいるって事は、ちゃんとそれなりのステータスを持ってるって事だけど‥‥‥ん?

 ここまで考えて、ようやく僕は、ある一つの事を思い出す。

 「ねぇ雄二。もしかして”レジェンド・ブレイブス”がイキナリ攻略組に入ってこれたのって‥‥‥」

 「なんだ? 今気づいたのか? 普通に考えて、一層のボスを倒してから5日‥‥‥俺達が岩を割ってた時だから、3日か? そんな短期間で、攻略組の平均レベルまでステータスあげられるわけねぇだろう?」

 「まぁね。そんな簡単に埋まる差なら、一層のボス戦から参加してただろうしね」

 「だが、奴らはそれをしなかった。って事はだ、レベルが全然足りてなかったんだろう。で、その差を埋めるために”レジェンド・ブレイブス”は強化詐欺で稼いだ金を使って、装備を豪華にして攻略組に乗り込んできた。とまぁ、こんなとろだろうな」

 雄二の言ってる事は、おそらく間違っていないだろう。

 現に、オル‥‥‥なんだっけ? まぁいいか。タマネギ頭達の装備は、攻略組として最前線で戦っているはずの僕達やキバオウ、リンド達よりも立派な装備だった。

 と僕達が”レジェンド・ブレイブス”について話していると、リンド達の方から大歓声が聞こえてくる。

 僕等が、リンド達の方を見ると、フィールドボスはその場から消えていた。

 さっきの歓声は、どうらやボスを倒した時の歓声だったようだ。

 「お、ようやく倒したか。これでようやく迷宮区に行けるようになったな。とりあえず、”レジェンド・ブレイブス”の事もネズハと同様、情報を集めるって事にして、今は迷宮区に挑む事にするか」

 「そうね‥‥‥今のアタシ達には、彼らが強化詐欺をしたって証拠もないしね」

 「‥‥‥今それを言っても、逆にこっちが名誉棄損で訴えられる」

 「だね。けど、迷宮区に行くのはもう少し待ってからにしない? 今出ていくと、キバオウ達と出くわしちゃうしさ」

 いくら、一層ボス戦で最後にキバオウが僕を庇ってくれたからと言っても、キバオウが元テスターを嫌ってる事に変わりはない。

 だから、僕がこのまま出て行ってキバオウと鉢合わせになったら、何を言われるか分からないから、僕はタイミングをずらしたくて、皆に提案したんだけど

 「ん? その心配はないぞ? ほら、見ろ。アイツ等補給とメンテナンスのために、一度村に引き返して行ったからな」

 雄二がそう言ってキバオウ達を指さすと、雄二の言う通りキバオウ達は、全員村へと引き返していた。

 「というわけで、俺達が迷宮区一番乗りだ。ほら、さっさと行くぞ?」

 「了解。キバオウ達がいないなら何も心配する事はないし、さっさと迷宮区に入っちゃおう」

 そう言って僕と雄二は、キバオウ達が見えなくなると、迷宮区に向かって歩き出すと

 「‥‥‥ねぇ、翔子? 普通、こういうのって、フィールドボス倒した人達、つまりはキバオウ達なんだけど、その人達が最初に迷宮区に入るものじゃないの? こんな事したら、キバオウ達に卑怯だなんだって文句を言われないかしら?」

 後ろから、優子のこんな声が聞こえてくる。

 バカだな優子は。

 優子の声が聞こえると、僕と雄二は同時に一度止まり、優子の方に振り返る。

 「卑怯? 文句? 優子は何を言ってるの?」

 「優子、お前は大事な事を分かっていないようだな」

 「な、なによ2人して‥‥‥アタシが何を分かってないって言うのよ?」

 僕と雄二は肩を竦めてみせる。やれやれ優子がいくら頭が良いと言っても、これに関しては勉強不足だったみたいだね。

 「いいかい、優子?」

 戸惑う優子に、僕と雄二は諭すように2人で一斉に告げる。

 「「卑怯汚いは敗者の戯言」」

 「アンタ達最低すぎるわっ!」

 これは勝負の鉄則だ。そして、これは誰が宝箱を手に入れれるかの競争だ。そんな勝負で俺達が手を抜くはずがない。

 というわけで、僕等は最低と言われようが、なんと言われようとも止まる事はない。

 第一、せっかくフィールドボスを倒したのに、迷宮区に一度も入らず村に戻るなんて、僕には考えられない。

 僕なら一度戻るにしても、ちょっと位は迷宮区に入ってるだろう。だから、フィールドボスはキバオウ達が倒したとしても、迷宮区の一番乗りを僕等に取られたのは、入らなかったキバオウ達が悪いと言えるだろう。

 うん。やっぱり僕達に悪い要素は一つもないね!

 「まぁ、そう言うわけだから、さっさと迷宮区に行くとするぞ」

 そう言って歩き出す雄二を皮切りに、僕達は迷宮区へと歩き出した。

 優子は未だ罪悪感があるみたいだったけど‥‥‥

 

 

 

 

 




書いてて段々、明久よりも雄二の方が可愛そうに思えてきたのは何故だろう‥‥‥?
まぁ、雄二だからいいっか! ‥‥‥本当にいいんだろうか‥‥‥‥

と、まぁ作者的には雄二の扱い酷くね? と思った回ではありましたが、今回はここまでです。

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