僕達が酒場に行くと、そこには既にアルゴがいて、僕達を待っていた。
「ごめん。アルゴ。待たせちゃったかな?」
「いや別にそんな事はないゾ? オイラも今来たところだしナ。けど、この人数で来るって言うのは聞いてないゾ?」
アルゴは別に待ってはいないみたいだから、先にアルゴが来ていた事については何も言わなかったけど、僕が皆を連れてきた事には驚いていた。
まぁ、僕が呼んだのに他に三人もいたら驚くのは仕方がないか
「ようアルゴ。この前は良くも裏切ってくれたな」
「あれは裏切りじゃないゾ? ユウジン。事実を教えてあげただけダ」
「『愛があるなら、デメリットなんてなイ!』とか言っておきながら、良くもそんな口が聞けるもんだな!?」
雄二はいったい何を言われたんだろうか? 結婚したら少なからずデメリットもあるはずなんだけどな‥‥‥‥
SAO内で結婚すると、互いのステータスをいつでも自由に見ることができ、かつアイテムストレージが統合、共有化され、所持容量も二人分となってしまう。
そのせいか結婚詐欺とかの被害に合う可能性もあるんだけど、まぁ雄二達なら問題ないかな?
流石の雄二でも翔子の事を裏切ったりはしないと思うし。
「ほら、雄二。今日はその話をしに来たんじゃないでしょ? さっさと要件済まさないと。あ、アルゴこれマップデータね」
僕は雄二を落ち着かせながら、流れでそのままマップデータを渡す。
「いつも悪いナ、アキ坊。何度も言ってるけド、規定の金額ならいつでも払うゾ?」
一応、マップデータは貴重な物だから、情報屋とか他のプレイヤーにマップデータを渡すと結構なコルを貰えるらしいけど
「僕はマップデータで商売する気はないから、別にいいよ」
アルゴの申し出は、いつも遠慮させて貰ってる。
まぁ、マップデータがないせいで、死ぬ人ととかいたら目覚めが悪いしね。
と、そこで、アルゴがマップデータを受け取ったのを確認してから
「で、だアルゴ。今回は、それを受け取るのを条件に一つ頼みたい事がある」
イキナリ雄二がこんな事を言いだした。
え? 僕が渡したデータなのに、なんで雄二がこんなに偉そうなの?
「その攻略には俺達も行ってたんだ。それをタダで明久がお前に渡すなら、俺の些細な願いを聞いてくれても問題ないよな? ‥‥‥‥なに、別にそんな大した事じゃない。ただ少しばかり協力してくれればいいんだ」
そう言う雄二は、ニヤッと笑っていた。
あーこれは、アレだな。コイツが勝ちを確信した時の顔だな。
全く、人がタダで渡したものを、後から『但し、条件がある!』なんて、ホントこいつは悪魔かなんかだな。
まぁ、雄二の言い分も分かるっちゃー分かるけど‥‥‥‥
「協力ネ‥‥‥‥まぁ内容によるナ。何を協力してほしいのカ、オネーサンに言ってミ?」
アルゴはとりあえず聞くだけ聞く事にしたようだ。
まぁ、雄二がこういう時は、本当に些細な事を頼む事が多いから、多分そんな無茶な事はお願いしないだろう。
「アルゴ、最近攻略組に入ってきた、レジェンド・ブレイブスって連中を知ってるか?」
「まぁ、オネーサンは情報屋だからナ‥‥‥条件っていうのソイツ等についてカ?」
「ああ。アイツ等のメンバー全員の名前と、結成した経緯の情報が欲しい。‥‥‥‥‥それを俺達が欲しがってる事を誰にも知られるな。特にアイツ等自身には」
どうやら、雄二はレジェンド・ブレイブスの情報を誰にも気づかれる事なく欲しいようだ。
けど、情報屋アルゴのモットーは売れる情報は何でも売るだ。
だから本来なら、雄二がレジェンド・ブレイブスの情報を欲しがると、それ自体が情報になり、彼らに『お前等の情報を欲しがっている奴がいるけど、その情報買うか?』という事になる。
もちろん、口止め料を払えば名前は隠せるけど、相手に自分達の情報を欲しがってる人間がいると言うのはバレてしまう。
雄二はそれを避けたくて、こんなお願いをしたんだろう。
「ン~~~~ン‥‥‥‥」
思いのほか、アルゴは悩んでいるようだ。
きっと、タダでマップデータ貰ってるから、できる限り協力したいけど、商売のルールを破るべきかどうか悩んでるだろう。
ここは、僕からもお願いしておいた方がいいかな? 一応、マップデータ渡したの僕だし‥‥‥‥
「ねぇアルゴ? 僕からもお願い。ダメ、かな‥‥‥‥?」
「んン~~~。ン~~~~‥‥ま。いっカ!」
そう言ってアルゴは笑みを見せる。
「けど、ユウジンとアキ坊。これだけは覚えておいてくれよナ。オネーサンは商売のルールより、二人への私情を優先させたって事をナ」
アルゴはそう言いながら、何故か目線は僕達ではなく、後ろの二人に向けて言い放つ。
すると、後ろではメラッ! という音が聞こえてきたような気がした。
な、なんでだろう? 今は後ろを向くなと、僕の本能が全身に訴えかけていた。
隣では、雄二が震えながら、全く後ろを振り返ろうとしていない所を見ると、きっと僕の勘は外れていないだろう。
「それで? 今日の用事はこれでおしまいか?」
アルゴは僕達の状況を知ってか知らずか、もう用はないのか尋ねてくる。
自分でこんな状況を作りだしといて飄々とこんな態度を取れるなんて、なんて奴なんだ! 鼠のアルゴ恐るべし!
「ま、待ってくれアルゴ。あと一つ聞きたい事がある」
こんな空気の中、雄二は勇敢にもアルゴに続きがあると話していた。
‥‥‥‥この空気の中で聞くって事は、大事な事なのかな? それともただ時間稼ぎしてるだけなのか、どっちなんだろう‥‥‥‥‥?
「強化の過程で、武器が壊れたりする事はあるのか? ちょっと調べてくれないか?」
どうやら、前者だったようだ。
これならアルゴは、直ぐに調べてくれるだろう。と思ったんだけど
「それなら、調べるまでもないナ。オイラが既に検証済みだからナ」
アルゴは既に知っていたようだ。
‥‥‥‥ホント色んな事知ってるね。
アルゴは、「情報料はここの酒代でいいゾ」と前置きをしてから、アルゴは言った。
「厳密な失敗ペナルティーとしてなら、武器破壊はまず間違いなく起きなイ」
やっぱり雄二の予想通り、ペナルティーで武器破壊なんて存在しないようだ。
けど、ここまでは僕達も予想はしていた。ただ確証は得られたから、この情報も必要と言えば、必要だったけど、僕達が知りたい事は、まだ聞けていない。
雄二は、それをアルゴに話して、「確実に破壊される条件はないか?」と尋ねる。
「それなら、試行可能数が残っていない剣を、更に強化しようと試みた場合だナ。それを試みると、百パーセント確実に武器は破壊されル」
☆
僕達はアルゴから情報を聞き終わった後、最初に言っていた通りネズハを監視する事にして、ネズハの店の向かいにある、無人の建物(空き家)に入り、高い位置でネズハの手が良く見える場所に来ていた。
アルゴの情報により、やはりネズハは何らかの方法で武器をすり替えていた事が判明して、どうやって詐欺を行っていたか見破るのに、王手をかけていた。
要はネズハは予めエンド品を持っていて、強化過程のどこかで客の武器とネズハの持っていたエンド品を入れ替えていたのだ。
「後は、どうやって入れ替えたか。だね?」
「ああ。後はそれさえ分かれば、解決するんだけどな。まぁ、ここで見張ってれば、その内強化しに来る奴がいるだろう。その時、もう一度じっくり見て、方法を見つければいい。要は生贄が現れるのを待てば良いって事だな」
相変わらず、コイツの考えは汚いな。まぁ試召戦争の時から、仲間をゴミのように犠牲にしても、最終的にコイツの作戦通りすれば、勝てるから文句はないんだけどね。
「アンタ達、いつか酷い目に合うわよ‥‥‥‥?」
はて? 酷い目に合うって具体的にどんなだろうか?
普段から定期的に酷い目に合ってた気がするんだけど、それよりもランクが上がるんだろうか?
「‥‥‥雄二、明久。来た」
翔子の声を聞いた僕と雄二は、さっきまでダラダラ空気を一瞬で破り、急いでネズハに視線を向けると、そこにはネズハの前に、高級な金属鎧とダークブルーに見える胴衣を着た、男が一人いた。
「あれが生贄になる奴か‥‥‥‥翔子、アイツの名前分かるか?」
「‥‥‥シヴァタ」
雄二が翔子に男の名前を聞くと、翔子は一瞬も悩む事なく即答した。
‥‥‥‥‥なんで即答できるんだろう? というか、なんで雄二は名前なんか気になったんだろうか?
僕はそれを雄二に尋ねると
「生贄にする奴の名前位覚えようと思ってな。また、いつ生贄が必要になるか、分からないからな。利用しやすそうな奴なら、名前を覚えておいて損はないだろう?」
どうやらコイツは、今後も機会があればシヴァタを利用するつもりのようだ。
僕だけでも、シヴァタのために、そんな機会が訪れる事がない事を祈るとしよう。
ただでさえ、今からシヴァタは詐欺に合うのに、今後もそんな目に合う可能性があるなんて、いくらなんでも可哀想すぎる。
「おい、始まるぞ明久。バカな事言ってないで、さっさとネズハの動きに集中しろ」
僕は雄二の声で今するべき事を思い出し、ネズハに集中する事にする。
「分かってるよ。左手に注目してればいいんでしょ?」
そう言って僕はネズハの左手を注視する。
ネズハは左手で、シヴァタの武器を持ち、右手を忙しく動かして、強化の過程で必要な事を全てこなしていく。
そして、ネズハが入れた炉の中に素材を入れて、炉が光った時
「「「っ!!」」」
僕達は全員、同時に息を飲みこんだ。
炉が光った時、ネズハの持っていた剣に仲が起こったのだ。
それを感じたのは、僕だけではなく、他の皆もだったようなので、何かが起こったのは間違いない。
そして、僕達が違和感に気づいて間もなくして
パリィィィン!
という音が鳴り響き、シヴァタの剣は、正確にはネズハが入れ替えたエンド品が粉々に砕けた。
シヴァタは最初剣が砕けた時、呆然としていたけど、結局大した文句も言わずに歩き去って行った。
「‥‥‥‥‥‥明久、お前どうやってすり替えた分かったか?」
「何らかのシステムを使ってるのは分かったけど、どんな方法かは未だ分からない‥‥‥」
最初は、床に敷いてる赤いカーペットに、予め剣を置いておいて、それと入れ替えてるのかと思ったけど、今見ていて、そんな事はしてなかったから、ネズハが何らかのシステムを利用してすり替えたのは間違いない。
「なら、ここからはお前の知識だけが頼りだ。必死に頭を‥‥‥‥おい、明久。あれ使ったって事は考えられねぇか?」
そう言って、雄二が指さしたのは、ネズハが《ベンダーズ・カーペット》のポップアップメニューを操作して、カーペットの上にあるアイテムが独立ストレージに呑み込まれている光景だった。
《ベンダーズ・カーペット》とは、耐久値のあるアイテムをカーペットの上に置いていれば、耐久値が減らないという、自分の店を持っていない商人プレイヤーにとっては、必須のアイテムだ。
そして、《ベンダーズ・カーペット》にはもう一つ特徴があって、カーペットの上にあるアイテムを纏めてストレージにしまう効果がある。
雄二はそれを見て、このカーペットを利用したんじゃないかと、思ったみたいだけど
「それは無理だね。カーペットの上にあるアイテムは全て収納しちゃうから、特定の剣だけ収納して代わりを取り出すなんて‥‥‥‥‥‥不可能‥‥‥‥‥‥?」
僕はここまで口にしてから気づく。
確かに、あのカーペットを使うのは無理でも、あれだけアイテムを敷き詰めてれば、ネズハのメニューウィンドをカーペットと売り物の間に隠せるから、分からないんじゃないか?
と僕が、トリックに気づきかけてきた時
【取り急ぎ、第一報】
アルゴからそんな連絡が入る。
その連絡の内容は、僕達がアルゴに依頼した、レジェンド・ブレイブスのメンバー情報だった。
名前とレベル、大まかなキャラクタ構成程度だけど、短期間でこれだけ調べ上げるなんて、流石に早すぎるでしょ‥‥‥
と僕は苦笑いしつつ、メッセージに視線を走らせた。
まず、トップにあるのは、リーダーのオルランドの名前だ。レベル11、盾持ち・やや重装タイプの片手直剣使い。
それらのデータに加えて、名前の由来までも記してあった。
「アルゴって、こんな情報どこから仕入れてくるんだろう」
「どうせ、歴史マニアの知り合いでもいるんだろ? そんな事気にしてないで、さっさとお前も確認しろ」
「へいへい」
僕は雄二に適当に返事をして、他のメンバーの分も呼んでいき、最後にネズハの名前があった。
レベルは10。まぁ生産職もアイテム製造行為で経験値が入るから当然だろう。ただ、戦闘用スキルの熟練度までは上がらないから、前線で戦うのは難しいだろうけど。ビルドは、当然鍛冶屋タイプ。そして最後に、名前の由来が‥‥‥‥‥
「「(‥‥‥)えっ!?」」
「「なに!?」」
僕等は一斉に驚きの声を上げる。
「読み方が、全然違ったってこと‥‥‥‥‥?」
「だが、ブレイブスの連中は『ネズオ』って呼んでいたぞ!?」
優子の疑問に答えた雄二の言う通り、酒場で彼らはネズハの事を『ネズオ』と呼んでいた。それは間違いない。
つまり、ネズハは彼らにも本当の名前を教えていない事に‥‥‥‥‥‥
僕はそこまで考えて
「あ、分かった‥‥‥‥かも‥‥‥‥?」
このすり替えトリックに気づく事が出来た。
今回から書き方変えてみました!!
いかがだったでしょうか?
自分的には、少しは見やすくなったかな? と思ってるんですが‥‥
それにしても、これでようやくプログレッシブの一巻の三分の二ですよ‥‥‥
先はまだまだ長いです‥‥‥
と、まぁ本作はこんな感じなんですが、ここでちょっと報告を入れたいと思います。
先日までお願いしていた、アンケートの結果、新作を作らせてもらいましたので、良ければ一度見てやってくださいm(__)m
以上報告でした!
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(短っ!)
そんなわけで、今回はこの辺りで失礼して
感想、評価お待ちしております!!