ACfAヤンデレ集   作:粗製のss好き

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ヤンデレを書きたかったので初投稿です。


リリウム編
リリウム・ウォルコットの場合


 この世界の歴史は面白い軌跡を辿っている。

 

 増えすぎた人口と慢性的なエネルギー不足及び食糧不足により、国家の統治能力は著しく低下した。対して新物質『コジマ粒子』を発見し、膨大かつ新しいエネルギーを得た大企業の数々は、彼らによる秩序を構築すべく国家に全面戦争を仕掛ける。後に国家解体戦争と呼称されるソレは、たったの一か月で終わりを迎える。無論、企業の勝利と言う形でだ。それが17年前。

 

 当時、活躍した兵器の名を『アーマードコア・ネクスト』という。

 

 コジマ粒子をふんだんに利用した全く新しい兵器と戦略により、国が率いる軍隊は成す術もなかった。圧倒的な機動性、装甲、破壊力。環境を極端に汚染する事と戦力が個人に寄る事にさえ目を瞑れば、まさに最強の名に相応しい兵器であると言えよう。

 

 なんにせよ、こうして企業が統治する世界(パックス・エコノミカ)は成された。

 

 この時点でディストピアの匂いがプンプンするがなんてことは無い。この世界のぶっ壊れ具合はこの程度じゃあ留まらない。

 

 企業にとって戦争は経済競争の一環である(もっともそれは昔も変わらないのかもしれないが)。ともすると人の生死すらも金で勘定される訳で。現代日本人の感性を存分に発揮してしまう俺としては信じられないことだ。

 

 しのぎを削り合うような企業同士の小競り合いが数年続き、ソレが激化したのが十年ほど前。この戦争により各々の企業は国家解体戦争で活躍したネクスト搭乗者、オリジナルの大半を失った。この戦争のまたの名をリンクス戦争といい、その名の通りネクストを駆るリンクスが戦局の全てを左右させた。

 

 しかしそれはリンクス一人が保有する戦力があまりにも突出している事を意味していた。己が生み出した存在を畏怖し、またその不安定さから企業は凡庸でも扱える超巨大兵器『アームズフォート』を開発する。そうして、企業間の争いはネクストからAFへと取って代わった。もっとも、それでネクストの戦力が変わる訳でもなく。強力なままリンクスは都合のいい尖兵として扱われるようになった。

 

 そんでもって、リンクス戦争により汚染された地上を見限った企業は生活圏を空へと移した。無論、多くの市民を地上に残したまま。個人的な所感だが、糞食らえである。

 

 「畜生、これじゃあ何のためにリンクスになったんだか」

 

 別に(クレイドル)に住みたかったわけではない。ただおいしい飯とやわらかいベッドで寝ることが出来れば満足だと思っていた。しかし実際は―――

 

 「よぉ、ダイキ。今日も依頼が来てるぜ」

 

 ジョージ・オニール。俺の嫌いな男である。いや正確にはこの男自体は嫌いではないのだ。ただこいつの持ってくる依頼が心底不快なのである。いや、それも違うな。依頼自体は飯のタネだからやらなければならない。

 

 「おいおいおいおいおいおい。オニール君、昨日、俺、何回、依頼こなした?」

 

 「……はは、5回だったかな?」

 

 気後れするように答えるオニール君。

 

 「そうだよ? その通りだよ。で? 今日は何件来てるのかな?」

 

 「あー7件だな」

 

 え、なんか昨日より多いんだが?

 

 「過労死するよね? 俺コジマに犯されて死ぬよね?」

 

 「まぁなんだ、断ればいいんじゃないか?」

 

 「お前それ本気で言ってる? どうせあの爺が回してきた仕事なんだろう? 違うかな、オニール君?」

 

 「一応BFFからって事になってるが、まぁそうだろうな」

 

 「拒否権ある訳ないじゃん? 俺思いっきりBFF所属のリンクスなんだが?」

 

 「……だな」

 

 唐突だが、俺は転生者である。経緯は割愛する。重要なのは文字通り世紀末だった地上で、路頭に迷っていた俺をあの爺こと王小龍(ワンシャオロン)が拾ってくれたという事である。つまり恩がある。そしてその恩はとてもじゃないが、返し切れるものではない。

 

 だから俺はヤツの、企業の傀儡になることを良しとしている。

 

 「いつも悪いな。愚痴ってすっきりした。で、内容は?」

 

 「これで楽になるんならお安い御用だ。じゃあ、仕事の話をしよう―――」

 

 仲介人の懐の良さに脱帽である。いやほんと、ちょっと自重しないと。

 

 

 

 ★

 

 

 

 「……ふぅ、24時か」

 

 すべての依頼を終えた頃には既に一日が終わろうとしていた。

 

 俺のAMS適正(ネクストを精密に操作する目安)はさほど高くない。しかし条件付きで俺のAMS適正は馬鹿みたいに上昇する。その条件と言うのがセロトニンが不足している状態、言い換えれば脳が()()を感じている時である(正確には違うらしいが)。だから王小龍は俺をこき使うのだろう。その方が効率が上がるのだから。

 

 「それにしたって、最近はちょいと仕事が多すぎな気がするが」

 

 「私もそのように見受けられます。王大人には伝えておきましょう」

 

 「ん?」

 

 声のした方に振り向くと銀色の女性、いや少女が佇んでいた。見知った顔に思わず「よう」と手を上げた。

 

 「はい、ご機嫌よう。ダイキ様」

 

 少女は見惚れるほどに優美な一礼をする。彼女の名はリリウム・ウォルコット。先ほどの優雅な所作と手入れの行き届いた銀髪、何よりも上等な衣装を纏っている事からも分かる通り、所謂お嬢様って奴だ。しかしそれと同時に、俺と同じリンクス(戦争屋)でもある。ただ一般兵に過ぎない俺とは違い、彼女はBFFの切り札とも言える存在である。実際クソ強い。

 

 「おう。しかしこんな夜更けまで起きてるとは。美容に悪いぜ?」

 

 「……そう、ですね。ご忠告痛み入ります」

 

 やっべ、年ごろの少女にはタブーな話題だっただろうか。いきなり沈んだ顔つきになる彼女を見て、たまらず話を変える。

 

 「あーそれで? まさか何の理由もなしに待ってたわけじゃないだろう、リリウム嬢」

 

 「理由がなくては貴方の帰りを待ってはいけないのでしょうか?」

 

 不満げに見上げてくる少女。やっば、かわいい。歳が離れてなければ絶対口説いてる自信がある。

 

 「……いけなくはないが。ま、ありがとな」

 

 「いいえ、礼には及びません。ところで、まだ夕食を済ませてないと伺いましたが」

 

 「ああ、なんならマトモに昼食もとってないぜ」

 

 俺がそのように答えるとリリウム嬢は僅かに苦い顔つきなる。そして「ごめんなさい」という言葉と共に頭を下げ始めた。全くもって謂れのない謝罪だが、自分が失言を重ねたという事は分かる。というか自分よりも10歳ほど離れた少女に頭下げさせるって、情けない事この上ない。

 

 「お、おい。頭を上げてくれ、どうしたんだ急に」

 

 「それは……。いえ、ただもっと私が出撃出来れば、ダイキ様の負担も」

 

 基本的に感情が表に出ない彼女が、こうも弱気になるのも珍しい。とはいえこの件において、リリウム嬢にはなんの責任もない。すべては王小龍の采配であり、さらに言えばBFFに所属するリンクスの不足が原因である。

 

 「俺のランクは17で、アンタは2だ。BFFの切り札を他の企業(やつら)に見せる訳にはいかないってのは、リリウム嬢にも分かるだろう?」

 

 「……ええ、存じております」

 

 「そういうこった。逆に言えば、俺の手に負えない案件はアンタが代わりに出張らなきゃいけないんだ。だからなんだ、これでも頼りにしてるんだぜ?」

 

 「ダイキ様……」

 

 慰めの言葉ではあるが、嘘偽りのない事実である。実際リリウム嬢の実力は折り紙付きである。オーダーマッチで一度対戦したことがあるが、とても勝ち目が見えなかった。AMS適正、リンクスとしてのセンス共に俺より数段上だと心得ている。

 

 だから実力の面で言えば、それはもう信頼してる。しかし同時に、まだ20にも満たない少女にとりわけ危険な戦場を任せるわけにはいかないとも思う。汚れ仕事は俺みたいな人でなしに任せればいいのだ。

 

 「さて、そんじゃあまぁ俺は部屋でカップ麺でも食いますかね」

 

 ぽんぽんと、彼女の肩を叩いて歩を進める。ちょっと気恥ずかしくなったからだろうか、逃げるように彼女から離れようとすると———

 

 「ん?」

 

 「……あ」

 

 右手を掴まれた。メッチャ柔らかい。彼女の顔はほんのり朱色に染まっていた。なにこの可愛い生き物。

 

 「その。では、差し支えなければ私も一緒に、よろしいでしょうか?」

 

 こんな夜遅くに飯食うと太るぞって、言いたくなるのを堪える。同じミスはしない性質だ、俺は。

 

 「それはありがたい。こんな綺麗な女性と飯が食えるだなんて、光栄の至りってなもんですよ」

 

 「……綺麗な女性、ですか」

 

 「そうだとも。リリウム嬢ほどの美人、そうはいない」

 

 贔屓目かもしれないが、少なくとも俺からすれば彼女は現代日本のテレビで活躍していた女優にも勝る美貌の持ち主である。それでいて丁寧な言葉遣いなのだから、高嶺の花と呼ぶに相応しいお嬢さんと言えるだろう。尤も年齢が年齢だけに、手を出す気にはなれんが。というかそんなことしたら間違いなく王小龍に殺される。

 

 「ん? でも待てよ。流石にリリウム嬢にカップラーメンを食わせるのは……」

 

 「こちらで用意いたしましょう。元よりそのつもりでした」

 

 「マジか、用意が良いな」

 

 流石は名門ウォルコットの女王。今日の晩飯は期待できるぞ。

 

 「案内します。ダイキ様、こちらへ」

 

 「おう、楽しみだ」

 

 思ったことを口にすると、彼女もその人形のように整った顔を綻ばせる。勘弁してほしい。可愛すぎて口元が気持ち悪くならないようにするのが難しいのだ。

 

 「……ええ、楽しみですね」

 

 

 

 ダイキが正面を向くと、リリウム・ウォルコットは複雑そうに笑った。

 

 「ごめんなさい」

 

 その言葉と同時に、ダイキの視界は黒で埋め尽くされる。糸の切れたマリオネットのように、彼はプツンと倒れた。

 




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