ACfAヤンデレ集   作:粗製のss好き

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正直やりすぎた。


リリウム・ウォルコットの場合:2

 ダイキ・イシザキ。彼はカラードランク17、BFF所属のリンクスである。

 

 AMS適正は歴代及び実存するリンクスの数値と比較するとおよそ平凡的だ。とある条件下では高位リンクスに迫る物があるというが、安定した性能を出せないのであれば考慮に値しない。可もなく不可もなく、それが彼に与えられた評価である。

 

 もっともそれは空に逃げた企業(卑怯者)から見た所感である。彼と共に戦場を駆けた者たちからすれば、全く別の感想を抱くのがある意味彼の本質と言えた。

 

 例えばGAのリンクス、メイ・グリンフィールド。曰く「相性が良すぎて、ええ。怖すぎるわ」との事。

 

 あるいは敵対するインテリオン・ユニオンのリンクス、ウィン・D・ファンション。「悪くない戦士だ、BFFの者でなければ引き抜いていた」と、ランク3のリンクスが彼を手放しに評価することもある。

 

 人格も企業(BFF)にとって理想的と言えた。従順で、反抗せず、そつなく任務をこなす。加えてコミュニケーション能力に富み、現場の人間には好かれる傾向にある。リリウムがBFFの切り札で、王小龍が陰謀屋だとすれば、ダイキ・イシザキは鉄砲玉と言ったところだろうか。何にせよ評価の割に、彼は重用されていた。

 

 リリウム・ウォルコットがダイキ・イシザキと出会ったのが6年前。BFFがリンクス戦争によって齎された壊滅的な被害から、ようやく立ち直り軌道に乗り始めた頃の話である。

 

 王小龍に見出された彼は今と変わらずどこか楽観的な人物だった。対して同じく王小龍にBFFの王女として祭り上げられたリリウムは十代半ばという年齢でありながら、主の指示を待つ機械そのものだった。

 

 共に王小龍の傀儡なのにこうも違う。その違和感がリリウムの初めて実感した人間らしい感情だったのかもしれない。しかし感情とは、王小龍に使われる事が唯一の存在意義であった彼女が自ら不要と切り捨てた機能である。だから最初の内は己の変化にすら気が付く事はなかった。

 

 そうして放置し続けた違和感が溢れると、彼女はどうしてか彼を目で追うようになっていた。そうなると見えてくるモノもあって。彼と会話する人はいつも笑顔で、そして楽しそうである事。そもそも彼の周りにはいつも人がいて、気づけばその輪の中に自分もいた事。あの厳格な王小龍ですら、彼と会話を交えると微笑んでいるという事。

 

 彼の周りではいつも心が渦巻いている。不要と断じたソレに触れる度に、最初の歪は大きくなる。そうしていつの日か彼女は―――

 

 

 

 ★

 

 

 

 リリウム・ウォルコットは罪悪感に苛まれていた。

 

 己を信頼してくれる殿方に、あろうことか背後から麻酔銃を撃ったのである。無論、彼はリリウムに謀られるとは思いもよらなかっただろう。だからこんなにも簡単に事が進んでいる。

 

 「お許しください、ダイキ様。リリウムは貴方のご信頼に背きました」

 

 謝罪の言葉は寝台で横になっている男に向けられていた。しかしそんな殊勝な態度と相反するように、彼女の口元は三日月に歪んでいた。己の罪深さを自覚すると共に、リリウムは確かに歓喜していたのである。

 

 見下ろせば、なんと無防備な事か。こんなにもあどけない寝顔を晒しては、彼が10歳ほど年が上であると弁えていても母性本能が疼いては庇護欲が湧いてしまう。ああ、でもそれ以上に―――

 

 「はむ」

 

 彼女はより倒錯的かつ本能的な欲求を優先した。

 

 それはいわゆる食欲と呼ばれるものである。

 

 「……っ」

 

 首筋に歯を突き立てられたダイキはその意識が微睡の中にあっても、反射的にその顔を苦くさせた。そして歯に込める力が強くなるにつれて、その苦悶の度合いも大きくなる。期待通りの反応にリリウムは密かに満たされた。BFF女王の系譜を存分に受け継いでいるという事なのだろう。

 

 しかし、まだ足りない。

 

 「……ん」

 

 犬歯がついに皮を破ると、彼の首筋から血液がこぼれた。その真っ赤な液体は思っていたよりも生命を感じさせて、リリウムは震える。これが彼の身体を何度も巡る代物なのだと。

 

 ソレを摂取することが如何に冒涜的かを彼女は十二分に理解している。しかし己が慕う殿方の血液を体内に取り込むことが酷く甘美に思えて、どうしようもなく抗い難い衝動であったのだ。

 

 この異常とすら形容できる欲求に、リリウムは一年もの間耐え忍んだ。この世界における常識にどれだけの価値と信頼性がおけるのかはともかくとして、人並みに善悪が判断できる彼女にとっては己が内に生まれたその願望が明らかに常識的ではないと理解していたのである。だからここ一年はダイキと顔を合わせる度に、いつも乾いた衝動が彼女を苦しめていた。

 

 「……頭では分かっているのです。こんなの、いけないことだって」

 

 そんな事、言われるまでもない。暴行して、監禁して、挙句の果てには食そうというのだから。正気の沙汰ではない、あまりに倒錯的だと加害者本人も自覚している。

 

 「でも、お許しくださいね」

 

 今日まで抗えたのは、彼に対する精一杯の誠意と尊敬の意を抱いていたからだ。

 

 だがもう無理だ。もう限界である。()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼の首からしたたり落ちる血液を、舌を擦りつけるようにして口に含んだ。すると―――

 

 「———なんて、背徳的な」

 

 己の罪深さに。或いはその香しさに。危うく放心する程に、心から打ち震える。

 

 それからはもう、リリウム・ウォルコットは止まれなかった。大胆にもダイキの身体に馬乗りになって、傷口を中心にゆっくりと丹念に舐め回す。肌がふやけ始めても、それはまだ止まることは無い。寧ろ一線を越えてしまったことで欲求は際限なくなる。

 

 「ん、もっと、です」

 

 歯をたてて、彼女がつけた傷を更に広げるようにして血を掻き出す。夢中になるうちに、ダイキの首に腕を回していた。気づけば抱きしめるような体勢になっていたのである。まるで()()()()()に。

 

 「———っ!!」

 

 意識したら、抱きとめる腕にもっと力が籠った。呼応するように、みしみしと寝台も軋む。そうして口いっぱいに血液がたまって、一気に飲み込むと———

 

 「けほ、っけほ」

 

 酷く咽た。当たり前である、そもそもソレは飲み物ではないのだから。味も酷い。とても飲めたものではない。鉄臭さが口に残る。しかし、それでも口から零す事はなかった。すべて飲み込んで文字通り己の糧にする。

 

 そうして彼女は再度、その人形のように整った顔を首筋に埋めて吸血活動に勤しんだ。

 

 堪能する事数十分、リリウムの頭に何かが載せられた。それはごつごつした、皮の厚い掌であった。

 

 




正直やりすぎた(二度目
これをヤンデレと言っていいのだろうか(不安

-追記-
感想が来るほど投稿ペース早くなるゾ(小声
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