ACfAヤンデレ集 作:粗製のss好き
パチリと目が覚める。とりあえず、なんか色んな体液が混じり合ってぐちょぐちょになった寝台から降りた。ずきりと首筋の傷が疼いたので触れてみれば、医療パッドが貼られていた。他にも手首や喉元にもソレは貼られており、なんなら首輪もつけられていた。
「やっちまった」
頭を抱える。昨夜の記憶が如実に蘇ってしまったのである。
結局、俺とリリウムはやるところまでやってしまった。それはもう言葉では表現してはならない程度には、お互い獣になっていたと思う。リンクスとして鍛え上げられた肉体を、お互い遺憾なく発揮していた。
特にリリウム嬢の体力とパワーは本当に凄まじいものがあった。普段抑えてる子って本気出すとやばいんだなって。情事の最中、無言で首輪をつけてきたときはマジでぶっ飛んでると思った。悪い気はしなかったが。
「あーこれはひどいな」
ベッドを見返せば、案の定筆舌に尽くしがたい惨状が広がっていた。昨日の成果である。とはいえいかにも高級そうな寝具を汚したことに、軽く罪悪感を覚える。どうすればここまで激しく汚せるのか。臭いも酷いし。たぶんもう使い物にはならないだろう。
「ん? そういえばリリウムは」
周囲を見渡せば、この場に彼女がいない事を知る。ともするとほんの少し不安になって気づけば、俺は無意識の内に彼女を探し始めていた。俺もダメだな、こりゃあ。
「手紙?」
ベッドの隣に置かれたテーブルの上に、ソレはぽつんと置かれていた。中には着替えと朝食を持ってくる旨が書かれており、状況的にリリウムが執筆したものであると分かる。手書きとはまた古風な。
「……ふぅ」
ひとまず安心した。そんでもって腹が減った。シャワーも浴びたい。よく考えれば、昨日は結局何も食べてないんだったな。それであれだけ動けたんだから俺もまだまだ現役という事なのだろう、色んな意味で。
「……王小龍にはなんて説明しようか」
冷静になると、今度は現実的な不安が現れた。思い浮かぶのは冷たい眼差しで俺を見据える梟親父の顔。クッソ怖い。
「何を言っても怒るだろうなぁ」
意外かもしれないが、あの髭を蓄えた陰気な老人もまた、リリウムを娘のように大切に思っている。彼の立場上、それが表に現れる事は
「お待たせしました、ダイキ様」
リリウム嬢が衣服とタオルを両手に部屋に入ってきた。どうやら彼女は身を清めた後のようで、ほんのわずかだが髪が濡れていた。こうしてみるとやっぱり別嬪さんだ。
「おう、待ってないよ。おはようさん」
「……はい、おはようございます」
何故か目を背けて、上気した顔のまま挨拶を返すリリウム嬢。はて。
「顔が赤いけど、どうした?」
「いえ、その、ダイキ様。……どうか服をお召しになって下さいませ」
「っあ」
言われて気づいた。現在の俺、下着以外の衣服を何も纏ってなかった事に。
「す、すまん! 見苦しいもの見せたな!!」
「と、とんでもありません! 見苦しいだなんて! ダイキ様の肢体は立派でございます!」
「え?」
「……あ」
墓穴を掘り合う男女。暫くの間、お互い目を合わせて会話が出来なかったという。
★
「下世話な話してもいい?」
「構いません」
シャワーを浴びてすっきりして、ほとぼりが冷めた頃に共に朝食をとった俺とリリウム嬢。因みに朝食はオムレツだった。卵料理とか久しぶりに食ったけど、すっげぇうまかったです。
今日の仕事は午後からという事で、少しばかり時間を持て余した俺はリリウムの提案でリラクゼーションルームで日向ぼっこしていた、もちろん一緒に。室内で日向ぼっこというのも不思議だが、何もおかしな話ではない。リアルと遜色ない自然の映像と気温調整、BFFの変態技術って奴だ。
「今朝俺の裸見て赤面してたけどさ、あれ今更じゃない?」
「……それは」
答えに窮したらしく、リリウムは目を閉じて押し黙る。こうして仕草や態度で感情を表現するようになった彼女を見ると、出会った当初のお人形さんと形容するのが一番適切だった頃の彼女を知る俺としては、何と言うか感慨深い気持ちになる。ホント、随分と愛らしくなったものだ。
そんな風に見ていると、リリウム嬢は何か思いついたのか僅かに微笑みを湛える。可愛い。
「リリウムは理性の歯止めが少々利きません。ですから、あのまま直視していたらきっとまた獣性を発露していたでしょう。それでもよかったのであれば、今すぐにでも始めますが」
口調柔らかに話す彼女は、言葉とは裏腹に卑しくその口元を歪めて挑発を始めた。このギャップ差が凄まじい。
朝食の時からそうだったが、普段は昔と変わらずに清廉な雰囲気を身に纏う癖して、会話の節々でいっそ怖くなるくらい淫靡になる。そしてこの彼女の変貌に戸惑いつつも、心のどこかではドキドキしてる自分がいる事に驚く。変態なのは俺もか。
「いや、よしておこう。やるんならせめて今夜だ」
「同意します。責務を放棄するわけには参りません、お互いに」
「そうだな」
昨夜の出来事で吹っ切れた影響だろうか、今のリリウム嬢には余裕がある。だからか、彼女の隣にいるだけで強い安心感を得る。安直な言い方をすれば、凄絶な成長を遂げたのだろう。男という身の上としては少々複雑な心境だが、喜ばしく思う。
「ああ、ですが。昨夜のような情交は自重しようと思います」
穏やかな顔つきだった。一方俺の方はと言うと、意外な言葉に間抜け面を晒していた。
「いいのか?」
尋ねると、リリウムはその細くしなやかな指を俺の指と絡めてくる。こそばゆくも温かい。握り返すと、呼応するように彼女も力いっぱい握りしめた。
「……ええ。ダイキ様のおかげです」
「俺の? 何かしたっけ?」
「言葉にするのは無粋でしょう」
きっぱりとした物言いだった。恐らく、無理に問い詰めれば彼女は話してくれるのだろう。だが、そうするとリリウムの言う通り無粋な結果になるのだと思う。だから俺もお茶を濁すことにした。
「そういうものか?」
「そういうものです」
静かに、しかし目一杯の笑顔で答えるリリウム。不覚にもときめいてしまった。すると彼女がくすりと笑って次にこう言った。
「でも、いつかまた乾くのだと思います。その時はきっと、受け入れてくださいね」
「お安い御用さ」
少なくとも首にはめられた
「さて、そろそろ行くわ」
時刻は既に15時。ブリーフィングまであと2時間以上あるが、機体の調整や準備はしっかり行っておきたい。俺が立ち上がると、リリウムは握っていた手を名残惜しそうに放した。
「今夜また会おう」
「ええ、そのつもりです」
存外強かっただった。でも、それなら俺も安心できる。だから心置きなくリラクゼーションルームを後にしようとすると―――
「お待ちください」
リリウム嬢に腕を引かれたと思ったら、その勢いのまま唇が合わさった。昨夜のように貪り尽くすようなキスではない。ほんの僅か、一秒にも満たない接触だった。
「え?」
突然の出来事に混乱している俺の前で、彼女は満足そうな表情のまま自然な所作で一礼した。
「行ってらっしゃいませ、ダイキ様」
こくりと、首を小さく傾げながら悪戯っぽく微笑む彼女を見て、してやられたと、そう感じた。だから俺は負けじと声を低く唸らせながら、
「よし、今日の夜は覚悟しておけよ」
と、負け犬染みた発言の後に退出する。するとリリウムは背中越しに告げる。
「はい、お待ちしております」
顔は見えなかったが、きっとそれは、心底綺麗な笑顔だったのだろう。
はい、という事でリリウム編は一先ず終わりです。
いかがでしたか?
やっぱりハッピーエンドが一番やなって。
でももっと甘々でドロドロなラブコメ書きたいゾ……
まさか評価の欄が赤くなるとは……。
やはり皆さんヤンデレが好きなんですかね? それともリンクスやレイブンが未だに多いってことなんでしょうか。
何であれ、同志が多いと嬉しい限りです!
因みに自分は依存系のヤンデレが一番好きです(隙自語