ACfAヤンデレ集 作:粗製のss好き
メイ・グリンフィールド。カラードランク19、重量二脚ネクスト『メリーゲート』を駆るGA社所属の女性リンクスである。
GA特有の頑強な構造を持つ彼女の乗機は、彼女の安定した技量も合わさりカラード屈指の支援機として名を馳せていた。またメイ自身、実直かつ現実的な考えの持ち主であり、奇抜な人間集うカラードの中でも特に常識人として知られている。
したがって、現代日本の常識が染みついた俺ことダイキ・イシザキと波長が合いやすい人物でもあると言えた。いやホント、マジでいい人です。
「うっす。メイ、今日はよろしくな」
俺が属するBFFはGA社の傘下という事もあり、彼女と作戦を共にすることが多い。加えて俺が扱うネクスト『ストレンジャー』は中遠距離に適した機体構成をしているから、俺の前で壁として立ち回る彼女の『メリーゲート』とはかなり相性が良い。
「ええ、よろしく」
手を差し出してくるメイ。俺もそれに応じて手を握った。
「しかしまたランドクラブ襲撃の依頼か、飽きないねぇ。GAもインテリオル・ユニオンも」
今回の依頼主はGA、鹵獲されたAFを破壊してほしいとの事。オニール君から詳細を聞いたときは「またか」だなんて、思わず失笑してしまったくらいである。手間をかけて鹵獲しようとするのだから、それだけ信頼性のある兵器って事なのかもしれないが。
「きっとお偉方も考えがあっての事でしょう。知らないけどね」
「珍しい、お前が皮肉だなんて」
「いい加減飽き飽きしてるって事よ」
「なるほどな」
雑談もそこそこに、出撃の準備を進める。パイロットスーツやヘルメットの装着を始める。一応異性という事もあって、着替えの際にはなるべく視界の中に入れないようにするが、仮に目に入ったとしても特に気にする事はないだろう。戦場を前にして発情するほど、お互い間抜けではないという事だ。まぁでも、エチケットやマナーを忘れる程野蛮人でもない訳で。
「それじゃあ、背中は任せたわ」
「おう」
足取りは軽い。いつも通りに仕事をこなして、いつも通りに帰るだけだ。
★
『お疲れ様。相変わらずの狙撃ね』
「そちらこそ。いい立ち回りだった。アンタと組むと仕事がやり易くて助かるよ」
ランドクラブとその他ノーマルを沈めて、ブースターを吹かして地上を滑空するネクストが二機。俺とメイである。指定されたポイントまでは自力で向かい、そこでヘリで回収されるというのがネクストの基本的な帰還方法である。これは居住区をコジマ粒子で汚染しないための配慮である。
したがって、回収されるまでは通信で駄弁る余裕がある。無論、周囲の索敵は怠らないのだが。
『やっぱり相性が良いみたいね、私たち』
「はは、違いない」
メイの軽口に応える。相性云々は彼女の口癖なのかもしれない。ミッションが終わるたびに聞いている気がする。
『ねぇ。この後時間あるかしら?』
「ん? 今日は特に何もないが」
メイの唐突な質問にこの後に何か予定がなかったか思考を巡らすが、特に何もないことを悟る。そうか、今日は珍しく2件しか依頼がなかったんだったな。
『ちょっと付き合ってもらってもいいかしら。いいお店見つけたの』
「それはサシでの飲みって事だよな?」
『ええ。ダメかしら?』
一か月前の俺だったら喜んで彼女の誘いに応じていただろう。しかし今の俺にはリリウム・ウォルコットという特定の女性がいる。安易な考えで行動するのは厳に慎むべき立場だ。とはいえ、何も知らないメイに対していきなり態度を変えるのもまた違うように思う。
「おっけ、ただちょっと上司に報告しなきゃならん事がある。それからでいいか?」
したがって、まずはリリウムに話を通すべきと考えた。場合によってはやばい未来もあり得るかもしれないが。独占欲強そうだからな、あいつ。
『上司? ああ、王小龍の事かしら。貴方ほどの人が彼の言いなりというのも、何だか不思議な話ね』
そしてうまい具合に勘違いしてくれたメイさん。なんというか本当に申し訳ない気持ちになる、すまん。
「それは買いかぶりってなもんだ。それに、あの人もあの人なりに苦労してるからさ。許してやってくれ」
『……そう。貴方がそういうなら』
渋々といった様子が声音から伝わってくる。同じGAグループ内人間にさえ、こうまで王小龍は警戒されている。とすれば、それはもう肩身が狭い思いをしている事だろう。ホント、つくづく陰謀屋ってのは大変だな。俺には到底無理な役割だ。
暫くした後。レーダーによるシグナルから友軍機が近づいてくることに気づく。速度的に回収用のヘリであるのは間違いない。
「お、そろそろヘリが来そうだ。とりあえず後で連絡するよ」
『ええ。楽しみにしてる』
★
メンテナンスが終わりネクストから降りた後、リリウム嬢と連絡するためにすぐさま俺は携帯端末を操作する。するとワンコールで繋がった。はや。
『はい。任務ご苦労様でした、ダイキ様』
「ありがとう」
すぐさま労いの言葉が出てくるあたり、俺のスケジュールを全部把握してるんだろうなぁ。別に隠すことでもないから構わないのだが、その情報はどこから仕入れてるのだろうか。いつの日かのメノ・ルーの件然り、普通に気になるところである。
「ところでリリウムさん、ちょっとお願いがあってですね」
『はい』
「えっと、今日ちょっと飲み会に誘われておりまして」
『はい』
ただの返事が何故か怖く感じる。それでもしっかり伝えようとすると———
「その相手が……」
『メイ・グリンフィールド、でしょうか?』
リリウムが俺の発言に被せるように、その名前を告げた。いつも通りの抑揚のない声。ただ、心なしか少し冷たいニュアンスを感じる。そして恐らく気のせいではないのだろう。
「ああ。ダメかな? 彼女には世話になってる」
『……彼女なら、構いません。私もあの方には何度か相談を聞いて頂いたので』
意外にも好感触な返答に驚く。個人的には助かるが。というかリリウム嬢とメイの間に交友関係があったことにも驚きである。
「悪いな。埋め合わせは必ずするよ」
『もちろんです。明日、楽しみにしておりますね』
「はは。お手柔らかに」
最後にそう告げてから通話を切る。そしてメールでメイに『飲みに行けるぜ』と送ると、数秒後に『待ってるわ』とすぐに返事が来た。お前も早いな。
「さて、それじゃあ行きますかね」
荷物を纏めてロッカールームから出る。日本酒が飲める店だったらいいなぁ。
今回はメイさんの導入回。
メイ編はヤンデレ成分少な目になるかもしれません……