篠ノ之束になったので配信しながらアベンジする   作:BBBs

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移住

日本の女子高生が高校を辞めてからのアメリカに移住してS.H.I.E.L.D.に就職。

字面にすると相当おかしなものだ、狙ってやらないと同じことなど起きないのではないだろうか。

まあやろうと思っても相当な才媛で勧誘されなければ門前払いだろうが。

そんなどうでもいいことを考えながら持ってきたのはキャリーケース一つだけ、必要なものだけを押し込めてアメリカに降り立つ。

空港を出れば出迎えが現れた。

 

「初めまして、シノノノさん。 S.H.I.E.L.D.からの迎えよ、荷物は後ろに、あなたは前に乗って」

 

目の前に黒のいかした車が横付けされ、ウィンドウが開いて声を掛けられた。

もちろん声を掛けてきた人もいかした美女だ。

言われた通りに荷物を後ろに乗せ、助手席に乗り込む。

 

「初めまして、ロマノフさん」

「……私の名前をどこで?」

 

表情を変えずに尋ねてくる、普通S.H.I.E.L.D.職員のリストなんて外部からアクセスできない。

確かにナターシャさんも載っているだろうが、文字通り一般職員と同じような内容でしかない。

 

「調べました」

 

実際見たのはニューヨーク侵攻の時で、直接対面したのは今日が初めて。

実際齟齬の解消のため職員リストにアクセスして閲覧済み、流石に深い所には触っていないのでS.H.I.E.L.D.トップクラスのエリートエージェントである事は知らない態でいる。

まあ職員リストにアクセスした時点でやばいのは当然だが、向こうもこっちを調べたんだから文句なんて言わせねぇ。

 

「……そう」

 

短い問答の後に発車、身体に掛かる慣性を感じながらナターシャさんの横顔を見る。

 

「……私の顔に何かついてる?」

「いいえ、綺麗な顔だなと」

「そう? ありがとう。 あなたも可愛らしい顔をしているわよ」

「よく言われます」

 

軽く笑みを作っているが、内心警戒しているだろうな。

あのニックからは迎えをよこすとしか聞いてないから、普通は誰が迎えにくるのか予想もつかないだろう。

リストを全て閲覧して覚えた、或いはニックとナターシャさんのやりとりを盗み聴いたかと言った可能性を思いつく。

なんにせよ警戒に値するだろう、私だったら警戒する。

 

「調べたと言ったけど、どうやって?」

「普通にハッキングで入手しましたよ」

 

私からすればただの職員リスト程度なら、頑張らなくても入手出来るセキュリティでしかない。

一応フォローしておくとそこらの企業のセキュリティよりもお堅い、もっと重要な機密とかになれば国家機密以上とも言える守りを備えている。

J.A.R.V.I.S.がS.H.I.E.L.D.の機密を探るのに時間が掛かるほどの堅固さがある。

流石に情報の重要度はそこまで高くないので、一般職員リストは簡単に手に入れられた。

 

「ハッキングもこなすなんて、流石トニー・スターク並の頭脳と言ったところね」

「おだてても何も出ませんよ」

 

実際S.H.I.E.L.D.には何も渡す気はない、実はヒドラなんていなくて兵器開発なんてしていないクリーンな組織とかでなければ技術なんて見せることすらしたくない。

まあナターシャさんが誰にも渡さないと約束してくれれば、うさ耳センサーくらいなら渡してもいいが。

 

「それで、あの白いスーツを作ったのは本当にあなたなの?」

「ええ、設備はスタークさんに借りましたが設計から製造まで私が自分でしましたよ」

 

社長だったらそこまで疑われないが、流石に実績も何もない小娘がいきなりアイアンマンに匹敵するスーツを作りました、は疑われても仕方がない。

 

「信じられないのはわかりますが、あれは実際に私が作ったものです」

「確かにそれも有るけど、トニー・スタークがあれは自分が作ったと言っていたから確かめたいのよ」

 

ワッツ!? 社長、横取りはあきまへんでぇ……。

 

「……スタークさんは関わらせる気はないようですね」

「残念でしょうけど私もトニー・スタークに賛成よ、子供がアベンジャーズに参加するのは反対」

 

まあそうやろなぁ、少女兵じみた事に賛成するアベンジャーズメンバーは居ないだろうな。

 

「ニック・フューリーはそうでもないようですが」

「そうね」

 

あのおっさんは使えるものは使う主義だろうし、宇宙の脅威も知っているからなぁ。

ニューヨーク襲撃では核ミサを拒否ってたが、本当にどうしようもないなら許容もするだろう。

となると私の事はいつでも戦力として使えるように手元に置いておき、ジリ貧になるようなら投入すると言った感じか?

しかしそれだと戦力の逐次投入の悪手になるし、今は見定めるお試し期間ってところだろう。

合格であればアベンジャーズに加入させるよう働きかけるだろうし、不合格ならS.H.I.E.L.D.エージェントのように扱うかもしれない。

 

「私としては今すぐにでも認めて欲しいくらいですよ、実際のところ戦力を持て余している時期は疾うに過ぎていますし」

「それはどういう意味?」

「ニューヨーク襲撃の時、奴らが現れたワームホールの先に飛び込んだのは見ていましたよね?」

「ええ、ワームホールを閉じる用意をしていたわ」

「あの穴の先、何が居たと思います?」

 

その問いの数秒後、ナターシャさんの眉間のシワが寄った。

 

「ご想像の通り、馬鹿みたいな数の奴らが居ました。 悲しい事にスタークさんと私は奴らを撃退できないという見解に至りまして」

「確かに彼からその話は聞いている、でも猶予はまだあると言っていたわ」

 

そう言えばあの光景は社長しか知らなかったな。

ワームホールの向こうに奴らが沢山居たが、核でなぎ払ったんだから何とかなるみたいなことを思われそうだ。

 

「猶予があってもどうにもならないと思いますよ」

 

ほんと内憂外患が過ぎるマーベル時空、常に詰み一歩手前とかおかしいやん?

 

「それをどうにかするのが我々S.H.I.E.L.D.とアベンジャーズよ」

「ええ、全くもってその通り」

 

S.H.I.E.L.D.はともかく、アベンジャーズが何とかしないといけないのは事実。

むしろヒドラに乗っ取られたS.H.I.E.L.D.をアベンジャーズメンバーがなんとかするまである。

こんなんじゃキャップが組織を不審がるのもわかるし、顛末を知ってる身としては組織という集団に頼ることができない。

頼れるのは社長の資金とアベンジャーズだけだ!

 

 

 

 

 

他愛の無い考えと会話をしながら、ナターシャさんのドライブのもとS.H.I.E.L.D.の最高司令部であるトリスケリオンに到着。

ポトマック川の中頃にあるルーズベルト島に建てられた建物、メインである建物は円柱形でなかなか洒落ている。

荷物を降ろし車から降りてトリスケリオンを見上げていたらナターシャさんの声。

視線を下ろした時にはバレーパーキングの係員が車の運転席に乗り込んでいるところだった。

 

「駐車場はどこだったかな」

 

そう呟いたのが耳に入り、運転席を覗いてみたらサングラスをかけた白髪の老人が乗っていた。

 

「───」

 

絶句していれば車は発進し、遠く離れていくのを見送ってしまった。

 

「どうかした?」

 

車が走り去った方向を唖然としてみていれば、ナターシャさんから声が掛かった。

 

「……いえ、今の人……」

「彼? S.H.I.E.L.D.に長年勤めているバレーパーキングの係員よ」

「えぇ……」

 

いや、確かにあの人がいてもおかしくは無い……。

しかしこんなところで出会うなんて予想だにしていなかった。

驚きすぎて動けなかった、出会えるとわかっていれば握手でもして貰ったのに……。

 

「……知り合い?」

「……いえ」

 

二人して見送る、まあここで勤めているならまたいつか出会えるだろう。

その時に握手でもして貰えばいい、気持ちを切り替えてナターシャさんに言う。

 

「別に何かあるわけじゃ無いです、行きましょう」

「……こっちよ」

 

ナターシャさんの案内のもと、トリスケリオン内部へと入っていく。

S.H.I.E.L.D.のエンブレムが中央に置かれた広々としたエントランスからエレベーターへ。

管理部や資料部に赴いて制服受け取りや職員リストへの登録やらを経て、トリスケリオン本部の訓練施設へと移動する。

 

「ところで私の宿泊先はどこですか?」

「あとで案内するわ」

 

それなりの広さでいくつかの部屋に分かれ、トレーニングマシンなどが置いてあるのが見える。

 

「まずはあなたの身体能力を確かめるわ、トレーニングスケジュールを考えないと」

 

そう言われて更衣室で着替えさせられた、黒いシャツとパンツ。

伸縮性があり胸以外は余裕がある。

 

「体力、筋力、反応速度、一通り計らせてもらうわ」

 

別に疲れているわけじゃ無いけど、翌日にでもしてほしいもんだ。

 

「了解」

 

ランク1の新米職員は高ランクエージェントの命令に逆らえないので、粛々とトレーニングマシンを使用する。

長距離から短距離までの走れた距離や出せた速度、腕や足の筋力や点いた明かりを追う反応速度の測定などなど。

無駄に力を入れて汗を流しぜえぜえと息を切らす演技をしながら、女子高生の年齢にしては結構高い数字に調整して記録させる。

演技する理由? ヒドラの腹の中で全力の記録なんて残す必要なんてないです。

 

「……それなりに鍛えているようね」

「……ええ、それなりに」

「いいわ、測定は終わりよ」

 

そう言われて、シャワーやら着替えやらで身だしなみを整えて更衣室から出ればナターシャさんが待っていた。

 

「これ、職員が覚えておく必要があるやつ」

 

タブレットを差し出され、受け取って操作するとS.H.I.E.L.D.のロゴマークが表示され消えたらメニュー画面が表示された。

いわゆる教科書のようなもの、これを覚えて来いってことか。

 

「それじゃあ宿舎に案内するわ」

 

 

 

 

 

案内されたのはトリスケリオンの客室だった。

広々とした部屋で、なかなかいい値段がしそうな調度品で飾られている。

 

「……もっと簡素な部屋を想像してたんですが」

 

間違いなく来賓をもてなすための部屋だろう。

高級ホテルのいい部屋と言ってもおかしくは無い。

 

「あなたの希望を叶えた結果よ」

 

ベッドとパソコンとネットがある部屋としか言ってないんだよなぁ……。

 

「私の希望とニックの希望を満たした部屋がこの部屋ですか」

「そういうこと」

 

監視下に置いときたいのはわかるがね、別に豪華な部屋じゃなくてもいいだろうに。

 

「今日はもう休んでいいわよ、明日から本格的な訓練に入るから」

「わかりました」

「そのタブレットにあなたに必要な設備や間取りが入ってるから、わからなくなったらそれで確認してちょうだい」

 

言うべきことを言ってスタスタとナターシャさんが去っていった。

 

「………」

 

とりあえず室内を物色、一泊数十万はしそうな部屋でお目当てのものを発見。

それはデスクトップパソコン、これが無いともうやってけないよ。

よくよく見なくても市販の物、先進的技術を持つS.H.I.E.L.D.で扱われているようなものじゃ無い。

触らせたくねぇのかな、まあ今まで使ってたパソコンよりもはるかに高性能だから良しとしておく。

バッグからメモリを取り出してポートに差し込んでちーちゃんを入れる。

 

「……はいはい、当然だよねぇ」

 

中身を精査すると、巧妙に隠されているがスパイウェアが仕込まれている。

全部排除してもいいが、別に何かの開発データとか入れる気はさらさら無いのでそのままにしておく。

配信メインで使う予定だから情報収集されても痛くない。

いや、パスワード取られたら嫌だな、こっちは見えないようにしておこう。

 

 

 

 

 

そのままパソコンにかじりついてセッティングとカスタマイズと仕込み、それが終われば室内を歩き回る。

そのままではわからないのでうさ耳を取り出して装着。

 

「まあそうだよねぇ」

 

センサーを働かせれば室内のいたるところに埋め込まれた監視カメラを検知、それも本体は1センチ以下の極小サイズ。

死角を徹底的に潰す配置、室内のどこにいても確実に捉える。

レンズの穴も小さすぎる上、壁や天井それぞれの模様に合わせているために凝視したとしても気が付かない設置具合。

見られて喜ぶ性癖なんぞ持ち合わせていないがこれも放置でいい。

問題なのは浴室、外国で基本の3点ユニットの浴室内にも死角なしと言わんばかりにカメラが埋め込んである。

作っててよかったうさ耳センサー、これが無ければいろいろさらけ出した生活を送ることになっていただろう。

せめてトイレだけでも死角にしないと、気を休めることすらできん。

流石にカメラを壊すのは最終手段にして、まずはニックと交渉しなければ……。

リビングに戻りタブレットを操作してトリスケリオンの階層構造を見るが、間取りの一部が表示されていない。

当然あるはずの長官室や世界安全保障委員会の部屋も見当たらない。

ナターシャさんが言っていた“必要な設備や間取り”と言うのはこう言うことか、情報閲覧制限がかけられているために見られないのだろう。

 

「……しゃーない」

 

パソコンの前に戻り、タブレットとパソコンをケーブルで繋ぐ。

バックから別のメモリを取り出して差し込みキーボードを打つ、スパイウェアを黙らせてからプログラムを立ち上げてタブレットにアクセスして情報を改ざんする。

左手でタブレット、右手でキーボード、別々に操作してクラッキングからの必要な情報を書き換える、そうすれば情報閲覧制限が外れてトリスケリオンの完全な間取りが表示される。

タブレット画面を指先でスワイプ、素早く全部の間取りを覚えて閉じ、キーボードを操作して改ざん前の情報に戻す。

 

「ダメだなこりゃ」

 

長官室まで行けねぇ、エレベーターは拒否られるし階段を使おうにも施錠されていてセキュリティアクセスを要求される。

入ったばかりの新米が長官に会いたいですと言っても、普通は色々な理由で会えないだろう。

ニックに言うよりナターシャさんに頼み込んだ方が早そうだ。

信用されてないし怪しまれているのはわかるが、こうも露骨だと面倒くさい。

こりゃ社長に食い下がっていたほうがマシだったか。

 

 

 

 

 

翌日、風呂に入らずトイレにもいかないでタブレットの中身を全部覚えて一晩を過ごす。

そうして朝迎えに来たナターシャさんに向かって一言。

 

「ロマノフさん、部屋の監視カメラはなんとかなりませんか?」

「……よく分かったわね」

「別にリビングとかは我慢できるんですよ、でもトイレやバスルームまで覗かれるのは嫌なんですよ」

「だからってタブレットをクラッキングするのは感心しないわね」

「そうさせたのはニックですよ、二度とS.H.I.E.L.D.の機材にハッキングを仕掛けるなと言うなら従います。 なのでバスルームのカメラだけ取り外すようニックに言ってもらえませんか?」

 

その言葉に悩むような仕草をしたナターシャさん、携帯電話を取り出して電話し始める。

 

「……ニック、彼女が監視カメラを取り外してほしいと言っているんだけど」

 

まあそう言う仕込みかもしれない、監視として裸見られるくらいならニックの策に乗ってやろう。

 

「……ええ、わかった」

 

パチリと電話を閉じ、私に視線を送るナターシャさん。

 

「まずは行動で示してから、だそうよ」

「そうですか、じゃあ壊しますね」

 

部屋の中に戻ってテーブルの上に置いていたうさ耳センサーを着け、その隣に置いていた工具箱からプラスドライバーを取り出して浴室へ。

 

「ちょっと、本気? と言うかなにそれ?」

「見ての通りうさ耳ですが? あと私を怪しんでいるのは理解していますが、ここまでプライバシーが無いのならこちらも相応の手段を取りますよ」

 

ナターシャさんに止められるも、振り払って浴室のドアノブに手をかけると。

 

「……もう一度掛け合ってみるから、少しだけ待ってくれない?」

「いいですけど、ダメなら壊しますから」

 

はぁ、とため息をついたナターシャさんはもう一度携帯を取り出して掛け始める。

 

「……見てたでしょ、この子本気で壊すつもりよ? ……ええ、それはわかるけど……」

 

聞いた内容だとニックは譲る気はないようだ。

なので浴室に入って、カメラがある位置にドライバーを根元まで一気に差し込んで破壊する。

ドスッ、ドスッ、ドスッとリズムよく突き刺してカメラを破壊していく。

 

「……ニック、御愁傷様といったほうがいいかしら?」

「いい教訓になったのでは? 不信も度が過ぎるとロクな目に遭わないとよくわかる例になりましたよ」

 

都合20回ほど浴室の壁に穴を開ける、これだけカメラを破壊してもトイレが見えなくなるだけ。

 

「私は優しいですからね、お風呂のカメラはバスタオルを巻けばいいだけなので壊さないでおいてあげます」

 

それを聞いたナターシャさんは肩をすくめるだけだった。

 




バレーパーキング(車移動)の係員は当然の権利でコズミック・ビーイング。
ちなみにただのカメオ出演ではなくちゃんとした公式キャラクターなんで気になった人は「ウォッチャー・インフォーマント」で調べよう
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