篠ノ之束になったので配信しながらアベンジする   作:BBBs

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配信者3

「メリークリスマース、世紀の大サンタの束さんだよー」

 

赤いサンタ帽を被っての挨拶から始まる配信。

ひらひらと手をカメラに向け振るとコメントが流れ始めた。

 

『こんばんはー』『ん?』『ところで世紀の大サンタって何だよ(マジレス)』『タッバのクリスマスプレゼントだ!』『ちょっとまってなんやこれ』『アニメっぽくてええやん』『八歳と九歳と十歳のときと、十二歳と十三歳のときも僕はずっと! 待ってた!』『生で動画流すのやめてくりー』『自分の3Dモデル作ったんか』『ジョナサン帰れや!』『クリスマスプレゼントだろ!』『なにを……』

 

「リスナーの皆さん、聖なる夜に動画配信見てるなんて彼女とか……あっ、なんでも無いよ」

 

『に、二次元に彼女が居るから……』『彼女などいらぬ!』『束ちゃんでハードル上がりすぎてんよ〜』『周りにいい女がいないだけだし』

 

「二次元の方にも選択肢はある! さて、今日は技術雑談かなぁ、あと社長」

 

『ついで扱いされる生死不明の社長』『草生える』『挑発しといてあっさり襲撃とか笑っちゃうんだよね』『草』

 

リスナーの画面に映っているのは私をアニメ調にデフォルメ化した3Dモデル、頭にメカうさ耳を着けて青と白を基調としたエプロンドレスのあの姿。

当然胸元は閉じていて、胸の谷間は見えないようにしている。

 

「動画じゃないよー、モーションキャプチャーで動かしてんの、ほれ」

 

視聴者からは白い背景に自分の3Dモデルしか映っていない配信画面を切り替えて、いつもの配信へと切り替える。

一応室内の様子がバレないよう白の布を掛けた衝立を並べ、ほぼ真っ白にしか見えていない。

 

『ヌッ!』『ああ^〜、いいっすねぇ^〜』『うーん、でかい』『モーションキャプチャー????』『ノルマ達成』『なんもつけてないやん』『またまたご冗談を』

 

一見するとモーションキャプチャースーツなどつけていない黒シャツとパンツ、多くの人が想像するような機器は見当たらない。

 

「まあ大体の人は全身にセンサー貼ってあったりする黒いスーツを想像するだろうけどね」

 

キーボードとマウスでパソコンを操作、画面を左右に二分割。

左に3Dモデルを、右に通常の配信画面を表示したのを確認して5メートルほど離れる。

両腕を水平に広げて静止状態から二回転、バレエのダブル・ピルエットと言う水平回転を行う。

 

『ウッソだろwww』『どうなってんのこれ?』『どうやって動き感知してんだよこれ』

 

その動きに追従して、わずかに遅れて3Dモデルが同じ動きで回転する。

勿論3Dモデルに物理演算を仕込んでいるので、くるりと回った時にスカートが貫通なく綺麗に広がった。

 

「せっかく3Dモデル作ってみたから、どうせならモーションキャプチャーも作ってみようかなって思ってね」

 

その場で後方宙返りや側方宙返りをやってみせる、3Dモデルも破綻なく同じ動きを取る。

 

『ちょっと誰か説明してくれ!』『普通にすごくて草』『?????!!?』『技術的な説明されてわかるやついんのかよw』

 

「技術的って言っても、映像解析してるだけだよ」

 

今度は腕を前に突き出し、指を一本ずつ動かすと3Dモデルも同じように指が動く。

 

「普通に解析した映像からモーションをトラッキング、あとマッチムーブで合わせて正確性を底上げしてんの」

 

『?????』『なるほど、よくわからん』『そういうことかぁ!(わかってない)』『それにしたってマーカーなしでこれはすごいぞ』

 

「まあ光学式とのハイブリッドだし、こんくらいよゆーよゆー」

 

蹲み込んで腕立て伏せのポーズ、同時に床を木目の模様に変化させる。

 

「わかる? これわかる? このモデルのサイズ同じだけど、スーパーデフォルメとかの腕の長さが違うのでも補正して手が着くんだよ」

 

3Dモデルがきっちり手のひらが地面についている、変に浮いていたりしておらずに不自然さはない。

 

「マーカー無し調整無しのリアルタイムでこれ実現してるモーキャプ無いと思うよ、さすが世紀の大天才」

 

『粋がってるの草』『素直にすごいと思うが台無しだぞ』『草生えるwwwww』『ドヤ顔かわええやん』『草』『可愛すぎでしょどうしてくれんのこれ』

 

「サイズも小さめに作ってんのよ」

 

起き上がってカメラの撮影範囲外に置いているモーションキャプチャーの機材を引っ張ってくる。

 

「ほれ、これ一つでモーキャプができるようにしてんだよ」

 

見えるようにパソコンのカメラの前に持ってくる。

キャスター付きの50リットル程度の長方形の蓋つきゴミ箱、その中にカメラやらセンサーやらを収納している。

 

『圧倒的手作り感』『このサイズで????』『予想以上に小さかった』『まじもんならスゲェな』『DIYかな?』

 

「基本パソコンの構成そのまま使っててね、その上にカメラとか色々載っけてるんだよ」

 

ゴミ箱の蓋を開けて、パソコンのカメラを手に取って中身を映す。

中には基盤などがそのまま入っており、それぞれを繋ぐ配線が詰められている。

側面にも穴を開けていて、そこから映像解析用のカメラレンズを覗かせている。

 

「こういうのって基本ハードウェアの性能が重視されがちだけど、ソフトウェアをしっかり効率化すればこんだけやれるんだよね」

 

実のところ機器そのものは全て市販のものでこのモーションキャプチャー機器のソフトウェアは、一部を除いてパソコンのOSなどをそのまま利用している。

ただそのままでは想定した性能に届かないのでソフトウェアに手を加えた。

具体的には映像解析関係、容量を抑えつつ効率的なソースコードを作成。

ISのソフトウェアに比べれば、月とすっぽんレベルの差があるので苦戦などしようもない。

超高性能AIであるちーちゃんもいるので、不具合修正もあっという間に終わっての実用化。

 

『マジだったらすごいやん』

 

ちーちゃんの時もそうだけど、私が実際に作成したと信じていない層は一定数いる。

もちろん信じてもらう必要はない、信じてもらったところで何かが変わることもないだろうし。

モーションキャプチャー機材を元の位置に戻して、パソコンの前に戻る。

 

「せっかくだし今日は分割画面でやろっか」

 

左に3Dモデル、右に現実の配信を載せる。

 

「フェイストラッキングも作ったんだよね、こんな感じにしてみた」

 

モニターの横に置いていた機器、市販の長方形のペン立ての中に分解したビデオカメラを押し込んで作ったフェイストラッカーをパソコンのカメラに映す。

配線はパソコンとモーションキャプチャー機器に繋がっている。

 

「適用するなら顔もそれなりに作り込まないとダメだけど」

 

目の周りだと視線の方向や瞳孔の大きさ、眉毛やまぶたの動き。

口周りは唇や舌から口角、連動して頬まで動かせる。

3Dモデルはアニメや漫画調なので鼻の穴までは作っていないが、作っていれば鼻の穴の大きさまで検知して動かせる。

 

「これ3Dモデルでやってるけど、イラストとかの2Dキャラクターでも動かせるんだよね」

 

もう一画面追加して三画面、左に3Dモデル、真ん中に現実、右に2Dイラストを表示。

3Dモデルと同じようにデフォルメされた私の2Dイラスト、それがフェイストラッキングで読み取った動きを設定した通りに模倣する。

現実と3Dと2D、それぞれサイズが違う顔の表情の移動量を適切な状態で落とし込む。

 

「作ってて思ったけど、ポリゴンキャラもイラストキャラもいずれ流行りそうだなぁ」

 

『すごいっちゃすごいけどどうだろ』『このレベルなら確かに流行りそう』『なんか知らんがこう言う技術見るとワクワクする』『個人じゃ無理じゃねこれ』『今北、なにやってんのこれ?』

 

「ハロハロー、なにやってるか字幕載せとくか」

 

画面左下に「モーションキャプチャー中」と書いて載せておく。

 

「続きだけど、ユーチューバーになりたいけど顔出ししたくないって人いるだろうしねぇ。 流石に版権キャラクターは怒られるからオリジナルでさ、それでやってる事はアニメと同じでただ声当てる人がモーションもやるってだけでね」

 

実のところユーチューバーと言う言葉が生まれる以前、2000年代中頃から3Dモデルでやっているユーチューバーっぽい人は存在する。

その頃は生配信は無く、何らかの主張などの動画を投稿するだけだったようだけど。

ただ技術的な問題で数年後に現れるだろう先駆けのキャラよりも動きが悪く、フレームレートも30を下回っていることもある。

いわゆるカクついた動きで、いかにも昔の3Dモデルという感じで粗いため今見る分には流石に厳しい。

 

「断言していいわ、もうちょっと技術が追いついたらどんどんポリゴンのキャラやイラスト系のバーチャルなユーチューバー出てきて流行るぞ」

 

『技術が追いついたら(追いついていないとは言っていない)』『この配信は未来から送られていた……?』『タッバは未来人だったのか』『ここが未来だ!』『確かにサブカルな日本なら流行りそう』

 

「個人でやるには正確なモーキャプは高いから、採算取れるって確信した企業が突っ込んでくるだろうね」

 

ちょっと調べたら個人で所有できそうなモーキャプキャプチャー機材は、ゲーム機の付属機器で1万円弱の値段。

個人所有で考えれば破格とも言えるが、残念ながら正確性には難がある。

正確性を求めれば室内設備の大掛かりな物となり、値段も数百万はするので本当の意味で道楽でもないと買おうと思う人は少ない金額だ。

 

『これ幾らぐらいしたん?』『千冬ちゃんもそうだけど、売り出したら売れそうだよな』『買えるのはせいぜいkinectくらいだなぁ』『たっけーな、モーションキャプチャー』『調べたら400万とか出るんだが』

 

「モーキャプは50万くらい、フェイストラッカーは15万くらいやね。 流石に小型の個人所有出来る奴よりも正確性は保証するよ」

 

この金額は市販機材購入費用であって、組み立て費用やソフトウェア開発費などは含んでいない。

 

『思ったより安いやん、どこ製なん?』『パチモン疑うレベルの安さ』『価格破壊待った無し!』『あの赤貧束ちゃんが何十万も使うなんて……!』

 

「赤貧言うな、ちゃんと給料貰っとるわい。 それとこれは篠ノ之束製、市販のモーキャプでやったんじゃないよ。 検索しても出ないから注意ね」

 

もし本物なら使いたいから売って欲しいと言う人が出てくるかもしれない。

流石に売らないが、調べて問題なさそうなら貸してあげる事はやぶさかではない。

そうなった場合勿論盗難やリバースエンジニアリング対策を施して、外側から中身までもうちょっと整えてから渡すことになるけど。

 

「もしかしたらこのフェイストラッカーとモーションキャプチャー使いたい人が居るかもしれないから、説明文にメルアド載せておくから使いたい人は送ってちょうだい、レンタル条件書いて返信するから」

 

『え、貸すのか』『使いどころが映画とかそこら辺でしか思いつかねぇ』『ユーチューバー限定?』

 

「いんや、映画で使いたいってのも良いし、ヴァーチャルなユーチューバーになりたいって人でも良いよ。 申し込むのは誰でもいいけど、ただ当然審査があるってだけ。 でもまぁ……、私の予言を現実の物とするためにヴァーチャルユーチューバーになりたい人を優先するかもね、なのでお便り待ってまーす」

 

手を振っておく、3Dも2Dも同じように手を振る。

 

「よし、問題なかったね。 お次は社長の話、ではなくとあるリスナーに一言言いたい」

 

『全員じゃなく?』『ん?』『言いたいこととはいったい……』『やっちまった奴でもいたか』

 

「いやさ、ニコの方に切り抜きあげてる人居るのよ、それについてちょっとね……」

 

『無断転載?』『確かにあったな』『見た見た』『あー、あれか?w』

 

「別に切り抜きを上げるなとか動画を消せとは言わんよ、たださぁ……何で胸の部分しか上げないわけ? 気になるのはわかってるけど、それしかないみたいで悲しいじゃん!」

 

雑談や工作画面で撮れ高無くて面白くないかもしれないが、胸の部分だけ切り抜かれるとかそれしかないみたいで嘆かわしいよ。

 

「何だよ5万再生ってよぉ! こちとら世紀の大天才やぞ! 胸より頭脳の方がすごいんやぞ!」

 

『草』『草』『草』『タバネちゃんカワイイヤッター!』『草生える』『まあそれはね?』『おっぱいだけですぃましぇん;』『草www』『本人いて余計に草』

 

「投稿者名乗り出るとか胸だけに良い度胸じゃねぇの、他の部分もあげねぇとゆるさねぇからな?」

 

『は?』『は?』『ちょっと待って! 今束ちゃんが何か言ったから静かにして!』『は?』『公式に切り抜き許可でて草』『は?』『わかりました他の部分もあげます』

 

「わかればいいのよ、ほんとたのむよー?」

 

 

 

 

 




【篠ノ之束】おっぱいとおしり集【公認】

2012/12/24まで。
おっぱいだけあげるなと怒られたのでおしりもつけました。



・ヴァーチャルYouTuber/VTuber
作中2012年だと影も形も無い、先駆者たる親分も2016年の11月末。
3Dモデルで配信はまだ厳しい現状、2Dを動かしてるlive2Dとかは既に存在してるが洗練されてないのでこっちもまだ厳しい。
と言うかオリ束さんの奴は2020年のものよりもお手軽で技術的に上、貸し出せば早めに出てくるかもしれない。
社長は2008年の時点でVRどころか接触操作可能なAR(拡張現実)を実用化済み、頭おかしいでほんま。

・給料
一応S.H.I.E.L.D.から貰っている、当然使い道も監視されている。
使い道は大体工作用、生活費はS.H.I.E.L.D.が出しているので趣味に使い込める。

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