「ハロハロ〜、世紀の大天才の束さんだよー」
『ハロハロー』『ハローハロー』『ハロハロー』
世界の裏では色々起こっているが私の周りでは特に何も起きず、2014年になってXデーが近くに迫ってきている。
出来ることは技術研究と配信位なので、いつもどおりに配信する。
「それじゃあ予告通りマイクラなんだけど……」
配信開始前に概要欄には自作MODの配布先URL、配信画面には借りたマイクラサーバーへのアクセスIPを表示すると、あっという間に規定数一杯になった。
「今日は皆さんに、ちょっと撃ち合いをして貰います」
10年ほど前に流行った小説や映画のセリフをパロって告げる。
『世界のキタノさん!?』『俺たちは中学生だったのか』『生 存 者 0 人』
「今から何すんのって人は概要欄のURLに説明あるから読んでね、それすら面倒な人のために超簡略化して説明すると、三人一組でパーティーを組み、徐々にマップの外から時間経過で迫ってくる窒息バリアから逃げながら、そこら中に置いてあるチェストの中から武器や防具や回復アイテムを集め、他のパーティーをぶっ倒して最後の1パーティーになったら勝ちというゲーム」
『ほー』『面白そうやん』『マイクラで本格FPSってwwww』『最大60人ってラグ凄そうだな』
結局の所、数年先で流行るであろうバトルロイヤルゲームを真似たMOD。
では未来に先んじたから先駆者かと言われれば違う、既にマイクラのバトロワ系MODは存在している。
少々方向性が違うが、系統としては同じ物。
説明にあたりスライドショーを用意、イラストも有ったほうがよりわかりやすいだろう。
「注意点としてシステムを結構改変してて、剣やツルハシなどの近接系武器はないよ。 武器の銃は性能が違う複数の種類を用意してて、それで撃ち合ってもらう。 最序盤の武器がない時や弾切れの時は素手で殴れるから、銃を手に入れてもエイムが下手な人は殴り倒されるかもしれないから注意しよう!」
銃を持って乱射しているスティーブが、別のスティーブに殴り倒されているイラストに切り替える。
「防具も改変してて、バニラだとダメージ軽減だけどこのMODの鎧は一定までのダメージ量を肩代わりするライフと同じ扱いね。 なので設定耐久値以上のダメージを受けると破損してダメージを肩代わりしてくれなくなります、ですが鎧自体は破損したからと言って消滅はせずに特定の回復アイテムで修復できます」
スライドを切り替え、撃たれながらも物陰に隠れて人参を食べるスティーブのイラスト。
「回復アイテムは即時に効果を発揮して種類は2つ、リンゴとにんじんね。 普通のリンゴとにんじんはハート2.5個分回復して、金のリンゴとにんじんは最大値まで回復します。 回復アイテムとして最上位でエンチャントされた金のリンゴがあってハートと鎧を全回復します、余談だけど金リンゴとテクスチャ似てるから迷ったけど他に良さそうなのがなかったんでエンチャント金リンゴにしてます。 当然ながら金の回復アイテムは普通のより出にくいし、エンチャント金リンゴは更に出にくいのでマップに10個落ちてれば多い方だね」
イラストをスライド、リンゴやにんじんは3秒、金の回復は5秒、エンチャント金リンゴは8秒と書いてて効果に応じて時間が掛かる事を示す。
「バニラの食べ物と一緒で食べきらないと効果が出ないのでしっかり食べきりましょう、もちろん食べている時は移動速度が遅くなって無防備なんで、回復される前に距離を詰めて倒したりするのもいいし、地形的に不利なら逃げて仕切り直してもいい。 他にも移動速度が1.3倍になってたり、ジャンプの高さが2ブロック分になってたり、爆発以外ではブロックを破壊できなくなってたりしてるんでそれを念頭に動きましょう」
バニラより速く走って駆け抜けるスティーブ、バニラの倍の高さに飛び上がるスティーブ、高所から落下してもダメージを受けないスティーブ、スティーブが投げたエンダーパールが爆発して遮蔽物や家を破壊するイラスト。
他にはブロックを置いたり拾ったりできないスティーブ、殴りと爆発以外ではノックバックしないスティーブ、倒されて泳ぎモーションでゆっくり移動するスティーブ、仲間のスティーブがダウンしたスティーブを撫でて5秒掛かって助け起こすイラスト。
知っておくべき変更点をイラストと口頭で説明しておく。
『別物過ぎてワロタwww』『マイクラの皮かぶったFPS……』『どうしちまったんだスティーブ!』『スティーブ、変わっちまったな』
「大体説明したから始めるかな」
管理者としてコマンドブロックを作動させ、バトロワを開始する。
画面中央部に10秒のカウントダウンが始まり、マップ端からプレイヤーたちを載せたエンダードラゴンがマップを横断するように飛んでくる。
『エンダードラゴン始めてみたがこんなんなんだ』『エンドラは輸送機だったのか……』『まさかエンダードラゴンが運ぶとは思わんかったwww』『エwンwドwラwwwwwwww』
「さぁ飛んだ飛んだ、物資は有限早い者勝ち。 マップ中央に近いほど強いアイテムが転がってるよ」
配信を聞いていたプレイヤーたちがマップ中央付近で10パーティーほどが飛び降りていく。
その姿はただ落下ではなく、頭を下にしてほぼ真下の急な角度で降りていく。
だが数人はエンダードラゴンから飛び降りた高さで落下せず静止していた、動こうとしているが手足が動くだけでその場に縫い付けられたように止まっている。
「おーっと、皆はこのプレイヤーがなんで止まってるかわかるかな?」
『ラグじゃね?』『ラグ』『切断だと消えるからラグ?』『ラグでも止まりっぱなしではないし切断?』
「ラグ? それとも切断? 残念! チーターでした! チート使っちゃったねぇ! 荒そうと思ってた? 無理なんだよなぁ」
『バカやっちゃったねぇ!』『殺せ、チーターだ』『まじでチーター?』
コメントもチーターで沸き立っている、中には疑っているリスナーも居たがアンチチートに引っかかった挙動しているので間違いない。
PvP、対人戦を全面に押し出している以上、ある程度の対策は必要だと考えた。
私は性善説を信じていないのでチートを使ってくる連中がいるだろうと想定し、現在出回っているチートツール全般を封殺するプラグインをサーバーに導入済み。
そして予想通りチーターが入ってきて、アンチチートに引っかかって晒された状態になった。
「はい、さようなら。 あんたらがやったことは犯罪だってことをちゃんと認識しときなよ? 通信も匿名じゃないからどこの誰でどこに住んでてどのプロバイダから繋げてるのか簡単にわかるんだからさ」
チーターたちをサーバーから締め出して、ブラックリストに登録。
生配信してる所にわざわざ入ってきたんだから出来心の初犯ではないだろう、まあ初犯だとしてもチートで乗り込んでくるあたり悪意ありと判断して完全に締め出しておく。
「私がゲーム会社の運営だったら見せしめで民事訴訟起こしてるところだよ、弁護士費用とか合わせて数百万は取れるだろうから舐めないほうがいいよ? それと、もしかしたらこのアンチチートを欲しい人がいるかも知れないから、概要欄のMOD配布先に置いとくのでダウンロードしてね」
『助かる鯖管いそうだな』『まじ防げるなら勲章ものですよ』『まあ升開発者といたちごっこだろうけど』『みせしめに訴えてみよ!』
そんなこんなでクソッタレなチーター共を追い出してゲームの中の戦場を見れば、残りパーティー数が15になっていた。
チーターを除けば19パーティー57人が戦ったり戦わなかったり、撃ち合いで負けて全滅したり、迫る安置外バリアから逃げようとして底なし渓谷にダイブしたり。
倒した相手の物資を漁るのに夢中になって安置外で窒息死したりと、どんどん数が減っていって最終的には最後の安置収縮が始まる前に安置外でパーティーが窒息死して安置内にいた別パーティーが優勝した。
どこか荘厳なBGMとともに、勝利パーティーにはデカデカと『CHAMPION』と表示されているだろう。
「最後戦ってないけどチャンピオンおめでとう! とくに賞品とかでないけど。 じゃあリプレイでも見てみるか」
私の画面ではさっきの試合のリプレイを表示していた。
マップを俯瞰で眺められて、生存者が点で表示されて次々と消えていく様子が見られた。
「このパーティーが別の意味でMVPだね」
ピックアップしたパーティーはマップ端に降り立った3人、他に降りたプレイヤーは居ないので潤沢な物資を集めるのに成功。
だが漁ることに夢中になりすぎて安置縮小に気が付かず、窒息バリアに飲み込まれた。
縮小の第一ウェーブではダメージは小さいので最短距離で駆け抜ければダウンせずに抜け出すことは出来る、しかし彼らに待ち受けていたのは奈落だった。
急勾配の小高い丘を登ってダッシュで飛び降りたら底なし渓谷、坂道のようになっていたために先が見えずに3人共勢いよく飛び降りたらそのまま落下死という結末。
3人がほぼ同時に横並びで飛び降りたのも芸術点が高く、華麗に死んでいったのはリスナーからも好評だった。
次の試合は私も参加、社長の通信回線じゃないのでping値は300msを超えてラグに見舞われた。
それでもなんとか戦ったが、配信してるのでゴースティングが発生したのか有利だった高台の家が三方向から攻められた。
撃ち合いで1パーティーを半壊させたが、別のパーティーから飛んできたエンダーパールが家をぶっ壊しつつパーティー全体がダメージを受け、詰められて捌ききれずに全滅した。
結果は5位とそこそこな結果、配信を通して司令塔としてボイスチャットで指示をだしてパーティー最多キルを獲得。
パーティーメンバーもしっかり付いてきてくれて中々楽しい戦いだった。
「今日はここまでにしとこ、それじゃあまたねー」
『おつおつー』『おつかれー』『次回に向かって全裸待機』『おっつー』
何度か試合をして、手を振って配信を終わる。
すぐに隣のモニターに視線を向け。
「J.A.R.V.I.S.、これは祝砲じゃないよね? 明らかに炸裂してるし」
『……予定されていない想定外と推測されます』
モニターには一連の光景、SNSに大量投稿された新型ヘリキャリアの画像。
トリスケリオン地下施設の河川から上昇していて、そのうちの一機の甲板艦載砲が何かに向かって盛大にぶっ放している光景だった。
元ネタ:AP○X