『構造強度、発電量、実体サイズ、重量、実稼働のデータから測定。 トニー様の作るリパルサートランスミッターと同等であると判断できます』
物事には目に見える成果を提出するのが最も重要だ、なにせ口だけではない説得力を生むから。
ラボを使う条件に言い渡された条件、実用レベルのリパルサートランスミッターの作成を言い渡された。
社長とJ.A.R.V.I.S.の監視の中、入力した設計図のデータ通りに同じくラボにある製造設備から組み立てられ、出来上がったそれを社長とJ.A.R.V.I.S.が検証して本物と判断された。
作るのは楽しいが実際には手間取った。自分の設計図を見ていたら粗が目に付いて設計図を引き直したくらい。
その代わり出来栄えとしては現状最高だと言える。社長のラボでなければ間違いなく作れなかった。
やっぱ社長のラボは……最高やな!
モニターの先で視線が合い、社長が背を向けると同時に通信映像が消える。
少し待っていれば私のリパルサートランスミッターを手に、エレベーターから降りてきての社長の一言。
「それなりに、よく出来ている」
持て余すような扱い方で、私に手渡してくる。
基本形を作っただけだしねぇ。必要なバッドアシウムは社長製だし。
「それで、君はあれを作ってどうするんだ? だれかのケツでも叩きに行くのか?」
「そうですよ。叩きに行くどころかぶっといのをケツの穴にぶっ刺してやるんです」
おどけたように言う社長に、ちょっと過激な言葉を返した。
「……それって、僕のことじゃないだろうな?」
ヴィラン製造機である社長は心当たりがあるらしい。無論私は全く関係ないが。
社長の懸念は尤もで性能から考えれば、単一で相手になるのはアイアンマンくらいだからなぁ。
それ以外なら一国の軍隊とかのレベルになるから、そう言う考えに至っても不思議じゃない。
「まさか! 冗談ですよ、冗談。 ええ、……冗談です。 それでこれは極限環境下での作業用を想定してるんですよね」
「カタログスペックを見ればわかる。僕が言いたいのはそんなことじゃなくてだな……」
「常識的に考えて人類には早過ぎるんでばら撒いたりしませんよ。渡したら喜んで軍事利用されそうですし」
国に対して渡しても、ヴィランに襲撃されて奪われそうとしか思えない。
国が解析して劣化コピーを作ってもおかしくないし、情報が流れてアイアンマン2のハマーインダストリーズみたいな事が起こっても不思議じゃない。
社長がアイアンマン引き渡しを拒否するのがよくわかる。誰かに渡したら絶対面倒ごとが起きると確信できる。
何故かって? ここマーベル世界なんだよ?
「社長だってアイアンマンを軍事利用されたくないんじゃ? ウォーマシンは別のようですけど」
忙しい上に、世界がヒーローを求めてるから代わりをやってもらうために渡したんだっけ?
結局自分もヒーローやるしかなくなるんだから主人公というのは難儀なものだ。
「その通りだ、君もそれをわかっていてくれれば問題ない」
「十中八九対アイアンマン用として使われそうですけどね」
「それについては心配していない」
私のISは相手にならないってか? ははは、こやつめ!
すげぇ奴作ってやるから今に見てろよ!
「ご希望通りラボは使わせてやる、好きなだけ作っていくといい」
「ただしネットからは切り離されて、J.A.R.V.I.S.の監視付き」
「よくわかってるじゃないか、将来有望だな」
ニヤリと笑う社長、同じくニヤリと笑い返す。
「ある程度時間を頂きますよ」
「ここはプライベートルームになっている、食事、寝室、バストイレ、映画に本もたくさん、音楽だって聞き放題だ、不自由はしないぞ?」
「そりゃあ良かった、最高の物が作れる」
へっへっへっ、作成に没頭出来る環境を用意してくれるとはさすがは社長。
あとは戦いが起きる前に完成させられるかが鍵だな。
「それじゃあ僕はやる事がある、くれぐれも変なことをしないでくれよ」
今の時期だとS.H.I.E.L.D.関係か、それじゃああんまりゆっくりはできなさそう。
優先順位を決めておくか、間に合いませんでしたは流石にね。
「ええ、わかっています。 お仕事頑張ってください」
笑顔で手を振ってお見送り、それを見た社長は片眉を下げ、口角を少し下げた微妙な表情でフロアを後にした。
「よっしやるよちーちゃん!」
まずはどこまで出来るか確かめないと、忙しくなるぞー!
外界と隔離されようと関係無い、流石未来派芸術家と言えるすんばらしい製造設備に胸が踊った。
極めて高度で柔軟性に溢れる工作機械群、大雑把な太い金属棒からナノメートルよりも小さなピコメートル配線を描けるほど広範囲をカバー。
その反面、高度な制作物を作るのには高度な知識を必要とする。
専門的工学知識を備えた者であっても、ちーちゃんやJ.A.R.V.I.S.のような超高度AIのサポートがなければ製造出来るにしてもかなりの時間がかかるくらいには高度過ぎる設備だ。
無論私は高度な知識と超高度AIのちーちゃんを備えているので、十全に使いこなしてみせる。
「ちーちゃん、荷電粒子砲のバイパス強度再計算、これじゃあ過負荷に耐えられないよー」
『了解、限界負荷は同じままか?』
「350パーまで同じでよろー」
『束、プラズマブレードの必要出力が割り振られてないぞ』
「あいあい、……こいつでお願い」
『……この出力では構成材が耐えられんぞ』
「切り札って奴、3秒耐えられれば良いからこの出力で設定してー」
「あー、装甲外殻が予想より強度がない。 ちーちゃーん、分子配列を高電磁マトリクスをいれて再計算!」
『──計算中、分子結合を確認、総合装甲強度が32パーセントの上昇を確認した』
「じゃあ試作して、ダメならマトリクスそのものを変えてみよう」
寝食を忘れて作業に没頭、何度日が昇って落ちていったかわからないけど出来上がってきたスーツ。
特殊マトリクスによる分子レベルからの装甲を精製、内包する高度電子機器の作成、可能な限り小型化かつ高効率化した脚部と背面のターボジェットエンジンスラスター。
当然全領域稼働を謳うため膨大な水圧がかかる海中でもある程度動ける、人型なので流石に深海層などの水深数千メートルは無理だけど1000メートル位なら水圧に押しつぶされはしない。
宇宙だって問題はない、装甲が裂けるなどの重大な損傷や内蔵のライフサポートが切れない限りは宇宙線が飛び交う中での宇宙遊泳も余裕だ。
あとは私のバイタルデータを入力して調整を施せば、空飛ぶパワードスーツの完成。
残念ながら本物のISとは違って、基礎技術不足によって肌どころかインナーすら見せない全身装甲型の形となった。
その他にもシールドバリアーやパッシブイナーシャルキャンセラー、量子転換化なども搭載出来ていない。
ぶっちゃけ現状は形が違うアイアンマンスーツである、流石に設計思想が違うので最終的には別物になる予定だが。
「ちーちゃーん、
言うと同時に白色が映える前面装甲が展開して開き、背を預けるようにISに乗り込む。
装甲が閉じれば暗がりが広がり、特殊強化ポリカーボネート製の細いアイラインから室内が見える。
すぐにディスプレイが灯り、外部センサーが周囲の情報を取得して青色のインジケーターと共にフロアの景色が映る。
『バイタルデータ取得、フィッティングを開始する。
腕を動かし指を開き、一本ずつ関節を意識して指を動かす。
上半身を反らしたり、屈伸したりしてアーマー可動域が想定通りか確かめる。
「………」
思考制御、サイバネティックインターフェースによるスラスターの点火。
空中静止を意識して、脚部と腰部のスラスター推力を増加して浮き上がる。
10センチほど浮き上がって止まり、上がりも下がりもせずに空中静止。
重心を前に移動すると各部スラスターに光が灯って噴出、倒れこみはせず空中でうつ伏せになる。
そこから更にスラスターを吹かせてその場でスピン、10回転ほど回ったがちゃんと高度を維持できた。
「こんなもんかな、偏向推力や姿勢制御もちゃんと機能してる」
体勢を戻しながらゆっくり降下して床に降りる、少なくともシミュレート通りに動いて安心した。
動力源である複数のリパルサートランスミッターも、正常にエネルギーを供給している。
センサーも上々、スキャニングで上下のフロアに何があるかまるで透視のように把握できた。
スーツの機能はしっかりと稼働していて、スーツを着たままちーちゃん経由でその他の作業に戻る。
「ブレード、ライフル、ランチャー、マイクロミサイル、レールガン、間に合うかなこれ」
スーツを優先して作り、後で順番に作っている武装。
ブレードとライフルは形になっているが他の装備は製造中、スーツの内蔵武装も未完成のまま。
戦えはするが火力不足もいいところ、全てが完成すれば話は別だが現状火力はアイアンマンに大きく劣る。
「何でもかんでも基礎技術が足りない! 想像を現実に出来ない!」
実に歯痒い、現実において完全なSFの領域。
一歩二歩どころか飛行機で飛び立つレベルで技術のブレイクスルーを起こしているが、それでも全く足りないのが現状。
基礎技術がなければどうしようもないのがもどかしい、天才にだってできないことはある……。
今はどうしても時間をかける必要がある、地道な努力が最短の道である。
しかし正直一人ではこれ以上大きく進めるのは無理だ、やるなら社長と協力していかなければならない。
今共同研究を持ち掛けても承諾してくれるかわからないが、奴らが現れれば手を取る可能性は大きく上がるだろう。
「はぁー、何事もうまくいかないもんだねー」
ため息を吐きながら、仮想キーボードを打っていれば赤い表示が立ち上がる。
「……停止?」
電力供給が止まり工作機械が停止したと表示されていた。
このコンピューター自体は
しかしフロア自体は違うようで部屋の明かりも消え、窓から入ってくる日の光だけがフロアを照らす。
機械が止まれば当然製造中の武器も進捗が止まるわけで、まさか社長が停止させたのかと冷や汗が流れた。
「……おーい、J.A.R.V.I.S.! なんか電源止まったんだけどー?」
少し上を向いて、聞き耳を立てているはずのJ.A.R.V.I.S.へと声を掛けるが。
「……? どしたー? 返事してくれー」
返事がない、もし私に何かをするつもりなら警告の一つでもあるはずだがそれも無し。
一体何が起こったのか、仮想キーボードを叩いていると。
『束、外を見てみろ』
「あん?」
ちーちゃんに言われた通り窓の方を見れば、上から下に複数の何かが降りて行っているのが見えた。
『該当するデータ無し、正体不明の存在のようだ』
「……時間切れ?」
見えたのは奇妙な飛行物体に乗った異形の人型。
手に持った武器をぶっ放しながらニューヨークの街へと降りていっている。
「まだ終わってない! 後30分ぐらい待ってろよクソどもが!」
仮想キーボードを叩いてデータの保存、コンピューターを終了させながら窓へと向きなおる。
「ちーちゃんこっち来て!」
『スペックが足りん、碌な補助もできんぞ』
「声だけ貸してくれりゃオッケー!」
会話プログラムだけをISに入れて、スラスターに火を入れる。
『それが一番手っ取り早いが、修繕費を要求されても知らんぞ』
「社長がそんなケチなはずないって!」
フロア内を飛び、テーブルの上に置いていたブレードとライフルを引っ掴んで窓へ向かって加速する。
「実稼働テストォ! 記録開始ィィィィ!」
前方に向けた
特製IS
見た目原作の白騎士に近いが全身装甲なので黒い部分も装甲で覆われている、背中の方に浮いてるでっかいカスタムスラスターは無し、腰の剣っぽいのも無し。
また基本装備のPICとかバリアも無し、アイアンマンと同じで装甲で耐えるタイプ。
等身大でスマートなアイアンマンと違って後付けで拡張するタイプなので基本ゴテゴテ、そのためペイロードはアイアンマンよりもかなり多く色々載っけた完成版の火力は大きく上回るが現在はお察し。
重量増加の機動力低下はスラスター推力強化と複数搭載で補う、速度は出るが咄嗟の動きは苦手だが結局は大推力でぶん回せる、現在はプラズマソードとビームライフルだけなので機敏に動ける。