篠ノ之束になったので配信しながらアベンジする   作:BBBs

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過去

(ナンデ!? エンドゲームナンデ!?)

 

同じ意匠のスーツを着た4人、間違いなくここにいるはずのない人物たち。

左胸にはアベンジャーズのマークであるAを捩ったものを付けている。

見てはいけないものを見てしまった、そんな悪寒が背筋に這い回る。

理由は簡単だ、彼らは確かに本人たちだろうが今この2012年の彼らではない。

つまり、時間の影響を受けない量子世界を通って過去に遡ってきた未来の4人。

同一の時間軸に年齢は違うが同一人物が2人ずつ存在している、人為的には有り得るが自然的に有り得ない、有って欲しくはない事象に遭遇してしまった。

この事象が起こっているということは、サノスの指パッチンが成立してしまった可能性が極めて高いということ。

それが指し示すことは、私の影響力では未来軸をずらせなかったということ。

頭に中でぐるぐると最悪が渦巻き、動けずにフリーズしているとスコットが口を開く。

 

「俺たちに会えて感激してるんじゃないか?」

 

何も言わず動かない私を見て、そう言うも。

 

「少し、黙っていろ」

 

顔だけスコットに向けた社長が真顔で返し、スコットは頷くことしかできなかった。

社長が視線を戻して私を見る。

そうだ、これは夢なんだ。

わたしは今、夢を見ているんだ。

目が覚めたとき、わたしは工作しながら動画配信しているんだ──。

 

「あータバネ、落ち着──」

「ぬぐあああああぁぁぁぁ!?!?」

 

両手で頭を押さえてうずくまる、見たくなかった事に続いて聞きたくない言葉が聞こえてしまった。

 

『ちーちゃんこの社長いま私の名前言ったよね!? タバネって呼んだよね!?』

『ああ、集音器(マイク)が不調でなければ言ったな。 それと最適化が完了したぞ』

 

スーツの中でちーちゃんに聞き間違いではないか問い質すも、無慈悲にも聞き間違いではないと否定された。

 

(私を知ってるって事は、私が存在する連続した同一時間軸か並行時間軸から来たんじゃないか!?)

 

いっそ正史かそれに近く、何かの間違いで私が居ない並行世界から来た4人で有って欲しかった。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

絶叫染みた叫び声に心配してか、4人が駆け寄ろうとしたが右腕を上げて制止する。

右手には当然ビームライフル、発射できる状態なので粒子加速偏向機に電撃が走る。

 

「待て待て待て! 落ち着け、僕たちは敵じゃない!」

「わかってる、わかっているがなりすましている可能性もある」

 

ちーちゃんが代弁しているので冷静に聞こえるが、スーツの中では間違いなく言葉は崩れ震えていた。

 

「そうだ、だから自己紹介しよう! まず隣の彼からだ!」

 

唐突に自己紹介を始める社長、どう考えてもそんな状況じゃないと思うんですけど……。

 

「ほら、知ってるだろ? 世界初のスーパーヒーロー、アメリカのケツ、スティーブ・ロジャースだ」

「おい、トニー!」

「なんだ、ちょっとしたジョークだ、そんなにカッカするなよ。 それで次だ」

 

不満バリバリな表情のキャップを横目に、社長は次にプロフェッサー・ハルクと化したブルース・バナーを指した。

 

「皆大好きセイグリーン! グリーンジャイアントのブルース・バナーだ」

「やめてくれよトニー!」

「そんなに怒るなよブルース、ハルクになっちまうぞ」

 

キャップに負けないぐらいに不満そうなブルース、そして次はスコット。

 

「それで3人目だ、彼は……別に覚えなくて良い」

「流石にそれは酷くないか?」

 

私もそう思う。

せめて名前ぐらい言ってあげようよ社長……。

 

「それではお待ちかねのメインイベント! スマートでアドバンスで──」

「気まぐれで協調性がない」

「自意識過剰で過信家でもある」

「ナルシストでアルコホリックって聞いたことがある」

「……トニー・スタークだ」

 

好き勝手言って反撃されたトニー・スターク。

 

「……あり得ない、ここに居るはずがない、トニー・スタークは今も空で戦っていてキャプテンとハルクは別のストリートに居る。 そこの男も間違いなくニューヨークに居ないはずだ」

「……その通りだ、僕らは今ニューヨークで戦っている僕らじゃない」

「なら未来、あるいは並行世界。 定番の超光速か重力波による時空間超越による時間遡行、それか……量子化か」

 

量子化による時間を無視して遡行するのが時間泥棒作戦の肝。

進み過ぎた科学は、魔法をも超えるのだ。

全知全能には届かずとも、今では解決不可能な事態も乗り越えていける。

だってマーベル世界だし、未来から誰か来るとかそこまで珍しいものじゃないし。

 

「トニー・スタークも見ただろう? 私が望んでいる研究の……、いや、私と話している暇はないか。 未来で時間遡行する必要があるほどの問題が起こったんだろう?」

「……ああ、そうだ」

 

4人が神妙に頷く。

 

「私は何も見なかったし聞かなかった、……正直に言うと本当に記憶から消したい」

「誰にも喋らないでくれると助かる」

「こっちの世界をめちゃくちゃにしないなら、喋る気は無いし邪魔もしない」

 

もう帰りたい、家の自室でごろごろしていたい……。

腕を下ろして、スーツの中でため息を吐いた。

 

「ありがとう、タバネ」

 

真剣な表情でキャプテンが礼を言う。

 

「……そうだ、一つ聞きたいことがある。 そっちの穏やかなハルクも気になるけど、トニー・スタークに聞きたい」

「答えられるものなら聞こう」

「簡単な質問だから気負わなくていい」

 

社長に視線を合わせ。

 

「Who are you?」

 

その問いに社長はニヤリと笑い。

 

「──I am Iron Man」

 

一瞬だ、社長は即座にアイアンマンになってみせた。

社長の表面に這うようにナノマシンスーツが生成されるのではなく、周りにスーツが現れたといった光景。

……あれ? これナノマシンじゃなくね?

それにナノテクスーツよりも少しマッシヴに見える、カラーリングはいつもの赤金だが明らかに質が違う。

 

「……ほう、もしや量子化?」

 

パカっとフェイスカバーを開いて顔を見せる社長。

 

「そうだ、カッコいいだろう?」

「まあまあだな、私の方がカッコよく作れる」

 

私がいる以上技術に違いがあるだろうとアイアンマンスーツを見たら、いずれ実装する予定の量子化技術を社長が使っていた件について。

量子化技術だけではないだろう、サノス戦でこの状態だったのに負けたりしたのか?

これで負けたとしたらサノスどんだけやべぇんだ……。

新たに嫌な情報が判明したところで、少し気持ちを切り替える。

 

「聞きたい事はそれだけだ、それと最後に一つだけ言っておく」

 

スラスターに火を入れて、体を浮かせる。

 

『ちーちゃん、代弁オフ』

『了解、オフにした』

 

こっちもフェイスカバーを開いて顔を見せ。

 

「みんな、頑張って」

 

そう言ってフェイスカバーを閉じて、空へと飛び上がった。

 

 

 

「……あの娘にまた背負わせてしまったな」

「我々が不甲斐ないからだな」

 

わずかに残る煙の尾を引いた空を眺め、ロジャースとトニーが絞り出すように言う。

 

「約束通り、喋らないでくれたね」

 

プロフェッサー・ハルクとなったブルースが、過去を想い感慨深く呟く。

 

「……あー黄昏ているところ悪いけど、もう行かないか? ほら、あまりここで時間潰すのはダメだろ?」

「……そうだな、行こう」

 

4人は一つの目標のために、それぞれの使命に向かって動き出した。

 

 

 

 

 

「あのスペース紫ゴリラ絶対にぶっ殺してやる!」

 

どれだけ時間が経ったか、あらん限りチタウリ兵を蹴っ飛ばし、殴りつけ、撃ち抜き、両断する。

なんで私がこんな思いをしなければならないのか、内から噴き出る憤りを暴力で発散する。

 

「くそっ! くそっ! 余計なっ! お世話なんだよっ!」

『落ち着け、無駄な……動きはないか』

「無駄なものなんてあるかっ!」

 

ビームライフルの出力を上げ、収束率を下げる。

 

「落ちろよゴミクズどもがっ!」

 

引き金を引けば、弾ける閃光とともにビームの散弾が広がる。

チタウリの飛行編隊は飲み込まれ、飛行装置は無事でも搭乗者は穴だらけになって落下していく。

振るっていい暴力でチタウリ兵を片付けていくが、減った分だけワームホールから湧き出てくる。

 

「いい加減、ミサイルまだ!?」

『……超音速飛翔体の反応無し、飛んでいるのはアイアンマンとハルクとソーだけだな』

「何が世界安全なんとかだよっ! ちゃんと仕事しろよっ!」

『今来たようだ』

 

その言葉に加速して上空に上がる。

既にアイアンマンがミサイルを抱えて橋からスタークタワーへと向かっている途中だった。

 

「社長良い所に! 乗ります乗ります!」

『おい、バカなこと言ってんじゃない』

「こっちはまだエネルギーに余裕があるけど?」

『追いかけてくるんじゃない!』

 

ミサイルを支えるアイアンマンの後を追って加速する、スタークタワーに擦り急上昇。

ワームホールに飛び込む姿を見ながら後に続けば景色が変わる。

社長との通信が途絶える、エネルギーが切れたのか動かなくなりゆっくりと落ちてくる。

だが目に入るのはその姿ではなく広がる星々と銀河が輝く宇宙、壮大すぎる世界に広がる大軍。

ニューヨークに入り込んだ数がほんの一欠片でしかない、インジケーターに表示された捕捉できたチタウリ兵だけでも数千。

リヴァイアサンも数百は下らない、画像解析から推定数は数万にも上るチタウリ。

トニー・スタークがなぜトラウマを抱えたのか、その理由が理解できてしまった。

即座にワームホールへと落ちてくるアイアンマンの背中にワイヤーを打ち込んで引っ張り、スラスターを吹かせて逃げるようにワームホールに向かう。

核熱が迫ってきているが、ギリギリではなく余裕を持って抜け出す。

ワームホールが閉じる様を見上げ、アイアンマンをぶら下げたままゆっくりと降下する。

駆け寄ってくるのはキャプテンとソー、警戒心は見えるが攻撃してくる様子は見られない。

 

「生きているのか?」

「生体反応はある、気絶しているだけだ」

 

ワイヤーを外し、アイアンマンを横たわらせる。

フェイスカバーを引き剥がし、トニーのご尊顔を拝謁。

 

「キャプテン、申し訳ないがここを頼めるか?」

「それは構わないが」

「彼が目覚めたら、後であの部屋に来てくれと伝えてくれ」

 

スラスターを噴射して、飛び上がり一気に加速してスタークタワーのあの部屋に向かう。

割れた窓から部屋に入り込み、床に膝をつけ滑り削りながら前面装甲を展開。

停止と同時に飛び降り、モニターテーブル横の椅子に勢いよく腰掛ける。

傷だらけのISを正面に捉え、目を細めた。

 

「……無理でしょ」

 

今のISの性能では、という意味ではない。

チタウリの前では地球は守れない、という点。

今回のはワームホールが小さく、敵が戦力の逐次投入と言う悪手を取らざるを得なかったので凌げただけ。

わかっていたつもりでも、いざ事実を目にするとくるものがある。

核でなぎ払った戦力も、サノス軍からすれば少数の一部分でしかない可能性が高い。

四次元キューブで開いたワームホールではなく、直接宇宙から侵攻してきたらどうしようもない。

社長はその可能性に怯え、トラウマになってしまったのだろう。

いかにアベンジャーズが地球最強のヒーローチームでも、同時に守れるのはせいぜい一都市程度。

今回であればニューヨークを守っている間に他の都市が、他の国が滅ぼされる。

恐らく社長や私の技術を人類そのものに譲渡してもどうしようもない、結局人間同士で争い合いに使ってその間にサノス軍が来て終わり。

事情を説明したところで信じなかったり関係ないと、自分勝手に振る舞う奴らが出てくると決まっている。

ヒドラなんかゴキブリみたいにどこにでも居るから、正直世界大戦とか起きても全く不思議じゃない。

じゃあどうすればいいのかと言う問題は、正史で結論が出ている。

エンドゲームと同じようにインフィニティ・ストーンを揃えて指パッチンでサノス諸共消し去ってしまえばいい。

 

「はぁぁぁぁ〜〜」

 

くそでかため息を吐く、恐らく、ほぼ間違いなくエンドゲーム展開が起きる。

そしてものすごく残念だが社長の指パッチンで未来に来た過去のサノスとその軍勢が消え去ることはない。

それはなぜかと言うと、“私がいる”からだ。

エンドゲーム展開で過去に遡ってきた彼らは私のことを知っていた。

未来の私はアベンジャーズに所属していて、彼らと一緒である可能性が高い。

そうするとどうなるか? 時が過ぎて未来の私と同じ状況になったら必ずこうするだろう。

“そもそも過去のサノスを未来にこさせない”、そうすれば社長は死なないし、最終決戦に参戦した人たちも死ななくて済む。

過去のサノスが未来に来ることになった要因がわかっているのだ、対策しないはずがない。

過去のサノスが未来に飛んで消えれば、過去であるこの世界は新しい時間軸にてサノス関連の問題が起きなくなって万々歳! なんて都合の良いことは起きない。

私ならそうする、絶対にする、何がなんでもそうする、なんで死者多数が確定している戦いを起こさないといけないんですか(全ギレ)。

だからこそこの世界のサノスは未来に飛べない、密かにインフィニティ・ストーンを回収、プロフェッサー・ハルクの指パッチンで失った半分が戻る。

あとは同じように密かに石を戻して未来世界はほぼハッピーエンド! 恐らくそうなる。

私が居なければ、私が生まれてこなければ、この世界は正史よりも少しは平和だったのだろう。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜」

 

なんでマーベル世界ってこんなに地獄なんだろう、いらぬ重荷を背負ってしまった気がしてため息をまた吐いた。




サ ノ ス 残 留 確 定
未来で過去サノスが消える、そんなうまい話があるわけねぇよなぁ?
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