「ハロハロ〜、世紀の大天才の束さんだよー」
数ヶ月ぶりの帰国と配信、予告配信時間となりカメラに向かって手を振る。
『おかえりー』『待ちかねたぞ!』『随分とお久だ』
前回の配信よりも流れるコメントと視聴者の数が減っている、告知していたとは言え流石に時間が経ちすぎて他に流れてしまったんだろう。
「パソコン起動するのも久しぶりやん、むしろ自分の部屋の匂いが懐かしい」
『良い匂いがしそう(小並感)』『束ちゃん!部屋の空気を瓶詰めにして、売ろう!』『いつになったら映像と一緒に匂いも流れてくるようになるのか』『時代は直嗅ぎ』『おまわりさん案件多スギィ!』
「そいじゃ久しぶりの配信だけど、今日は報告と図画工作でもすっかね」
『そういやなんか言ってたね』『何の成果も!!得られませんでした!!』『良い話と悪い話、どっちやろ』
「調査団やめーや、いや色々作りたくてパトロン候補に会いに行ったんだけどダメだった、途中まで良い線いってたと思ったんだけどさぁ」
『そりゃ残念』『1000億も出せるパトロンとかいるのかよw』『パトロン、金持ち、美少女女子高生、何も起きないはずはなく……』
「ニューヨーク、異星人、襲撃が起こらないはずもなく……」
『うぇ!?』『NY行ってたん!?』『まじかよよく無事だったね』『最初番宣かと思ったNY襲撃』
「もうガチのガチよ、空飛びまくって撃ちまくってまじやめろよと思いました」
肩を落としてみる、実際クソのクソでため息しか出ないから演技ではないが。
「ほんとあれはやばかった、アベンジャーズ居なかったらニューヨーク無くなってたと思う」
『そんなにやばかったんか?』『なんかゲームやSF映画見てる感じだったわ』『ワープしてくるやつが歩兵とか、なんか凄いのか凄くないのかわからん異星人だったな』『鯨よりでけーのが普通に飛んでる時点でやべーだろw』
「なんか空飛んでビーム撃ってたし、あんなん逃げるしかできないよ」
警官や州兵も頑張ってたけど焼け石に水状態、アベンジャーズが居なかったらニューヨークを侵攻拠点にされてたかもしれん。
「いやー最後の方にミサイルが飛んできたのよ、多分あれ核ミサイルだったんじゃないかなーと思う」
『かwwwwくwwwww』『まさか核鬱とかないやろ』『ぜってー避難住んでなかったんちゃう?』『まじだったらベルカ式国防術をリアルで見ることになってたんかな』『ベルカ式とかwwwwwwしゃれになってませんねクォレハ……』
「核ミサだったら私もやばかったし、多分数万の死者と数十万の被曝者出してたと思われ」
『つべの動画見ると悲鳴と爆発音ばっかだったな』『死んだエイリアンを間近で撮ってる猛者もいたぞ』『エイリアン怖すぎワロエナイ』
『社長がミサイル運んでたっぽいからマジで核みたいやな』『さすが社長!』『エイリアン人型だったのがちょい気になった』
「侵略されてやばいと思うけど核ミサ撃つとはなぁ、ちなみに核ミサだと確信している。 飛んできたの1発だけだし、社長が異星人放っておいてミサイルを運ぶと思う?」
『社長自分のタワー守りたかった説』『遠くから撮った動画ばっかだけど倒壊するような感じじゃなかった』『タワー壊すだけなら何発も打ち込んだ方が良さげよね』『核ミサイルだったとしても撃ち落とされてたらどうするつもりだったんやろな』
「核でぶっ飛ばして侵略を防ぎました、市民は全滅し残るのは爆心地と放射能まみれのニューヨーク。 他の場所も同じようになったら核ぶっ放すんやろね、根本的な解決法無しで次の展望見えてねぇわ」
『核で一網打尽よ!(なお土地のことは考えないものとする)』『まあこう言うのって大体命令出した奴安全なとこにいるんだよな』『成功してたらしてたで似た状況になったら核ぶっ放すんやろな』
「仕方ないっちゃあ仕方ないが、巻き添え食う人のことも考えてほしいわ……」
『当事者だかんねぇ……』『タッバ元気出して』『重みが違う』
「それがあったせいでパトロンとの交渉も失敗したしほんまイラつくわー、でもまあ別のところから声がかかったんですけどね」
『やったやん!』『新しいのは1000億出せるんか?』『大丈夫?騙されてない?』
「一応まともなところだから受けたよ、なので移住します」
『ファっ!?』『えーまじ?』『ちょっと重大発表すぎない?』『嘘だぁぁぁぁぁ』『いかないで;』『え、配信やめんの?』『引っ越しじゃなくて移住って、外国かよ!』
「日本が良かったけどダメそうだったからね、やりたいと言うかやらなくちゃいけないし決めました。 移住するだけだから配信は続けるよ、日本時間に合わせるから変わらず夜だけど」
『いいようなよくないような……』『やりたいことのために移住決断とかすげぇな』『外国ってその国の言葉喋れんと苦痛でしかないからなぁ』
「外国語って言うか英語だけど問題なく通じたからね、そこは心配ない。 今の所話せるのは国連公用語に日本語含めた7ヶ国語やね、必要なら他のも覚えるけど」
『マルチリンガルすぐる……』『世紀の大天才は化け物かっ……!』『覚えるコツとかあんの?』
「コツとかないなぁ、聞いたら覚えるし」
瞬間記憶能力者って言いたくなるほど物覚えが良い。
覚える必要があると思って見ると記憶に残り続ける、単純に記憶力がかなり強化されている感じだ。
『あっこれ参考にならない奴だわ』『だよねー、聞けば一発だもんげ』『その記憶力が羨ましい……』『記憶するだけで喋れるわけねーべ、元が違うんじゃよ』
「まあ教える場合は意識するけど、自分で喋る時はイントネーションくらいかな。 単語は伸ばしたり短くするといきなり通じなくなったりするからねぇ、あと和製英語はきっちり除外しよう、ガチで通じないから」
『おっ勉強会か勉強会か?』『女子高生教師とかどうなってんだここは!』『俺の高校時代にこんな先生がいてくれたら……』
「過去は振り返らない! まあ学校も辞めるんですけどね」
『外国にいながら日本の高校通うのは無理だしな』『流石に卒業しといたほうがよくない?』『中退は周囲の目が痛いぞ(実話)』『同級生の男どもは涙流して嘆くだろうなw』
「高認はどうしようかなぁ、暇になった時帰国して受ければいいかな」
『日帰り旅行感覚で国家資格を取りに行く束ちゃん』『東大余裕でこけるはずねーべ』『向こうで高校いかねーの?』
「多分行かない、そんな余裕ないし」
必要なことは言ったので、ごそごそと足元に置いていた道具を取り出す。
『うーん、でかい』『定期的なサイズ確認、嫌いじゃないわ!』『乗っているのも良いね』
「……えー、重要発表は終わったので次は工作しまーす。 いつもは手元映しながらだけど、今日は前回の配信で言ってたちーちゃんとおしゃべりでもしててね」
私は黙々と作業すっから、と言ってちーちゃんの3Dモデルを立ち上げる。
『ちーちゃん来た!』『俺の嫁ェ!?』『チーちゃんってなんだっけ』
「話っつっても当然全部拾えないから注意ね、質問とか何回でも書き込んで良いけど拾うかどうかはちーちゃん次第」
『はーい』『質問しろとかいきなり言われても困るぜ』『ちーちゃんの3サイズいくつですか?』
「ちーちゃん、好きなように答えて良いよ」
「ふむ、それならば最初に言っておく。 私の事をちーちゃんと呼ぶな、そう呼んで良いのは束だけだ」
『あら^〜』『嫌いじゃないわ!』『そう言う個性なのね』『ここにキマシタワ-を建てよう』『百合の園だったとは、このリハク(ry』
「んー、今は無理だがいつかちーちゃんのボディを作ってみるのもありかな」
『ヒューマノイドってやつか!』『ちーちゃんがこの三次元に!?』『やはり俺の嫁だったか……』
「感情もプログラムしてあるから、してほしくない事し続けると答えてくれなくなるかもしれんよ」
「例えば今言ったちーちゃんと呼ぶな、と言ったこととかな」
むすっと言った表情のちーちゃん。
自分で設定したとはいえ、ある意味融通がきかない性格になっちまったもんだ。
流石に戦闘中などは切り替わるから問題じゃないけど。
「みなさんわかりましたかー? 自分がされたくない事を相手にするようなつまらない人間にならないでくださいねー」
返事の大合唱が大量に流れる。
「それじゃあちーちゃんとの会話をお楽しみください」
続いて単純な会話や質問が画面にびっしり流れていく。
それを横目で見てから、社長のラボからついでに持ってきた部品を広げて制作しだす。
「最初の質問だったな、スリーサイズは上から88・57・85と設定されている」
『おっほう!』『見たらわかる(ガン見)』『頑張れば現実にいるサイズ』『じゃあ束ちゃんのサイズのおなしゃす!』『こっちもおっぱいぷるんぷるん!?』『常に全画面余裕でした』
「こらこら、そう言うのは答えなくて良いから」
「そう言うわけだ、束のスリーサイズは諦めろ」
『チクショーめ!』『じゃあ千冬さんよりもすごいかどうかだけでも!』『胸は勝ったな(確信)』『僕は安産型が好きです』
「お前らちょっとは自重しろ」
画面は見ずコメントの音声出力とちーちゃんの声だけで返す。
気持ちはわかるが聞かれる女の気持ちも考えろ、まあ普通は考えられないか。
知らないだろうがインフィニティ・ストーンなら可能である事は恐ろしい事実であろう。
『千冬ちゃんは何が好き?』『どう言う目的でAI作ったんだっけ?』『これぜってー中の人いるだろ!』『千冬さんはデートするならどこが良い?』
『AIだけどやってみたいこととかある?』『やっぱイケメンの方がいいのかね』『下着とかつけてんの?』『束ちゃんの好きなところはありますか?』
『千冬も一緒に移住かぁ、俺もついていきてぇなぁ』『そういやどこに移住すんの?』『ゲーム配信とかしないの?』『喋り以外は配信者らしくないことに今気がついた』
ガンガン流れてはちーちゃんが答えていく。
それを聴きながらカチャカチャといじくり回していたら。
「束」
「んー?」
「今何を作っているのかと言う質問だ」
「あーこれ?」
外側は出来ているので、手に取りカメラの前に持ってくる。
「デデン! これは一体なんでしょうか?」
『ヤロー! 馬鹿にしやがってぇー!』『それ付けちゃうかー』『え!?現役天才美少女女子高生の束ちゃんがバニースーツを!?』『うっ!ふぅ……』
「着ねーよ、ちーちゃんには着てもらうかもしれないけど」
『『『やったぜ!』』』
見せたのはメカニカルのうさ耳。
「これね、なんだと思う?」
『ミキプ◯ーン?』『うさ耳の他に何があるのか……』『俺たちは試されているのか!?』
「これね、マルチセンサー搭載の装着型デバイスよ」
『よくわからんがとにかくよし!』『なんかすごいもん作ってんね』『マルチセンサーって?』『ああ!』『ああ!』『ああ!』
「センサーと聞いて思い浮かぶ奴は大体入ってると思っていいよ、音、光、熱、そこらへんを検知するやつ」
『はぇーすっごい……』『出力はどうすんの?』『そのサイズでちゃんと使えんの?』
「今んとこちーちゃんが教えてくれるようにしてる、問題は範囲と稼働時間なんだよねー」
範囲も狭いし稼働時間も短い、10メートル程度の検知距離で最大連続稼働は1時間も無い。
本当は常時稼働が良いが、それをできるだけの技術がねぇ!
「要改良だけど、今のところは要所要所で稼働させれば良いかなーって」
『いや、それ何に使うん?』『日常で使い所さんがない気がする』『可愛いは正義、わからんのか!』『タッバが着けるの?』
「そだよー、最初猫耳とかも考えたけどあのサイズに収めるのは難しかったから、縦に伸びるうさ耳型にしてみた」
まだ中身が入っていないうさ耳を頭の上に乗っけてみる。
『きゃわわ!』『ほーええやん』『スクショ連打した』
「まー完成にはもうちょい掛かるからね、折角だしちーちゃんと話しててよ」
『タッバとも話したいんよ!』『千冬ちゃんもいいけど束ちゃんもね?』『俺の質問を聞けぇー!』
「彼女、随分と印象が違うわね」
「スーツを着た状態ではこのAIが喋っていたんだろう」
午前中のニューヨークのワシントンD.C.にあるS.H.I.E.L.D.本部施設、トリスケリオンの一室に1組の男女がモニターを見つめていた。
「本当に彼女があのスーツを?」
「ああ、トニー・スタークは自分が作ったと言っていたが、実際に白いスーツを作ったのは彼女だろう」
今度新しく入る新人、空を飛ぶ異星人を迎撃したアイアンマンと遜色のないスーツを作った存在。
確かにトニー・スタークはあの白いスーツを作れるだろう、でも彼の言動では疑惑が残る。
年端もいかない少女にスーツを着せるかどうか、流石に少女にスーツを着せて戦わせる気はなかったように見える。
キャプテンから聞いた話では、彼女が飛んでいたのを知らなかった様子だったと言う。
「残念だが放っておくとまずい事になりかねん、子供と言えど重要な監視対象に指定せざるを得ない」
この配信を見る限りではそこまでの存在には見えなかったが、過去の配信動画を見る限り高い知性を持ち合わせているのがわかる。
スーツを作り侵略者迎撃に出てきた経緯は未だ掴めてはいないが、アベンジャーズとして戦うには十分な力を備えている。
自在に空を飛べるのがアイアンマンだけである現状、彼女が加わればもっとスムーズに事を運べるのは想像に難しくない。
「どこまでやっていいので?」
「エージェント・ロマノフ、君が使えると判断するまで徹底的に扱いてやれ」
「……了解」
頭脳だけではやっていけない、S.H.I.E.L.D.はともかくアベンジャーズともなれば心技体、どれもが必要となる。
果たして彼女はどこまで食らいついてくるか、アベンジャーズ志望の可憐なお嬢さんに期待しておこう。
うさ耳決定。
原作で妹の箒はバスト98らしい、束はそれ以上との話。
いまはまだそこまでいってないけど、いずれはその領域に立つと言うのか!
掲示板もいつかやらねば……