灯火の星   作:命 翼

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pixivにも投稿している作品です。恐らく東方日常録の代わりにこれがメインになるかと思います。よろしくお願いします。


始まり

ここはどこだろう?水の流れる音が辺りから聞こえ、分かるのは身動きが出来ない上に体が沈んで行っている感覚があるという事。水の音が聞こえる割には息苦しくなく、ちゃんと物も見えてはいるが、声が出せず体も動かせない。今視界に映っている太陽と青空が徐々にながら遠くなっているのが分かるが、何度言うように身体は一向に動かせない。

 

もがいても、もがいても。ただ感じるのは体が沈んで行っている感覚だけ。訳も分からないまま周りに見える景色が真っ暗になって行き、見えていた太陽も暗闇に掻き消されていく。呼吸も出来ず、まばたきすら出来ないまま私の視界はいつの間にか完全に暗闇に包まれ、どこを見渡しても見えるのは辺り一面、黒、黒、そして黒。ここはどこ?私は一体どこに向かっているの?

 

不安のピークに達した体はいつの間にか私の意識を夢の世界から覚まさせていた。声にならない声を張り上げ、私は布団をまくり上げて座り込んでいた。カチ…カチ…と動く時計の針は午前6時を示しており、私が着込んでいたパジャマが汗のせいかびしょびしょになっている。私は悪夢でも見ていたのだろうか?額の汗を拭い、深く、深く深呼吸すると欠伸しながら私は一言呟く。

 

「今日…何があったっけ……んん…分かんないからとりあえず着替えよ…パジャマびしょびしょで気持ち悪い…」

 

ベッドから立ち上がり、ひとまず私はクローゼットから服を取り出しパジャマから着替えていく。びしょびしょになったパジャマはひとまず洗濯カゴへ。欠伸しながら頭を掻き、私は歯磨き等を済ませていく。悪夢を見たせいか食欲が湧いて来ず、朝食については後で食べる事に。服を室内干ししていると、寝室に置いていた携帯が鳴っているのに気づき、寝室に戻って携帯を手に取った。

 

「もしもし…」

 

「あ!出た出た!蓮子!今日はいわく付きの神社を一緒に調査しよって言っていたよね!?」

 

申し遅れたが私の名前は宇佐美蓮子。今電話で喋って来ているマエリベリー・ハーンの友人だ。ちなみに彼女は私の事を蓮子と呼んでおり、私は彼女の事をメリーと呼んでいる。私が部長を務める秘封倶楽部の唯一の部員でもある。私はメリーの言葉にあー…ごめんと苦笑いを呟いた後…

 

「5分したら支度出来るからマンション前で待っていてくれないかな…」

 

「分かった。なるべく早くしてね」

 

メリーとの通話を終えた後、私は一度頭を抑える。さっきの悪夢が脳裏を過ぎったのだ。不安による頭痛に堪えつつ、私は財布等を鞄の中に入れ自宅を出る。朝食は先程も言った通り、食欲がない為無しの方向。その証拠にお腹の音も鳴っていない。

 

——頭が異常に痛いが、不安による物だからすぐに治るだろう。マンションのエレベーターで一気に一階に降り、玄関付近で待っていたメリーの元に駆け寄る。

 

「メリー…ごめん。わざわざ来てもらって…」

 

「大丈夫だよ。それより蓮子は大丈夫?寝坊なんて滅多にないし…」

 

私が苦笑い気味にメリーに謝罪すると、彼女は首を振り私の表情を覗き込みながら心配そうな表情を浮かべている。確かに私は約束事についてはあまり遅刻しない方だが、メリーにも少しばかり思う所があったんだと思う。私は彼女に大丈夫と笑みを浮かべながら呟くと、メリーの肩をポンと軽く叩いた後に前を歩いていく。彼女も慌てて私に付いてくるがその表情からは全く持って不安の色が消えていない。

 

だがこれをどう説明したらいいか分からないし、説明しても笑われるだけかもしれない。そう考えると中々言い出せなかったが、近くのバス停にてバスを待っている時にメリーの方から私に尋ねてきた。

 

「悪い夢でも見た?そんな顔色悪い蓮子見た事ないし…」

 

「そんなに悪いかなぁ…?」

 

「悪いよ…近くで見れば完全に病人だもの」

 

何かがグサッと刺さったような感覚が襲って来た。メリーが言ったのはもちろん間違いではないのだが、何だろう…病人と言われて何かショックだったと思う。そりゃ暴言を言われるよりはマシだとは思うが、ストレートに「病人」と言われたら軽くでもショックは受ける。うん、これだけは誰にも反論させない。

 

そんなグサッと来たメリーの言葉に私は苦笑いを浮かべると、「今朝ちょっとね…」とはぶらかそうと考えたが今、彼女にそんな事言ったら「嘘だ」と言われかねないので正直に伝える事にした。

 

「身体が妙に沈んで行くというか…でも呼吸も身動きも取れなくて…」

 

「…それが怖かったんだ?」

 

「うん…あんなの見たら顔色も悪くなるよ。フードファイター並みの食欲が全く湧かないし」

 

「うん。その発言が出れば大丈夫だね」

 

メリーの表情に笑顔が戻る。私はよく食べる方ではあるが、フードファイター並みの食欲がある訳ではない。というか、そんなのはどうでもいいとして。そうして話している内にバスが到着したのを確認し、私達は乗り込んで行く。歩いては遠い神社ではあるが、バスに乗れば一駅ほど。一瞬眠りこけたらすぐに通り過ぎてしまう厄介な場所である。

 

バスから見える景色を眺めながら、眠りこける事数分。耐えきれなかった眠気をメリーにカバーして貰いつつ、私達は神隠しが起こったとされるいわく付きの神社に降り立つ。

 

「蓮子。一回思い切りしばいてあげようか」

 

「ううん…お願いしていい…?」

 

あまりに眠た過ぎる為に目覚ましの為に一回メリーにしばいてもらった。痛かったが、眠気がすっかり無くなり何だか気合いが満ち溢れてきた。

 

「よっしゃー!!やるぞ調査ー!!」

 

「元気出過ぎだって〜!!」

 

メリーをほぼ置いてきぼりにする形で私は神社の境内に繋がる階段を駆け上って行く。ちなみに急に走り出したせいか、足を痛めてしまったのはここだけの秘密という事にしてもらいたい。いや、やっぱり笑い話にしてしまおう。

という感じで階段を駆け上がると、神社の境内から漂って来る異臭に思わず私は鼻をつまんだ。

 

「くっさ!!やっぱ鼻にツーンって来るなぁ…」

 

「勢いよく上がるからだよ…全く…」

 

私達が大学生になった頃の事。一人の女性が空を飛ぶ女に連れさらわれたという話だ。ちなみにこれは嘘でも何でもなく、れっきとした事実。そしてまだその女性は発見されていない。さらに1年前、羽が生えた女に一人の男性が連れさらわれたという事件が発生。二人とも安否どころか生死すら分かっておらず、行方不明になっている。分かっているのは二人共この神社で失踪したという事だけだ。

 

「こんな所にどうして来るんだろうね…?」

 

「さあ…どうしてだろう…」

 

境内の屋根にはコケが生えており、その縁側は腐敗しておりボロボロ。先程も言った通り、異臭が漂って来る程だ。普通なら誰も寄り付かないに決まっている。私達二人はとりあえず鼻をつまみつつ、辺りを見渡す。だが見えるのは私達より大きくなった草むらだけであり、その中からはマムシの声が聞こえて来る。とても近付けない。

 

4回に渡って調査はしているが、全く持っての進展の無さに私達自身諦めようとしている始末。軽く口で息を吐いていると…脳裏に先程の悪夢が再びよぎり、そして何か声のような物が聞こえて来た。

 

「…っ!?どこかから声が…?」

 

「声?そんなの聞こえないよ?」

 

頭を若干抑える私にキョトンとした表情を浮かべながら近づいて来るメリー。気のせいか…と思い込んでいると、前方の草むらから何かの鳴き声が思い切り聞こえて来た。

 

「!?今の聞こえた!?」

 

「うん…聞こえた!!明らかに見知った動物の鳴き声じゃなかった!!」

 

あの声はこの鳴き声を示していたのだろうか。私とメリーは顔を合わせて同じタイミングで頷くと、声の聞こえた草むらに近づいていく。すると草むらが急に震え始め、そこから少し大きめの茶色の生き物がひょこりと私達の様子を伺うかのように姿を見せた。

 

「ぶい!ぶいぶい!」

 

見知らぬ鳴き声と共に唖然とする私達を置いてきぼりにする形で、草むらの中に入り込んで行く。先程聞こえた声とは多少違うが、あんな生物は見た事がない。私は息を呑むと…

 

「メリー!追うよ!!何かあるかも!!」

 

「ちょ、ちょっと蓮子!?」

 

茶色の生物を追って私達は思い切り草むらの中へただ突き進むのだった…




見て下さりありがとうございました。
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