早朝の時間帯。私とメリーは泊めさせて頂いた博麗神社にて目を覚ます。願い星をダイマックスバンドにする為に一度研究所に戻ったにとりさんが、再び博麗神社に来るまでの間、私達は朝食と着物への着替えを済ませる。着物は中々に動きにくい服装だが、裸で動くよりは断然マシと言うものだ。
一足先に人里に向かった霊夢の背中を見送りつつ、待つ事数分。2人で雑談しながら今着ている服におかしな所などないかを確認していると、私達の視界に息を切らしながら駆け寄って来たにとりさんの姿が入って来た。
「ごめん…待ったかい!?」
「いえ、大丈夫ですよ」
汗だくで然も息を切らしている。こんな状態のにとりさんに追い討ちをかけるかのように「待った」なんて、残酷な言葉を言える筈もなく、私は苦笑いを浮かべながら「大丈夫」と一言だけ呟く。にとりさんはそれを聞いて安心したかのように「良かった…」と呟くと一息吐いた後に私達の方を見つめる。
そしてそのままゆっくりながら近づいてくると、ポケットの中から二つ。リストバンドのような物を私達に渡して来た。メリーはそれを見て表情を明るくさせ…
「に、にとりさん…これが…!!」
「ああ…ダイマックスバンドだよ。ひとまず完成して良かったよ。人里への道のりはかなり過酷だから、きずぐすりとか使うのを忘れないでね」
霊夢さんも言っていたのだが、博麗神社から人里へは迷えば一日は掛かってしまう程の道のりらしい。そして更に今の状態では決して敵わないポケモンもウジャウジャいるとの事だ。にとりさんの言葉に改めて息を呑み、少しばかり拳を握りしめる。
そんな緊張したような表情を見せる私を見て、にとりさんは軽く微笑むと…
「何を緊張しているんだ蓮子。大丈夫だ。自分を信じればきっとたどり着けるさ」
「そうだよ蓮子!私達なら大丈夫だって!!」
にとりさんの言葉に同情するかのように声をかけてくれたメリー。私はただそれが嬉しく、かなりホッとさせられた。2人の方を交互に見つつ、一息吐くと私はゆっくりと頷く。私達が最初にたどり着いた場所が人里に通ずる道だった事を考えると、ゾッとするが不安を幾ら述べても意味がない。
そして2人の言葉に頷いた私を見てにとりさんが…
「いいかい2人共。ジムチャレンジ参加の受付時間は今日が終わるまでだ。普通に行けば正午にたどり着く道のりだから、慌てずにな」
「はい!!分かりました!!」
私達からの返事を聞き、にとりさんは安心したかのように微笑むと「それじゃ行ってこい!」と声を張り上げて送り出してくれた。期待と不安が交互に入れ混じる中、ゆっくりと歩き出した私に対し「お先に!!」と言って走り出したメリー。よく着物で走れるな…と思いつつ、私はその背中を追いかける。
博麗神社から徐々にながら離れて行くと、見えてきたのは最初イーブィを追って幻想郷に入ったと言う事を喜んだ場所。どこかしらから聞こえてくるポケモンの鳴き声に、バッグのポケットに入れてあるモンスターボールが微かに揺れる。
「不安なんだ…」
イーブィとロコンの不安を感じつつ、私は息を吐きながら前へと進んでいく。周りを少しでも見渡せば、見えるのは人間より遥かに巨大なポケモンや小さいポケモン達。 正直言って巨大なポケモンには恐怖という感情が湧いてくる。
「行くしかないよね…!!」
息を呑み、深呼吸を重ねつつただ前へ、前へと歩いて行く。すると耳に聞こえて来たのは草むらが揺れる音。巨大なポケモンなら既に見てきただけに、揺れの大きさだけでそこにいるポケモンが小さいのか、巨大なのかが区別が付く。草全体が揺れていない感じを見ると、恐らく小さなポケモンだろう。
だが幾らサイズの区別が付いたとしても、強さまでは分からない。私はバッグからモンスターボールを取り出し、イーブィを出す。イーブィは身体を震わせ、私の方を見つめてくるが、私の少し警戒したような表情を見て、前を見つめる。
「………」
全神経を前に集中していると、キョトンとしていたイーブィが鳴き声を上げると一直線に草むらの方にへと進んでいく。私はかなり慌てつつ、イーブィを追いかけようとしたが、イーブィはすぐに草むらから戻って来る。 何だったのだろうか?と思い込む前に、イーブィは私の方を見ながら鳴いて訴えかけて来た。
キョトンとしていたイーブィが鳴き声を上げたと言う事は何かあったと言う証拠なのだろう。私は再度、息を呑むと草むらの方にへと歩みを進めて行く。すると聞こえて来たのは少しばかり弱ったポケモンの鳴き声で…
「ポケモン…だよね…この鳴き声…」
聞こえて来たポケモンの鳴き声を耳にした私は、草むらをかぎ分けて見る。すると視界に入って来たのは傷だらけでその場に座り込む青いポケモン。当然野生、近くに仲間がいるかもしれないが弱っている感じを見るとそうには見えなく…
「…君、仲間は…?」
言葉なんて通じる筈もないのに、気がつけばそう呟いていた。青いポケモンは無言ながらも瞑っていた目を開けて、こちらを見つめるとまるでこちらの言葉を理解しているかのように首を横に振った。私はそのポケモンの行動にかなり驚いたが…
それよりもまさかずっとここにいるんじゃないか…?と言う事が頭を過ぎった。イーブィは依然として私の隣で鳴き続けている。少しばかり迷った私であったが、ゆっくりとそのポケモンに近づきしゃがみ込むと…
「…信用できないなら、攻撃してもいいから…」
言葉なんて通じる筈もないと思っていた。だがこのポケモンには私の言葉を理解してくれるだろうと言う期待が心の中にあった。バッグからきずぐすりを取り出し、ポケモンにつけて行く。ポケモンは痛がる反応を見せたが、攻撃はしてこない。ただ身を任せてくれている。
私がポケモンを治療し始めたのを見て、隣で喧しい程に鳴いていたイーブィが一切鳴かなくなり、その様子をジッと見つめる。今日が終わるまでには人里に辿りつかないと行けないのは分かっているが、これだけ傷付いている子を見ればほっとける筈もない。
ポケモンを治療し始めてから30分。薬を一本使い終わったその時にはポケモンの傷は一切なくなっていた。
「ふう…」
「………」
一息吐いた私の方を青いポケモンはジッと見つめていた。私はそのポケモンに軽く微笑みかけると、その場から立ち上がり去ろうとする。傷を治療したとはいえ、この子は野生。連れて行く権利もない。そう思っていたが、振り向いたその時に、服の袖を掴まれる感覚が…
服を掴まれる感覚に違和感を感じ、私が後ろに振り返ると先程の青いポケモンが相変わらず無言ながらもこちらをジッと見つめている。離さないでと言わんばかりに服の袖を力強く握りしめており、私は横目でこのポケモンを見つめながら一言だけ呟いた。
「もしかして…ついて来たいの?」
さすがにそんな好都合な事がある筈がない。と思いつつも私の口から溢れた言葉、青いポケモンは少し間を空けながらも私の方を見ながら思い切り頷いた。そのポケモンの反応に誰よりも驚いたのは私だった。 この後、何度も野生には戻れないという事を問いかけたが、意思は変わる気配がまるでないのか聞く耳も持たない。
このポケモンの反応を見て、私は覚悟を決めて一度しっかりとポケモンの方を見つめる為にその手を振り解くと、青いポケモンの方を見つめ…
「本気なんだね…分かった。だったら…行くよ…!!」
ポケモンはモンスターボールを向けた私に向かって力強く頷く。 そんなポケモンに向かって私はモンスターボールをコツンと当てて、その中に入れて行く。地面に落ちたモンスターボールは1、2、3と3回揺れてカチッと言う音を鳴らす。ポケモンの名前はリオル。私はそのポケモンが仲間になったのを見て、イーブィと共に喜んでいた…
ひとまずこんな感じでしょうか。