眼前に広がるは歩く人々の姿と門番をしているポケモンの姿。その奥には巨大なスタジアムのような場所が見える。私がびっくりしたのは人の多さ。やはり近くの安全地帯という事もあるのだろうか、今まで通って来た博麗神社やにとりさんの研究所より遥かに人が多いような気がする。
唖然とした感じで辺りを見渡しながら歩いていると何やら私の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。後ろからでも隣からでもない、前方からだ。私は声に導かれるかのようにただ歩いていくと…
「蓮子ー!!こっちこっちー!!」
声を張り上げてこちらに思い切り手を振るのはメリー。やはり先に走り出したという事もあり、たどり着くのも早かったようだ。そんなメリーの姿を見つけた私は少し駆け足気味に彼女の元に向かって行くと、何やら赤い屋根の建物の前に立っていたという事に気づく。
「ねぇメリー…この建物は…?」
「ん?ポケモンセンターというんだって。ポケモンとかを回復させてくれたり、買い物も出来るんだけど…寄ってく?」
どうやら入りたくて立っていた訳では無かったらしい。メリーの言葉に私は首を横に振ると、彼女は意外そうな表情で「そっか」と呟いた後、奥にある建物の方を指差す。メリーも私同様、霊夢さんと遭遇したらしいが、あの巨大なスタジアムにて開会式と参加の受付を行うらしい。
ポケモンの状態も気になるが、まずは参加受付が優先だろう。メリーに「参加受付しようよ」と言われたそのままに彼女と共に参加の受付を行っているというスタジアムに向かう。そこにて霊夢さんから貰った推薦状を出すみたいだ。
「それにしても私達が想像していた幻想郷とはまるでイメージが違うね。スタジアムにセンター。ポケモンが変えたというのはホントなんだね」
「信じてなかった訳じゃないけど、ここまでは想像してなかったな…」
実際私達のいた世界にもありそうな光景が眼前に広がっている事に対して、本当に驚きを隠せずにいた。辺りを見渡しても今風なファッションをしている人、幻想郷のイメージ通りの着物を着ている人など様々だが、それでも変わっているんだな…とにとりさん達の話しがホントだったんだなと実感させられる。
若干苦笑いを見せつつもただ前に進んでいると、私達はスタジアム前にたどり着く。改めて見渡しても大きな建物だ…近くで見れば見るほどにそう思ってしまう。
「これって自動ドアなのか…うわっ!?開いた!!」
私達がいた世界でも自動ドアというのは幾つも見てきたが、幻想郷のを改めて見ると何だか新鮮の気分になる。何故か緊張感も出てきた中で、一歩ずつスタジアム内にへと足を踏み入れる。すると視界に入って来たのは、既に受付を済ませたであろう参加者達。
何やら白いユニフォームを着ているようだが…
「サッカーみたいだね。私達も着る事になるのかな?」
「さあ…どうだろう…」
隣で参加者を見て苦笑いを浮かべるメリーに対して、少し顔を引きつる私。嫌という訳ではないが、私が想像していた幻想郷のイメージが破壊されているようで、びっくりはしていないが頭が少し真っ白になっていた。受付に向かって歩いていると、前では誰かが受付をしているようだが…
「先にやってる人がいるみたいだね。ちょっと待とう…」
と私がメリーに告げたのだが、メリーは何やら引いたような表情を浮かべている。私がそれを見て気になり、受付している人物を見つめると髪がアフロ気味という事以外は特に何も感じないが…
「どうしたの?何か気に入らないという感じがある…?」
「髪がアフロ気味だから…」
まさかの私の思った通りの事だった。少し拍子抜けのような感じがしたが、初めて見るだけの人物にはあまり興味を持たないメリーなだけに、意外とも感じたがまさか髪に嫌悪感を覚えているとは…こればかりはどうしようもないとしか言いようがないとは思う…
少し流すような感じで返事していると、その人物が受付から離れて行く。メリーは最後まで嫌がったような表情を見せていたが、まぁそれは人それぞれだ。私は気にしないようにしておこう。
「こんにちは。ジムチャレンジ参加なら推薦状をお願い致します」
「ほら、メリー」
「え?あ、うん!」
受付に近づくと推薦状を出してくれと言われ、私達は受付に推薦状を見せる。何も言わずに受け取ろうとした受付の男性ではあったが、私達を推薦したのが誰かというのを見た瞬間に驚きの表情を見せる。
「ち、チャンピオン!?チャンピオンからの推薦状って…アナタ達は一体…」
「少しばかり縁が出来まして…推薦してもらえる事になりました!」
「(それでいいのか…)」
メリーの言葉に疑問を抱いている間に、受付は驚きながらも彼女の勢いに押されるような感じで納得。そして数秒黙り込んだ後に息を整えると、受付の男性の口から出てきた言葉はやはり、参加者達が着ているユニフォームについての事で…
「開会式及び試合では白のユニフォームを着用します。背番号と服の大きさを選んでください」
「背番号…何でもいいんですか?」
「1番以外でしたら何でも」
恐らく一番は霊夢さんが付けているからだろう。まぁそれはさておき、少し塾考した結果、私は背番号82に。メリーは45番に決めた。服の大きさについては一応私も女の子である為黙っておく。一般的な感じと受け取って貰えたら有り難い。
少し時間を使って、私達の背ネームと背番号が記載されたユニフォームが完成。そのまま手渡され、私達は一度鞄の中に仕舞い込む。受付の方によると開会式は明日らしい。
「登録完了です。チャレンジャーの方は旅館に泊まって貰う事になります。このスタジアムの近くにあります。妖という旅館です。旅館まで案内の人を付けますので、その人について行って下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
自力で探してこいという感じではないようだ。ひとまずその面に対しては一安心だ。私とメリーは受付の方に頭を下げると、そのままスタジアムを後にしてひとまず外へ。外に向かうと受付の方が言った通り、1人の男性が私達の前にやって来た。
「チャレンジャーの方ですね。こちらへどうぞ案内します」
「ありがとうございます!」
隣のメリーからの声を上げての返事に男性だけではなく、私まで驚かせられる。男性に言われるがまま付いて行った私達ではあったが…
「ん?何かざわついているね…?」
旅館のような場所に近づいて行く度に聞こえてくる騒めき。何だろうと思いながら前方を見つめていると聞こえて来たのは、何やらラッパのような音。耳障りに聞こえつつもひとまず案内してくれた男性に礼を述べると…
「外だよね、明らか」
「うん。何だろう…?」
疑問に思いながら旅館「妖」に近づいて行くと見えてきたのは迷惑がっている人々の前にいる不良のような集団。誰かいるからだろうか、旅館の前に陣取っているというのは迷惑極まりない感じだ。
「ヒャッハー!!退いてほしかったらポケモン勝負するこった!!」
「だってさ。どうする蓮子…?」
「勝負しないと退いて貰えないし…やるしかないよ」
迷いはなかった。とりあえずは旅館に入りたいという気持ちが強い。かなり調子に乗ってラッパを鳴らしている不良のような集団の前に、メリーと2人で立つと…
「あん?何だてめぇら?」
「ポケモン勝負すれば良いんだよね?しようよ勝負。私達その先に行きたいからさ」
メリーは珍しく緊張している様子だったが、私はなぜかこの時だけは冷静だった。男が私達の前に立つとモンスターボールを構えたのだった…
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