魔美との出会いを経て旅館にいるメリーと合流した私。どうやら魔美が話しを通していたらしく、男達から謝罪の意味合いを兼ねた現金を受け取ったのだが、何と開会式に参加するジムチャレンジャーの宿泊費は運営が全額負担するという。有り難い事ではあるが、さすがに怖くなってくる。
そういう事もあり旅館には現金などを支払う事なく、一夜を過ごし翌日を迎えた。開会式に参加する為に朝食や着替えなどの準備を済ませ、旅館を出ようとしたのだが…
「…ん?」
「どしたのメリー?」
その入り口にて周りを見渡しながら立ち止まっている1人の少女を見て、メリーがその場に立ち止まったのだ。メリーが見ている同じ方角を見つめるとそこにいたのは、昨日会った魔美の姿。一体入り口前で何をしているのだろうか…
「ちょっと話しかけてみる?」
「奇遇だね。同じ事考えていたんだ」
誰かを待っているにしか見えない魔美の姿だが、いくら何でも気になる。メリーの提案を私は承諾し、2人で魔美に近づくと同時に声をかけてみる。
「魔美。ここで何してるの?」
「蓮子!そしてメリー!えっとね義母を待っていて…ジムリーダーだから早く行かないといけないのに…」
やはり人を待っていたようだ。お相手は魔美の母であるジムリーダーの人物。何者か分からないが、この先当たるとなると気になる存在ではあるが…
「義母さん、プライベート…特に寝起きはすっごく機嫌が悪くて…あまり今見るのはオススメ出来ないかな…」
「だってさ蓮子。ここは素直に魔美の言う事聞いた方がいいよ」
寝起きの機嫌の悪さは父親で経験しているだけに一瞬湧いた感情はあっという間に消え、メリーの言葉に頷いていた。私は一息吐きながら「そっかぁ…」とため息混じりに呟くと…
「じゃあ私達先に行くから、開会式に遅れないようにね」
「うん、分かった」
ジムリーダーの人物を見てみたい気持ちがあったが、機嫌が悪い状態で出てくるなら仕方ない。一瞬湧いた感情を入れ替え、私達はひとまず魔美より先に開会式の会場となる人里スタジアムへ赴く。
やはり幻想郷随一のイベントという事もあり、スタジアムに向かう道中はかなりの人集りが目に入る。向かっていない人からもジムチャレンジに関する話題が呟かれているようで…
「凄い人集りだね…これみんなチャレンジャーかな…!?」
「昨日行った時もかなりの人数だったからね…」
さすがに全員がジムチャレンジャーという訳ではないと思うが、それにしても道が塞がれてしまいがちになるぐらいの人の多さには驚かせらる要素しかない。辺りを見渡しながらも少し唖然としつつ、スタジアム内にへと入って行く。
ここに向かって来たジムチャレンジャー達は皆、更衣室に向かっているようだ。
「蓮子。82番のユニフォームは持ってるよね?」
「メリーこそ、45番のユニフォーム。しっかりと持ってるよね」
更衣室に入る前に私達は一度ユニフォームを見せ合い、互いを高めるかのように笑みを浮かべる。ひとまずある程度人が空くのを待ってから更衣室の中へ。さすがに男女別にしきりが作られているようで、ひとまずはホッとした。
着物からサッとユニフォームに着替えて更衣室を出る。改めてユニフォームを身に纏うと急に緊張し、さらには心の中が自然と燃え上がって来る。いよいよ始まるんだ…という気持ちが私の中を満たして行く。
「………」
着替えて更衣室から出ると、先に出ていたメリーが笑みを浮かべながら待っていた。何故笑みを浮かべているのか、気になった私がメリーに問いかけようとしたその時。私が言葉を発する前にその答えが返って来た。
「似合っているよ蓮子」
「め、メリーもだよ…!!」
急にメリーから褒められた物だからびっくりして声がひっくり返ってしまった。私の言葉にメリーはクスクスと笑うと一言「ありがとう」と呟く。随分余裕がありそうに感じてしまうが、気のせいだろうか。メリーに向かって苦笑いを浮かべていると…
「ご、ごめん!!遅くなった!!」
「あ、魔美…」
その場に急いでやって来たのは魔美の姿。ジムリーダーは別の場所にいるせいか、傍にはいない。私達が声をかける前に「ひとまず着替えて来る!!」と声を張り上げると、息を切らしながら更衣室へ。あまりに慌てた様子を見て何故か、慌てていた心が少しだけ落ち着いた気がする。
アナウンスが流れ、スタジアムコートに通ずる扉がゆっくりと開いて行く。開会式が始まるまで後10分。扉内に入って行くチャレンジャー達を見て、魔美は大丈夫かと言う感情が出てくるが…
「着替え終わった…!!」
「急いで魔美!!ひとまずコートに!!」
息を切らしながら私達の元に戻って来た魔美と共にスタジアムコートに通ずる扉を潜って行く。コートに近づいて行く度に歓声が大きくなって行き、少し走っていたその足が徐々にながら震え出す。歩くなどには支障はないが、まるでスポーツ選手にでもなった気分だ。
コートの芝を踏みながら辺りを見渡しても辺り一面観客の姿、そして歓声。近くにはこのジムチャレンジに参加したチャレンジャー達がいる。全員ライバルになる訳だ、規模がデカすぎてびっくりしてしまう。
「お集まりいただいた皆様!誠にありがとうございます!!」
周囲に少し圧倒されていると、どこかしら声が聞こえてくる。姿は見えないが一声だけで女性という事は分かる。魔美がこっそりと教えてくれたのだが、今喋っているのが主催者である八雲紫という人物だそうだ。祝辞を述べた後にその紫という人物がこの大会の説明を始めた。
「ジムチャレンジとは!!8つのジムを回り、最後の地、守矢スタジアムに向かうレースです!ジム内にはジムリーダーが存在!そのジムリーダーからバッジをもぎ取るのも内容の一つとなっております!!」
「守矢スタジアム…」
どうやら最終地は守矢スタジアムという場所になるそうだ。然もレースという事もあり、一斉にジムに押しかけるという事になる。規模が大きいという事もあり、かなり緊張して来る。そして紫の話しを聞いていると、彼女は息を少し整え…
「それでは!!ジムチャレンジャーが対するジムリーダーの皆様に登場していただきましょう!!どうぞコートへ!!」
コートの入り口が照らし出され、歓声が鎮まったと同時に足音が聞こえて来た。目を凝らしてみてみると丁度8人の姿。そして紫が再び息を整えて…
「では紹介致します!!」
紅魔の番人!!紅美鈴!!
人里の人格者!!上白沢慧音!!
炎の強者!!藤原妹紅!!
月の査定人!!蓬莱山輝夜!!
植物の母!!風見幽香!!
毒の人形!!メディスン・メランコリー!!
魔界出身の人形師!!アリス・マーガトロイド!!
そしてトップオブトップ!!霧雨魔理沙!!
「以上がジムリーダーの皆様です!!」
「あの霧雨魔理沙が私の義母さんだよ」
魔美の一言にかなり驚かせられた。トップオブトップ。確かにあの魔理沙という人物からはオーラが感じ取れ、あの鋭い目つきからは恐怖すら感じてしまう。あれが最後まで行けば立ち塞がるという事か…少し圧倒され気味になってしまう。
「燃えるじゃん!!あんなメンバーが相手だなんて!!」
「1人、こんな状況なのに寝ているような気が…?」
そう感じたのは1人目の紅魔の番人である紅美鈴。かなりウトウトしている様子だ。しっかりと並んでいるが、紫のコールが気に食わなかったのかとばかりに気を抜けた様子を見せるジムリーダーが何人か。本番になったら変わってくるのだろう…それだけに私はかなり警戒していた…
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