ジムに行く前のひと勝負を終えた私達は、ポケモンを回復させる為にポケモンセンターへ。ナースの方にポケモンを預けている間、雑談する事にしたのだが…
「そういえばさ。ほしがるの技、どうするの?あの訳の分からない技を覚えている訳だから…」
「確かに…あの技の正体が分からないと今後は3つの技で戦う事に…」
やはりメリーの口から出たのはイーブィが放った技の件。強引な形、いや運良くというべきか。あれのおかげで引き分けにまで持ち込めた事を考えれば、今後必要になってくる。逆に分からないと3つの技で戦う事になるだけに、その正体を知りたい所。するとメリーが何かを思い出したかのように…
「あ!そういえば、どこかのポケモンセンターに教え技について詳しく知ってる人がいるんだって。もしかしたらここにいるかも」
「…探してみる?もう少し時間ありそうだし…」
メリーの言葉がきっかけで私達は座っていたベンチを立ち上がり、ポケモンセンターにいるという教え技の人を探してみる。今覚えているびりびりエレキが元々は教え技という事もその人は知っていると思う。
ポケモンセンター内を見渡し、まずは休憩スペースでもあるカフェエリアにへと足を運ぶ。カフェだけかと思いきや、どちらかとフードコートに近く、うどんや天丼と言った看板が視界に入る。
「さすがにラーメンとかはないか…」
「メリー…ここに食べに来たんじゃないよ?」
メリーは私の言葉に対して苦笑い気味に「分かっているよ」と呟いた後に、そのエリアにへと足を運ぶ。多くの人が座り込んでおり、座る席もあまりないようにも見える。そして気になるのは歩いている人の数、少々探すにしては歩きづらいなと思った程。
「んー…ここにはいないのかなぁ…」
「でも人が集まれるスペースってここしかない気が…」
「だよねぇ…適当に話しかけてみる?」
視界に入るのは人、人そして人。本当に探すのが困難な程に人が多く、少しため息を吐きつつ私達は端っこ辺りから一面を見渡す。噂だけだとどんな人さえも分からないが…どうしよう…
少し考え込んでいると、とある男の人が私達の前で止まる。
「君達。先程、勝負していた子達だよね?」
「え…?あ、はい…!!」
「あ、アナタは…?」
シルクハットを深々と被り、タキシードを身につけた男性。シルクハットのせいか、きちんと素顔が見えないが少しだけ髭を蓄えているのが分かる。メリーがキョトンとした表情で問いかけると、男性は…
「私かい?名乗るほどの者ではないが、教え技おじさんと呼ばれているよ」
「え…!!」
私達の前に現れたのは今探していた教え技に関する人。性別もどんな格好をしている事さえ分からなかっただけに、これはラッキーとしか言いようがない。急に現れた事により、一瞬私が頭に真っ白になっていると男性は…
「君達が使っていたピカチュウとイーブィは私が技を教える事によって、「教え技」という強力な技を使えるようになるんだけど…そこの君のイーブィは教えてもないのに、使っていたよね?」
「そ、そうです…!とある人にも特殊だと言われて…」
男性は私からの言葉を聞くと「そうだろうね」と一言。そして少し黙り込んだメリーが男性に一つ問いかける。
「あ、あの!今ポケモンを預けていて…良ければ後で教え技を使えるようにして貰いたいです…!!」
「ピカチュウだね?分かった。後で伝授しよう。…だがその前に…」
メリーの頼みを男性はあっさりと受け入れると、私の方を再び見つめる。そして小さく、息を整えると…
「先程の勝負の最後で、指示した技を勝手に忘れてるという自体があったそうだが…」
「は、はい…それで身につけたのが教え技…だと思うんですけど…」
「びりびりエレキとは少し違ったよね」
勝負を見ていないのなら一から説明をしないと行けないが、男性は勝負を見てくれていただけに話しがスムーズに進んで行く。メリーの言葉と私の言葉を聞いた男性は、少し髭をさすりながら黙り込むと…
「恐らくわるわるゾーンじゃないかねぇ…」
「わるわるゾーン?」
「ああ。あくタイプの技でね、先程そこのお嬢ちゃんが言ったびりびりエレキに似た威力を持つ技さ」
適当に付けた感のある名前だけに少し拍子抜けしたような、そんな気持ちになってしまうが男性の言葉を聞いている内にそんな感情もあっさりと消えた。然しあくタイプの技…リオルがかみつくというあくタイプの技を覚えているが、それとは少し違うような感じのようだ。
「だが不思議なのはこうも何故、簡単に教え技を身につけているのかという事なんだよ」
「私のピカチュウも成長では覚えなくて…」
「意外だね…2人のピカチュウ、イーブィ共に覚えていると思っていたよ」
技の正体は分かったが、男性が気にしていたのは私のイーブィがどうして成長技として教え技を覚えているという事。その事を気にしていた様子だったが…
「何にせよ。他の教え技を覚えたいなら私の元に来るがいいよ。そこのお嬢ちゃんのピカチュウと共に技を覚えさせてあげよう」
「はい…!!ありがとうございます…!!」
男性はイーブィの事を気にしつつも、教え技を教えてくれると約束してくれた。そしてこの言葉を聞いた後にポケモンセンター内にアナウンスが。ポケモンの回復が終了した事と、私達の名前が呼ばれた。
「あ、呼ばれたのでこの辺で…!!後でまた来ます!!」
「ああ。待っているよ」
「教えて頂きありがとうございました!」
男性に礼を述べて、私達はカフェエリアから戻って行く。そしてナースの方から預けていたポケモンを受け取ると、メリーが私に…
「それじゃ私はあのおじさんに技を教えてもらうから…」
「次、戦う時は手強くなるなぁ…頑張ってね」
「うん!それじゃ、また会おうね!」
私の苦笑いを見て満面の笑みを浮かべたメリーは、そのまま背を向けてその場から去って行く。私はその背中を見送った後に、ポケモンセンターを出て一個目のジムがある場所に向かい始める。
「えっと…最初のジムは確か、紅魔ジムって言っていたよね…どこにあるんだろ…」
まずはそのジムに行けるルートを探さないと行けないと思った瞬間、とある森に入って行く大量の人の姿が。…恐らくあのルートなんだろう。なんて分かりやすいんだ…と思いつつ、私もその場所に足を運んでいく。
「ん…?あれって…」
足を運んで行くと見えてきたのは人の集まり。ただ進んでいるだけかと思いきや、そうでもないみたいだ。ポケモン勝負かな?と思い、その人集りの前に行くと、聞こえてきたのはサインを求める声。少し背伸びをして、奥を見てみるとそこにいたのは霊夢さんだ。
「霊夢さんだ。チャレンジャーにサイン求められて大変そうだなぁ…」
私は慌ただしくサインをしている霊夢さんを見て、迷惑をかける訳には行かないと思いその場所からゆっくりと離れて行き、元にいた集団の元に戻って行く。人について行くと入って行ったのは少し広々とした森。どうやら、分かれ道らしくここでみんな足を止めている。
分かれ道前にある看板を見ると、「少しでもチャレンジャーの数を減らすべく分かれ道にしました。外れても元に戻るだけなので、思い切り間違えてください」の文字。親切なのかいじわるなのか分からない感じに苦笑いしか出ないが、ひとまず私は左、真ん中、右がある内の真ん中に進んでみる。
「あってるのかな…」
そう不思議ながらも前に進んでいると、視界に入って来たのは緑色のポケモンがこちらにやってくる姿。そしてもう一つ視界に入ったのは開会式の会場受付で見た、1人の男性の姿だった…
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