謎の生き物は間違いなく、この草むらの中に入った。それは間違いのない事実だ。だが生き物はかなり小柄で、最悪踏みつけてしまう恐れがある。私とメリーは急ぎつつも慎重に、草むらをかぎ分けて前に進んでいく。草からの異臭、そして草が長いという事もあり、生き物探しが困難を極めたその時の事だった。
「ねぇ!!蓮子!!前が霧かがっているよ!何かあるんじゃない!?」
草むらをかぎ分けながら周りを見渡していると、近くにいたメリーが前方を指差す。すると普段は霧すらかかっていなく、ただ岩が置いてある場所から霧が発生していた。その霧は相当濃い物であり、幾ら目を凝らしてもその先が全く見えない。普段は行き止まりの筈の所…私はそう警戒していたが、メリーの真っ直ぐな目に背中を押された私は彼女と共に進んでいく。
霧かがっており、前は全く見えないが地面をしっかりと踏めているのは確か。分かっているのは今いる場所が行き止まりではないという事。ただ真っ直ぐに進んでいると、霧に加え急な突風が吹き始め帽子が何度も吹き飛ばされそうになる。だが懸命に帽子を抑えながらただ前へ。
「ねぇ…こんなにここ霧かがっていた…!?」
「かかってない…!!というかここに道すら無かった!!」
今戻ればもうこの現象は起きないかもしれない。横にメリーがいる事を確認しつつ、ただ、ただ前へ。頼りになるのは地面を踏み締めているという感覚だけ。互いに息を切らしながら、進んでいるとついに私達は草むらを抜けた。体には草血のような物が多く付いているが、そんな事は気にしていられない。先程の生物がいないか、辺りを見渡す。
「あの生き物…どこに行ったんだろう…?」
出たのは霧がかっている森。先程までの突風もなく、足元を頼りにしないといけないという事もないが、今分かるのは目の前にあの小さな生き物がいないという事だけ。だが、ここまで来て帰る訳にも行かない。不安そうに周りを見渡すメリーの隣で私は両頬を二回叩くと、勇気を出し前へと走り出す。
「れ、蓮子!?危ないよ!?」
そうは言いつつもきっちりと私の後ろを追いかけて来てくれるメリー。こんな現象だ、いつ元にいる場所に戻されてもおかしくない。どうせ戻されるのだったら、思い切り疲れて後悔したい。何て事を考えていると…
「ブイ!ブイブイ!!」
聞こえて来た先程の生物の鳴き声、姿はいないが間違いない。生き物はここにいる。メリーに迷惑をかける事を承知でさらに前へ走って行く。すると神社で見た生物の姿がようやく見え、隣にいたメリーの姿が見えなくなった。
「メリー…!?メリー!!」
先程まで無かった不安が急に出てくる。彼女が隣にいるだけでこんなに違うのかと実感させられたが、それよりも前から私を呼ぶかのように聞こえて来る生き物の鳴き声に、私は前に振り向く。すると生き物が私の方を見つめていた。私は息を呑み、生き物の方に歩み寄る。だが生き物は私に微笑むと、クルッと背を向け、そのまま先にへと走って行ってしまった。
「あ、待って!!」
メリーの事は気になるがまず追わないと。そんな感情が私をさらに前へと突き動かしていた。
私を見つめていた生物は間違いなく、どこかへ連れて行こうとしている。何にも分からないが、何故かそれだけは心の中で理解していた。そしてメリーの姿を気にする度に聞こえる生物の鳴き声。私の気はそれにより戻され、また前へと突き進む。一体メリーはどこに行ったのだろう。そして、私を呼ぶ生物は何者なのか?様々な疑問が頭を巡る中、私は霧がかかる前へと進んでいた。
「………」
疲れ切ったのか、私の呼吸は今まで以上に荒れそして目が虚ろになりかけていた。だがそれでも身体だけは止まる事なく、ただ前へと歩いていた。そんな時だった。前から急に光が差し込み、前が全く持って見えなくなった。だが分かるのは生物の声がさらに大きくなったという事だけ。私はその微かな事に希望を抱き、前に進んでいると…
「……子…!! 蓮…子.!!」
後方から聞こえて来た足音と声にまさかと思い、振り返るとそこには姿が見えなくなったメリーの姿が。これは疲れ過ぎた上で見えた幻覚か?と思ってしまったが見えるのは間違いなく、メリー。肩を揺らされ、目をしっかり開けた私にメリーはホッとしたような表情を見せ、深々とため息を吐いた。
「良かった蓮子…!!急に見えなくなったから…」
「メリー…?メリーだよね…?」
私の問いかけに対してメリーは即頷いた。彼女の頷きを見て私もかなり安心したが、メリーが見据えていたのは生物のいる前方で…
「追うんだよね。さっきの子。だったら行こうよ。見失うかもしれないよ」
「え、あ、うん…」
彼女に引っ張られる形で私はさらに前へ。光が差し込んでいる状態だった為、ほぼ前は何も見えない。だが懸命に前へと進んでいると、目を瞑らないと行けない程の光が消え、太陽のような光が私達に差し込む。私が息を呑む中、メリーは表情を一気に明るくさせて、私の方を見て語りかける。
「ねぇ蓮子!!太陽の光だよ!!きっとこの先に何かあるよ!!」
「あ、ちょ…メリー!!」
メリーは私の静止を無視し、そのまま前に向かって走り出す。私はメリーの行動に驚かされつつも、彼女を追って残る体力を使い果たす形で前へ。先程よりは走るスピードは遅くなっているが、立ち止まってはいられない。息を切らしながら走り切ると、太陽の光と共にとある森林のような景色が目に入った。
「森林…湖…」
太陽に森林。そして湖と先程までには全く持って見えなかった光景だ。私はこの景色に驚いていると、先にここに入り込んでいたメリーが私の方に振り返ると、猛スピードで駆け寄り、力強く手を握りしめ…
「蓮子!!図書館で見た写真の景色だよここ!!」
「写真…」
メリーに急に言われ、疑問しか出て来なかっ太陽が記憶を辿り図書館で見た幻想郷に関する資料にあった写真の事を思い出す。その瞬間、私も疲れなんて関係ないくらいに喜びがこみ上げ…
「ここは幻想郷…!!」
森林の景色と湖を見ながら私はそう呟くと、喜びを爆発させるかのようにメリーの方に振り向き、互いを抱き合った。服は汗で濡れていたが、そんな事今は良かった。分かるのは一つ。ここが幻想郷だと言う事実。その事がただ嬉しかったが、気になったのは…
「でもさ蓮子?幻想郷って妖精や妖怪が沢山いるって書いてあったよね?」
「あ…」
今目の前に見えるのは見た事のない生物達ばかり。妖精や妖怪の姿など全く持って見当たらない。これはどうしてだろうか。何という事を考えたが、そんな事よりもまず幻想郷が実在した。その事に不思議と嬉しい気持ちと安心したような感情があった。
「でも…ひとまず幻想郷に着けたんだしさ。その事をまず喜ぼうよ」
「そうだね!!本当に良かったよ〜」
メリーと共にまず幻想郷に辿り着けたと言う事を嬉しさとして分かち合う。そしてスッと真剣な表情に戻すと私達の話題は、突如として目の前に現れた一匹の生物の話しになっていた。
「ねぇ蓮子…」
「うん。分かってるよ。ひとまずその子を探そうよ」
私達の前に突如として現れたあの茶色の生物。私達はその一匹がどうして目の前に現れたかを気にしながら、ひとまず移動し始める。色々な所にいる生物達に驚き、興味を湧いていた私達。そんな中、私達は再び幻想郷に招いてくれたと言っても過言ではない茶色の生物を見つけ、慌てて追いかけたのだった…
小説書くのってこんなに大変でしたっけ…?