「……」
更衣室からでも聞こえてくる歓声。そして受付前に戻って来たチャレンジャーが観客に拍手で出迎えられる。ジムリーダーに勝った人だと思うけど、今からジムミッションにチャレンジする身からすればプレッシャーでしかない。
82番の背番号が付いたユニフォームを身にまとい、息を吐きながら更衣室の扉を開ける。景色は全く変わらないが、私から見える談笑するチャレンジャーの姿はとても輝いて見えていた。
「負けられない…!!」
静かに私はそう呟き、改めて受付の人の前へ。ジムミッションをする為に改めてどこに向かえばいいかの説明を受け、私は受付奥の開いた扉に向かって歩いていく。扉の中に入れば、見えた矢印。この矢印通りに進めばいいのだろう。
導かれるがまま、矢印の方向に進んでいくとすれ違ったのはジムミッションを失敗し戻って行くチャレンジャーの姿。成功している人ばかりではない。それを分かっただけに私の心は自然と引き締まっていた。
「………!」
矢印に導かれ、階段を降りて行くと見えたのは大きめのバトルコート。その奥には既に待ち構えている人物がいた。銀色の髪、そしてメイド服を身に付けた女性はじっとこちらを見つめ…
「次のチャレンジャーね。私はジムミッション担当の十六夜咲夜。準備が出来たならポケモンを出して」
「は、はい!!」
レミリアさんは確か、ここのジムがかくとうタイプの使い手と言っていた。それだけに出すポケモンも少し悩んでいたが、バッグに入っていたモンスターボールが突如として揺れだし、私が驚いている間にイーブィが元気そうな声を上げてバトルコートに出てきた。
「い、イーブィ!!だめだよ勝手に…」
「ブイブイ!!」
「いいじゃない。元気がある事は。さて、私もポケモンを出さないとね」
咲夜さんはイーブィと私のやり取りを見て少しクスッと微笑むと、表情を引き締めてポケモンを出してくる。出して来たのは小さな人型のポケモン。バルキーというらしい。そして咲夜さんはふぅ…と一息吐くと。
「ジムミッションはいわゆるジムリーダーに挑む資格があるかどうかのテスト。気を抜いてやると倒すから覚悟して」
「はい…!!お願いします…!!イーブィ行くよっ!!」
「ブイッ!!」
イーブィとバルキー。二体が表情を引き締め今にでも動き出せる状態に入った瞬間。バトルコートにバトル開始の鐘が鳴り響いた。私がイーブィに指示を出そうとした瞬間、咲夜さんがバルキーに一言指示を告げた。
「バルキー。ねこだまし」
「バルッ!!」
イーブィの前に一瞬で迫って来たバルキーが目の前で手を合わせる。直接的に殴られはしなかったが、これによりイーブィは腰を抜かした。その間に咲夜さんは畳み掛けるかのように指示を出す。
「バルキー、メガトンパンチ」
「イーブィ、でんこうせっか!!」
バルキーの拳をイーブィは私の指示を聞いた瞬間に、転がりながら回避。バルキーがそれを見て驚いている間にイーブィは体勢を整え、そのまま足元を蹴り出して思い切りバルキーにぶつかる。
「バルッ!?」
「畳み掛けるよイーブィ!!そのままでんこうせっか!!」
少し怯んだバルキーに対して私はもう一度イーブィにでんこうせっかを指示。一度イーブィがバルキーから離れると再度高速でバルキーにぶつかる。少しバルキーは吹き飛ばされかけたが、何とか踏ん張ると…
「バルキー!!メガトンパンチ!!」
「イーブィ、びりびりエレキッ!!」
拳を握りしめたバルキーが迫って来る間にイーブィに私は指示を出す。雷の衝撃波がバルキーに命中するが、バルキーはそんなの関係なしにイーブィに迫って来ると、そのままイーブィを思い切り殴りつけ吹き飛ばした。
「ブイィィ!!」
「バルキー!たいあたり!!」
「イーブィ、でんこうせっか!!」
イーブィが何とか踏ん張っている間にバルキーがたいあたりしようと迫って来る。イーブィが地面を抉りながら踏ん張ったのを確認し、私は指示を出す。たいあたりして来たバルキーに対し、でんこうせっかを指示。互いに迫って行き、思い切りぶつかり合う。
「バルッ…!!」
「ブイ…!!」
「イーブィ!!そのままの状態からびりびりエレキ!!」
ぶつかり合っている状態なら確実に攻撃が当たる。そう思った私は強行策に出た。イーブィにびりびりエレキを指示。咲夜さんのバルキーがかわそうとする前に、近くから雷の衝撃波がバルキーに命中する。これによりバルキーは少し吹き飛んだ後、膝をつき…
「中々やるわね…でも!!バルキー!!メガトンパンチ!!」
「バル…ッ!!」
「行くよイーブィ…でんこうせっか!!」
膝をついたバルキーだったが咲夜さんの指示により立ち上がると、そのまま拳を握りしめる。そのまま向かって来たその瞬間にイーブィにでんこうせっかを指示。思い切り足元を蹴り出して、迫り行くとバルキーより先にぶつかる。
それでもバルキーは耐え、そのままイーブィにメガトンパンチを喰らわすが…
「ブイ…!!」
「バル…!!」
「……!」
イーブィはメガトンパンチを食らっても尚、何とか踏ん張り立っていた。そしてメガトンパンチを喰らわせたバルキーも何とかイーブィを睨みつけていたが、急にフラついたかと思えばそのまま仰向けに倒れた。
「……!!」
「やった…!!やったよイーブィ!!」
素直にバルキーに勝った事が嬉しかった。イーブィも私と同じ感情だったようで、飛び跳ねながらこちらにやって来るとそのまま抱きついて来た。私達の様子を見て、咲夜さんはバルキーを戻して一息吐くと…
「お疲れ様。ひとまず合格よ。先に行きなさい。そろそろ前のチャレンジャーのジムリーダーへの挑戦が終わった頃だと思うわ」
「はい…!!ありがとうございました!!」
私はジムミッションを担当してくれた咲夜さんに礼を告げると、そのまま彼女の言う通りにバトルコートから試合会場に向かって歩いていく。歓声が鳴り止まない中、私はバルキーとの一戦で頑張ってくれたイーブィにキズ薬を使って回復させると…
試合会場のバトルコートに向かう通路からゆっくりと歩いていく。歓声がプレッシャーとなる中で一度戻っていたジムリーダー美鈴選手がゆっくりと、バトルコートに向かって逆の通路から歩いて来た。
「(この人が…ジムリーダー…!!)」
大きめの身長とチャイナ服を身に付けたのは咲夜さんが言っていたジムリーダーである美鈴さん。そのジムリーダーと向かい合った中で冷や汗が出てくる中で、美鈴さんはすぅ…と息を吸って吐いた後にゆっくりと語り出す。
「まずはジムミッション合格おめでとうございます。ジムリーダーの紅美鈴です。82番。蓮子さんですね。先程アナタの友達がジムバッジを貰ったばかりです」
「そうなんですね…」
「アナタはどうでしょうか。緊張しているようですが、私に勝つ自信は?」
笑みを見せながらもどこか真剣さを捻り込んだ言葉に私は改めて表情を引き締めながら、「あります」と声を張り上げる。それを聞いた美鈴さんは「それだけで十分です」と納得したかのように呟くと…
「では始めましょうか。私の実力を持ってその挑戦を跳ね除けてみせますから!!」
美鈴さんはそう呟くとゆっくりと私から離れていく。私も美鈴さんから少しだけ離れると、モンスターボールを出す構えを取る。湧き上がる歓声そしてジムリーダーを推す声。完全にアウェーな状況だが負けるわけには行かない。
「参ります!!行きますよバルキー!!」
「行くよ…ロコン!!」
美鈴さんはバルキーを繰り出し、私はロコンを繰り出す。大歓声の中、私の挑戦が幕を開ける…
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