「リオルか。若干不利だけど対せない程じゃないんだよね…!!」
「…!!」
魔美はリオルの姿を見て一瞬苦笑いを浮かべていたが、呼吸を整えると再び自信ありげな表情に戻る。彼女の言葉に答えるかのようにモルペコは黄色と黒色した姿から、紫色をした姿に変わった。表情も可愛げな感じから怒りに満ちたいかにも、凶暴な表情に様変わり。
驚く私を見て魔美はニヤリと笑みを浮かべながら…
「はらぺこスイッチ…!!強さに注意ね…!行くよモルペコ、かみつく!」
「リオル!いわくだき!」
同じタイミングで指示を出したものの、反応の速さは向こうの方が上。リオルが動きだしたその時には既にこちらに向かって飛びかかって来ていた。慌てたリオルだったが、その場に立ち止まり冷静にモルペコを待ち受ける。
モルペコがリオルに向かって口を開けた瞬間に、リオルも拳を突き出す。一瞬噛みつかれはしたものの、リオルの拳はモルペコの頰に命中しそのまま殴り飛ばした。
「うらら…!!」
「……!!」
モルペコは魔美の近くで体勢を立て直すとまた元の姿に戻る。これで優勢になったとはいい切れないが、これだけじゃ倒し切れないと判断した私はリオルに…
「リオル!いやなおと!」
「モルペコ!でんきショック!!」
反応の速さはモルペコの方が上だったが、この音を鳴らした際にはモルペコよりリオルの方が行動が早かった。モルペコが放ったでんきショックもあらぬ方向にへと逸れていき、リオルに当たる事はなかった。そして私は一気に畳み掛ける。
「行くよリオル!いわくだき!」
「モルペコ!でんこうせっか!」
不利になるのを防ごうとした魔美がモルペコにでんこうせっかを指示。この時はまたしてもモルペコの方がスピードは上。一気に迫られるとそのまま突進を食らったが、リオルは足に思い切り体重を込めて何とか踏ん張ると、そのままモルペコの顔面に拳を叩き込む。
モルペコはいわくだきをまともに食らうと魔美の前まで吹き飛んだ。しかもクリティカルダメージだった事もあり、一気に戦闘不能に。いやなおとが響いたんだと少し実感させられた瞬間。ホッと安心するのも束の間、魔美はモルペコを引っ込め…
「タタッコでもいいけど…確率は高い方がいい…!!行けカビゴン!!」
魔美が出してきたのはタタッコではなく三体目のカビゴン。リオルより遥かに大きく、さらに強そうな感じが伝わってくる。魔美はカビゴンを出した瞬間に自信を取り戻したかのようにニヤリとした表情を浮かべる。
「行くよリオル!いわくだき!」
「カビゴン!たいあたり!」
動き出すスピードは明らかにリオルの方が上だが、問題はここからだった。リオルは思い切りカビゴンの腹に拳を叩き込んだのだが、まるで聞いていないのか無表情ながらリオルを見つめるとそのままたいあたりを喰らわし、リオルを吹き飛ばす。
「リオル、大丈夫!?」
「……っ!!」
カビゴンの恐ろしさはその防御面と図体を生かした攻撃力にあった。1発食らっただけにも関わらず、リオルはフラフラと少し弱ってきた様子を見せている。一旦交代も考えたが、リオルが必死そうにしている以上、その意思をねじ曲げる訳には行かない。
「これで一気に倒すよ…カビゴン!のしかかり!!」
「(せめて一撃…!!)リオル、かみつく!!」
カビゴンが迫る中、何とリオルは私の指示を首を振って拒否。飛びかかって来たカビゴンに対して必死にリオルに訴えた私。だがリオルはその瞬間、歯を食いしばりながら強烈な光を放つ。
「!?」
「カビゴン、ストップ!!」
カビゴンが魔美の言葉と共にストップし、光が収まるまで見つめる。その光が収まるとリオルは少し大きくなり、顔立ちも少し大人びた姿となった。人と大して変わらない身長に、私自身驚く中で魔美は苦笑いを浮かべながら…
「まさかこのタイミングでルカリオに進化するなんて…然も相当懐いてないと進化しないのに…!!」
「進化…そしてルカリオ…それがリオルの新たな姿…」
私をルカリオは横目で見つめると、よく見ておけと言わんばかりに一息吐くと何やら力を溜め始め…
「まずい!カビゴン、のしかかり!!」
「ゔおおっ!!」
訳も分からないまま、私はルカリオの行動を見つめているとのしかかって来たカビゴンよりもルカリオは早く動き、溜めた力のような物を一気にカビゴンにぶつけて吹き飛ばす。当たった箇所や防御面の高さが影響してか、それなりにしかカビゴンは吹き飛ばなかったが…
「…そうしろって言うんだね…!!分かった…!!ルカリオ、はどうだん!!」
「カビゴン、もう一度のしかかり!!」
ルカリオが今度は私の指示に従い、はどうだんと言われる力を放出する弾をカビゴンに放って行く。カビゴンは今度は吹き飛ぶ事なく、踏ん張り切り今度はルカリオにのしかかってくる。ルカリオはカビゴンの一撃を受けるものの、あまり効いておらず、あっさりカビゴンから離れると…
「カビゴン、たいあたり!」
「ルカリオ、もう一回はどうだん!!」
のしかかるのをやめ、カビゴンにたいあたりを指示した魔美。カビゴンが巨体を揺らして向かって来る中、ルカリオはもう一度カビゴンに向かってはどうだんを放つ。カビゴンはまともに喰らい、少しは踏ん張っていたがすぐに吹き飛ばされて魔美の前まで吹き飛ぶ。
「カビゴン!!」
「………」
カビゴンの力は確かに圧倒的だった。リオルの力が通用しなかっただけに敗北も覚悟したが、リオルが進化した姿ルカリオにかなり助けられた。勝った気でいたが、忘れていた魔美にはもう一体ポケモンが…
「おい、そこのトレーナー二人!」
「げ!?」
「…?」
魔美がタタッコを繰り出そうとしたその時、私達がバトルしていたバトルコートに姿を見せたのは何やら少し銀髪の長身の女性。女性は怒り心頭で私達に声をかけるとそのまま近づいて来る。魔美はジェスチャーでポケモンを戻すように言ってくる。
何が何だかよく分からないが、従わないととんでもない事になりそうだ。とりあえずルカリオにお疲れとだけ告げ、そのままボールに戻す。
「こんな暗いのにポケモンバトルとは何事だ!」
「え、ええ!?いけないんですか!?」
「当たり前だ!変な奴に襲われたらどうする!?ほら、やめたやめた!」
何か反論したい所だが、女性が出すオーラから反論したらダメの気配が伝わって来る。渋々、魔美と共に女性に一礼してその場を離れる。気づけば夕方から太陽が完全に見えなくなる時刻になっていたようだ。それ程集中していたんだと思ったが…
「さっきの人、誰か分かる?」
「え?いや…分からないけど…」
魔美は女性から少し距離を取った後に私の方を見ながら話しかけてくる。女性についてらしいが、私には当然誰かは分からないが顔はどこかで見た事があるような気がする。魔美が女性の方を見つつ、何か自分の中で納得したような様子を見せているかと思えば…
「あの人、ここのジムリーダーの慧音さんだよ。普段は寺子屋の先生。だから怒られたら、とんでもなく長い説教か、頭突きが待ってる訳」
「頭突き…!?」
「そ、まあ当たるジムリーダーではあるから、今日の事は絶対言ってくるとは思うよ。頭突き喰らわないようにね」
魔美が少しヒソヒソ口気味に語りかけて来る。頭突きと聞いた瞬間にゾッとしたが、魔美があそこまで慧音というジムリーダーを意識するのはそれもあるのだろうか。魔美の言葉にひとまず私は頷いて対応すると、魔美は「先にジムバッジを手に入れるから」という私への宣言をして、私の元から去って行くのだった。
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