灯火の星   作:命 翼

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閑話回になりますかね。投稿します。


ショックと蓮子の決意

 キテルグマ来襲の件について私がポケモンセンターに駆け込んでいる間にすぐにリーグ関係者が現場に姿を見せた。近くには記者の姿、現場を抑えた霊夢さんへの取材が行われている。トレーナーとしての無力を感じた。イーブィはギリギリのタイミングで傷付かなかったが。

 

 後一歩タイミングが遅れていたらと思うとゾッとしてしまう。イーブィも怯えきった様子で辺りを見つめている。預けているロコン達の状態が不安になる程、私の中でも余裕がなかった。

 

「ごめんねイーブィ…怖い思いさせたね…」

 

「ブイ…」

 

 私の言葉に答えたイーブィの声はいつもみたいな元気良さが溢れる感じではなく、少し掠れたようなそんな怯えきった声。私がポケモンを出してなかったらポケモン達は傷付く事はなかったが、逆に出してなかったらあの青いポケモンを助けられなかったのではないか?

 

 ぎゅっと拳に力を入れ、ゆっくりと歯を食いしばる。ただ悔しかった。何も出来なかった事実。トレーナー失格だ…そう思うまでに私の心に罪悪感が充満していた。

 

「ポケモンを預けてくれた方ですね?」

 

「え?あ、はい…!!」

 

 ずっと椅子に座り込みながら私に近づいて来たのはポケモンを預け回復に当たってくれていたナースさん。普通はベルや放送などで呼ぶ筈なのにどうかしたのだろうか、私はゆっくりと立ち上がると視線をナースさんの方に向ける。

 

 ナースさんは私を見て息を呑むと…

 

「一体だけ。モンスターボールが機能しないんです」

 

「え…!?」

 

「ポケモン自体がモンスターボールから出るのを拒否してるかもしれません。滅多にないのですが、何か深い傷を抱いたのか…」

 

 そう告げると3つのモンスターボールを私に渡してくる。「ポケモンを保護してる慧音さんに一度話した方がいい」と言う事を告げつつ。私は恐る恐るモンスターボールからポケモンを出して行く。ルカリオ、そしてロコン。平気そうにしてる二体、そして出てこないのは…

 

「ドラメシヤ…」

 

「どんな事があって、中のポケモンが出てこないかはわかりません。然し…今この子はバトル出来る状態じゃないです」

 

「…そう…ですか…」

 

 圧倒的な敗戦、その力の差を見せつけられて来てからこうなるのはわかっていた事だ。トレーナーである私の責任。その重みが心にのしかかって行く。ナースさんに静かにありがとうございましたと私は告げると、ルカリオとロコンを再度ボールの中に戻しポケモンセンターを出て行く。

 

 イーブィもショックを受けながらも私を励まそうとしてくれているのか、肩に乗り顔をすりすりしてくる。そんなイーブィを私は軽く撫でながらひとまず私は先程いた慧音さんがいる寺子屋にへと足を進める。

 

「……」

 

 周りから聞こえてくるのは霊夢さんを讃える声。結局は解決した人がすごいんだなと言う事を思い知らされる。静かに出てきた悔しさを心に押し留めながら静かに寺子屋の門前へ。だがそこにいたのは待っていたと言わんばかりにこちらを見つめる慧音さん。

 

「来ると思ったよ。ナースさんに勧められたんだろ?」

 

「…はい」

 

「霊夢の口ぶりから私も不安になっていた。だが君が来たと言う事はそれが現実になったと言う事だ」

 

 お見通しかのように慧音さんは呟いて行く。こんな人に隠しても無駄だろう。私はドラメシヤがボールから出てこないという事を告げる。慧音さんは否定する素振りも見せずに淡々と頷くと…

 

「…なるほどな。分かった。ひとまずついてこい。その表情では今後ジムチャレンジは出来ないだろ?今のうちに紛い物を払っておこう」

 

「…はい」

 

 慧音さんの言う紛い物とはきっと私の中にあるストレス、落ち込みの部分を指摘しての事なのだろう。慧音さんに言われるがまま、私は寺子屋の中へ。庭で遊んでいる子供達とポケモンを足目に、そのまま家内に入って行く。

 

「普段は授業している場所だが今は気にしないで座ってくれ」

 

「…分かりました…」

 

 何が始まるのだろうか。生徒達が座っている畳に私は腰掛け、慧音さんはいつも立っている教壇らしき場所へ。キテルグマの来襲によりスタジアム含む様々な建物が一時閉鎖。だからだろうか、いつも以上に周りから聞こえてくるざわめきも強い気がする。

 

 何か始まるとたかをくくっていた私。然し数分経っても続く沈黙。どう言う事なのかと彼女に問いかけようとした瞬間、慧音さんが口を開く。

 

「キテルグマは凶暴な生き物でね。よくトラウマを植え付けられてトレーナーを辞めたと言う人も少なくはない」

 

「トレーナーを…?」

 

「ああ。君の中に問いたい。今後立ち塞がるジムリーダー達は曲者揃いの強敵だらけだ。私や美鈴のクラスより遥かに。君はどうしたい?」

 

 私は慧音さんの言葉に思わず息を呑む。分かっていた。私の中にこの際に諦めようとしていたほんの僅かの綻びを。慧音さんはそれを見抜いた上で問いかけて来たのだ。私は隣にいるイーブィの不安そうな表情を見た後に俯きながら…

 

「正直、私自身調子に乗っていた所もあるかもしれません。霊夢さんに推薦されて、ここまで無敗でした。分かっていたんです…でも自信がついたまま霊夢さんに挑みたかった…!!」

 

「……」

 

 つい溢れた本音。畳を濡らす涙は間違いなく悔しさから出てきたものだろう。慧音さんは私の言葉にただ頷くとスゥっと一呼吸入れた後、私の方を真剣な眼差しで見つめ…

 

「ここで力の差を感じて君はどう思った?」

 

「力不足だと…トレーナー失格だと…」

 

「そうか。ならどうしたい?ここでジムチャレンジを棄権するか、これを糧にして進むか。時間は待ってくれない。落ち込んでいる間に事は進んでいく」

 

 私がどうしたいか。トレーナーの不安がポケモン、イーブィを不安にさせる。だが私が棄権したらこの子達はどうなる?誰が面倒を見る?どうモチベーションを持たせる?疑問が溢れ出る中、モンスターボールから出てきたルカリオが私の背中を軽く押す。

 

「!?ルカリオ…!?」

 

「君のルカリオは…君ともっと冒険をしたいと言っているのかもな」

 

「ルカリオ…そっか…そうだよね…」

 

 ルカリオの行動は私に勇気を与えてくれた。私はスゥっと息を吸い、小さく吐くと慧音さんの方を真剣な眼差しで見つめ、ジムチャレンジを続けると宣言した。慧音さんは軽く微笑むと…

 

「君の判断。よーく分かった。今後の君の活躍を祈ってこれを渡す」

 

「わわっ!?」

 

 慧音さんが私に渡してきたのは何かの石のような物。キョトンとする私に対して慧音さんは…

 

「ほのおのいしという。君の手持ちのロコンを進化させるアイテムだ。進化したら元の姿には戻らないが、ロコンはどうしたいのだろうな。この際聞いてみるといい」

 

「…はい」

 

 慧音さんはロコンの反応を見たいという。その言葉に乗せられるかのようにロコンを私はボールから出すとロコンの前にほのおのいしを置いてみる。すると慧音さんが…

 

「ロコンの進化系、キュウコンはとても綺麗で強力な火力を持つポケモンだ。君のイーブィと同じくロコンも進化すればとんでもないポケモンとなる」

 

「慧音さん…」

 

「君からロコンの意思を問え。進化する、しないにしろ。迷いがあるかないか確かめたい」

 

 慧音さんの言う通り、私はロコンをじっと見つめ少ししゃがみ込むと…

 

「ロコン。これはほのおのいしと言ってアナタが…っ!?」

 

 ロコンの行動に迷いはなかった。咄嗟に動きロコンはほのおのいしに手をかざした。するとロコンの身体が光り始め、九尾の狐のような姿に。少し愛らしさもありながらのたくましくなったロコン。いやキュウコンと言うべきか。私はキュウコンを見て気づけば笑っていた。

 

「迷いなんてなかったようだね…アナタは元々バトル好きだもんね。慧音さん、私からお願いがあります。一時的にドラメシヤを預かってくれませんか?」

 

「急なお願いだな。迷いは…なさそうだな。分かった」

 

 今、ドラメシヤがいても戦力にもならないし、ドラメシヤ自体にプレッシャーがあるだろう。だったら休んでもらって心の紛い物を取った方がいい。そう思った私は慧音さんにドラメシヤを預ける。その決断に迷いはなかった…




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