「それではドラメシヤをよろしくお願いします」
「ああ。分かった、任せておけ」
ドラメシヤのモンスターボールを慧音さんに預け、三度彼女に頭を下げる。慧音さんは嫌そうな顔を一切する事なく笑みを浮かべると、私の肩をポンと叩く。安心して任せろと言わんばかりの彼女の行動に私は安心すると、笑みを浮かべつつ寺子屋を後にする。
次のジムリーダーは迷いの森にいる人物。宿に泊まっている際に聞いた噂だと、その3人目はダイマックスを使用しない人物だという。幻想郷には何人もいるらしいが、ダイマックスが当たり前の中でジム戦を行っていた為少し不思議な気分だ。
「どんな人物なんだろう…分かってるのはほのおタイプ使いという事だけど…」
一度開会式でその姿は見ているとはいえ、その時はガチガチに緊張していた為正直なところ、魔美とメリーと話していた内容しか記憶にはない。会って色々と確かめるしかない。そんな思いで迷いの森に向かって足を進めていると、先程までいたメディアの姿が居なくなっている。
「もう少し現場確認とかしそうな感じなんだけどな…人里に被害が出ていないからかな…」
周りを見ながらそんな事を呟いていると迷いの森入り口付近にどこかを見ながら立っていたのは先程、キテルグマから逃げていた青いポケモン。さっきは慧音さんの近くにいたけど、どうして再びここにいるんだろう…
どこかを見ていた青いポケモンがこちらに気づき、振り向く。鳴き声を上げながらゆっくりと近づいて来た。そして目の前で止まり、鳴き声を上げる。
「先程のお礼に来たの?…ありがとう。私は大丈夫だよ」
「………」
青いポケモンは目の前で私をじっと見つめている。ありがとうという言葉を求めている訳でもないみたいだ。三度小さくながらも鳴き声を上げると今度は私のバッグに近づき、じっと見つめる。キョトンとする私には目をくれず、じっとバッグを見つめる青いポケモン。
言葉が通じたら楽な事はないんだけどなぁ…と思いつつ、バッグを差し出してみると匂いを嗅ぎ始めた。もしかすると食べ物を狙っているとか、そんな感じなのだろうか。なんて事を考えていると…
「そのウッウは君のパートナーになりたいんじゃないかな?」
「…?…アナタは…?」
ウッウというポケモンの名前を上げるとそう推察をして来たのはカメラを持った一人の男性。先程のキテルグマの事件を取材していた者と口をすると、今私の近くにいるウッウについてこう語り始めた。
「先程、チャンピオンの取材をしている時に見たんだけど、誰かを探しているようで周りをキョロキョロしていた」
「誰かを…」
「ああ。ウッウは食欲旺盛でね、食べ物を前したら例え大事な人でも牙を向く厄介なポケモンなんだけど、他の人が食べ物を持って近づいて目見向きもしなかった」
私が落ち込んで慧音さんのいる寺子屋に行っていた時にそんな事が…全く後ろに振り向く事が出来なかった私は、この男性からの一言に大きく驚かせられた。そしてその食べ物に見向きもしなかったウッウは私に近づき、バッグをじっと見つめている…
「モンスターボールを出してごらん。きっと凄い反応を見せると思うよ」
「は、はい…」
言われるがまま、バッグからモンスターボールを出すとウッウは鳴き声を上げ食い入るようにモンスターボールを見つめ始めた。その様子を見て私は思わず笑みを溢したが、この子は野生。ルカリオの時のような感じにはならないとたかを括っていたが、そんな事は無さそうだ。
「…ウッウって言うんだよね、君の名前。キテルグマに惨敗するような情けないトレーナーだけど…良かったら私のパートナーになってくれないかな?」
キテルグマ戦での惨敗はウッウも見ていた筈。モンスターボールをグッと見つめていたこの子も最悪、気分が変わるかもしれない。私は不安だったが、ウッウは鳴き声を思い切り上げた。それを同意と見た私は一回頷くと、そのままモンスターボールを近づけウッウの額に当てる。
するとウッウはボールの中へ。ボールを持つ手の平が少し揺れる事3回。カチッという音が響き渡り、モンスターボールを胸元に近づけ何度も心の中でありがとうとつぶやいた。そして…
「ありがとうございます。アナタがいなければ、ウッウの意見がわからない所でした…」
「気にしないで。これがこの子にとって一番幸せな道だと思うから。それに、その子はみずタイプ。次のジムリーダーとの戦いでも絶対活躍するよ」
「みずタイプ…」
ウッウがみずタイプという事を聞き、もしかするとこの子はこれに備えて仲間になってくれたのではないかというとんでもない事を考えてしまった。みずタイプはほのおタイプにとっては天敵、ほのおタイプに打点がなかった私のパーティに打点を付けてくれた。
「さ、次のジムリーダーはダイマックスは使わないけどかなりの強敵だよ。頑張って」
「はい…!!ありがとうございました!」
私は記者の方に頭を下げて迷いの森の中へと進んでいく。既にジムリーダーに挑んでいる人もいるという話は耳に入っている。少し遅れ気味だが頑張るしかない。そんな思いを胸に森の中を進んで行ったのだが…
「あれ…?ここ、さっきも通った気が…」
迷いの森と言われるにふさわしい道中。イーブィやルカリオに助けてもらいながら、思考錯誤する事数分。周りをキョロキョロしていると見えてきたのは、少し開けた場所。如何にジム戦をしたという痕跡がちらほら見あたる中で…
「何だ、もう次のチャレンジャーが来たのか。やっぱりチャレンジャーにとってはポケモンがいればそんなに迷わないのかな?」
聞こえて来たのは一人の女性の声なのだが、姿は全く見えない。どこにいるのかなと周りを見渡していると、私の助けをしていたルカリオが上の方を見つめている。ルカリオに従うかのように上の方を見つめると…
大木の枝に堂々と座り込み、こちらを見つめる白髪の女性の姿。私が彼女を見て驚いていると、女性は笑みを浮かべながら近くに降りて来た。
「当然ながら初めまして、だね。私は妹紅。藤原妹紅。ジムに見えないような場所でジム戦を行っているジムリーダーさ」
「は、初めまして…えと…ミッションとかはされてないのですか?」
「ああ、ジムミッション?今のだよ。迷いの森にて私のジムを見つける作業。上手いこと貴女迷っていたね」
妹紅さんの笑みを見て確かに迷ったと思ったが、まさかあれがジムミッションだったとは…全然分からなかった。一瞬頭が真っ白になったが、ルカリオにしっかりしろとばかりに背中を押され、意識をはっきりとさせると…
「こ、コホン!!じ、ジムミッションも終わらせまし!!ジム戦お願いしてよろしいでしょうか!!」
「勢いだけはいいね。まあジムミッションをこなしてくれた訳だしね。いいよ、やろっか。こちらも準備しとくから。今のうちに選出するパートナーを決めといてね」
妹紅さんは緊張しながら呟く私を見てそう呟くとゆっくりと距離を取り、準備体操をする。相手が出してくるのはほのおタイプ。それだけは分かっている。大事なこの一戦、私は位置に着く前に出すパートナーをもう決めていた。
「準備…出来ました…!!」
「そっか。私もだよ。手加減はなし、全力でかかって来なね」
「はい…!!行くよ…ウッウ!!」
「マルヤクデ、任せたよ」
私の先手はウッウ。先程仲間になったばかりのウッウ。今回ルカリオ達はウッウの後のバックアップに回す。相手はマルヤクデ。炎を纏ったムカデのようなポケモンだ。勝るはウッウかマルヤクデか、緊張の一戦が始まろうとしていた…
見てくださりありがとうございますー。