「ほら。アンタのポケモンはみんな元気になったよ」
輝夜さんとの一戦を終え、ジムリーダーの試験としては不合格ながらもジムバッジを入手し、第一の関門を突破した私。傷ついたポケモン達を回復させる為に人里に戻る前にてゐさんの元へ足を運び、ポケモンを回復してもらっていた。
「ありがとうございます。色々とアドバイスをもらって勝つ事が出来ました」
「よせやい。ジムバッジをもらったのはアンタの実力だろ?ポケモン達を褒めてやりなよ」
てゐさんは私からの礼の言葉を聞き、少し照れ臭そうにしていたが笑みを浮かべながらモンスターボールを返してくれた。私はもう一度てゐさんに頭を下げて改めて礼を告げると、もう一度人里に戻る為にてゐさんの元を後にする。
再び差し掛かる迷いの森。意を決して再びルカリオやイーブィの力を頼りに突入しようとしたその時。ふと前から歩いて来た人を見てモンスターボールを出すのをやめた。
「よ。第一の関門突破、おめでとう」
少し笑みを浮かべながらその場に現れたのは久々の再会となるにとりさん。私は遠目からではその姿が分からなかったが、その声を聞いた瞬間に駆け寄って近づく。
「お久しぶりですにとりさん!!こんな所まで珍しいですね?」
「いやあ。ポケモン研究の為にたまたまここに寄ったんだけど、何せ快進撃を続けるジムチャレンジャーがいるもんだからさ。見に来ちゃった」
「あはは…まだまだですよ」
にとりさんという事が分かるとイーブィも勝手にボールから飛び出し、笑みを浮かべながらにとりさんに近づいて行く。私のイーブィも元々はと言うとにとりさんが保護していたポケモン。かなりの恩は感じているとは思う。
にとりさんに遠回しながら褒められ、少し照れ臭く笑みを浮かべているとにとりさんが…
「メリーの方は思い悩んでいるみたいだね。さっきここのジムに入って行くのを見たよ」
「あ、あのにとりさん…」
「言わなくていいよ蓮子。アンタは悪くない。トレーナーは絶対迷う時期が来るからね。アンタはいつも通り突き進んで、アイツを待てばいいと思う」
メリーが落ち込んだのは明らかに私とバトルをしてから。霊矢にやられたからと言う可能性もあるが、その事に対して少しだけ話を切り出したにとりさんに呟こうとしたが、読まれたかのように激励の一言をもらった。
この一言でメリーに対する不安が完全に消えた訳ではないが、少し和らいだのが事実。にとりさんの言葉に私は深々と頷くと…
「よし。じゃあこれからも頑張ってね蓮子。イーブィと共に頂点に立つ事を期待してるよ」
「ブイ!!」
「あはは…頑張ります」
にとりさんはこれからジムに入って行ったというメリーのジムチャレンジを次いでがてら見に行くと言う。そんなにとりさんからの激励を受け、少し苦笑いを浮かべる私とは対照的に力強く声を張り上げるイーブィ。にとりさんの背を見送った後に三度迷いの森に入ろうとしたのだが…
ドォン!!と前方から聞こえて来た大きな物音。私はそれに大きく驚いたがひとまず状況確認の為、音が聞こえて来た方角に向かって進んでいく事に。
「少し焦げ臭い…イーブィ!案内してくれる?」
「ブイ!!」
イーブィは前に出て少し焦げ臭い匂いがしている方角にへと走って行く。私が今いる場所は迷いの森。一瞬油断すると迷うかもしれない。それを警戒してイーブィについて行く形で進んで行ったのだが、そのポイントに近づけば近づくほどに焦げ臭い匂いが増して行く。
「この焦げ臭さ…まさか森が焼かれている…!?」
不安と疑問が入れ混じる中、先導してくれていたイーブィが前方を見ながら立ち止まる。私もイーブィと同じく足を止め、前方を見つめるとそこには迷いの森の竹が燃えており、さらにピンク色のポケモンと共にその光景を見つめているアフロ気味の頭をした少年がいた。
その姿を見て一瞬にしてその犯人が分かった。霊矢と近くにいるのがイーブィの進化系であるエーフィ。私は息を呑むと意を決して霊矢に話しかける。
「そこで何やってるの霊矢!!」
「ん…?ああ。アナタでしたか。簡単ですよ。他のジムチャレンジャーが迷わないように竹を燃やしているんです」
霊矢は私の方を見てため息を吐くやいなや、全く反省した素振りを見せる事なくニヤリとした笑みを浮かべながら燃えている竹の方を指差す。確かに迷いの森はスタジアムに向かうジムチャレンジャーが迷いやすくはなっているものの、誰もが燃やしてくれと言っている訳ではない。
「アンタ…こんな事をしてどうなるか分かっているの?」
「ええ。分かってます。チャンピオンが褒めてくれるんです。当たり前じゃないですか。そのためにやってるんですから…」
少し性格に難がある奴とは感じ取ってはいたがまさかここまでとは。怒りを拳を握りしめる事で隠し、まずはその堂々としているニヤけ面に一泡吹かせてやりたいと言う私の感情が勝り、気がつけばボールからウッウを繰り出していた。
「おや?そんなポケモンを繰り出してどうするつもりです?」
「ウッウ。アイツ巻き込んでもいいからなみのり」
側から見ればやり過ぎとしか見えない行動ではあったが、これ以外に一泡吹かせる方法がこの時に思いつかなかった。ウッウは私の指示を聞き、びっくりしながらも霊矢に向かって地面を叩き込み、巨大な波を放って行く。霊矢はかなりびっくりしながらなみのりを回避。
このウッウのなみのりにより竹についていた水を一気に鎮火した。
「っ!!最低だ…アナタはトレーナーの事をなんとも思わないのですか!?」
「アンタに一泡吹かせるには丁度いいでしょう。私もねはらわたが煮え繰り返りそうなのよ」
「ことごとくアナタとは気が合わないですねぇ…!!」
「奇遇ね。私もそんな事を思っていたわ。そのままポケモンバトルを申し込むわ」
ポケモンには申し訳ないがどうしても感情に身を任せたい状況だった。少し怒りの表情を霊矢に向けると、霊矢も怒りを見せながら「いいでしょう」と呟く。先手はその場にいたエーフィだ。
「ごめんウッウ。後で出してあげるから戻ってくれる?」
「クワッ!!」
ポケモンには申し訳ない気持ちで一杯だったが、そんな私の気持ちを汲み取ってくれたかのようにウッウはボールの中に戻りイーブィは私の前に出てエーフィに向かってうなり声を上げる。
「イーブィ…ごめんね。今だけは感情に身を任せた行動をさせて」
「私がこのバトルに勝てば、この事を訴えてやりますからね…!!」
「そうなっても構わない…!!そのかわりただで勝てると思わない事ね…!!」
全ての覚悟はしていた。ジムチャレンジャーの資格を剥奪されてもコイツには勝ちたいと言うのが今の本心だった。怒りを滲ませる霊矢に対して怒りの表情を向ける私。両者抱く思いが同じな中で…
「イーブィ、でんこうせっか!!」
「エーフィ!!こちらもでんこうせっかです!!」
イーブィ、エーフィ共に少し地面がぬかるんでいる中で足元を思い切り蹴り出し、お互いに向かって行くと思い切り頭をぶつけ合う。お互いを押し切ったようなそんな形でお互いに距離を取ると…
「とにかく先制したい。その思いがだだ漏れだったもんで」
「そっちも一緒じゃない?いかにも合わせたように言ってるけどさ」
「本当にムカつきますねアナタッ!!エーフィ、サイケこうせん!!」
「イーブィ、回避ッ!!」
霊矢が指示して来たエーフィのサイケこうせん。エーフィの額から光線が放たれたが、イーブィは軽々と回避した。怒りの感情はあるものの、心は冷静になっていた。少し呼吸を整えながら私はバトルに臨んでいく…
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