灯火の星   作:命 翼

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どうも。久しぶりに戦闘模写を書きました。良ければ見てくだされば幸いです。


初めてのポケモン勝負

「来たね…!!」

 

メリーは研究所から出た私を見てウキウキしている様子だった。どういう経緯で彼女が明るくなったかというのはさっぱり分からないが、その表情はどことなく自信に満ち溢れ、その姿は堂々としているようにも見えた。だが反対に少し緊張していた私には、メリーの堂々としているその面構えを見て少し羨ましくも感じていたが、彼女は私の心中を察する事なく話を続ける。

 

「私ね。今、すっごくワクワクしてる。だって未知の世界に踏み込んだって感じでさ。はち切れそうなくらいに、心が昂っているんだ…!!」

 

メリーは微笑みつつ、そう私に語りかける。彼女が少し力強く握りしめているモンスターボールに手汗が滲んでいるのが、分かるがメリー自身は緊張している様子は一切ない。そしてボールを持っていない手を胸に当て、深呼吸をするとグッとメリーは私に真剣な眼差しを見せ…

 

「覚悟は出来ているよね、蓮子!今の私は蓮子が止めても止まらないから!!」

 

「そうだね。気合いばかりが伝わって来るよ。私達自身が戦う訳じゃないのにさ」

 

メリーは私の返答を聞いた後に、満面の笑みを見せながら思い切り頷く。そして私から適度な距離を開け、再度深呼吸をするとモンスターボールを私に向け…

 

「行くよ蓮子!!ポケモン勝負!!」

 

「うん…!!」

 

高鳴る鼓動。緊張により早いペースで上がっていく心拍数。緊張しているのは間違いない。だがやると決めたんだ、だから全力でやる。私もポケットの中からモンスターボールを出した瞬間、メリーはニヤリと笑った後、真剣な表情となり、まるで野球ボールを投げるが如く深々と振りかぶり、思い切り「行っておいで!!」と声を張り上げてボールを地面に向かって投げた。

 

ボールから出て来たピカチュウが元気良く声を張り上げる中、私もモンスターボールを見て一回頷いた後に、メリーと同じ「行っておいで」の掛け声の元、地面にボールを投げつけ、イーブィを繰り出す。ピカチュウとは違い、一度周りをキョロキョロするイーブィではあったが、私の方を見た瞬間に状況を察知し、ピカチュウの方を見つめる。

 

イーブィは一度こちらをチラ見した。——私の指示を待っているのだろう。本当に始まるポケモン勝負、未だ実感が湧かないが深く考える訳には行かない、メリーは待ってくれない…!!

 

「行くよイーブィ…!!なきごえ!!」

 

「ブイ!!」

 

頭の中に出てきたワードを使って、イーブィに指示を出す。イーブィの声にピカチュウは少し怯んだようなそんな表情を見せるが、メリーはピカチュウに「大丈夫大丈夫!!」と語りかけた後に、思い切り声を張り上げる。

 

「ピカチュウ…でんきショック!!」

 

「ピカァ!!」

 

メリーの指示を聞いたピカチュウは全身に電気を溜めると、イーブィに向かって思い切り撃ち込む。イーブィがでんきショックを喰らい、少しの砂煙が私の方にまで舞う。結構な威力だっただけにイーブィが心配になり、その方を見るがイーブィは平気そうに身体を動かしていた。

 

——私はこれには驚いたが、逆にこうやって進んでいくんだという事も分かった。まだまだ知らない事だらけだが、頭の中に出てきたワード使って、イーブィに指示を出してみる。

 

「イーブィ…たいあたり!!」

 

「ブイ!!」

 

イーブィが思い切り駆け足でメリーのピカチュウの元に向かって行く中で、メリーも黙っている訳にも行かない。再びピカチュウに語りかける。

 

「ピカチュウ!!でんこうせっかでかわして!!」

 

ピカチュウはこの指示に従うと、物凄いスピードでイーブィがぶつかって来る前に攻撃を回避。少し地面を抉りながらイーブィの方に振り返ると、メリーは再び声を張り上げ、指示を出す。

 

「ピカチュウ、でんきショック!!」

 

「(溜め込む隙があるなら…!!)イーブィたいあたり!!」

 

ピカチュウはメリーの指示を聞き、再び電気を全身に溜め始める。溜め込む時間が少ない為か、すぐにイーブィに向かって電気を撃ち込む姿勢に入るが、逆に私が指示を出したイーブィがピカチュウの目の前へ。そのまま思い切り体当たりをし、ピカチュウの電気は空の方に逸れ…

 

「(少し怯んだ…!!)イーブィ、ほしがる!!」

 

「させない…!!ピカチュウ、体勢を立て直してでんこうせっか!!」

 

イーブィにピカチュウを追撃させるが、メリーの指示を聞いたピカチュウがすぐに体勢を立て直すと、地面を蹴り出して目にも留まらぬ速さで動き、イーブィにぶつかって通り過ぎる。幸い先程よりダメージは小さいみたいだが、あのスピードだ、必ず先制されるのは間違いないと思う。イーブィが少しふらつく間に、メリーはさらにピカチュウに指示を出す。

 

「ピカチュウ!! なきごえ!!」

 

ピカチュウのなきごえがふらつくイーブィの後方から響き渡る。イーブィは体全体を震わせ、青ざめた表情を浮かべたその瞬間。さらにメリーが追撃をかけるかのようにピカチュウに指示を出す。

 

「ピカチュウ…でんこうせっか!!」

 

でんきショックは強力だが、隙があると言うのをメリーが理解したのか。選んだ技はでんこうせっか。ピカチュウはその場の地面を蹴り出すと、表情が青ざめているイーブィの後方から、思い切りぶつかり、そのまま急ブレーキをかけ地面を抉りながら、イーブィの方に振り返る。 …私はこれを狙った。

 

「今だ…イーブィ、ほしがる!!」

 

技を出した後のすぐはピカチュウもあまり反応出来ない。そう読み切り、私は指示を出したがこれは一つの賭けでもあった。メリーがすぐに声を張り上げれば、そこまでの事だったが…

 

「ブイ!!」

 

「ピカッ!?」

 

イーブィの攻撃はあまり動けなくなっていたピカチュウに命中。少し吹き飛ばされると、メリーはそれを待っていたかのように微笑み「やったな!」と声を上げると、ピカチュウにさらなる指示を出す。

 

「ピカチュウ、しっぽをふる!!」

 

メリーの指示通り、ピカチュウはイーブィに背を向けしっぽを振る。イーブィは左右に揺れるピカチュウのしっぽをキョトンとした表情を浮かべながら追いかけるが、すぐにそれを見たメリーが指示を出す。

 

「今だ!!ピカチュウ、でんこうせっか!!」

 

「イーブィ!!かわして!!」

 

完全に油断しきったイーブィに私の指示は届かず、ピカチュウのでんこうせっかを再びまともに食らった。油断していたせいもあるのか、少し痛がるようなそんな表情を見せるイーブィ。そしてメリーが再びイーブィの方に振り返ったピカチュウに…

 

「今だ…でんきショック!!」

 

「イーブィ!! ほしがる!!」

 

今、でんきショックを食らえば間違いなくやられる。そう思った私は賭けに出てイーブィを攻勢に行かせた。でんきショックは強力だが、その分溜める時間が少しでも必要だからだ。ピカチュウは電気を全身に思い切り溜め込む間に、イーブィが必死にピカチュウの元へ。

 

「ブイ!!」

 

「ピカァ!!」

 

イーブィにピカチュウの電気が思い切り当たる中、ピカチュウにもイーブィの突進が直撃。当初はでんきショックにより巻き上がった砂煙のせいで、何も見えなかったが、後に二体がぶつかったのが目に見えた。空中に見える少しばかりの静電気を見て、私が息を呑んだ次の瞬間だった。 両者が思い切り地面に倒れ込んだのだ。

 

「イーブィ!!」

 

「ピカチュウ!!」

 

どうやら結果は相打ちだったようだ。両者、目がグルグルの状態で動く気配がない。慌てて私達がイーブィとピカチュウに近づき抱き抱えた瞬間、こうなる事を察していたかのようににとりさんが研究所の中からゆっくりと出てきた。

 

「にとりさん…」

 

「相打ちだったみたいだね。中から見てたよ。ひとまず二匹の傷を治すから一度、中においで」

 

怒られるかと思いきや、にとりさんの表情はよくやったと言わんばかりの笑みだった。私とメリーは言われるがままににとりさんについて行くのだった…

 

 




見て下さりありがとうございます。

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