地面は既にこれまでの戦闘から大きく荒れ果てている。そよ風から感じる匂いも何かが焼かれたかのように焦げ臭い匂い。鼻に感じるもの、耳に感じる音にも思わず顔をしかめてしまいそうなものばかりだが、集中しなければ勝てない。
私とメリー。お互いに呼吸を整え気合いを入れ直すと私より先にメリーが声を張り上げる。
「行くよバイウールー!ボディプレス!」
「やきつくす!」
先手の指示を出したのはメリー。バイウールーにボディプレスを指示すると、バイウールーは2歩前に進んだ直後に地面を抉りながらジャンプ。そのまま風の音を立てながらキュウコンに落下してくる。キュウコンも私の指示通りに息を溜め込むと一気に火焔玉として放出。
一直線に向かって来ていたバイウールーに命中はしたものの、気合いで突っ切られてしまいあっさりかき消されるとバイウールーの身体がキュウコンにのしかかった。
「っ…じんつうりき!」
バイウールーの体重全てがキュウコンにのしかかる中でキュウコンは念波でバイウールーを宙に浮かばせると、そのまま投げ飛ばしたかのように近くの地面に叩きつける。だが体勢を立て直すのもすぐ、上手く受身を取ったバイウールーに対しメリーは…
「しねんのずつき!」
「かえんほうしゃ!」
バイウールーは頭に念波を纏いそのままキュウコンにへと突撃。キュウコンも再度息を溜め込むと今度は火炎として口から放出。バイウールーにまたしても火炎が命中するが、今度は耐えきれず押し切られて吹き飛ばされる。だが問題はこの後。バイウールー方面から放たれた火炎によりかえんほうしゃがかき消され…
「っ!まねっこ!」
「こうする手もあるんだよ…さあ反撃するよバイウールー!すてみタックル!」
火炎の残り火があちらこちらに舞う中、バイウールーは足元を力強く蹴り出して突撃。バイウールーが一直線にこちらに向かって来る中、私は…
「キュウコン、おにび!」
「おにび?」
キュウコンは私の指示に頷くと軽く火の粉を放ち、バイウールーにぶつける。先程みたいにかき消されるかと思いきや、小さな火の粉はバイウールーの身体に浸透させやけど状態にさせる。バイウールーが熱がって動きを止めた瞬間に私はさらに動く。
「その時を待っていた!キュウコン、かえんほうしゃ!」
熱がっているバイウールーに対して放ったかえんほうしゃ。バイウールーに火炎が命中した瞬間に、それが着火剤となったのか大爆発。キュウコンも吹き飛ぶ羽目となったがすぐに私の目の前で踏ん張る。そして爆煙が晴れたかと思いきや、そこにいたバイウールーは戦闘不能の状態。
「バイウールー!」
「…最後じゃないんでしょメリー。もう一体まだいる」
「正解よ。あの醜態を見せて言えるものじゃないけど。私にはあの子がいる」
「…キュウコン戻って。あの子で勝負したい」
キュウコンをボールに戻しこのタイミングでポケモンを交代。私の後残っている手持ちはイーブィのみ。メリーは絶対一回は抜いたあの子を出してくるはず…!
「行くよイーブィ!」
「ピカチュウ!任せた!」
その場に出たのはイーブィとピカチュウ。きっとあの時より格段に強くなっている筈。何せその苦しみを近くで見て来ただろうから。イーブィ、ピカチュウ共に真剣な表情。メリーはそんな中軽く微笑む。何となくながらその気持ちはわかる気がする。
何故なら私はこの対面を楽しみにしていたから…!
「文句はなしだよメリー!イーブィ、びりびりエレキ!」
「ピカチュウ、10まんボルト!」
私の言葉にメリーは力強く頷くと私と同じくピカチュウに指示を出す。イーブィが放った雷の衝撃波とピカチュウが放った電撃がぶつかり合う。両者の一撃は互角で先程の大爆発に次いで再度爆発を巻き起こす。巻き起こった爆煙により前が見えなくなる中…
「ピカチュウ、あなをほる!」
「イーブィ、もう一度びりびりエレキ!」
とりあえず闇雲に攻撃を打っても意味がない。メリーが出した指示に警戒を示しつつ、私は再度びりびりエレキを指示。イーブィが放った雷の衝撃波で爆煙を晴らしていく間に、ピカチュウが地面を突き抜けそのままイーブィに突進を食らわせて吹き飛ばす。
「っ!イーブィ、ほしがる!」
「エレキボール!」
イーブィが何とか体勢を立て直したのを見て、私はほしがるを指示。イーブィが足元を蹴り出し、ピカチュウに迫って行く中でピカチュウは尻尾に電撃を溜め込み、一気に放出。電気球が一直線に向かっていたイーブィに命中し吹き飛ばされそうになったが、地面を抉りながら踏ん張り電気球を弾き返す。
「ピカッ!?」
「イーブィ、そのまま突っ込んで!」
ピカチュウにエレキボールがそのまま命中し、さらに追い討ちとばかりにイーブィがピカチュウにお返しと言わんばかりに突進を食らわせる。ピカチュウはこれを喰らい吹き飛んだが、両手を地面に付け身体全身で踏ん張り切ると…
「でんこうせっか!」
その足場を力強く蹴り出し、ジグザグに動きながらイーブィに接近。イーブィに反撃も防御の隙すら許さぬスピードで体当たりをかまし、イーブィをお返しとばかりに吹き飛ばす。だがイーブィもピカチュウ同様地面を抉りながら踏ん張り切る。
「イーブィ、きらきらストーム!」
「ピカチュウ、10まんボルト!」
イーブィが声を張り上げている間にピカチュウの体全体から発した電撃がイーブィに炸裂。イーブィを感電させて行く中でイーブィの一撃が空中からそのままピカチュウの元に炸裂。再び爆発を起こしたがイーブィは爆煙が起こる前にダウン。
そしてピカチュウは爆煙が晴れるまでじっと待っていたが…
「ぴ、ピカ…」
イーブィとは違う形ながらもそこには仰向けとなって戦闘不能となっているピカチュウの姿が。ほぼ相打ちという形だが、私にはまだキュウコンが残っている。私が「ふぅ…」と一息吐いた後にメリーはピカチュウをボールに戻し…
「これで最後だよ蓮子。私の負け…でも気迫は見せられたかなとは思う」
「本気なんだなという事が十分に伝わってきた。本当に強かったよ」
「ありがと蓮子。でも負けていたら意味がない」
私もメリーと同じくイーブィをボールに戻していると、メリーは私の言葉に笑みを浮かべつつもその眼差しは真剣そのもので。ゆっくりとメリーは私の近くにへと歩み寄ってくる。
「メリー…」
「私ね蓮子。アナタに勝ちたい。次どこで会うか分からないけど、その時は私の最高のメンバーを蓮子にぶつけるから!覚悟しておいてよね!」
私が気がつけば緊張がほぐれ笑みを浮かべていた。それと同じくしてメリーから感じた気迫が私の闘志に火をつける。メリーの言葉に私は力強く頷き返すと…
「私も今いるこの子達を精一杯強くしてメリーに再度挑むよ。今までの勝ちなんて私には関係ないから。その時まで誰にも負けちゃダメだよ!」
「もちろん!」
メリーはそういうと私に手を差し伸べてくる。私はその差し伸べて来た手に対して手を差し伸べ返し握手を交わす。この先メリーはどんなに強くなってくるのだろうか。彼女に負けないように私も鍛えていかないと。
「私、ポケモンセンターにまた戻るから会ったらその時はバトルしようね!」
メリーの言葉に対して再度強く頷き返す。メリーはその握手していた手を離すとそのまま私とは違う方向にへと歩いて行く。その背中が見えなくなるまで見送った後、私は太陽の畑の方にへと振り返ると…
「ポケモンを回復させつつ向かおう…」
ポケモン達の元気を戻しつつ、私はそのまま5、6人目のジムリーダーがいる太陽の畑にへと向かったのだった…
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