「ユキハミ、こなゆき!」
「ハミ!」
鈴蘭畑に泊めてもらった翌日。朝早くに目を覚ました私はたまたま起きて自主練習を繰り返していたユキハミに指示を与える。練習相手は敢えてユキハミにとって相性最悪なルカリオ。ユキハミの身体全体から放った吹雪がルカリオに命中して行くがやはりそよ風程度か。ルカリオはびくともしていない。
「その様子だと食らっても何にもない感じだね…」
「……」
ルカリオは私の言葉を聞きもう一度攻撃しろと言わんばかりに手の平をクイっと動かす。仲間の特訓相手になってくれると言う気持ちに感謝しつつ、ユキハミに再度こなゆきを指示。ユキハミは必死に吹雪をルカリオに向かって放って行くがやはりルカリオの表情は一切変わらない。
「特訓じゃないんだよね多分、ユキハミの進化って…」
「ハミ!」
「お疲れ様、ユキハミ。食事もあるし一旦ここまでにしよっか」
進化させた人がいないとされるユキハミ。ルカリオを進化させた私なら知っていると言う事はこの子に対する愛情という事になるのだろうか。ルカリオは充分時間があったが…もしこのままだとジムチャレンジ最後までこの姿という事になる。貴重な氷タイプの技を持っているし、このままでは逆にこの子に失礼かもしれない。
色々考える事があるがひとまずルカリオに傷薬を塗り、ダメージを回復させるとルカリオとユキハミ二体同時にボールの中に戻す。軽く私は息を吐くとそこに…
「おはよう。随分早起きなのね」
「あ、メディスンさんおはようございます」
「特訓でもしてた?」
「はい。ひとまずユキハミにはゆっくりでいいので戦い方を覚えて欲しいなって」
メディスンさんが私の背後から目を擦りながら話しかけて来た。あくびをする彼女にひとまず苦笑いを浮かべながら私はユキハミについて語っていたが、メディスンさんは目を擦りつつ一つ大きな息を吐くと…
「接して上げる時間も必要よ。確かにジムチャレンジ内では厳しいかもしれないけど」
「競争の中なんで…ひとまず与えられるだけの時間をこの子に上げたいとは思ってます」
「まあ、なるべく無理しない事ね。完走目指して頑張って」
メディスンさんの激励に私は大きく頷く。ひとまず私のポケモンみんなが起きるのを待ってから食事の時間へ。軽めの朝食をポケモン達と済ませ、メディスンさんとひとまず別れる形で鈴蘭畑を後にする。鈴蘭畑から出発し再び差し掛かった幽香さんがいる太陽の畑。
再び挨拶しようと思ったが今は不在の様子。少し周りを見渡しながら私はその場を静かに後にする。行きはメリーやジムチャレンジ等のバトルが重なり、鈴蘭畑に行くまでの時間が長くなったが帰りは誰にも会わない分早く戻れている気がする。
「えっと確かジムリーダーのアリスさんと魔理沙さんがいるスタジアムは魔法の森だったよね…人里に一旦戻るなら慧音さんの所に顔を出しておこうかな…」
幻想郷の地図を広げ歩きながら確認しつつ、人里にへと足を進めていく。アリスさんと魔理沙さんがいる場所は人里から少し離れた森。そこにスタジアムが二つある。アリスさんの所はスタジアムという名前ではなく、人形劇場という名前らしい。
そしてフェアリータイプの使い手…私のパーティの中にはルカリオしかフェアリータイプに対して大きく打点を取れるポケモンがいない為、余程苦しい場面に遭遇しない限りはイーブィ達で何とかしたいなぁ…
「ふぅ…少し考え込み過ぎかな。今作戦考えても意味ないよね…」
一度足を止め胸に手をやりながら小さく息を吐くとボソッと自分に言い聞かせるように言葉を呟き、再び歩き出す。人里の門番の方に一礼し人里の中へ。慧音さんの所にいるジムチャレンジャーが減ったからか、かなり静かになったような気がする。
「大分静かになったなぁ…やっぱりジムチャレンジャー達が違うところに行ったからかなぁ」
ふと周りを見渡し私はそう呟くとひとまずポケモンセンターにへと歩き始める。本当は慧音さんの顔を見たい所だが慧音さんもジムリーダー。この時間はスタジアムにて何かしらの作業等しているに違いない。そう私は思い込み足を進めていると…
「ん?」
寺子屋前にて1人の女性と話し合いながら立ち止まっている黒髪の少女の姿が。遠目からだった為誰かが分からなかったが、近づいて行く度にその少女が魔美だという事を思い出した。魔美の隣にいるのは慧音さんだろうか?
「おーい魔美!」
声を張り上げながら魔美の名前を叫びながら彼女に近寄って行く。魔美は声に気付きこちらに振り向くと、近づいて来た私に笑みを浮かべながら手を大きく振る。
「久しぶりだね蓮子!太陽の畑の方から帰って来たという事は順調にバッジを集めているみたいだね」
「魔美こそ。私より先に人里にいるという事は一歩早かったという感じだよね」
お互いに健闘を讃えあいながら笑みを浮かべていると魔美と話していた女性がこちらの注目を自分にやりたいのか、息を整える。よく見ていなかったから分からなかったが魔美が話していたのはどうやら慧音さんだったらしい。
慌てて私は慧音さんに頭を下げたが…
「そんなに慌てるな。たまたま行く道中で魔美と会ってな。2人共バッジ集めは順調みたいだな」
「はい!後アリスさんと魔理沙さんだけで…あ…」
「いいよ蓮子。義母さんは今私にとって通過点だから。名前出されたぐらいでムッとはしないよ」
「通過点か。そうだな。ただお前達にとってとんでもない壁になるのも間違いないよな。あの2人は私達から見ても別格だからなぁ」
ふと口を滑らせてしまったかなと私はかなり焦ったが寧ろ笑みを浮かべながら魔美は目標を口にした。その魔美の言葉を聞いた慧音さんは笑みを浮かべながら何回か頷くと、私達の方を見つめながら呟いて行く。その言葉に目を輝かせたのは魔美。
すると彼女は真っ直ぐな瞳でこちらを見つめると…
「蓮子、バトルしようよ!何か慧音さんの言葉で火がついた!」
「え!?今!?」
「そう今!ライバルが目の前にいるんだもん!私のポケモン達がどこまで強くなってるか見ておきたいし!」
「いいんじゃないか?今ならバトルコートも空いているだろうし」
力強く言い放つ魔美の言葉に押されつつも慧音さんの同意もあって、少々疲れている感じは否めないがひとまず魔美と共に慧音さんがいる寺子屋を後にし、空いている人里のバトルコートにへと足を運ぶ。お互いに距離を取り…
「手加減は当然なしだからね蓮子!」
「魔美も歩いて来ただろうに…元気だなぁ」
「だったら私の不戦勝にする?」
「それはさすがに嫌だね。やるからには勝ちに行くよ」
魔美の挑発にも似た発言に私の中のスイッチが入ったようで拳をグッと握りしめて表情を引き締めると「勝ちに行く」という強気の言葉を発した。その強気を聞いた魔美は笑みを浮かべると…
「言ったね?だったら私も全力で勝ちに行くから!」
「ありがとうね魔美。気合い入った」
「だったらもう気を遣わなくて大丈夫だね?よし…なら行くよ…モルペコ!」
「ドンとぶつかっておいで…ユキハミ!」
魔美と私。お互いに気合いを入れてモンスターボールを取り出すと思い切り振りかぶり魔美はモルペコ。そして私はこのバトルでデビュー戦となるユキハミを場に出す。
「ハミ!」
「魔美!この子にとってこれがデビュー戦になるけど、遠慮なくお願いね!」
「言ったね?だったら一撃でやられても何にも言わないよね?」
「もちろん…!」
気合い充分のユキハミと堂々と身構えるモルペコ。ユキハミにとってのデビュー戦はどんな感じになるのか、私自身ワクワクしていた…
バトル続きだったんで強引ではありますが閑話回にしてみました。