ポケモン勝負にて戦闘不能となったイーブィとピカチュウの治療の為、にとりさんに言われるがままに再度研究所に戻った私達。ポケモンに使うスプレー状の傷薬に興味が湧きつつも、それ以上にイーブィら二匹の傷がみるみると治って行くのを見て、驚きを隠せずにいた…
「ほい、治療完了。里に行けばポケモンセンターという無料で使える施設があるんだけど…こういう薬でも治せるから、渡しておくよ」
にとりさんはポケモンセンターという施設がある事を口にした上で、私達にイーブィらが入ったモンスターボールを再度渡してくれると、それと同時に棚に閉まってあったケースから、予備の傷薬やモンスターボールを数個渡してくれた。私達が今一度彼女にお礼を告げたその時、にとりさんの口がニヤリと笑い…
「保護していたポケモンとはいえ、ポケモンを託したんだ。それぐらいはするさね、そして…」
「そして?」
ニヤリと笑ったその口が気になりはしたが、その理由がすぐに分かった。にとりさんから「少し小話をしようか」と切り出されたのだ。何の話かは全く持って分からないが、私達が興味を惹かれる話題というのは察しが付く。さすがに結構です、何て言える筈もない。私達はその話に耳を傾ける事にした。
「近くにある神社にね、幻想郷で一番強いポケモントレーナーが帰ってきているんだよ。興味…ないかい?」
「幻想郷で一番強いポケモントレーナー…」
その話に私は思わず息を呑んだ。ポケモンの事についてなどは知っている事は殆どないが、少しかじった事なだけに興味はある。ニヤリと話すにとりさんを緊張気味に私は見つめていたのだが、隣にいたメリーが突如にとりさんに顔を近づけ…
「私…!!すっごく興味があります!!幻想郷の中で一番という事は、私のピカチュウより強いポケモンを持っているという事ですよね!!」
「あ、ああ…そういう事さ」
にとりさんはメリーの勢いに押されつつも、苦笑い気味ながらもメリーから少しだけ離れ息を整えて肯定する。にとりさんの言葉にメリーの表情はさらに輝きを増していき、次はその様子を見て驚いている私の方に視線を向ける。何かを期待してそうな表情だが、一体何を考えているのか…
蓮子!!というびっくりさせられるような声と共に、メリーは私の両肩を力強く掴み…
「折角だしその神社まで競争しようよ!!ポケモンいるし、絶対辿り着けるよ!!」
「え!?えぇ!?そんなの場所も知らないのに…」
一瞬、驚きつつも何を言っているのかが理解出来なかったが、理解した瞬間にあり得ないとも思った。冷静に振り返っても迷子になるのが見えているだけに、メリーにそれはやめようと私は促そうとしたが私達の前にいたにとりさんが突如として腹を抱えて笑い出し…
「違う世界で戸惑いを見せるどころか、生き生きしている奴は初めて見たよ…!!気に入った。場所を教えるよ、口で言うからよーく聞いておくんだよ?」
「はいっ!!」
メリーの無鉄砲気味な所を見て、少し嬉しそうな表情を浮かべつつその神社の事についてゆっくりと話し始める。その神社の名前は「博麗神社」その人物の名前は「博麗霊夢」と言うらしい。眩しいくらいに輝きを見せているメリーを見て、本当に大丈夫か…と思っていた私だが…
「この研究所を出て、すぐ右に曲がり真っ直ぐに進んでいくと鳥居のような物が見える筈さ。分からなかったらピカチュウとイーブィに頼るといいよ、二匹共行った事あるから」
「わっかりました!!そじゃ蓮子!!競争だからね!!」
にとりさんの説明が終わってすぐ、メリーは一呼吸置く事すらしないままに研究所を出る前ににとりさんに向かって頭を下げて、あっという間に出て行く。その瞬間的な出来事に私は呆れてはいたが、にとりさんはその様子に苦笑いを浮かべながら…
「賑やかな奴だね…ホント。アンタは行かなくて大丈夫なのかい?」
「いえ…行かないとメリーが怒りそうですし、行きますね」
私もにとりさんと同様、苦笑いを浮かべつつお世話になった礼として再び頭を下げる。若干嬉しそうな彼女を見て、私は軽く微笑んだ後に背を向けて研究所を出て行く。…と、ここまでは良かったのだが、研究所を出てすぐに私の足元に火が飛んできたのを見て、びっくりしていると…
「な、何…!?」
突然の事で辺りを見渡していると、飛んできた火の音を聞いていたのか。中にいたにとりさんがゆっくりと研究所から出てきた。軽く一息吐くと、びっくりしてキョロキョロしている私の肩を軽く叩き…
「見下げてごらん。犯人がすぐそこにいるから」
「え…?」
私は言われた当初はどう言う事かさっぱり分からなかったが、言われるがままに下を見てみるとそこにいたのは威嚇の声を上げている九尾のような尻尾をしている赤色の生物。恐らくポケモンなのだと思うが、どうやらイーブィやピカチュウ、ワンパチとは違う種類みたいだ。
「あれもポケモン…ですか?」
「ああ…あれはロコンだね。あんなに人を威嚇して攻撃してくる子を見るのは初めてだね…」
ロコンと呼ばれる生物は終始尻尾を逆立てて、私とにとりさんを威嚇している。にとりさん曰く、あんなに人を威嚇するタイプは初めて見たとの事だが、私にはただ威嚇しているだけに見えない気がした。
「あの子…もしかして何かを訴えようとしているのかもしれません…」
「どうしてそう思ったんだい?」
私の言葉を否定する事なく、尋ねてきたにとりさん。気にしなければ攻撃的とはいえ、人の前には現れない筈。だからってその逆立っている毛や尻尾から察するに、人に対して恐怖を抱いている訳じゃない。あれは恐らくだが、何か私達を試さんとしているかもしれない。 私は息を呑み、にとりさんに呟く。
「人嫌いなら…私達の前に現れないと思うんです。然も私達は見知らぬ人…あの目は…怯えている目じゃないです」
「……そうか。 なら向き合ってあげなよ。アンタなりの意思をロコンに伝えてあげな」
にとりさんは私の言葉を聞くと背中を押してくれた。私の推察は間違っているかもしれないが、このロコンからはそうとしか感じられない。私は一度モンスターボールからイーブィを出し、ロコンが何をしてくるのかの反応を見てみる。
「………」
ロコンはイーブィを見た瞬間に威嚇をやめ、尻尾を下ろす。少し匂いを嗅ぐようなそんな仕草を見せる。何か対応が変わった事に驚いていたにとりさんではあったが、この時自分でも信じられないくらいに私の頭の中は冷静だった。何があろうが対応出来るような、そんな自信があった。
ジッと見つめても先程までのようなロコンが威嚇する様子はない。だがその目からは何故か先程よりも遥かに敵意を感じられた。もしかしてこのロコンは元々好戦的で、こういうのを待っていたのかもしれない。…だったらそれに応えよう。私はイーブィに身構えるように指示を出してみる。
「イーブィ。身構えて、もしかしたら攻撃が来るかもしれない…」
イーブィに指示を出していたその時だった。ロコンは先程と標的を変えると今度はイーブィに火の粉を放って来たのだ。あらかじめ指示なしで身構えていたイーブィはこれを回避し、何かが待ち遠しいかのように私の方を見つめる。
「やる気満々って事ね…相手もこっちも…!!やるよイーブィ!!あのロコンに実力を見せつけようよ…!!」
「ブイ!!」
イーブィは私の言葉に返事して答えると、完全に戦闘態勢に入ったかのように身構える。ロコンは何か相手をしてくれたのを嬉しそうにすると、今度はイーブィを威嚇。メリーより先かどうかは分からないが、二度目のポケモンバトルを私は始めようとしていた…
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