私が早苗さんとバトルしてから少しの時間が流れ、ファイナル開催式の時間が刻々と迫る中再び守矢スタジアムに出向いた私を待っていたメリーが私にとある事を告げる。
「リーグ委員長が守矢スタジアムの経営者と話して不在?」
「うん。2時間くらい前だったかな。急にそれが決まったから運営も大慌てだったみたいだけど、とりあえずチャンピオンマッチまでは出番がない霊夢さんに代わりに開催宣言をしてもらう形で片付いたみたい」
「あまりに急だね…ファイナルの進行に問題はないって事?」
「うん。でも知っていなければいけない事だから慧音さんが蓮子に伝えておけって」
スタジアムの経営者…早苗さんと?ファイナル開催式は何事もなく開催されるそうだがリーグ委員長…確か紫さんだったか。出れなくなるのは少しびっくりだな。メリーの伝えてくれた言葉に私は感謝するとファイナル開催式に出席する為にスタジアムへ。
スタジアムの入り口に入ると客席にいるファン達が自分を見つめてくる。セミファイナルの時もそうだったが、やはり守矢スタジアムに舞台を移すとその歓声というのに重圧のような物を感じるような気がする。グッと気を引き締め更衣室へ足を運ぶ。
「あ」
「あ、あれ霊夢さん!?何でこんな所にいるんですか!?」
「うっさいわね。紫が祝辞を読む予定だったのにバックれたから覚えるのに必死なのよ。いくら出番がないとはいえ便利屋じゃないっての…」
更衣室にいたのは何と霊夢さん。チャンピオン専用の部屋もある筈なのだが…どうやら私しかここには来ないというのを見越して紫さんが読む予定だった祝辞を頭に叩き込んだらしい。いや私しか来ないとは思うけど何故ここで…
「ち、チャンピオン専用のルームとかは…」
「あんな所喧しくて覚えられないわよ」
「ええ…」
「とりあえず控え室で待ってなさい。チャンピオンは伊達じゃない事を見せてやるわ」
チャンピオンはポケモンバトルの実力なんじゃ…本当に大丈夫なのだろうかと内心思いながらもとりあえずユニフォームへの着替えを済ませる。理由は何であれ覚えるのに真剣な表情で祝辞を確認してるので、自分が心配する事ではないだろう。
少し一息を吐くと霊夢さんの気を紛らわさないように軽く一礼をすると私は更衣室から控え室にへと向かって行く。このユニフォームを着たからには歓声はあまり聞いてはいけない。少しプレッシャーになってしまうからだ。
「宇佐見蓮子さんですね。チャンピオンは…」
「更衣室にいました。専用ルームでは集中したい事が出来ないと言ってましたよ」
「昔から更衣室で何かを確認したり気合いを入れたりする人でしたから。控え室に案内します」
控え室の扉前にいたスタッフさんの一言で初めて更衣室にいた理由を理解した。だったらあれは霊夢さんなりの一つの戦闘態勢だったかもしれない。そんな事を考えながら控え室に案内されるとそこには既に揃っているジムリーダー8人。
ジムチャレンジで対している時は何とも思わなかったがこうやってみると多かったんだなと何となくながら感じる。少し驚く私の元に慧音さんが近づいてきた。
「何だ蓮子。今更怯えた訳ではないな?」
「無我夢中で戦っていたので改めて見て驚いただけです」
「そうか。対戦相手とかを確認しておけよ。誰と当たるかで戦略が変わってくるが…」
「?」
「答えを言うならお前の相手は私だ」
慧音さんがニヤリと微笑む。この発言を私は一瞬疑ったがトーナメント表を確認するとそこには私の対戦相手の名前に慧音さんの文字が。一層気を引き締める。トーナメント表が書かれたモニターを確認しに行った私の元に慧音さんが再度歩み寄り…
「お前とはある程度縁があるが…当たる以上は負ける気はない。ジムチャレンジのようなお試しでは行かないからな」
「はい…!」
慧音さんの次は輝夜さんや美鈴さんの名前があるがまず慧音さんに集中した方がいいだろう。その当人たちは話しかけられないほどに集中し切っている。少しリラックスしているのは慧音さんと魔理沙さん程度か。
全員と当たる可能性があると考えるととんでもなく気が引き締まる。そんな私と慧音さんの元にベンチに座っていた魔理沙さんが立ち上がり、スッと私に歩み寄る。
「…魔理沙さん…」
「他の奴と一緒で何か試合までのルーティンとかを持っていたら良かったのにな私も。…言わなくてもほとんど分かっているな?」
「大体は。魔美が敗れた地点で真っ先にその矛先が私やメリーに行くのは理解してました」
「お前とは決勝まで当たる事はない。慧音さんにあっさり負ける事があるなら私は許さない。分かったな?」
「…はい」
魔理沙さんからの言葉からはこの前みたいな緩んだような気は感じられず、感じられたのは明らかな圧。決して感情に突っ走っていないのも大体理解は出来る。感情で語りかけているなら隣にいる慧音さんが止めに入っている筈。
冷や汗を私がかきながら頷く中、スタッフの方が今控え室にいる全員に開催式がそろそろ行われるから向かってくれと語りかける。それぞれのルーティン、決まり事をこなしていたジムリーダー達が一斉にスタジアムのバトルコートに向かって歩き始めて行く。
「決勝でお前に勝つ。今告げるのはそれだけだ」
「分かりました…」
「火花を散らすのもいいが開催式もある。少し後にしてやれ」
「分かった」
魔理沙さんに思い切り圧をかけられた後に私は慧音さんと共にバトルコートにへと足を運ぶ。大歓声が上がるが今はジムリーダー達に向けられた感じだろう。ジムリーダー達が適当な位置につく中、守矢スタジアムのライトが一度全部消灯され…
「皆さんお待たせいたしました!セミファイナルを勝ち上がった蓮子選手を含めたジムリーダー9人で戦うファイナルトーナメント!このトーナメントを勝ち上がった者が霊夢選手が待つチャンピオンマッチにへと進出となります!」
「……」
「それではまずは開催宣言をしてもらいましょう!このファイナルトーナメント開催を宣言してくれるのはチャンピオン霊夢選手です!」
消灯されたライトが登場してきた霊夢さんに差し向けられる。スタジアム中が地響きが起こりそうな大歓声を上げる中、霊夢さんが若干眩しそうにしながら息を整える。スタジアム中の視線が今だけチャンピオン霊夢に差し向けられる中…
「私は博麗霊夢。訳あってリーグ委員長の祝辞を述べさせていただくわ。ファイナルトーナメント開催にあたって散って行った多くのジムチャレンジャー。残った9人で私の所にまで上がってくるのを大いに期待してるわ」
「ファイナルトーナメント開催をここで宣言するわ!」
霊夢さんがそう声を張り上げると祝辞を述べていた時に静かだったスタジアム中が再び湧き上がり、ジムリーダー達が気合いを入れ直したようなそんな表情を浮かべる。消えていたライトが再びつき直し私も拳をグッと握りしめながら気合いを入れ直す。
「やり切ったな霊夢の奴…」
「急遽開催宣言の祝辞を述べるのが決まったんですけどね。結局あの人のパフォーマンスみたいになりました」
「パフォーマンスをやるなら覆してやればいいじゃないか。そろそろ土を付けないと私達もジムリーダーをやっている意味がない」
準備のため一度控え室に戻る私達。その前にいるジムリーダー達から思わず喋り声が漏れる。聞こえてきた声に歩きながら耳を澄ました私だったが、慧音さんがいつもの事だ気にするなと私に一言告げる。
私は頷きながらも心の中では霊夢さんに対しての闘志を熱く燃やしていた…
見てくださりありがとうございます。
次回から本格的にバトルが始まります。蓮子の相手は慧音。
思う存分頑張りますので読んでくださると嬉しいです。
では次回へ。