大々的に幻想郷の新聞の一面にはチャレンジャーである私の快進撃が報じられる。チャレンジャーがチャンピオンマッチに進出するのは5年ぶりとの事。そこまではずっと魔理沙さんが進出しておりその期間は魔理沙さんという壁を誰も越えられてなかった。
誰もが羨むチャンピオン霊夢さんのライバル。それが魔理沙さんだった。ファイナル突破を決めさらに気持ちが強くなった後の翌日。私はこのままでは霊夢さんに勝てないと人里を抜けようとしていた。
「チャンピオンマッチまで後3日…そこまでにもっと力を付けないと。あの魔理沙さんが5回やって5回負けている存在だから」
「ブイ!」
「イーブィ…力入りすぎてる?大丈夫だよこの力みは3日間で自信に変えるから」
人里を抜けた先に待つ大きな草原。幻想郷で唯一単独での突破が厳しいとされるエリア。博麗神社に通ずる道にはとんでもなく強力なポケモンがコレでもかといる。メリーもセミファイナルまでその場所で特訓していたらしい。私にとってはキテルグマに襲われて以来だが…
自信が大きくなかったあの時よりは強くなった。もう大丈夫だ。堂々と人里の門を抜けその草原に向かおうとしたその時だった。突如前から突風が吹いて来たと思えば前から羽音。そして目の前に1人の女性が降り立って来た。
「チャンピオンマッチを決めたチャレンジャーさん。お久しぶりです」
「あ、アナタは確か記者の方々の…!」
「そう。射命丸文でございます。ジムチャレンジはこの期間の中では幻想郷の中の大イベントの一つ。チャンピオンマッチなんてスタジアムに入りきれない程の客が入ってくるビッグマッチです」
「つまり…そこに行く事が決まった私が凄いと?」
「ややこしくなってしまいましたね。ええそうです。そして今はそのチャンピオンマッチに備えて鍛えに行こうとしているのですね?」
「そうなりますね。自信を盤石な物にしたいので」
私の前に現れたのは文さん。セミファイナルが始まる前に取材をしてもらった記者さんだ。私の目は間違っていなかったと言わんばかりに目を輝かせながら話しかけてくる彼女の勢いに少し気持ちが押されそうにはなっていたが冷静に対応する。
すると文さんがなるほど!と笑みを浮かべながら呟いたその時だった。
「そういえば知っていますか?大会委員長とスタジアムを貸している守矢の様子がおかしい事を」
「え?どういう事ですか?」
「私も有識者から得た情報なので全てが定かではありませんがジムチャレンジを良くないと思っている輩がいるようでして。どこかで潰せないかと企む連中がいるそうです」
「もし…それが嘘なら…」
「私もとんでもない事話しているのは理解できますがねえ。話してくれた有識者が自信満々で話してくれるもんですからねえ」
情報が定かではない。でもその情報を有識者は文さんに堂々と語っていたという事なのだろう。私は少し信じられない気持ちになった。だが文さんは周りを見ながら私に近づくと…
「あえて聞かれても大して広がらなさそうな場所で話していますがシークレットですので。この件は内密にお願いします」
「内密な件をどうしてチャレンジャーである私に?」
「噂が本当だったらすぐ動いてもらいたいからですよ。霊夢さんはそもそも面会を却下されたんで。強引ではありますが心構えだけよろしくお願いします」
「わ、分かりました…」
「それじゃ。噂にされると面倒なので私は退散致しますね。修行頑張ってください」
要件をあらかた伝えた文さんは私に一礼するとその場から飛び立ちあっという間にその場から去って行く。私は飛び立った文さんの背を見えなくなるまで見た後にグッと拳を握りしめる。心の中にはそんな事はあり得ないという思いが充満していた。
ただ…もし本当の事だったらと思うと。…嫌な事を考えさせられたかもしれない。深呼吸をし心配そうに見つめていたイーブィと顔を見合わせる。イーブィに笑みを浮かべた後にもう一度草原に向かって進み始めようとしたまたしてもその時だった。
悪い予感はあっという間に的中した。人里の方から聞こえて来た爆発音は文さんが話していた悪い噂を現実にする物だったのだろう。振り返ると人里では何も起きていない。人々はとある一点を見つめている。
「ブイ…」
「文さんが話してくれている間にも何かしらの動きがあった…という事なのかも。現実になってほしくないという思いは強かったけど…仕方ないよね。行こうイーブィ。何が起きたか確かめなくちゃ」
「ブイ!」
人里に再び戻り爆発音がした方向に走り出す。人々が不安そうに見つめるのは先程まで滞在していた守矢スタジアムの方。人里からはあまり分からないが山に煙のような物が出ているのが理解できる。守矢スタジアムに向かって走り出したその時だった。
不安がる人々の中に明らかに私の進路を防ごうとして現れた1人の女性。足を止めた私に対して笑みを浮かべながら質問して来た。
「そんな真剣な表情をしてどこに行く?チャレンジャー」
「爆発音の方向を確かめに行こうと…」
「その必要はない。あれは幻想郷とこれからのジムチャレンジに重要な事だ」
「見知らぬ人の言葉をはいそうですかと信じられるとでも?」
「名前を語ったら更に警戒心が高まると思ってな。だがそこまで行ってたら隠す必要もないか」
私の問いかけに対して分かっていたかのように笑った女性はモンスターボールを出すと空中に高々に投げる。空中から出て来たのは一体の人型のようなポケモン。場に人がたくさんいる事から関係なしに繰り出した彼女に驚きを隠せない。だが女性はそんな周り関係なしと言った感じで…
「私は八坂神奈子。お前が会った東風谷早苗、洩矢諏訪子とは知り合いでもある。お前が言いたいのはこんな周りでポケモンを堂々と出すなんて…という事だろう?皆まで言わなくてもわかる」
「だったらどうして…!」
「あの爆発は我々が関与していてな。早苗が頑張ってくれる事でそれが成功する。私は足止めだ。今霊夢とほぼ同じくらいに強いお前を行かせる訳には行かない」
「……」
「先に行きたいのなら私を通してもらおうか。そうしなければお前はカイリキーに吹き飛ばされる事になる」
「…分かりました。そこを通してもらいます。行くよイーブィ!」
「ブイ!」
立ち塞がって来た神奈子さんの前にはカイリキーと呼ばれるポケモン。周りがざわめき出したがやらなければこちらが吹き飛ばされる。私は覚悟を決めると肩に乗っていたイーブィを前に。神奈子さんはずっと笑みを浮かべている。その笑みは余裕からなのかわからない。
「お、おい!ここは里の中だぞ!?」
「守矢の権利でここをフィールドとする。文句はあるまい?」
「ぐ…!ご、強引な…!」
「さて先程も言ったが通させる訳には行かないからな。意地でも防がせてもらう」
苦情を入れようとした男性に睨みを効かせて撃退すると再び笑みを浮かべながら私の方に見つめる。カイリキーというポケモンは今にでも飛び出して来そうなくらいに鼻息を荒くしている。イーブィも表情を相当真剣にしている中神奈子さんがゆっくり口を開き…
「カイリキー、じしん」
「っ!ほしがる!」
向こうは止められたらいいから里への影響なんてお構いなしだ。カイリキーは容赦なしに地面を叩きつけると衝撃波を発生させる。イーブィは走りながらジャンプしてかわすとそのままカイリキーに体当たりを喰らわせる。
イーブィがそのままカイリキーを吹き飛ばしたがその損害は微々たるもの。すぐに踏ん張る。こんなに集中出来ない勝負は初めてかもしれないがやるしかない。私は少し歯を食いしばった…
まずは前座。神奈子さんが立ち塞がりました。まあ察する方もいるかもしれませんがまあゆっくり書いていきます。見てくださりありがとうございます。