「幻想郷に…雲が…」
「守矢の方が呼び起こしたというポケモンが巻き起こした物なんですかね」
滞在先の守矢スタジアム周辺から幻想郷の地域全てにかかったドス黒い雲。幸いかつてレミリア達が起こした異変に比べて無害ではあるが、昼間は気持ちよく昼寝でも出来るくらいの青空だっただけに幻想郷にかかった雲は人々に不安の気持ちを駆り立てさせる。
魔美と霊矢はその雲を巻き起こした正体を視界に捉えていた。だが彼女達より先に蓮子とメリーが先行していたのは事実。二人と同じくただそのドス黒い雲を見つめるだけだった魔理沙が魔美と霊矢の元に小さな足音と共に近寄る。
「信じるしかないだろ。あそこにいる全員を」
「お母さん?」
「そこで信じられないのならアイツらは何のためにあのポケモンの所に出向いたんだよ」
「魔理沙さん…」
(何も出来ないまま終わる訳ないよな蓮子…お前には霊夢を倒して貰わないと行けないんだからよ)
信じようと言った魔理沙の表情には当然緩みのような笑みはない。だが魔美や霊矢と同じく彼女も信じるしかなかった。人々の想いがムゲンダイナと対している蓮子達に注がれる中、ムゲンダイナの足止めを食らっている現場ではエネルギーを溜め込むムゲンダイナを目の前にして息を呑む蓮子達の姿。
「あのエネルギーが放出されたら世界が滅ぶ!?」
「間違いなく幻想郷が吹き飛ぶだろうね。想像してごらんよ。コアに溜め込んだエネルギーだけでもムゲンダイナは草木を消滅させたんだよ。今溜め込んでいるエネルギーはそれ以上になるって容易に分かる」
「でもどうすれば…」
「……」
諏訪子さんの言葉は残酷だが真実だ。ムゲンダイナの一撃は軽く草木を消滅させられるレベル。溜め込みがいるとはいえその力は普通のポケモンより桁外れ。今溜め込んでいるエネルギーが放出されたらと考えるとゾッとする。だがメリーが言う通りどうしたらいいかも分からない。
考えるだけ時間が無駄に消費されてしまいそうだ。ムゲンダイナは絶対に待ってくれない。拳をグッと握りしめただ攻撃出来ない事実を我慢する。目の前に対象はいるのに何も出来ない。今の私達が出来るのはただ願う事だけだが…
「キュア?」
「どうしたのラティアス?」
「グオオオオ!」
「もう溜め込み終えたの!?」
「こうなれば私が…!」
「霊夢さん…!?」
ムゲンダイナの身体が突如として光り始めたその時。ぼろぼろの霊夢さんが後ろを一瞬振り返ったラティアスから降りようとしたその一瞬だった。ムゲンダイナから発せられた光に私達がただ目を瞑った瞬間に光がただかき消されるような音が響き渡った。
そして目を瞑った私達の気を向けるかのように聞こえて来た狼のような遠吠え。一筋の光が晴れたその時に私達の前に姿を見せた二匹の青と赤のポケモンは状況が理解できない私達を前にして剣を蓄え、鎧を装着した。
「この二匹は…!?」
「ウルゥード!」
「蓮子!動いているよ二匹!」
「願いでも通じたのかね…?今しかないよ押してやりな二人とも!」
「…はい!」
現れた青と赤のポケモンの影響だろうか。ムゲンダイナにされていた呪縛は完全に消えドラパルトもアーマガアも再び動き始める。ムゲンダイナから咆哮が響き渡る。青のポケモンからの咆哮が響き渡り、赤のポケモンが光を発する中私は高らかにドラパルトに指示を出す。
「行くよドラパルト!りゅうのはどう!」
「アーマガア、ドリルくちばし!」
「グオオオオ!」
動きを封じられた先程とは違いドラパルト、アーマガア共にしっかりとムゲンダイナに技を出す。ムゲンダイナに直撃した波動とくちばし。だがまるでムゲンダイナがダメージを受けたと言う素振りすら見せず、逆に自分が放って来た炎がドラパルトとアーマガアに直撃。
二匹は一瞬で戦闘不能になりゾッとしたがその不安を消し飛ばしたのが青と赤のポケモンだった。二匹は剣と身体を光らせそのままムゲンダイナに向かって行き、片方は斬りつけ片方は体当たりを喰らわせ巨大化したムゲンダイナを怯ませた。
「怯ませた…!?」
「凄い…勝てる…勝てるよ!」
「ザシアン…ザマゼンタ…」
「霊夢さん?」
「伝説のポケモンよ。眠っていると聞いたけど…そこの神の言う通り…願いでも通じたのかしらね…」
「ウルゥード!」
霊夢さんが緩く微笑む。ザシアンとザマゼンタが現れた奇跡に湧き上がるメリーが横に。どうしてだろう。圧倒的な火力をムゲンダイナは持っているのに絶望感を感じない。ただ希望しか感じない。私とメリーはドラパルトとアーマガアを戻し、ヌメルゴンとモスノウを出す。
「行くよモスノウ、れいとうビーム!」
「こっちもいくよヌメルゴン!りゅうのはどう!」
モスノウがビームを放ちヌメルゴンが口から波動を放つ中、ザシアンとザマゼンタは再び剣と身体を光らせて突撃していく。ムゲンダイナがモスノウとヌメルゴンの一撃でふらつく中、身体から衝撃波を放ちザマゼンタを吹き飛ばすがザシアンの一撃までは変えられず。
空中からの斬りつけに再び怯ませる。二匹の火力と言えば本当に私達のポケモンの力がアリのように感じてしまう。
「モスノウ、マジカルシャイン!」
「ヌメルゴン、もう一度りゅうのはどう!」
「モスッ!」
「ヌメッ!」
モスノウが身体を光らせ光の弾丸を大量にムゲンダイナにぶつけていく中で追い討ちかのようにぶつけられるヌメルゴンのりゅうのはどう。爆煙が広がる中、ザシアンとザマゼンタは三度剣と身体を光らせてムゲンダイナに突撃していく。
ムゲンダイナは爆煙を振り払うとザシアンとザマゼンタに向かって炎を吐きつけるが炎を振り払いながらザシアンとザマゼンタは突撃していき、ムゲンダイナに渾身の一撃をぶつける。ザシアンの斬りつけからのザマゼンタの体当たりに巨大化したムゲンダイナは遂に弱った素振りを見せる。
「ふらついた!」
「蓮子!ムゲンダイナを!」
「メリー…!?…分かった!」
一瞬動揺したがすぐに覚悟を決めるとモンスターボールを巨大化させ渾身の力を込めて弱り切ったムゲンダイナに投げつける。弱り切りながらもムゲンダイナはボールを潰そうと抗おうとするが、モンスターボールの吸収力に怯んだ素振りを見せた瞬間に吸い込まれる。
ザシアン、ザマゼンタ達も見つめる中地面を抉りながらボールはゆっくり、ゆっくりと動いていく。私達もただ黙って見つめる中ゆっくりと動いていたボールは遂に止まり、赤い光と共に元の大きさに戻る。
「!」
カチッと言う音が周りに響き渡る。ムゲンダイナがへし折った柱などがその後方にて倒れ込む中メリー達の歓喜した表情が見え、私は静かにボールを手に取った。ボールからもうムゲンダイナの反発するような声は聞こえて来ない。曇っていた空が再び光り始める。
そんな中私の隣に歩いて来たザシアンとザマゼンタは元の状態に戻ると再び鳴き声を響かせながらその場を去っていく。嵐のように来て嵐のように去って行ったザシアンとザマゼンタを見て諏訪子さんが…
「アンタら二人を助けるためだけに来てくれたみたいだね」
「諏訪子さん…」
「お疲れ様だよ2人共。まさかどうにかしたいと言う思いが伝説に通じるとは思わなかったけどね」
「…本当…そうですね。あ、霊夢さんは…!?」
「見届けた瞬間に気を失ったよ。大分ぼろぼろだったからね」
ラティアスの背中で気を失う霊夢さんを見て何故か笑みが溢れた。メリーも私の隣で笑みを浮かべる中、私達はムゲンダイナとの戦いを終えて大きく息を吐いたのだった…
ムゲンダイナを終えたので…後は分かりますね?次回も楽しみに。読んでくださりありがとうございます。