もし、良かったら気軽にどうぞ。
何処かの倉庫で、彼は一人の少女に抱き締められていた。
「もう、大丈夫だから……」
彼女は彼の幼馴染だった。
彼は姉が出場する大会の妨害の為に誘拐され、何処かの倉庫に監禁されていたのだが、そこにいるはずのない幼馴染が助けに来たのだ。
そして、
「今……全てを終わらせてあげる」
彼女がこの倉庫に入る為に出した音に気が付かれ、外からぞろぞろと武装した人達が押し掛けてきた。
だが、彼女は恐怖に怯えるどころか、平然としている。
一枚のカードを取り出し、
「Ride The Vanguard」
彼女の身体が炎に包まれ、その姿を紅蓮の竜へと変える。
「Dragonic Overload!!」
◇
私が転生者として自覚したのは、7つの時だった。
父はトレーニングカードゲームの制作会社の社員だった。そして、今回新規のゲーム提案を考えるのだが、全く進んでいなかったのだ。
確かに、ゲームを一から作るのは結構難しい。
タイトル、コンセプト、ルールなどが必要なのだから。
そんな時だった。
小さかった私の頭の中に、誰かの記憶が流れ込んで来たのだ。
そして、それが私の過去の記憶であると。
「ねえ、お父様」
「ああ、すまない。今、私は忙しいから後にしてくれ」
「うんん。違うの。その企画、私にやらせて」
娘のその言葉に父は呆然とする。
普通であればそのまま切り捨てても良かった。しかし、締め切りまでもう時間がなかった。
どうせ失敗するなら、賭けてみるのも悪くないと、何処かで思ってしまったのだ。
父は娘を膝に乗せ、娘の言葉に言われるままにPCに打ち込む。
「タイトルは……?」
「Vanguard」
「ヴァンガード?」
何処でそんな言葉を覚えたのか疑問に思うが、今更どうでも良く。
「先導者」
そして、この世界に『ヴァンガード』と呼ばれるカードゲームが生まれたのだ。
のちに、このカードゲームは世界中レベルで大ヒットした。
しかし、このカードゲームを作ったのが当時7歳の少女であることは、父以外誰一人として知らない。
◇
「なによ、また喧嘩なんかしたの」
「文句あるでもあるのかよ」
「千冬さんに、おこられるからだよ」
傷の手当をしながら私は溜息をつく。
私の目の前にいる彼は、織斑一夏。
この世界の主人公と呼ばれる存在だ。
「余計なお世話だ」
クラスメイトの篠ノ之箒が虐められていたらしく、それに割って入ってそのまま乱闘になったらしい。
「はい。これで終わりよ」
「おう、ありがとうな」
乱闘と言っても、子供同士の喧嘩だからそれ程大きな怪我はしていない、掠り傷程度である。
「なあ、今日千冬姉が帰りが遅いから、そっちに行っていいか?」
「あ~。そう言えばもうじき始まるんだっけ? モンドグロッソが」
この世界は『インフィニット・ストラトス』と呼ばれる小説なのだが、私はタイトルと少しの内容を知っている。だが、この先で何が起こるのかは殆ど知らない。
そんで、この世界には『IS』と呼ばれるパワードスーツによる世界競技が行われていた。
目の前の彼、織斑一夏の姉である織斑千冬は中学生で日本代表として選ばれ、家に帰ってくるのが偶になっていたのだ。
「別にいいわよ」
一夏がうちの家に来ることは度々あるし、親も認可済みでもある。
「じゃあ、後で一緒にファイトしようぜ」
「それが、目的でしょ」
一夏は私の家がカードゲーム制作会社であることは知っている。
そんな時に私が開発したカードゲームを一緒にやったのだ。
「今回こそ、絶対に負けねからな」
「はいはい」
成績は6割私が勝ち越している。
まあ、無改造の構築済みデッキだからね、これぐらいがいいのさ。
そう思いながら、私たちは放課後を迎える。