「あら、逃げずに来ましたのね」
セシリアは上機嫌で一夏が来るのを待っていた。
「わざわざ負けて、惨めな姿を晒す為にご苦労なことですわ。今ここで謝ると言うなら、許してあげないこともなくてよ」
「それは出来ない条件だな。愛華たちと約束してしまったからな……アンタに勝つってな!」
「あらそう。残念ですわ―――なら、お別れですわね!!」
「!」
試合開始のブザーはもう一夏が指定の位置に到着していた時に、既に鳴っていた。
一夏がセシリアの提案を断ったことで、ようやく試合が始める。
セシリアの専用機《ブルー・ティアーズ》の主力武器である六七口径特殊レーザーライフル《スターライトmkⅢ》のレーザーが一夏の肩を撃ち抜く。
「くっ!」
一夏の専用機《白式》が一夏の動きに付いてこれず、肩に被弾してしまう。
幸いにも、この攻撃は軽傷と判断されたようで、《絶対防御》は作動されなかった。
「さあ、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で!!」
射撃、射撃射撃射撃。セシリアの弾雨のような射撃が降り注ぐ。
正確なその射撃は、一夏のシールドエネルギーをガンガンと削っていく。
「こっちも―――」
一夏は現在展開可能の装備を展開する。
光の粒子から現れたのは、片刃のブレードだった。
「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘武器で挑もうなんて、笑止ですわ」
目に見える程まで、不利な武器にセシリアは鼻で笑う。
「やってやるさ」
引くことのできない戦いが加速する。
◇
「やはり、少しラグがあるのが痛いですね……」
ピットでリアルモニターを見ていた私が一夏の動きに呟く。
まだ、一次移行すら済ませていないのに、代表候補生であるセシリアの射撃を何とか回避しているのだ。
「だが、少なくとも戦えるぐらいには出来ている」
千冬さんも一夏の戦いっぷりに賞賛する。
「それでも不慣れな空中戦では、セシリアさんの方がかなり有利ですね」
ISは稼働時間に比例して上達していく。
少なくとも200時間以上乗っているセシリアと20分ぐらいしか乗ったことのない一夏では天地が逆さまになっても勝つことは出来ないだろう。
だが、勝率を上げる方法なら、いくつかある。
「セシリアの癖、思考、得意戦術などを把握していれば多少ですが、勝つ見込みがありますが……」
「まあ、あいつがそれを上手く使いこなせるかは、別の問題だな」
激戦が始まってから30分が経つ。
そろろそ、《白式》の一次移行が始まってもおかしくない。
その時だった。PSYクオリアが何故か反応したのだ。
「……え?」
それと同時に一夏が《ブルー・ティアーズ》の隠しミサイルが直撃する。
(なんで、惑星クレイと繋がったの?)
今までにないことに、私は驚くがその答えはリアルモニターに映っていた。
「フン、機体に救われたな、馬鹿者め」
一夏の姿を隠していた煙が、弾けるかのように吹き飛ばされる。
そして、その姿を見て私は思わず―――。
「ブラスター……ブレード……」
一夏のその姿は、まさしく《ブラスター・ブレード》だったのだ。
◇
―――ライド・システムの起動を確認。
(な、なんだ……?)
ミサイルを受ける直前に《白式》の一次移行が完了した。
そして、その時に現れたウィンドには、ライド・システムと書かれていたのだ。
(それに、この姿はまるで……)
白い騎士。ロイヤルパラディンの先導者であり、一夏のお気に入りのカードの姿だったのだ。
「まさか、一次移行!? 今まで初期設定で戦っていたって言うのですの!?」
セシリアも一夏の機体が変わったことに驚いていた。
「そうか。これでやっと、この機体は俺の専用機になったんだな」
なんでこんなことになったのか解らないが、もしかしたら勝てるかもしれないと一夏と確信する。
「行こう! 《白式》!!」
「っ! これで終曲にして差し上げますわ!!」
弾頭が再装填されたミサイルが飛んでくるが。
「うおおお!!」
これは、愛華がよく口にしている言葉だった。
『イメージしなさい』
(今、俺は《ブラスター・ブレード》と同じなのだ!)
ISから伝わってくる意思らしき物を一夏は感じていた。
どう動けばいいのか、この剣の使い方など。
そいった物が伝わってくるのだ。
「いけぇえええ!!」
横一閃。
一夏は剣から伝わる勝利を。
『試合終了。勝者―――織斑一夏』
勝つ確率が最も低かった戦いに一夏は、勝利したのだ。