「ねえね聞いた? この話」
「二組に転校生がくるんだって! さっき職員室で聞いたって人がいたらしいよ」
「転校生?」
私たちが教室に入るなり、何か騒がしかった。
どうやら、隣の教室に転校生が来たらしい。
「なんでも中国の代表候補生らしいですわ」
「セシリア」
「わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」
「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」
「別の意味では、騒ぎかねないかもしれないかも……」
「神崎さんは、何かご存知なのですか?」
「中国、代表候補生と来ると。一人しか思い当たらないのよ……」
そう。この二つのキーワードで当てはまる人物は一人しかいない。
「その通りよ!」
「やっぱりか……」
教室の入り口前に仁王立ちする少女。
一夏のIS学園への入学が報道されたのだ。
彼女が来ない訳がない。
「中国代表候補生、凰鈴音。久しぶりね。一夏、愛華!」
諸事情で中国に引っ越してしまった彼女が代表候補生となって私たちの前に現れたのだ。
◇
「鈴。いつこっちに帰ってきたんだ?」
「つい最近よ。《パーフェクトライザー》でアタック」
「それに、いつ代表候補生になったんだ? ガード」
「質問ばっかしないでよ。《アシュラ・カイザー》でアタック」
昼休み。鈴と一夏がヴァンガードファイトしながら、質問を投げかけていた。
「アンタこそ男なのにISとか使っちゃって、ニュース見てびっくりしたわ。それと、それは完全ガードね」
私はIS事情で二年ぶりに会い、一夏は一年ぶりに会う幼馴染にやっぱりその空白期間が気になってしまったらし。
「一夏さん! そろそろどういう関係か説明していただきたいですわ!!」
「そうだぞ! まさか付き合ってるなんてことはないだろうな!?」
我慢の限界だったのだろう。箒とセシリアが多少棘のある声で訊いてくる。
「幼馴染よ。篠ノ之さんの後の」
「幼馴染?」
まあ、知らないのも無理はない。
箒が引っ越したのが小四の時で、鈴が来たのが小五の時なのだ。
「まあ、そうだな。《エクスカルペイト・ザ・ブラスター》でフルアタック」
「ちょ!? アンタ、何ていうカードを使ってくるのよ!!」
鈴がフル展開した盤面で、一夏が《エクスカルペイト・ザ・ブラスター》にライドし、盤面を一掃してしまったのだ。
結果、何も出来ずに鈴が敗北する。
「ほら鈴、前に話したろ? 俺の通ってた剣術道場の娘」
「ああ、そういえば聞いたわね。ふーん、そうなんだ……」
鈴はそういったものにはあんまり興味はなく、最低限の礼儀だけを返す。
「初めまして。これからよろしくね!」
「篠ノ之箒だ。こちらこそよろしくな」
そう言って挨拶を交わすが、何故か花火を散ったような幻覚を見る。
幼馴染ということで何かを感じ取ったのだろう。
「わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰鈴音さん」
「……誰?」
「な!? イギリス代表候補生のこのわたくしをまさかご存じないの!?」
「うん。あたし、愛華以外の国には興味ないし」
「な、な、何ですって!!」
まあ、そう言うところは変わっていないわね。
理由はたぶん成績では私が全勝しているからだろう。
「い、言っていきますけど! わたくし、あなたのような方には負けませんわ!」
「あっそ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」
確かに強いだろうね。
セシリアと違ってたった一年で代表候補生の座についた訳だから、実力は確かに本物なんだろう。
「そんな事よりねえ、一夏!」
「ん?」
「あんたクラス代表なんだって?」
「成り行きでな」
「ふ~ん。愛華、あんたどのぐらい教えたの?」
「基礎ぐらいよ。先日、専用機が来たんだから」
鈴には一夏にISを教えたのが私だと言うことはまだ、話していないのだが訪ねてきたのだ。
「じゃあ、放課後待っているわ」
「わかった」
私は何も言わずに了承する。
「おい! 何勝手に決めているのだ!」
「そうですわ! 相手は二組のクラス代表ですわよ!」
「多分、何を言っても無駄だから」
断っても勝手に来ることは、予測出来ていた。
だから、あえて何も言わずに放課後の予定を了承したのだ。
そう。何を言って無駄なのさ。あの猫にはね。
◇
「愛華のISって随分変わっているわね」
放課後、アリーナに集まった私たちは既にISを展開していた。
「しかも、名前までも《ドラゴニック・オーバーロード》って」
私が決めた名前ではないのだけどね。
惑星クレイがISコアに干渉して出来た特殊なISであるのだ。
鈴の言うことも分からなくもない。
「まあ、それは置いといて。今は一夏にはISに慣れてもらう必要があるんじゃない?」
「それもそうね」
やることが決まり、私たちは順に一夏と訓練を行う。
途中、代表候補生どうしでも行った。
お互いに手の内を晒すことはせず、腹の探り合いをする。
(青龍刀……と言うことは接近型と見ていいわね。だけど、肩側にあるアレも気になるけど……)
私は鈴と手合わせしてそう感じた。
青龍刀は両手剣に切り替えることも可能で、正直言って結構手こずる。
しかも、まだ隠し玉があるのだ。
(愛華も中々やるわね。片手剣であたしの攻撃を捌くなんて……)
鈴も愛華の実力に素直に賞賛する。
パワー勝負では鈴が勝っていたが、愛華はそれを剣先で逸らし、技術で勝負してきた。
直線で向かって来た剣がいきなり方向転換して来るのだ。鈴もそれを紙一重で回避する。
「む。当たったと思ったんだけどな」
「結構ギリギリだったわよ」
双方。武器を納め、地上に降りる。
これ以上やったら、奥の手を使いかねないと。
「そろそろ、撤収しましょう」
アリーナの閉館時間が迫っており、私たちはISを解除してシャワールームへと向かう。
シャワーを浴びている時だった。隣のシャワー室から鈴がこの後ファイトしないかと誘われた。
「愛華。後で私とファイトしない?」
「いいけど? あ、そうだ。鈴はニューロリンカー持っている?」
「一応、あるわよ?」
なら、そっちの方がいいわね。
「丁度いいのがあるから。後で一夏も誘うからね」
「わかったわ」
話がまとまり、私たちは自室へと戻る。
◇
自室に戻ると私はニューロリンカーをオンラインモードにする。
ベッドに入り、目を閉じた。
「リンク・スタート」
虹のリングをくぐり、ゲームタイトルが表示される。
「来たわね」
「おう」
私の後に続いて一夏がログインしてくる。
「あたしが最後なのね」
鈴もログインし、全員がそろう。
そして、このゲームのやり方を一通り説明し、私たちは、朝までヴァンガードファイトにくれた。