あれから数週間後。
クラス対抗戦表が発表され、一夏の初戦の相手は二組の鈴だった。
「うわぁ、満員御礼だな」
「そりゃ、今年は一夏がいるからね」
第二アリーナの客席は全席満員になり、所々で通路で立って見ている生徒もいるぐらい満席だった。
ついには会場入り出来なかった生徒、関係者は、リアルタイムモニターでの鑑賞するらしい。
「期待の新人同士の戦いだもの。気にならない奴はいないわ」
『一回戦、一組と二組の代表選手は準備を始めて下さい』
館内放送で一夏たちが呼ばれる。
どうやら、一夏たちの試合がもうじき始まろうとしていた。
「出せる全力を出して来なさい!」
私は一夏の背中に活を入れる。
「おう!」
一夏も私の活を受け取り、元気よく返事し控室を後にする。
「……さて、私の方も本来の目的に取り掛かりますか」
この後に起こる事件だけは特に覚えていた。
一夏と鈴の試合終盤に差し掛かった時に篠ノ之束が自作した無人機IS『ゴーレム』が襲撃してくる。
その事件は何とか無事に一夏が解決するが。
「折角の訓練を無駄にする訳にはいかないものね」
襲撃によりクラス対抗戦は中止になる。
だから、これだけは何が何でも阻止しようと、私は決めていた。
◇
クラス対抗戦で多くの生徒、教師陣はそっちの方に注目が行っており、人の目を気にせずに私はISを展開する。
そして、ハイパーセンサーを限界まで使い『ゴーレム』を探す。
「……いた」
ハイパーセンサーに急接近する物体を感知する。
私はすぐさま、その方角へと飛ぶ。
「こっから先は通行止めよ」
私は、高速移動する『ゴーレム』と激突した。
出力はどうやら向こうの方が上で、少しばかり押されたが、私は自前の剣で『ゴーレム』スラスターいくつか破壊する。
スラスターをいくつか失った『ゴーレム』は失速し、同時に私を敵として認識したようだ。
「一夏たちの邪魔をしに来たようだから、私が先にスクラップしに来てあげたわよ」
私が言い終わる前に『ゴーレム』が攻撃しかけてくる。
『ゴーレム』の主な攻撃方法は、その見た目のにある大きな腕とそこに内蔵されているビーム兵器の二つ。
その上で全身装甲であるのだ。
剣一本で戦う私の一撃は殆ど通らないだろう。
「まあ、とっておきを使うから、問題ないのだけどね」
私はドラゴニック・オーバーロードのスキルを解放する。
シールドエネルギー残量が一気に100減ると、今まで弾かれていた一撃がまるでバターを切るかのように『ゴーレム』の腕を切り飛ばす。
一夏の単一仕様能力である『零落白夜』のシールドエネルギーを能力に変えるように、私のドラゴニック・オーバーロードは単一仕様能力とは別で特殊なスキルを搭載している。
その一つであるシールドエネルギー残量を100減らすことで純粋な攻撃力へと変えることができるのだ。
もちろん、この効果は相手に当たった後、その効果を失ってしまうが。
「逃がさないわよ。私の一夏に危害を加える者は誰だと、容赦はしないわ」
帝国の竜王と呼ばれるこの機体に乗った時から、私は決めていた。
竜は宝を守る門番であり、最強の象徴でもある。
だから、織斑一夏と言う名の宝を守る存在でありたいと。
「さよなら」
その冷たい別れの言葉を残し、私は『ゴーレム』を真っ二つに切り裂く。
『ゴーレム』はそのまま暗い海の底へと沈み、その証拠を残すことなく消えた。
◇
「いや~、負けてしまったわ(笑)」
「いや、なんで(笑)なのよ!」
私はそれとなく戻ってくると、一夏と鈴の試合は終わっていた。
結果は、一夏の敗北。
「情けないぞ!」
「そうですわ! あれだけ散々教えて差し上げたのにも関わらずに!!」
箒とセシリアは嘆いていた。
試合は最初は鈴が優勢だったそうだ。
中盤に差し掛かった頃に一夏が先日に習得した瞬時加速で鈴の背後から襲撃したが、そこを間一髪避けられてしまったらしい。
そこから先は泥沼化し、一夏は敗北してしまったのだと。
「まあ、鈴の方が一枚上手だったと言うことね」
「決まったと思ったんだがな」
私は溜め息を吐く。
まあ、一夏にはいい経験になっただろう。
「白式は短期決戦型なのだから、開始直後に先制攻撃出来なければただの鉄の塊でしかないのよ?」
「今後の訓練は3倍だな」
「ふぁ!?」
流石の一夏もそれには驚く。
沈む夕日を背景に私たちは寮へと帰る。