あれか数年。
第二回モンド・グロッソは織斑千冬の二連覇で幕を閉じる。
史実では、弟である一夏が誘拐され、決勝戦を棄権したことで二連覇を逃すはずであった。
しかし、そこに私が乱入して未来を変えてしまったのだ。
もちろん歴史の修正力により織斑千冬はドイツに恩を返す為に一年間教官をすることになった。
一体どう言うことなのかと、疑問に思うが至って簡単だ。
あの時、私は一夏を日本へ直接転移した。しかし、一夏は正式にドイツに入国している。つまり、ドイツ内で行方不明になったことになる。
誘拐された所の現場が発見されたが、肝心の一夏はおらず、燃え切った倉庫と大量の焼死体があったのだ。
もちろん、一夏は直ぐに発見された。しかも日本で。
だが、肝心のその場で出来事は
結局、捜査には進展がなく、打ち切りなった。
◇
私がIS適性でSランクを出したことで、国家代表候補生の資格を獲得し、殆どの時間をIS稼働時間に割り当てた。
学校にも殆ど行くこと無くなったが、卒業資格だけは何故か発行された。どうやら、IS資格を取得したことで、政府が一枚噛んでいるらしい。
そして、一夏の記憶から
あれから私は一度も一夏と顔合わせをしていない。
「time up」
本日の訓練を終わらせるブザーが鳴り、私はISを解除する。
ISが研究所から姿を消したことは大ごとになったが、その数時間後に帰って来たことでひとまず無事にことが済んだ。
「本日の訓練は終了です」
「はい」
管理室からの指示に従い、私は退出する。
シャワーを浴びながら、次の起こる出来事を思い出していた。
(もうじき、進学受験……)
私は進学先は既に決まっている。
そして、今回の事件は私ではなく、一夏なのだ。
一夏が試験会場でISを偶然で起動させてしまう。
「これは、阻止することはできない……」
阻止したところで、歴史の修正力で元のレールに戻るだけだろう。
(なら、せめて私が一夏を導くしかない)
ISは女性にしか使えない。
男性で世界初での起動。世間はじっと待っていられる訳がないから、一夏を例の場所に入学させるだろう。
「久々に会うのも、悪くないかもしれないわね……」
そして、運命の歯車が動き出した。