「CかBって……」
「そういう事だろう……?これが正しいのなら」
円卓の周りに座る三人の少女
青髪ショートの少女は【ありえない!!】と言わんばかりに一枚の紙を穴が開かんと言わんばかりに開いた眼で見ていて
【どうでもいい……】と言わんばかりに薄目開きで、ぼ~っ……と外の方を見るのは病衣姿の黒髪ロングの少女
【ふぅん……?】と、少し興味はあるが世間話程度に髪を横からのぞき込むのはオレンジ髪のショートツインの少女
スバル、霊夢、ティアナは三者三様の表情を浮かべながらその場にいた。
そしてスバルが持つ霊夢の魔力測定の結果には【暫定:C-~Bランク】という結果が書かれていた。
常人にしては高い方ではあるものの、管理局の戦闘人員やその他魔力を用いる職種に従事している人間の中では平均的かそれよりも多少高い位と書かれていたのだ。
しかし、先日の不慮の事故の際発せられた前衛であるスバルが不意打ちとはいえKOを入れることが出来た射撃魔法、そしてレリック爆心地において仮に防御魔法を用いたとするなら、圧倒的に力が足りない。
と、なると管理局の検査機器に何かしら不具合を疑うモノだが、どうやらそれはとうに検査していた医師全員が思っていたらしく、よくよく検査結果の書かれた紙を見ると日を跨いで計5回もの測定を行ったが多少の増減は合ったものの一貫して突飛した力を持っているとの結果は出なかった。
そんな事が書かれた検査結果をスバルの横からティアナもみるも何か思い当たる節があるらしく、スバルとは対照的に落ち着いた表情をしていた。
「でも……単純な魔力の測定なら、そこまで驚かなくてもいいんじゃないの?」
はむ……っとフォークに刺した緑黄色野菜の集まりを口に運びながらティアナは言う。
「え、でもあそこまで強力なのを瞬時にって……」
納得いかないスバルが首を横にかしげながらじ~っと、まるでテストの点数に不服そうな学生の様に霊夢の魔力測定の結果紙を見つめる
「確かにそりゃあ、魔力が大きければスバルの言う通り簡単に打てるだろうけど、魔力を瞬時に打ち出すのは単純な魔力値で決まるわけじゃないでしょ?」
「……つまり、魔法の質が高いってこと?」
「そういうこと、霊夢さんもまだその検査はしてないんですよね?」
……と、仮定を話したティアナは霊夢に問いかけるが
「え……まだあるのか?あのよく解らない時間は」
当の本人、何も把握していないようでした。
「え“、霊夢まさか何も知らずに検査受けてたの??」
「ああ、それどころかさっきまでいったい何のための検査をしていたのかも全然知らない」
「「ええ~……」」
と、半ば呆けたような瞳で驚くスバルとティアナ。だが霊夢本人はどうでもいいと言わんばかりにスバルとティアナから視線を外し、外をまた薄目開きで眺めていた。
すると……霊夢の病衣の右袖が緑色に光る。
面倒くさそうにモタモタ……と袖の内側にある腕輪型の医療用デバイスの応答スイッチを押すと
『霊夢ちゃん、次の検査30分後に始まるから、準備、お願いね~』
という主治医事シャマルの声が聞こえてきた……
「はい……分かりました。それで、次は何を……」
『えっと、次は魔力循環の検査ね。そこまで身構えなくても機会が体の周りをグルってするだけだからっ!じゃ、よろしくね』
―ピッ
という音と共にCALLINGとデバイスから浮き出ていた空間モニターは消えた。
「……その回っているのがあまり好きじゃないんだがな」
と、ぼそり独り言をつぶやくと
「それじゃ、私は検査だから、また今度」
そう二人に言うと席を離れ病棟の方へと戻っていった
「なんかティアナ、変な感じだったよ?」
「え、そ、そう……??」
「うん、まるで一対一で八神隊長と大事な話をしてたそんな感じというか……」
「どんな感じよ、それ……」
コンソールやキーボードを触りながら書類仕事を片付けるスバル、ティアナの二人。その間に話されるのはずっと霊夢の話でもちきりだった。
「霊夢、六課に来るのかなぁ?もしよかったら一緒に模擬戦でもしてみたいなぁ……」
「いや、出向とかじゃなくて仮にも保護なんだから……それに、霊夢さんに迷惑でしょ??」
「そ、それはぁ……そのぉ……ほ、ほら聞いてみないと分からないじゃんっ」
「仮に本人がいいといっても、隊長陣とか、シャマル先生がダメって言いそうだけど??」
「う“、それもそうだった……」
「それに病み上がり……というか、事故後なんだから。少なくとも当分は無理じゃないかしらね」
「う“う”っ!事故許すまじ……」
と、言いながら机の上に顎を置いて心底残念そうな表情を浮かべるスバル。
「一番言いたいのは霊夢さんでしょ……あまつさえ、別世界から次元漂流者として迷い来るのはいいとしても、いきなり爆心地に放り込まれるなんて……」
「それもそっかぁ……」
まったく……と言わんばかりにあきれた様子で言うティアナの言葉を聞きようやく折れたかのようにむくっ……と顔を上げるスバル。
「爆心地で思い出したんだけど……霊夢、どんな魔法を使って防いだのかな……」
「……確かにそこは気になるけど」
「せっかくなら見てみたいなぁ……実戦とか模擬戦で」
前言撤回、全然折れていなかった
そんな同僚を呆れ顔で見つつも何処か釈然としない様子のティアナ。
(…力では劣ってても、魔法を操る面では天性の才能がある、か…)
そんな事を考えた彼女の口の中から一瞬だけ軋むのような音が聞こえた
「ㇰシュン……ッ」
『大丈夫、霊夢ちゃん?風邪でも引いた??』
「い、いえ……大丈夫です」
(何処かで、噂でもしているのか……?)
そんなことを思いながら自身の体の周りをひたすらに動く機械に監視されているかのような感覚により多少の嫌悪感を抱きながらそんな考えを浮かばせる霊夢。
・・・・・・・その考えはあながち間違いでもないのだが
(それにしても……)
検査はただじっと下着姿で横になるだけであるが故に暇である。その間霊夢はずっと一つの考えを巡らせていた
(……この組織とレリックとやらの関連性は何だ?)
仮にレリックが、ただの大爆発しかねないエネルギーを持つ考古物なら、もしもの事故に備えて救助スタッフ、医療スタッフが常駐しているのはわかる、だが事情聴取までをもこの組織が営むであろう場所で行われた。ただの救助部隊でここまでするのだろうか…?
そう考えるに至る理由を霊夢は思い返す。
少し時を遡り、午前10:00
「……」
狭い点を除けば決して不快感を覚えない部屋、しかしどこか緊張感を持たせるような場所に霊夢は居た。
無機質な机が眼前にあり、ヒンヤリとした冷たさを持つ椅子の上に腰を掛け、しばらく待っていると……
「失礼します」
と、穏やかな声とともにやってきたのはスバルが着ていた服を黒く色を変えたような服を着た金色のポニーテールヘアーに髪を結った女性だった。
ゆっくりとなれた様子で椅子に腰を掛けると、
「この前はスバルがごめんね?私はフェイト・T・ハラウオン。フェイトで良いよ」
と、優しく少し申し訳なさそうな笑みを浮かべながら口を開いた
部屋のイメージと相まって自然と強張っていた体全体を一瞬で解凍され驚く様に口を一瞬だけパクパクさせるもののすぐに落ち着きを取り戻す
「…それで、取り調べって,一体何を…?」
と、霊夢は口を開く。私を犯人とでも疑っているのかと思う感情は精一杯自身の懐に押し込めて。
「そう身構えないで、あの事故の時のことをできるだけ教えてほしいだけなの。勿論、無理にとは言わないけど」
と、対照的に目の前の穏やかな口調で小さく笑みを向けられながら霊夢に言う。
警戒心を出していても意味はない、と思ったのか。強張った背を少しだけ緩めて握りしめていた膝の上の拳も緩めた
「じゃあ、サクッと終わらせちゃおっか」
「じゃあ、結局あの時は無我夢中で何も覚えてなかったと…」
「まぁ…はい。ひたすらに自分の身体を守るのに精いっぱいで…」
「そっか…」
結局、霊夢に話せることなど何もなく、フェイトにとっても有力な情報は手に入ることはなかった。
「すみません…あの時はそもそも何も見えてなくて…」
「いいの。貴女が生きている、それだけで十分だよ。寧ろ、私たちの方こそゴメンね?」
そう話すフェイトの顔は穏やかだが、それ以上にどこか暖かいものに霊夢には見えた。
その後、何事もなく聴取は終わり、フェイトは資料作成のため、霊夢は検査の為に分かれた。
…私が生きているだけで十分、か
何処か無図痒い感覚を覚えた霊夢は軽く咳ばらいをした。
その時に無表情で検査に臨んでいた霊夢の顔が少し緩くなったのをシャマルは見ていた。本人は気が付いていないだろうが。
そして検査は何事もなく終わり、いつもの病室に戻る霊夢。
いつの間にか日も暮れはじめ、病室から見える白色の施設達が温かなオレンジ色に包まれつつあった。
やがて日が暮れれば外は月と星々の輝きを得ていながらも黒く染まる。
病院食を済ませれば消灯の時間までは暇になる。
医療用デバイスを付けると、この世界の事について調べ始める。この世界に来てからはや5日、ただ淡々と検査を受けるだけの日々もどうかと思い、少しだけだがこの世界について知ろうとした。
緑の空間モニターに幾つものニュースがまず出てくる。だがどれも一遍して霊夢が巻き込まれた爆破事故の情報が最初に出てくる様子から、あの事故がどれだけ深刻なものなのかを改めて知る。
次にその他の事件や政治動向、特に何か深い考えを霊夢にもたらすきっかけにはならないものの、知ること自体が習慣となりつつある。
そして…
「ベルカ…古い歴史…か」
最近特に気になっていたのはベルカと呼ばれる古い動乱の時代の歴史。
一時期は世界には毒があふれ人が常に死に続けるという一種の地獄のような、そんな時代ともいえる。
その地獄のような騒乱の時代を終えたのが…
「聖王家の聖女、オリヴィエ…聖王のゆりかご、か」
聖王のゆりかごと呼ばれたその戦艦はベルカ時代に聖王軍の戦況悪化に伴って若き聖女・オリヴィエが核になって起動させ、見事聖王軍を勝利に導いたとされる。
その後、世界の戦争を終わらせ神格化したものの血が絶えた聖王家は信仰の対象となり聖王教会が発足、その後も世界の安定のために
「…管理局という平和組織樹立にも協力した結果、ミッドチルダの一部区域に【ベルカ自治区】という国家を発足させた…か」
何とも言えない終わり方であるものの今のこの世界の平和はこのように気づかれた。本人にとってはきっと望んだ終わり方だろう、だが残された者たちはどうなったのだろうか。
記事の中では、覇王と言われたイングヴァルトとも友好関係にあったらしい。
彼は最後にどのような気持ちでゆりかごを見送ったのか。
その後、残された世界で彼はどう生きたのか。何時の間にやら霊夢は古代ベルカに興味を惹かれていた。
…今度、本でも読んでみるか。
そう思い、消灯時間の少し前に空間モニターを消せば、布団の中で目をつむる。
変わらない平和を続けるのであろう明日に少し楽しみを残して。
二年ぶりです