<〇〇食堂>
温泉に入っている間に時刻は13時を過ぎていた。
この温泉郷に留まれるのはあと1時間半ほど。
腹を満たす為、食堂に入ることに
ご当地メニューである「もやしラーメン」を頼むことにした
「せんぱい、本当にラーメン好きですよねー
同じメニューを頼んでしまうわたしもだいぶ毒されてますけど」
と苦笑いで返してくる。
「何、ご当地という位だから普通に食べるモノと違うと思ってな」
スマホで試しに「もやしラーメン 米沢」と検索してみることにした
「へぇ、これ鉄〇DASHでも紹介されるほど有名なのか」
「え?わたしにも見せてくださいよ」
米沢は、山形県内でも有数の豪雪地帯で、一年の内4ヶ月以上雪に閉ざされます。
このため、豆もやしは冬期間に生産できる商品作物として、長い歴史を持っています。
豆もやし栽培は、明治の初め頃に始まり、その頃は個人で行われていました。
その後、大正12年6月1日に「三沢村大字小野川もやし業組合」が結成され、
共同作業による生産が行われるようになりました。
現在でも「〇野川豆もやし業組合」として、共同作業による生産が受け継がれています。
栽培方法はユニークで、県内有数の豪雪地帯として有名な米沢市〇野川温泉の
豊富な温泉水を利用する。毎年11月頃になると、温泉街の近くには作業場が建てられる。
中には「室」となる木製の箱を並べ、その下に温泉水を通し一種の温室状態を作る。
木箱の底に砂を敷き、一晩浸水した「もやし豆」をまき、さらに上を砂で覆う。
コモをかけて室内を30度に保って約一週間、もやしが伸長したところで収穫する。
栽培は11~3月までの冬期間のみ。
「つまりは季節限定メニューなんだろうか」
「市販で売っているもやしと違う豆付きなんですね」
店内を何気なく見ると、年期の入った夫婦と年配グループの2つだけ。
そんなに時間はかからないだろう、と思っていると待望のラーメンが運ばれてきた
「ふむ、醤油ベースに具は普通のトッピング、そして豆もやしか」
「シンプル イズ ベストを体現したかのような・・・」
食感も豆がシャキシャキ、もやし部分も市販のと違い飲みこんで食べるといった消化方法で
食していった。
そんな最中、年期の入った夫婦が食堂の主人との会話で
「今回の温泉旅行で~」という言葉が耳に入ってきた。
へぇ、あの夫婦も俺達と同じ・・・
「実はわたしたちも温泉旅行の最中なんですよ!」
ってええ!?いろは何会話に加わってるの?
「あら、あなたたちも?」
「ええ、せんぱいが誘ってくれて」
「おう、見たところ学生時代か会社のってとこかい?」
「えーと高校時代からの付き合いでして」
「ほほえましい関係じゃないの~」
「へへ、せんぱい、他人からはそう見られてますよ?」
もう加わるしかないじゃないか・・・・
「ま、過度なスキンシップがなきゃそうだろうよ」
「む、なんですかそれー」
「仲がよさそうで何よりだな、お前さんたちの見た目からして8~9年ってとこかね?」
「・・・・・・よくわかりますね」
「何、それくらいはな」
「それでおじさん達は、何処の温泉に行くんですか?」
「昨日は作〇温泉泊まってな、今日はこの温泉郷に泊まるんだ
さっき旅館に車を置いてな、今日はもうアルコール解禁しても問題はないのさ」
ふと見るとグラスにビールが注がれており、顔もやや赤くなっていた
「ってことは東北地方在住なんですか」
「ああ、そうだ。んでお前さんたち、何処から来たんだ?」
「自分たちは関東の千葉県から来ました」
「あら、随分と遠くから来たもんだねぇ」
「せんぱいから『青〇18切符で行ける温泉番付』を見せられてそれで
温泉巡りをしてるんです、大晦日に関東を経って昨日は岩手県の温泉に
立ち寄りましたね」
俺は補足説明としてスマホの画像をだしてご夫婦に見せることにした
「私等が行った事ある温泉地、結構載ってるじゃない」
「横綱と大関と前頭の幾つかは行ってるな」
「俺も18切符で若いころ使ったことあったなー」
「ご主人も使ったことが?」
「九州まで行った事があってなー昔はそれで乗れる夜行快速で行ったもんだよ
懐かしいもんだ」
「・・・18切符っと。せんぱい、検索したら1982年発売なんですって。
もう40年近い歴史があるんですね、なんか回顧する人を目の当たりにすると
ロマンを感じませんか?」
「世の中全員が全員、旅行の移動に新幹線や在来線特急、飛行機を利用するわけではない
ってこだよな・・・40年近く続けて発売されてるってことは」
「なんだ、お前さんたち?その旅行ずっと鈍行旅だっていうのか?」
「行きは寝台列車で帰りはそうですね。明日には千葉に戻りますし」
「はぁーーーー・・・・てえしたもんだわ」
「そう言えば、あなたたち結構荷物があるけど、まだ移動するのかしら?」
「14時40分にはバスが来るのでそれで米沢駅に戻ることになります。
そこからは新潟県の村上の〇波温泉が今日の目的地です」
「ん?〇見?そこって山形県じゃなかったけか?」
「地図があるからそれで説明してもらったほうが早いわよ」
「お。そうかそうか」
「今いる〇野川温泉がここで、今日の目的地が・・・ここになります」
「おーーーおーーーなるほどな。てっきり俺はこっちかと思ったんだわ」
そうしておじさんが指さした場所は米沢から北ー最上町にある温泉地だった。
「なるほど、勘違いでしたか。ちなみにここには泊まったことが?」
「おうここはな・・・・・」
そんなこんなで話すうちに
「まだバスまで時間があるんだろ?ビール飲んでけよ、運転もしないんだから問題ないだろ?」
「はは・・ではご馳走になります」
「一期一会に・・・」
「「「「乾杯!」」」」
「でも、結構移動するわよね?新潟県なんて」
「到着するのは、19時過ぎになりそうですね
それに明日の方が一気に関東の千葉県まで移動するんですから
そっちの方が大変かもしれません」
「せんぱい、寝ちゃったら起こしてください」
「コイツ、もう寝る気でいやがる・・・」
酒が入った語らいも進む中、いろはがトイレで席を立ったところで
おじさんが小声で話しかけてきた
「お前さんたち、どうやらまだそういう関係ではなさそうだな?」
「・・・何がでしょう?」
「お前さんたちの薬指にはあるべきアクセサリーがなかった。
お前さんたち位の歳なら付けていても可笑しくはないはずだ」
「・・!鋭いですね」
「年の功ってやつだ。ま、そんだけ付き合ってれば、倦怠期も
あるだろうけど、見たところ仲も良好そうだ。
ちゃんと答えだしてやんな」
「・・忠告ありがとうございます」
返事をすると背中をバンバンと叩かれる
・・・・・・ちょっと痛かった
いろはが席に戻ってからも話は盛り上がるうちに
時間が来たので店を出ることに
「気を付けてねー」
「頑張れよ」
と言葉を頂いた。俺達は
「「ごちそうさまでした」」と返し
俺は心の中で(ありがとうございます)とお礼を言った
バスを待つまでの数分の間
「しかし、いきなり人に話しかけるとは思わなかったぞ」
「でもせんぱい、ちゃんと楽しく会話してたじゃないですか?」
「そりゃ、温泉旅行って共通の話題があったからだろ?」
「それでも会った頃に比べたら柔らかくなりましたよ」
「・・・そうか?」
「表情が、ですよ?」
「鏡で見れないからよく分からんのだが」
「もう8年経とうかという位いますから分かるんですよーわたしには」
「専業主婦目指していた俺が社畜営業として曲がりなりにもやれているのも
無関係ではないかもな。第一印象は視覚で決まると言うからな」
「そうですよ!(元々の能力に自然な表情が柔らかくなったせいで、魅力的になった
のは自覚がないんでしょうね。それまで身内・身近にいる人だけが分かっていたのに)」
「ま、そう納得しておくか(そうなったのは間違いなく・・・)」
そんな会話をしつつ到着したバスに乗り込み、米沢駅へ
旅ならではの一コマです