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名立たる八色SSの足元には遥かに及びませんが
拙作をお読みいただきありがとうございます
今話では、いろは視点を入れると一話あたりの平均字数を遥かにオーバーして
しまう為、きりのいいところで区切ることにしました。
全ては次回への布石・・!
<坂町駅>
列車はようやく乗換駅の坂町駅に到着するところだった。
ちょうど村上方面への普通電車が発車してすれ違っていってしまった
「接続できるダイヤにしてもらいたかったですよ、全く」
ちょっとご立腹ないろはではあったが
「いや、時刻表によると到着4分前にはもう出てるよ、あれは。
遅延してただけだろうよ」
それでも、まだふくれっ面ないろはを宥めつつ
「待合室で駅弁食べて、のんびり待とうぜ。腹も減ったし」
「・・・そうしますか」
米沢駅で買っておいた「牛肉ど真ん中」お茶と共に食べることにした
待合室の中は適度に暖房が利いており、寒さに震えるということはなさそうだった
味の方は名物駅弁だけあって、冷めても十二分美味しく腹を満たすことが出来た
いろはも美味しいものを食べられて、笑顔を見せるようになっていた
(美味しいものを食べると、無条件に笑顔になるとはよく言ったもんだな)
「そういえば、せんぱいと小旅行するようになって、今回初めて関東外ですけど
駅弁って冷めても美味しいですよね?」
「ああ、それな。慰安旅行の時、新幹線で昼に駅弁食べるなんて事もあったし」
「なんですか、その慌ただしいスケジュール・・・」
「いや、その旅行が全国支店からの集まりだったんだよ。ABCに分かれてて
Aは西日本、Bが北陸、Cが東北の選択制になっててな」
「わ、せんぱいの会社と業績よかったり?」
「こないだ60周年だったそうな」
「わーお」
「話戻すとだな、各営業所で偏りなく第2希望まで出して、調整するという感じでだな
東北地方からの面々と合流して北陸新幹線で金沢方面となると、到着が昼頃になるだろ?
それなら、到着前に新幹線の車内で駅弁食べたほうがタイムロスにならない、というわけだ」
「なるほど・・・現代人にありがちな効率的な」
「1泊2日なんだから、そうならざるを得ないだろうよ」
「だから、愛しの恋人とは18切符でのんびりしたいという事なんですか?」
「明日の最終日こそちょっとタイトにはなるが・・・な」
「ちょっと、答えになってないですよー?」
(全く、こいつは・・・・)
会話の間に電車接近チャイムが鳴っており、
「そろそろ支度しないとな、駅弁の箱も畳んでごみ箱に捨てないとな」
「むー」
「こらこらジャンガリアンになるな、それにさっきも言っただろうが」
「それでもー」
「(しょうがねぇなぁ)」
俺はにわかに立ち上がり、いろはの手を取り立ち上がらせる勢いそのままに、
いろはの体を優しく抱擁した
「・・・これで満足か?」
耳元で呟き、いろはが機能停止してる隙に駅弁の箱を纏めて待合室の外の
ごみ箱に捨てることにした。
機能停止から回復したいろはは、村上行の電車に乗ってからも
ご満悦でロングシートの席まで俺を引っ張り、たった10数分の間だけなのに
俺の肩に頬を摺り寄せ目を瞑ったままでいた。
(機嫌を損ねるわけにはいかなかったが、らしくないことをしてしまった代償か)
と頭を掻き、こんなん俺のキャラじゃないってのにな・・・
これから普段の俺じゃない事するから割り切るしかねぇのかもなぁ
と心の中で溜息したのだった
<村上駅>
時刻は19時を過ぎる頃、無事に今日の宿の最寄り駅に到着し改札口をくぐった。
「・・・・・意外だったな」
「何がです?」
「いや、日本海側だから積雪も想定していたんだがな」
「そうですね、全く積もってませんね?」
「正直拍子抜け感が半端ない」
「まーまー。それで宿までは歩くんですか?」
「いんや、タクシーで10分くらいだから」
早速、ロータリーに停まっているタクシーに乗り込み
宿の名前を告げて走り出す
「雪積もってないんですね、日本海側だからちょっと心配してたんですが」
運転手さんにちょっと聞いてみることに
「ええ、この時期に積もらないのは何年ぶりかもしませんね」
「やっぱりそうですか」
「お客さんは温泉に浸かりに来たんですか?」
「ええ、恋人と旅行で」
「ほう、羨ましいもんですね」
「〇波温泉は駅から離れてるから、明日もタクシー使うことになりそうで」
「よければ、このティッシュを。連絡先が書いてありますので」
「助かります。明日の朝も早いので。素泊りなんです」
「なるほど、駅前にはコンビニもありますので」
「コンビニ・・・そういえば、道中ないですね」
「ええ、ここは国道位大きな道でないと駐車スペースもないし
24時間営業も困難なんですよ」
「確かに、光熱費とか馬鹿にならんですね」
っと無事に到着したようだ
<〇〇〇〇の宿>
フロントには人がおらず呼び鈴を鳴らす事で、ご主人が出迎えてくれた
そしてこの宿の説明を受けることに
温泉は源泉90度。それを竹で冷却し源泉かけ流しにするという方式を取っていること。
フロント横には「温泉で手に入れる美肌と健康」
メタケイ酸(170mg)を超える値と書かれていた
どうやらこれは、温泉に含まれる天然成分らしい
肌の新陳代謝を促進しツルツルの美肌にしてくれる美肌成分であると。
夜は22時まで、朝は6時から入浴可能と
そして浴衣は身長のサイズ、色と種類別に選べるとの事。
いろはは好みの浴衣があるとご満悦のようだった。
説明が終わり、自分たちの泊まる部屋である3Fに上がると
部屋番号が書かれている壁の下に「比企谷様」と紙が掲げられていた
「なんか、修学旅行とか慰安旅行で来たおもてなしを受けてる気分だ」
「確かに、個人でこんな風にされるのってないかもですね」
部屋の中は、和室で既に2つ布団が敷かれていた。
それに暖房が利いてちょっと暑いくらいだった。
設定が26℃になっていたので、ちょっと温度を下げることにした
流石に寝る時は寝づらくなるだろうからな
早速荷物をおろし、窓際の椅子に座ってひと段落ついていると
いろはがここの温泉に興味津々らしく、先程の「メタケイ酸」
をスマホで検索していた
「せんぱい、これ凄いですよ!?」
スマホには先程の説明書き以外にも、
『肌のセラミドを整えてくれる作用もあるということで、
とても期待度の高い成分なのです。この成分が100mg以上であると、
美肌に導いてくれるお湯だと証明することができるのです』
とあった
「さっきロビーの説明書きには170mgってありましたから、
これは楽しみですよ!」
「随分と食いついてるのな、昼の時といい」
「女性にとって美肌は永遠のテーマなんです!せんぱいも肌の綺麗な
わたし好きですよね?」
「まぁ、肌が荒れてるよりはな」
「事前に温泉を念入りに調べつくしましたね?流石です!」
「ここのクチコミも悪くはなかったし、宿泊も1万ちょっとだから
選んだだけだったが、竹で源泉を冷却してるなんて見落としてたんだがな」
「そうなると、せんぱいは神がかってるのかもしれませんね!
わたしの中でも株が爆上げですよ?」
「ってことは、旅行前まで株は低かったのか?ショックだな・・・・」
「ああ、もう拗ねないでくださいよ~」
そんなこんなやり取りをしつつも、お互い浴衣に着替え
温泉に浸かりに行くことに
「せんぱいせんぱい、浴衣似合ってます?」
いろはの選んだ浴衣は薄紅色を基本に花をあしらった着物、
ちなみに俺の浴衣は、薄い緑色にや木の枝をあしらった着物となっていた。
「ああ、よく似合ってるな」
「フフン、そうでしょうそうでしょう」
さりげなく、腕にしがみ付いてくるいろは。
あの女性特有の膨らみの感触が当てつけられてるんですがね・・・
ここは心を鬼にして
「あと、どさくさ紛れに腕にしがみつくと階段が降りにくいからな」
「むぅ・・なら袖で我慢してあげます」
ちなみにこの旅館は8室しかなく、収容人数は多くないらしい
温泉は貸し切り状態となっており、ほのかな竹の香りが漂って
硫黄の温泉って違って、風流な空間を演出していた。
温度もややぬるめの41度、まったりと浸かることが出来た。
(この後・・・・だな。あいつがどう答えてくれるか。
怖れはあるけど、どのみち傷つけ続けるばかりになるよりは
ちゃんと話さなければ・・・・)
いろはの視点はまた次回。
運命の時はもうじき