やはり俺のパートナーは・・・   作:バネア☆

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第十七話 旅行4日目 ~帰郷~

        13:30

 

 

バスの発車時間になり俺たちは観光施設を後にしていた。

 

 

そしてほどなくしてやってきた電車に乗り、最初の乗換駅まで来たまではよかったのだが・・

 

 

「次の電車まで1時間・・・か」

 

 

「駅前もそれほど巡る程ではなさそうですから、

暖を取れる待合室でのんびりしましょうよ?」

 

 

「確かにそれが懸命と言えるな」

 

 

「ではせんぱい、もし寝てしまっても発車時間が近づいたら起こしてくださいね?」

 

 

「・・・・・おい」

 

 

「エスコートはわたしを千葉まで送るまで終わりませんよ?

そう言えば、18切符で何処まで一緒に行くんですか?」

 

 

「そんなの千葉駅までに決まってるだろ」

 

 

「え?そうなんですか?」

 

 

「この場合、俺がJ〇で行けるいろはの最寄りまでってのが筋だろ」

 

 

「・・・分かってるじゃないですか、心憎いまでに」

 

 

「お褒め頂き光栄だ」

 

 

「ぷっ・・・・」

 

 

「フン・・・・」

 

 

「ではお言葉に甘えさせていただきますね?」

 

 

「あいよ、今日中に帰れれば問題ない」

 

 

そして5分も経つ頃、隣のベンチで見事なまでに船を漕ぐいろはの姿があった。

ただ寝ているあいだも俺の手を繋いで離さないでいるのには、思わず笑みをこぼしてしまうまでであったがちなみについ俺も、ウトウトとしてしまったのはいろはには黙っておこう

 

 

そして15:30になりようやく帰郷への道のりが始まった。

東三条、長岡と乗り継ぎを果たし。ここから水上行きの最終電車に乗ることとなった。

 

 

 

「最終電車」なのである。まだ夜とは言えない時間なのにだ。16:32発の電車が最終電車。

関東首都圏に住んでる身からしたら、とんでもないダイヤだ

 

 

「まだ17時にもなってないのに最終電車って・・・」

 

 

どうやらいろはも同じ事を考えていたらしい

 

 

「全くだな、これを逃したら新幹線に乗らざるを得ない」

 

 

「もしその場合、何処まで乗るんですか?」

 

 

「高崎までだな。でも最悪、越後湯沢まで鈍行は出ているから、そこから高崎の方が安く済むだろう。高崎からなら割と本数出てるからどうとでもなる」

 

 

「なるほど・・・頭の回転が早いですね」

 

 

 

「想定しうるケースを出しただけだ」

 

 

「でも今日も運がいいですよ?ほら電光掲示板見てください」

 

 

「山形線に遅延?人身事故か・・・。ここから先遅れないように祈っておくか」

 

 

「順調に行けば、23時までには千葉駅でしたっけ?」

 

 

「そうだ、水上が18時30分くらいの乗り継ぎで。高崎が20時くらいってところか」

 

 

「夜の食事どうしましょう?」

 

 

 

 

「高崎で何かしら買おう。弁当を売っている駅だ。無かったらコンビニで軽食

でも買うとしよう」

 

 

「りょーかいです」

 

 

水上までの道中、それまで無かった雪景色が浦佐を過ぎる頃から見え始めたものの

辺りは真っ暗となり、そして県境の清水トンネルを潜り抜けると

大晦日以来の関東ー群馬県に入っていた

 

そして水上から乗り継ぎ、高崎行きへ。それまでの2両から倍の4両となり余裕をもって座席を確保出来た。

 

 

          高崎駅

 

水上からおよそ1時間。高崎駅に到着した。乗り継ぎを含め長い間座っていたせいか

いろはも、やや疲れが見えるようだった。

 

 

(ここからアレを利用するのも手ではあるか・・・)

 

 

いろはがトイレから戻ってくる間にキヨスクで「とり飯弁当」を2つ確保しながら

そんなことを思っていた

 

 

「グリーン車・・・ですか?」

 

 

「ああ、総武快速線にもついてあるアレだ。SUICAで事前にグリーン料金を払っておけば

安く乗れるぞ。お疲れのようだから、東京駅までは楽していこう」

 

 

「休日だと800円なんですね。2時間近く乗ってるならアリですし、

普通車の座席はもう取れないでしょうね」

 

 

「弁当もグリーンでのんびり食えるだろ?」

 

 

そしてグリーン車の座席を確保し

 

 

「SUICAを座席上部にある読み取り部にタッチすれば、完了だな」

 

 

「今まで使ったことなかったから新鮮です」

 

 

リクライニングシートで座席を崩し、のんびりと食事を取り終わった後は、

またもやウトウトしているいろはを見守りつつ、流れゆく夜の夜景をただただ眺めていた

 

 

(ほんとうに幸せそうな顔しやがって・・・・)

 

 

いつからだろうか、この子があざといだけでなく愛おしく感じるようになったのは

付き合い始める前からだろうか、いや実際に始めてからだろうか、

本質を見抜けなかったのはまだまだ俺も未熟だったんだろうな。

ただ利用しあう利害の一致みたいな関係性だった筈の俺達だったのに

 

この子に大分毒されたと一言で纏めるとそうなるかもしれない。

俺が理論でかわそうとするとする上を行動により取られ続け

初めて見せるあざとくない表情ー心底嬉しそうな、はにかみ顔に魅了され

それまで避けてきた、いい言葉で言うと賢しいやり方は完全に潜め

小細工のない真正面から向き合う気高さをもった瞳。

生徒会長としてではなく、一色いろは個人として

惹かれてしまったのがこうなった原因なのだろうな

 

 

ぼんやりと思考に耽っていると荒川を渡り東京都まで入っていた。

上野、東京はもうじきか。そろそろいろはを起こしておくか

 

 

          東京駅

 

 

「ん~久しぶりの実家までもうじきですっ」

 

 

「お前よく寝てたな・・・・もう22時か、

この流れだと千葉には23時までには到着出来そうだ」

 

 

「もうひと踏ん張りですね、流石に座れないかもですけど」

 

 

「途中駅で空けばいいけどな」

 

 

総武快速線はそれなりに人が乗ってはいたものの船橋駅で

2人分の座席が空き15分だけだが、座ることが出来た

 

 

 

         千葉駅 23:00

 

 

千葉駅に到着し二人で有人改札口から降り、千葉モノレールの改札口までのんびりと歩く

 

 

「ようやく戻ってこれたか」

 

 

「お疲れ様です、せんぱい」

 

 

「お前もな、ってか結構寝てただろ・・・」

 

 

「せんぱいならちゃんとエスコートしてくれる信頼感ありますから。やるときはやる人ですし」

 

 

「そいつはどうも・・・。俺が乗り過ごすって可能性は考えないわけ?

総武快速線は千葉が終点だからいいものの、さっきの上野東京ライン直通電車は終点が小田原だからな?」

 

 

「でも新潟で1時間で待ちぼうけしてた時、せんぱいもお休みしてたじゃないですかー?

それで充分行けると思いましてー」

 

 

「・・・・・バレてたか」

 

 

「なんて言っても責任お化けですから、ちゃんと力抜く所を知ってるなら安心ですよ」

 

 

「(やれやれ・・・・)」

 

 

「それではせんぱい、ここまででいいですよ?」

 

 

「そうか、そっちから連絡くれるという流れでいいんだな?」

 

 

「ええ、今回の事全てわたしの両親に話して、そしてこれからの事を

話す時間を作ってもらいます。その日取りを連絡します」

 

 

「了解だ」

 

 

「せんぱいの家の方の障害が少なそうですけど」

 

 

「あーどうだろうな・・・?」

 

 

「(応援してくれた小町ちゃん、でもせんぱいを奪うわけだから・・・複雑かもしれないな)」

 

 

「あいつは多分、全部聞いてくるんだろうな・・・今日は帰ったら即寝たいんだけど」

 

 

「かもしれませんね。フフッ」

 

 

「ああ、それじゃまたな」

 

 

「待ってください」

 

 

咄嗟に袖を掴まされる

 

 

 

「え?まだ何かあるの?」

 

 

「今回の旅のお礼もしてないのに別れようとするなんて随分と薄情ですね?」

 

 

「俺は充分、してもらったと思うんだが」

 

 

「わたしはしていません!大人しく礼を受けてください」

 

 

「分かったよ。んで―― 」

 

 

その先は言えなかった。いや言わせてくれなかったという方が正しいのか

目の前に目を瞑ったいろはの顔が、俺の唇がいろはの唇に塞がれていたから――

その上、俺の背中に手を回されて強く抱きしめられていた。

俺も無意識に彼女の頭をぽんぽんと撫でていた。

 

 

「・・・・ふう、これがわたしなりのお礼です

言葉と行動。両方伴ってこそのわたしの本当の思い。

受け取ってくれてありがとうございます。わたしもまたこういう旅行したいです。

ちゃんと夫婦になったら家庭風呂で遠慮せずにイチャイチャ出来ます。

そういうの一度はやってみたいもので♪」

 

 

「人前でキスされるのも恥ずかしいんだけど、そんな爆弾発言も控えようね?」

 

 

「それでこそせんぱいです♪ストッパーがいるから安心出来るんですよ、わたし」

 

 

「コイツめ・・・」

 

 

「それでは最後に改めて挨拶を」

 

 

お互いすっと寄り添って

 

 

「せんぱい、またです。愛してます」

 

 

「いろは、俺も愛してるよ」

 

 

「あ、ちゃんと言ってくれた・・・・」

 

 

「ここは言わないといけないと思ったよ、流石にな。でないとリテイク要求されかねん」

 

 

「阿吽の呼吸ってヤツですね」

 

 

「ここは空気読まないとな(帰り遅くなりたくないし)」

 

 

名残惜しむようにその場を離れて

改札口を潜り階段を上っていくいろはを見送り終わった俺は、再びJ〇の改札口を

18切符で有人改札口を抜けて総武緩行線で幕張駅まで向かうのだった。

 

 

(一応小町にメールしておくか・・・)

 

 

TO:俺の天使 小町

 

今千葉駅を出たところだ。日付変わる前には着けそうだ

 

 

(これでよし)

 

 

FROM:俺の天使 小町

 

了解、待ってるよー(o^-')b

 

 

(なんだ?この絵文字?何の意味が?)

腑に落ちないまま10分程で幕張駅に到着し、もう遠くない家路をのんびりと歩く

 

 

(目立った遅れもなく無事に進んでよかった)

 

 

スマホの着信音が鳴り、内容を確認すると

 

 

FROM:いろは

 

無事に家に到着しました。

改めて誘ってくれてありがとうございました!('-'*ゞ

 

 

(ふむ・・・)

 

 

TO:いろは

おう、こっちももうじき到着だ。

温まって寝ろよ、おやすみ

 

 

さて家も目前だ、疲れたってことで、土産話は明日話すで誤魔化してとっとと寝るか

 

 

「ただいまー」

 

 

「あ、お兄ちゃん、ようやく帰ってきた」

 

 

「待ちかねたぞ、バカ息子め」

 

 

「さぁ、話を聞きましょうか、八幡」

 

 

いつの間にかトラインアグルを組まれて、包囲される俺

 

 

「な、何のことでしょうか?疲れたから、もう寝させて欲しいんだけど?」

 

 

「いろはお姉ちゃんからこんな連絡が入ったからには、本人から話を聞かないことには

寝かせるわけないでしょう?」

 

 

「そうだぞ、八幡」

 

 

「休みはまだ2日あるんだから、ゆっくり睡眠をとれば問題ないわ」

 

 

(まさか・・・・あいつ・・・!!)

 

 

冷や汗がダラダラ垂れていくのを自覚しつつ、小町から見せられたスマホには

 

 

FROM:いろはお姉ちゃん

 

先程、せんぱいに千葉駅で見送られました

婚前旅行凄く楽しかったよー(^∀^)

わたしからも今度話すけど

せんぱい視点での話も是非聞いてみてね~( ̄ー ̄)b

 

 

やりとりした時間軸を見ると、小町にメールをする前だった。

あの時、既に知っていたというのか・・・!!だからあんな絵文字を!

この場は取調室となっていたわけか!

 

 

「大体想像は付くけど、吐いてもらうよ、『婚前旅行』の意味合い(ニヤニヤ)」

 

 

「全く長かったな(ニヤニヤ)」

 

 

「大丈夫、コーヒー淹れるから。寝かせはしないわよ(ニッコリ)」

 

 

「(いろは~~~~!!!余計な事を!俺の睡眠時間返して・・・)」

 

 

そしてそれから数時間の間、根掘り葉掘り聞かれ、俺の精神が瀕死になったのは言うまでもない

 




これで旅行編、終わりです。
次回以降は結婚準備の話が始まります

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