やはり俺のパートナーは・・・   作:バネア☆

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自分には姉2人がいるのですが、2人が嫁ぐ際の面通しも和やかに進んでいました。
そして学校へ通うまで育った孫達をみる父や母の目が優し気なものを見て、
いろはの両親もこんな思いなのだろうと連想しつつ書き上げました



第十九話 一色家 ~託す思い~

1週間経った3連休の中日である日曜日

 

 

俺は休日にも拘らずスーツに着込んでいた。

前日のうちに小町や母さんの監修のもと、結婚挨拶の手土産に相応しいものは

何か選ぶべく、千葉駅直結であるペリエ千葉に足を運び和菓子詰め合わせを買うことに相成った。

 

2人曰く「「ここで恥をかかせるわけにはいかない」」

と一文字も狂う事なく断言されたのはショックではあったが、

俺を思いやってのことと割り切ることにした。

 

 

そして、時刻は9:50

 

一色家まであともうじきの道のりを歩いていた。

心臓はバクバクと脈打ってるのが自分でも分かる。

 

一色家の一人娘であるいろはを奪おうとしている

あざとい部分を抜きにしても、ルックスがあれだけ綺麗な部類な女

父親からしたらどれだけ溺愛してても可笑しくはない

今日だけの挨拶で果たして許されるだろうか・・・・

いろはの受験勉強を教える名目で何度かお会いしてても

今日ばかりは死地だ・・・!!

 

 

ピンポーン

 

一色家のインターホンを押し、運命の時が来た事を実感しつつも

いろはが応答し中に入れてもらえることに

 

 

「せんぱい、時間通りですね!いらっしゃい!」

 

 

「ああ、お邪魔します」

 

 

「居間に両親が待ってますのでどうぞ、どうぞ」

 

 

そこには満面笑みのいろはの母であるしぐれさんと父である兼人さんがいた

 

 

「こちら手土産でお持ちました。どうかお受け取り下さい」

 

 

しぐれ「わざわざありがとうね。受け取らせて貰うわね」

 

 

兼人「立っていないで座り給え」

 

 

「失礼します」

 

 

(このひりつくような緊張感はなんだ・・・・?

さっきから兼人さんじっと俺を見ているだけじゃないか)

 

 

(な、なんて切り出していいものか・・・・・・)

 

 

しぐれ「八幡君、そんなに固くならずにお茶飲んで一息ついたらどうかしら?」

 

 

「お気遣いありがとうございます、頂きます・・・・」

 

 

(・・・熱いお茶でちょっとは落ち着いたかな。

いろはをチラリと見ると笑顔で小さく首肯してみせていた)

 

 

「今日は時間を作って頂きありがとうございます」

 

 

兼人「娘が頼んできたからな。旅行の話も一通り聞いてはいる」

 

 

「それなら、単刀直入に言わせて頂きます。いろはさんと結婚させて頂きたく参りました。

どうかよろしくお願いします」

 

 

俺にとって顔をずっと下げてる時間が無限にと思われたが

 

 

兼人「顔を上げるんだ。八幡君」

 

 

「え・・・・・・・?」

 

 

しぐれ・兼人「「むしろこちらからありがとうとお礼をいいたいくらいだ」」

 

 

「な、何故、お二人がお礼を?そんな大層な事は」

 

 

しぐれ「娘があんなに一途に一人の男を慕える相手に巡り合えたんだもの。

そういう話が出れば、純粋におくりだすつもりだったのよ」

 

 

兼人「高校に入るまで、外見磨きばかりしていた娘が何時からか変わったのは

分かったからな。悪い男に騙されてないか心配だったが、真剣に向き合っている

のは見て取れたよ。大学受験であんだけ目標に向かって漲らせた眼をしたいろはを

見るのは初めてだったからな。それに応える君も大したものだと思っていた」

 

 

 

「・・・・身に余る思いです」

 

 

兼人「それに、大学で一人暮らししている君の家に半同棲していただろう。

そういった意味では、信頼していたからこそ静観していた」

 

 

「・・・・え?いろは、友達の家にって言ってなかった?」

 

 

「・・・・ばれていたようです」

 

 

しぐれ「ふふ、あれだけ仲睦まじいのだから言葉の裏を考えれば丸わかりよ?」

 

 

「」

 

 

兼人「もし授かり婚で挨拶に来ようものなら、純粋に祝福は出来なかったと思うが」

 

 

「・・・・(やっぱりそう思ってたか)」

 

 

しぐれ「いろはを幸せにしたいからこそ、一線を踏み込まなかった思い。

その覚悟。確かに聞かせてもらったからこそ、八幡君にお願いするわ」

 

 

しぐれ・兼人「いろはは、面倒な娘ではあるけど大切な宝物。どうか娘を幸せにしてあげてやってくれ(下さい)」

 

 

まさか、しぐれさんと兼人さんに頭を下げられるとは思ってなかった俺は戸惑うばかりだったが

横にいるいろはからツンツンと脇腹をつつかれ我に返った

 

 

「恐縮です。いろはと一緒に歩んで行きます」と頭を下げ感謝を述べた。

 

 

24年も手塩を掛けて育ててきた愛娘を手放す思い、それは身を引かされる思いなのかもしれないと

想像していただけに、それ以上に幸せになると言い切った強い娘に育った感無量さ。

それほどまでに強い影響を受けたと思われている俺に託す安心感。

 

 

改めて、身が引き締まる思いを感じていた。

俺も将来、もし小町が結婚したらこの2人の境地に至れるのだろうか?

認めないぞと喚く醜態をさらすだけになってしまうのだろうか?

そんなことをふと思ったが

 

 

しぐれ「さ、折角来たのだから、八幡君からいろはの話も聞きたいわ」

 

 

「え?」

 

 

兼人「そうだ、出前ももうじき来るからゆっくりしてくれたまえ」

 

 

「い、いろは?聞いてないんだけど?」

 

 

「ごめんなさい・・・驚かしたいと言われたから口留めされてたの」

 

 

どうやら、すんなり終わってくれないらしい。

とことんお付き合いするしかないようだ

これもいい機会だ。ご両親とお話しすることは久しくなかったのだから

 

 

11時に出前の寿司が届き、宴が始まった。酒が入ってくるとしぐれさんから

「馴れ初め」だの「付き合い始めてからの心の変わり様」だの

尋問を受ける事になった。兼人さんも横でそれを聞いていて

「一目惚れだけでなく、ちゃんと振り向かせたか。わが娘ながらよくやったもんだ」

としみじみと呟いていたのが印象的だった。

先週も同じような目にあったんだけど、これも試練なのだろうか?ぐぬぬ・・・

 

 

「そういえば気になっていた事があるのですが、お聞きしてもいいですか?」

 

 

しぐれ「いいわよ?何かしら」

 

 

「お二人の左手薬指にあるべきものがないのですが」

 

 

兼人「ほう・・・めざといな」

 

 

しぐれ「これはね家事に邪魔になる度に外すのが面倒になったから付けなくなったのよ」

 

 

兼人「俺は指環が入らなくなってしまったからだな」

 

 

「・・・そういうことでしたか」

 

 

「せんぱい?何か思い当たる事でも」

 

 

「いや、単純な疑問だ」

 

 

兼人「・・・八幡君、一つ言わせてもらえるかな?

婚約指輪・結婚指輪、全ての夫婦にそれが必要なのかという疑問が浮かんでいるのかもしれないな。でも君達は、話し合うことで結婚式をあげないという選択肢を選ぼうとしてるのだから。

だから、それも君達でよく話し合うといい」

 

 

「・・・(見透かされたか)」

 

 

「父さん!それは・・・」

 

 

しぐれ「あなたたちがよく考え決めた決断なら、それを母さんは尊重するわ。

後悔のない選択をすることがどれだけ難しいか分かってるつもりよ」

 

 

「ご忠告ありがとうございます」

 

 

時刻は昼を大きく廻り、夕食もいらない位に腹が膨れていた

そろそろお暇を告げようかと思って席を立ったが

 

 

「せんぱい、帰る前にわたしの部屋に来てくれませんか、時間は取らせませんので」

 

 

「?ああ、構わんが」

 

 

いろはの部屋に入ると後ろで鍵をかける音が聞こえた

 

 

「なんで鍵を掛けた?」

 

 

「邪魔されたくなかったからですよぉ・・・」

 

そっと背中から抱き着かれて、懐かしむように語りだした

 

 

「この部屋で大学受験勉強に明け暮れた日々、せんぱいからの

スパルタに耐えて耐えて、ようやく報われて号泣した懐かしい記憶」

 

「そんな中でもちゃんとアメをくれたお蔭で乗り越えられた。

それを改めて振り返りたかったからなんですよ」

 

 

「そうだな・・・・お前模試の結果とか精神的にキツイ時とか、甘えてきたもんな」

 

 

「弱音みせたくなかったんですけど、やっぱり誘惑に勝てませんでしたねー今思うと」

 

 

「こっちがちゃんと引き締めないといけないから、程々にして離さなければならなかった

俺の理性を褒めたたえたい」

 

 

「ありがとうございます、おかげで深みに入りきらずに済みました。

今日はちょっとだけ甘えてもいいですよね?」

 

 

「断るわけないだろう?」

 

 

正面に向き合い、距離が0になり抱擁しあい唇を優しく啄むだけの接吻

だけど酒で酔ってるだけでなく、体中が暖かい気持ちに包まれているのを感じつつ

名残惜しむ様に体を離した

 

 

「じゃあ、そろそろ帰るわ」

 

 

「また明日です、そちらにお伺いしますね」

 

 

そう、酒の席で明日はいろはが比企谷家に挨拶に来ることに決まったのだ

取り急ぎ、小町にはメールでその旨を伝えてある

 

 

お邪魔しましたーと挨拶を告げ、一色家を後にする

(また明日・・・か)

そんな言葉を交わさなければならない日々も、もうじき終わりとなる

それがいつまでも続いて欲しいと願いながら俺は家路に着いた

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