本年もよろしくお願いいたします。
季節は夏真っ盛り、8月に入っていた。
学生にとっては長い長い休みを謳歌出来るパラダイスではあるが、
今の俺は社会人4年目、休みがお盆のみという生活に慣れつつあるというのが現状
ああ、社畜への道へひた走っているんだな・・と若干落ち込みつつ稲〇駅を降り家路を進む
更には立て続けに自分がやったミスのクレーム処理も相まって、普段より残業が長くなってしまった
流石に今日、閉店タイムセールを狙って買いに行く気力は今の俺にはなかった
「帰ったぞー」
「あ、おかえりなさーい」
「大分遅くなってすまんな」
「珍しいですね?こんなに遅くなるなんて?」
「あーミスが立て込んでなー。その処理と謝罪に時間を食ってしまったんだ」
「そうでしたか・・・・お疲れ様です」
「・・・・おう」
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普段着に着替え、今日は飯食べたらシャワー浴びて寝てしまうかと思い浮かべていた所
「はい、温め終わりましたよ?」
「ああ、ありがとな」
「後、こちらも・・・ですね」
そう言って冷蔵庫からいろはが取り出したのは、モンブランと赤ワイン。
「今日は八幡君、あなたの誕生日ですよ?」
「・・・・ああ、そうだったか」
「ちょっとちょっと?自分の誕生日忘れてるってどんだけですかー?」
「・・む、繁忙期にも入って余裕がなかったのは否めないな・・・」
「全く、自分の事は二の次にしちゃうんだから、八幡君は・・・・
だからこそちゃんと足を付けて、一旦立ち止まってもいいと思う」
「いろは?」
「八幡君は一人で物事を考えてしまう癖があるのは、昔からの性分だってのは
知ってる。わたしとの結婚時期を悩んでたのもそう。でも、今はもう一人じゃない。
わたしたち家族です。夫婦です。八幡君の妻です」
「心配かけてしまったな・・・」
「ホントですよ!全く・・・ですから今日は26歳になったお祝いで
明日からはまた新たな気持ちで挑めるようにわたしが癒しますから!」
そう言って可愛らしくウインクする、あざとくも愛おしい俺の愛妻いろはに
「つくづくお前には勝てないな・・・ありがとないろは」
溢れる感謝の思いを込めて頭を撫でた
いろはは満更でもなく目を細めて受け入れ、幸せ一杯の顔で
「どういたしまして♪」
食後は2人で久々に一緒に風呂に入り
上がった後はハグし合って寝る事に
「八幡君からハグしてくるなんて・・珍しい。大抵はわたしからなのに」
「なんとなく今日はそんな気分なんだ」
「明後日からはまた旅行ですね?」
「ああ、上手い事宿が取れた。今から楽しみだな」
「心の洗濯してまた新たに頑張りましょうね♪」
「おう」
啄むようなキスを交わし
「八幡君、おやすみなさい」
「おやすみ、いろは」
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8月10日(山の日)AM4:40 稲〇駅
熱中症対策で俺は帽子。いろはは麦わら帽子。
そしてお互い冷却タオルをを首に巻き。青Tシャツにジーンズに歩きやすいスニーカーを履いた装いの俺
いろはは黒のフラットシューズにグリーンスカートに白Tシャツで決めている
俺達は寝ぼけ眼を擦りながら、駅構内のベンチで横須賀線直通の電車を待っていた
「ふぁーねむぃ・・・・」
「戸塚駅まで1時間ちょっとだから爆睡はするなよ?するなよ?」
「随分と強行旅を組んだんですねぇ~」
「あまりゆっくりだと今日中に京都に着かないからな・・・」
「今回もあの切符の鈍行旅を組んだんですね?休憩なしで鈍行で乗り継いでも
京都到着が15時前・・・新幹線ならおよそ2時間半。7時間も違うなんて
偉大って改めて感じますね。それでいて朝ラッシュ並みのダイヤを一日中組んでる
どれだけ需要があるんだって話ですよ」
そう、俺はまた青〇18切符で鈍行旅を組んだのだ
初日こそ京都への移動とメインとなるが
それ以降の大移動は5日目位になる見通しを立てたので1枚の購入に留めていた
「まぁ、なんだ戸塚からは沼津まで2時間位あるんだし、
またグリーン車で寝ればいいんだ。それまで辛抱してくれ」
「ふぁーい・・」
そうこうしてるうちに総武線快速・横須賀線直通電車が入線。
始発電車ということもあり、悠々と座席を確保。
東海道線への乗り換え駅が東京駅・品川駅・横浜駅・大船駅・戸塚駅と多数あるのに
検索サイトで戸塚駅が出てきたので疑問に思っていたのだが
駅の構造、乗り換え時間、その辺りを考慮されての事だと理解できた
東京駅ー総武線が地下ホーム。東海道線まで遠い。新幹線停車駅。人多し
品川駅・横浜駅・大船駅ー階段を上り下りを余儀なくされる。品川駅に至っては新幹線停車駅。
多数の路線が行き交う、よって人多い。
戸塚駅ー横須賀線と東海道線が同じホームで乗り換えが出来る、階段上り下りが不要!それ以外の路線は市営地下鉄のみ。
この世には神がいた!戸塚は駅でも人でも俺に優しいものであったのだ!ただただ内心感激する俺に
いろはがジト目をしていたのはここだけの話にしておこう
戸塚駅から乗り換えた東海道線のグリーン車は既に7割程席が埋まってはいたものの2人並びの席をかろうじて確保。
そこでようやく沼津まで2時間程の仮眠をとる事が出来たのだった
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沼津駅 AM8:05
「んーよく寝た~」
「大分眠気も取れたな」
「後何回乗り継ぐんでしたっけ?」
「静岡と掛川だな。掛川から天竜浜名湖鉄道、ローカル線に乗ることになる」
「あれ?京都までの移動で終わるんじゃないんですか?」
「寄り道だ。さて問題、浜名湖って言えば何が有名?」
「浜名湖・・・?うなぎ!?」
「正解だ。俺も店を絞り込むまで知らなかったんだが
うなぎの焼き方は『関西風』『関東風』があるらしいんだ」
「どっかのバラエティ番組でカレーが西が牛肉。東が豚肉を使用するって
知りましたけど、あれと同じなんですかね?」
「カレーの場合はブランド牛が神戸、松阪があるからその傾向だな。
東は養豚が盛んだったという話がるからだな」
「ふーん、話戻しますがうなぎの焼き方は?」
「関西風は腹開きにして蒸さないで焼くためパリッと香ばしいワイルドな仕上がりで、
関東風は背開きにして蒸す工程が入るため、余分な脂が落ち、ふわっとした食感に仕上がりにするそうだ」
「ほへー」
「浜松は東西の調理法が混在されてるから非常に興味深いな」
「おおー八幡君がイキイキしてる・・・」
「掛川まではあと2時間揺られることになるが、まぁのんびりと行くとするか」
「はい♪」
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掛川駅 AM9:55
沼津駅からは席は確保出来たものの静岡駅では県庁所在地の駅だけあって、
車内は混み合っており1時間程つり革に揺られて耐える事と相成った
「いろは、大丈夫か?」
「うん大丈夫です・・・」
自販機でポカリを2本買い、一本をいろはにの頬に当てた
「わひゃぁ!?」
「混み合った車内で水分取られただろう、暫く当てて熱覚ました方がいいぞ」
「普通に手渡してもいいじゃない、もう・・・・」
そんな戯れをしていると天竜浜名湖鉄道の発車時間が迫ってきてた為、
取り急ぎ乗車し席を確保した。
「ディーゼル車で一両・・・・」
「のどかでいい・・・非日常に来たって気がする・・・・」
「八幡君が旅に凝り始めたのってこういった非日常を味わうためなんです?」
「まぁそうだな。人生苦いことばかりだしな・・マッカンみたいな癖になる甘味もいいが
こういったのも悪くない・・・・なんて渋すぎる・・か?」
と自嘲的に笑ってしまうが
「ううん、いいと思いますよ?」
ポカリを一口飲んで一息ついた後
「共働きで先に帰って八幡君を出迎える日常も
外に飛び出して、知らない事に触れる刺激もどれも大切な事として刻まれますから」
「つくづく変わったよな、お前」
「八幡君も出不精って印象が強かったのに、こんなに旅行にはまるなんて
付き合い始めからは考えられないですよ?」
「あー元々俺は、親父と一緒に旅行出てたんだよ、小学生低学年位まではな」
「そういえば、婚前旅行の時言ってましたっけ、ブルートレイン乗った事があるって」
「それだそれ。その頃を思い出してドはまりしたのが今に至るってわけだ」
そんな会話をしているとうなぎを食べる為に降りる駅が近づいてきた
区切りがいいのでここで止めます
人生山あり谷あり。
八幡の場合は谷ばかりですが、いろはと共にある事で
頑張れる源、心の清涼剤になっている描写を
一つ入れてみたいと思って入れてみました