いろはに真相を打ち明け、感情が高ぶってしまい、近くにある嵐山公園のベンチで座り落ち着きを取り戻すことにした。
夕方の時間に入り、木陰の中、緩やかな風が吹かれていると顔の暑さも心の平静も取り戻しつつあった。
「八幡君、落ち着きました?」
「ああ、心配かけたな。いろはも暑さに参ってないか?」
「ええ、休憩と水分補給したので大丈夫です」
「そうか、ならそろそろ行くとしよう」
と立ち上がったと同時に列車の警笛が響いて思わず反応してしまう。
「お?丁度トロッコ列車が出る時間帯かな?」
「ちょっと見に行ってみません?時間ありますよね?」
「確かにまだ余裕はあるな・・・見に行くとするか」
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トロッコ嵐山駅に辿り着くと丁度亀岡方面へ発車したばかりのトロッコ列車を拝めることが出来た。
「トロッコ列車かぁ・・・乗ってみたいけど観光シーズンは難しいかもですね」
「四季折々の風景が楽しめるだけに当日購入は厳しいだろうな」
「そもそも、『嵯峨野トロッコ列車』なんて誕生したのですかねぇ?」
「昔はこの嵯峨野線が単線で、嵯峨嵐山と馬堀を直線トンネルで結んだ複線が完成した以降、それまで使っていた線路を活用しようとした動きから始まったと聞いているな」
「なるほど再活用したわけですか」
「それが今や京都の観光名物の一つになっているのだからな。嵯峨野線は京都から園部までの愛称という形らしい、それ以降は山陰本線で呼ばれていて、所々電化されたりと単線だったりとつぎはぎみたいになっていて、俺としては楽しめる路線だと思っているよ。
誰だったか忘れたけど山陰本線を「偉大なるローカル線」と評した事で有名な位だからな」
「相変わらず詳しいですね」
「ちょっとした雑学をかじっただけに過ぎん。もうじき日も暮れる。二条城のライトアップが19時からだからそれまでに飯を食べてしまうか」
「どこで食べましょうかねー?」
「駅前でいいだろ。嵯峨嵐山か二条のどちらかで」
「ん、それじゃ移動開始ですね」
結論から言うと、嵯峨嵐山ではリーズナブルな店が無かったので、二条駅近辺で回転寿しの店で軽く腹を満たし18時半になる前に二条城へ向かう事となった
二条城 18:30
「お盆だけあって結構並んでいるものだな・・・」
「それだけ人気なんですね、ここのライトアップ」
19:00からまもなくして入場出来てまず目に留まったのは仄かな光が当てられている七夕だった。
「こいつは地元の子供達の願い事だろうか」
「みたいですね。字がまだ幼いですよ。ふふ、この頃の子供達はこんな願い事をしていたんですね」
会場を進むと「願い事コーナー」が設置されており来場者も笹を飾る事が出来るとのことだ
った。
「へぇ、粋な事が出来るんだな」
「色とりどりな絵葉書短冊ですよ、どれで書こうか迷ってしまいますね」
「よし、こんなもんか」
「わたしも書き終わりました」
飾り終えたお互いの短冊を見終えて、お互い笑いあう。
「八幡君らしいですね。『平穏な日常を過ごしたい』だなんて」
「いろはこそまだ宿ってもないのに『元気な赤ちゃんを授かりたい』とは。気が早いぞ」
「えへへ、旅行中もピル飲んでいるのでシても授からないですけど、家帰って排卵日を見計らったうえでいっぱいしましょうね?」ボソッ
「・・・あいよ」頭ボリボリ
その後、メッセージ行灯が並んでいる通りを歩く。行灯の下の方には地元企業と思しき名前が記されている。完全な夜になろうという空の景色と相まって幻想的だった。
「妖怪たちの百鬼夜行」をテーマにした国宝・二之丸御殿(大広間)へのプロジェクションマッピング
二の丸庭園のライトアップ
夏の夜だからこそ映える最高の鑑賞を楽しみ、光の風鈴展示では夜になって涼んできた体感温度をより感じ、2人してスマホで動画撮影して楽しんだ
天の川をイメージしたライトアップした通りは青を基調とした通りで「願い七夕」は明るい色であったのに対して、こちらはやや暗めー夜を強調しているのかもしれない
休憩がてらベンチに座り、スマホで天の川を調べて見る事にした
『あまのがわ。夜空を横切るように存在する雲状の光の帯のこと
中国・日本など東アジア地域に伝わる七夕伝説では、織女星と牽牛星を隔てて会えなくしている川が天の川である。二人は互いに恋しあっていたが、天帝に見咎められ、年に一度、七月七日の日のみ、天の川を渡って会うことになった』
(そうか、七夕にちなんだものだったか)
それ以外にも目を引いたのは
『天の川のあちこちに中州のように暗い部分があるのは、星がないのではなく、暗黒星雲があって、その向こうの星を隠しているためである』
(だから青でライトアップしたのか)
フムフムと一人納得していた。
十二分に二条城のライトアップを満喫し会場を後にした時刻は21時を周ろうかという時間になっていた。
「んー満喫しましたね!京都」大きく背伸びをしてにこやかな顔をするいろはに
「ああ今回は純粋に楽しめたな」
そう返すと、ぎゅっと何も言わずに指を絡めて柔らかく握りしめてきた
「それなら・・良かったです。八幡君のつらい記憶が楽しい思い出で上書きされて」
「全く・・・・俺には勿体ない位出来た嫁だよ、お前は」
お礼とばかりに握り返し俺達は二条駅に向かうのだった。
二条駅 ~21:20~
時刻表を見ると30分に普通電車が出て、園部終点。接続電車を経て福知山には23時半を過ぎてしまうか。
片や後続の特急「きのさき」に乗ってしまえば終点福知山までのんびり出来る上に23時前には到着・・・か。
問題は席が空いているかどうかだけど果たして・・・?
結論・運がいい事に隣同士の空席を確保出来た。特急料金が1000円近くかかったが今日一日観光で歩き詰めだったからゆったり座席で疲れを取れる事に安堵したのだった
福知山駅 ~23:00~
「特急」きのさきに乗車して座席をリクライニングして終点・福知山までまどろんで多少の疲れは取れ、今日の寝床であるシティホテルへ向かっていた
チェックインを無事済ませツイン部屋に入りお互いシャワーで汗を流し終え、ようやく寛ぐ頃には日付も変わる時間になろうとしていた
「ふぅ、ようやく火照った体も涼んできたし寝るとするか」
「ですね~」ファ
「しかし夏場のホテルの寝間着はちょっと暑いかな」
「これに布団も掛けたら間違いなく蹴飛ばしてしまいますねぇ」
「ちょっと緩めの空調で調整してから床に入るとするか」
「はーい」
ベッド備え付けのボタンで完全消灯し瞼も閉じ掛け本能の赴くまま睡眠につく
と思っていたが腕に抱き着いていたいろはがそっと身を乗り出し頬に唇にキスをしてきた
「・・・何してんの?」
「旦那様がよく眠れるようにおまじないをかけてあげました♪
長年の棘がようやく抜けた事で心安らかになりますようにってね」
ああ、お蔭でよく寝れそうだ。程よく疲れてもいるしな」
「おやすみなさい。八幡君」
「おやすみ、いろは」
一つのトラウマを乗り越えた八幡と
それを支えるいろはという構図
それを表現してみたかったのです
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