「そういえば、透」
「ん?なんだ?」
「NWOで、もうすぐあれがあるやん。第1回イベント」
「あぁ、そういえばあったな」
メイプルにスキルの差を見せつけられた翌日、俺と栞奈は登校の道中でNWOで初めて開催されるイベントについて話し合っていた。
「たしか、PvPのバトルロワイヤルだったよな」
「せやったな。プレイヤーの撃破数自分の死亡回数、それに与ダメージと被ダメージでポイントが計算されて、ポイントが高いと優勝!ってやつやな。それに何より・・・」
「上位10名には、限定の記念品が贈られるって話だったか」
NWOで初めての大規模イベントとあって、運営もけっこう力を入れているらしく、通知からもすごいものがもらえそうな雰囲気を醸し出していた。
「記念品がなんなのかは、まだわからないままだが」
「でも、初めてのイベントやろ?絶対に損しないこと間違いなしや!」
栞奈は多くの女子にありがちな限定品という言葉に弱い質であり、案の定やる気に満ち溢れていた。
「だが、上位10人だろ?かなりの競争率になりそうな気がするが・・・」
「大丈夫や!うちのレベルも30近いし、透もうちとパーティー組んでレベル上げすれば大丈夫や!それに、うちらにはユニークシリーズっていうチート装備もあるしな!」
「言われてみれば、たしかにそうだな」
俺たちが手に入れたユニークシリーズは、他に持っているプレイヤーがいない唯一無二の装備だ。その分、効果も強力で、十分トッププレイヤーとも渡り合えると予想できる。
さらに、栞奈の経験値稼ぎの効率は、おそらく全プレイヤーの中でもトップクラスだと言い切れる。なぜなら、レベルアップのステータスポイントを全部注ぎ込んだAGIに加え、スキルでAGIに比例してSTRを上げることもできるから、高速で移動しながらだいたいのモンスターをワンパンできるからだ。
そして、パーティーを組めば得られた経験値は共有できる。最低でも攻撃を1発与える必要はあるが、シオリと一緒にパーティーを組むだけで、次々と経験値を得られると考えたら、第1回イベントでも十分太刀打ちできるだろう。
問題は、
「俺と栞奈、メイプルで鉢合わせたら、どうする?」
「うーん、好きにすればええんとちゃう?うちも透もダメージ出せるけど、メイプルちゃんの防御を貫けるかは疑問やし・・・ていうか、うちら以外で誰が単独で貫けるんやって話やし・・・」
「あー、それもそうだな・・・」
詳しいことは聞いていないが、メイプルのVITはスキルによって、おそらく装備抜きでも600を超えている。これにさらに装備のVITや盾が加わるのだから、俺たちの最高火力でもHPを減らせるかはわからない。
別に本番で試してみてもいいのだが、メイプルには【悪食】があるから、うかつには接近できないし、遠距離も【毒竜】でカバーできてしまう。幸い、俺は【竜ノ加護】で毒は無効化できるが、【毒竜】自体のダメージは別だ。遠距離攻撃も【竜ノ加護】で無効化できる場合もあるが、最初から2分の1をあてにするのもよくはない。
いやまぁ、攻撃が通じない時点で挑む理由もないんだが。
「ま、まぁ、少なくとも、俺と栞奈でつぶし合わないようにすればいいだろ。メイプルは別枠ってことで」
「そ、そうやな。メイプルちゃんならなんとかなるやろうし、うちらが心配しなくてもえぇか」
結論、メイプルなら大丈夫ってことで。本人は自覚がないみたいだけど。
「とりあえず、イベントまでは俺と栞奈でパーティーを組んで、ひたすらレベル上げってことにしようか」
「そうやな。場所はどうする?」
「“毒竜の迷宮”でいいんじゃないか?ひたすらボスモンスターを狩ってマラソンするってことで。調べた限り、今あるダンジョンで一番短いのはここっぽいし」
「そうやな。ボスを集中的に狙えば、透も十分レベルは上がるやろ」
“毒竜の迷宮”は“風の峡谷”に負けず劣らず難易度の高いダンジョンだが、その要因は毒がメインになっているからであり、毒を無効化できる俺にとってはその限りではないし、栞奈のAGIなら攻撃も当たらないだろう。
「んじゃ、今日からひたすら周回ってことで」
「
こうして、第1回イベントに向けてレベル上げをすることになった。
* * * * *
レベル上げ周回を始めてから数日後、とうとう第1回イベントの日がやってきた。
集合場所である最初の噴水の広場に行くと、すでに大勢の参加者と観戦者でにぎわっており、観戦用のスクリーンも浮かんでいた。
「あ!メイプルちゃーん!」
周囲をきょろきょろしていると、シオリがメイプルを見つけ、声をかけながら駆け寄っていった。
「シオリちゃん!クラルくんも!」
「やっぱり、メイプルも参加するんだな」
「えへへ・・・2人とも、やっぱり強くなってる?」
「そうだな。なんやかんやあって、俺もレベルが35になって、シオリは37になった」
「えっ、うそ!?」
「メイプルちゃんが行ったって言っとった“毒竜の迷宮”を、ひたすら周回したんや。そしたら、こんなことになたんよ」
とはいえ、今の最高レベルは48で、それと比べたらまだまだなところもあるが、それは比較するだけ無駄だし、足りないレベルとステータスはPSで補おう。
すると、大音量でアナウンスが流れ始めた。
「それでは、第1回イベント!バトルロワイヤルを開始します!」
あちこちから怒号が響き、隣ではメイプルが恥ずかしながらも片手を上げて叫んでいた。
「それでは、もう一度改めてルールを説明します!制限時間は3時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップです!倒したプレイヤーの数と倒された回数、それに被ダメージと与ダメージ。この4つの項目からポイントを算出し、順位を出します!さらに上位10名には記念品が贈られます!頑張って下さい!」
そう言い終わると、スクリーンにカウントダウンが表示され、0になったとともに、俺たちは光に包まれて転移されていった。
メイプルの呼び方を少し変えました。
あまり呼び捨てがしっくりこなかったので。
それと、今日はもう1話更新予定です。