クリスマスパーティーから数日、俺は毎年の恒例になっている修羅場に遭遇していた。
「透さん!追加の材料持ってきました!」
「サンキュ!焼きそばはいかがですかー!」
道場から少し離れたところにある寺の敷地内で、俺は鉄板の前でひたすら焼きそばを作っていた。他の場所では、クレープやお好み焼きなど、様々な屋台を開いている。
これもまた、クリスマスパーティーと同じくらい恒例になっているイベントで、正月には道場の大人・学生組でこの寺で屋台を出すことになっている。
なんか、この屋台も重要な収入なんだとか。ぶっちゃけ、屋台で稼げる額って大したことない気がするけど。
ちなみに、俺が母さんから料理を教わったと言うか教わされた理由の半分くらいはこの屋台だったりする。
そして、恒例になっているからなのかはわからないが、意外と売れる。たぶん、母さんんのレシピが効いているんだろうな。
「すいません!焼きそば3つお願いします!」
「ありがとうございます!焼きそば3つ入りましたー!」
「へいへい!焼きそば3つあがり!」
俺は武術の鍛錬で身に付けた洞察力と直感で注文数を予想しながら、絶えずに材料を追加しながら焼きそばを作っていく。
中学生になってから始めたのだが、ずいぶんと慣れたものだ。
「いや~、やっぱり透さんがいてくれて助かります!」
「こちとら、母さんにしごかれたからな!これくらい捌かないと怒鳴られる!」
料理に限って言えば、母さんって父さんよりもスパルタなところあるからなぁ~。
教え方が厳しいというか、ノルマがやたらと高い。
何も聞いてない状態でサバを30秒以内に三枚おろしにしろって言われたときはマジで耳を疑った。
まぁ、そのおかげで客観的に見ても料理上手の部類に入ったわけだけど。
ちゃんと小遣いもでるから、文句があるわけでもないけど。
もはや考え事をしながらでも勝手に手が動く境地になっているのは、幸とみるべきか不幸とみるべきか。
そんなことを考えながら客と焼きそばをさばいていると、いつもの声が聞こえてきた。
「お~、今年もやっとるなー!」
「栞奈、今は話しかけないでくれ。まじで忙しいから」
「釣れんこと言わんで、もうちょい話してや」
今の俺が大変なことくらいわかるだろうに、栞奈はそれでも話しかけるのをやめない。
「それに、せっかく2人も来たんやで?」
「あ?2人?まさか・・・」
俺たちの共通の知り合いで2人となれば、だいたい予想がつく。
そして、すぐにその答えはやってきた。
「神崎くん!あけましておめでとー!」
「あけましておめでとう、神崎くん」
栞奈の後ろから、本条と白峰が顔を出した。
「また栞奈が誘ったのか?」
「そんな人を黒幕扱いするなんて、ひどいと思わんのか?2人とは偶然会っただけや」
「私たち、初詣は毎年ここに行くんだ」
「それで栞奈と偶然会って、神崎くんが屋台を手伝ってるって聞いたから様子を見に来たのよ」
「なんだ、そういうことだったのか」
ここに来て初めてその事実を知ったのは、偶然顔を合わせなかったからか、単純にあまり記憶に残っていなかったからか。
「それはそうと、冷やかしに来ただけなら早く帰ってくれ。今はマジで忙しいから」
「せやなぁ。せっかくやし、うちらも買っとくわ。3つちょうだいな」
「はいよ。3つな」
注文を受けた俺は、さっさと焼きそばを3パック詰めて3人に渡した。
お代は栞奈がまとめて払い、あとで2人の分を受け取ってから食べ始めた。
「うん、相変わらずうまいわ!」
「そうだね!」
「他のところと違って、まったく油っぽくないわね」
白峰が若干他の屋台をディスっているが、母さんが監修したレシピと比べたら仕方ないことだ。
「あら、3人とも!いらっしゃい!」
栞奈たちが俺の作った焼きそばに舌鼓を打っていると、屋台の後ろから母さんが顔を出してきた。
「花梨さん、あけましておめでとうございます」
「「あけましておめでとうございます」」
「あけましておめでとう。うちの焼きそばはおいしかった?」
「はい!とてもおいしかったです!」
「それはよかったわ」
「それで、母さんはどうしたんだ?」
脱線しかけているところを俺が無理やり修正すると、母さんは「そうそう」と俺に話題を振ってきた。
「栞奈ちゃんたちが来たならちょうどよかったわね。もう透は上がっていいから、あとは4人で楽しんできなさい」
「わかった。んじゃ、お疲れさん」
「はい、お疲れさまでした!」
俺は一言入れてから、屋台の裏から外に出て着替え、栞奈たちと合流した。
「それで、これからどうする?ぶっちゃけ、お参りはもうやっちゃったんだよな」
「それはうちらも同じや。せっかくやし、他の屋台も回らへん?」
栞奈の提案によって、俺たちは遊戯系の屋台を中心に見て回ることにした。
中途半端ですが、このあたりで。
ちなみに、自分は初詣は神社派です。
というか、実家近くにお寺がない。