弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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新年(中編)

「それで、まずはどこ行く?」

 

並んで歩いていると、本条が俺に尋ねてきた。

ちなみに、左から俺、白峰、本条、栞奈の順番だ。

 

「それなんだがな、先に行きたいところがあるんだ」

「おっ、いつものやな」

 

俺の言葉をいち早く理解したのは栞奈だ。

本条と白峰は首を傾げている。

 

「いつものって、なに?」

「行けばすぐにわかる。たぶん、いつもの場所だと思うが・・・」

 

そう言いつつ、俺は迷いなくある場所へと向かっていった。

数分ほど歩いたところで、目的の屋台を見つけた。

 

「おっちゃん、来たぞ」

「おっ、来たか!神崎んところのせがれ!」

「ここって、型抜き?」

 

俺の目当ての屋台とは、この型抜きのことだ。

 

「ん?そっちの2人は初めて見る顔だな」

「あぁ、簡単に言えばゲーム友達だ。偶然会って、一緒に回っている」

 

型抜きのおっちゃんに軽く事情を説明すると、俺を見るおっちゃんの目に嫉妬の炎が。

 

「なんだなんだ。いつの間にお前さんは女子を侍らすようになったんだ、え?浮いた話なんて何一つ聞いとらんのに」

「だからって嫉妬されても困るんだが・・・どちらかと言えば、栞奈と母さんが気に入っているって方が正しいんだがな」

「ねぇねぇ、神崎君。この人誰?」

 

俺とおっちゃんが話していると、本条が横から尋ねてきた。

そう言えば、まだおっちゃんを紹介してなかったな。

 

「この人は型抜きのおっちゃん。暇な時間を見つけては機械をいじっている農家なんだとさ」

「なんか、型抜きの型を作る機械を自作したからって、屋台を開いては型抜きで荒稼ぎしとるんよ」

 

ちなみに景品は現金で、難易度ごとにもらえる額も異なる。

すると、栞奈の説明を聞いたおっちゃんが、思い切り栞奈の言葉を笑い飛ばした。

 

「がははっ!荒稼ぎなんて言い方はよせよ!それを言ったら、そこのせがれの方がよっぽど荒稼ぎしてるだろうが!」

「え?」

「そうなの?」

 

おっちゃんの言葉に、本条と白峰がバッと俺の方を振り向いた。

 

「まぁな」

「ついでに言えば、ここだけやなくていろんなところで荒稼ぎしとるで」

 

そのおかげで、出禁とまではいかなかったものの、俺に関しては挑戦していいのは1回だけという暗黙の縛りが設けられた。

というより、2回以上やろうものなら店員から「出禁にするぞ」という圧を出すから、俺が大人しく身を引いているだけだが。

そういうこともあって、一部の屋台では俺にギャフンと言わせるものを用意しようと躍起になっているところもある。

このおっちゃんも、その1人だ。

 

「それで、今回はどんなものを用意したんだ?」

「おう、今回は自信作だぞ?といっても、俺が作ったわけじゃないがな?」

「は?なんだそりゃ」

「へっへっ、これだ!」

 

そう言っておっちゃんが取り出したのは、アニメのキャラクターのシルエットを模したものだった。しかも、ツインテールでポーズ付きの。

 

「おい、ちょっと待て。物理的に作れるものじゃねぇだろこれ。ていうか、なんでおっちゃんがこんなの用意したんだ?」

「おうよ。実はな、つい最近雇ったバイトの兄ちゃんが機械に強くてな。それで作ってもらったのさ!」

「あぁ、なるほど・・・」

 

要するに、オタクの業から生み出された一品ということか。

オタクというのは、ある時には半端ない技術と集中力を見せることがあると聞くが、この型もそれによって生み出されたということか。

 

「うわぁ。すごい細かいよ・・・」

「これ、本当に成功させる気があるのかしら?というか、いったいどれだけ時間がかかるのよ・・・」

 

本条と白峰は、あまりの精巧さにいっそ呆れ気味だ。

 

「ど、どうするん?さすがに時間がかかりそうやけど・・・」

 

栞奈も若干ドン引きしながら、俺に問いかけてきた。

 

「・・・おっちゃん。これをクリアしたら、どれだけもらえる?」

「こいつは今までの中でも、特に難しいからな。5000でどうだ?ま、とても成功できるとは思わんけどな!」

 

「がっはっは!」と笑いながら豪語するおっちゃんを横目に、俺はジッと出された型を見る。

 

「・・・わかった、やってやろう」

「と、透?さすがに、これは無理とちゃうか?」

「そ、そうだよ。これやってたら、他の屋台を見る時間がなくなっちゃうし・・・」

「お金は私たちも用意してるから、ここで無理する必要はないと思うけど・・・」

「大丈夫だ。5分で終わらせる」

 

俺の宣言に、今度はおっちゃんが正気を疑うような視線を向けてきた。

 

「おいおい、さすがにそれは無理なんじゃないか?今までだって、最低でも10分は使ってたじゃないか」

「ふっ、甘いな、おっちゃん」

 

俺は鼻で笑いながらおっちゃんの方を向いて、

 

「いったい俺が、いつ本気を出したと思っていた?」

「なん、だと・・・?」

 

おっちゃんがテンプレ通りの返しをした中、俺は財布から1回分の200円を渡し、型とつまようじを受け取った。

 

「それで、どうするん?」

「黙って見てろ」

 

そう言いながら、俺は全神経をつまようじの先と型に集中させる。

全員が固唾をのんで見守る中、俺はピッとつまようじを一閃した。

この時点では、まだ外見に変化はない。

栞奈たちが首を傾げているのも気にせず、俺は同じようにつまようじの先をシュッシュッと動かす。

それをしばらく続けること、およそ5分。

俺はつまようじを動かす手を止め、つまようじの向きを逆さにして持ち、型の中央にコンと当てた。

 

それだけで、くり抜く部分以外のところがさらさらと崩れ去り、きれいな型が現れた。

 

「「「は?」」」

 

本条と白峰、おっちゃんは、何が起こったのかわからずにポカンと口を開けているが、栞奈だけは俺が何をしたのかわかったようで、顎に手を当てながら解説を入れた。

 

「なるほどなぁ。外側の部分だけ先に削って脆くして、残りの部分が崩れない程度に振動を与えたんやな」

 

感心しきった栞奈とは裏腹に、おっちゃんの顔はあり得ないと言わんばかりに唖然としている。

完全に呆然自失としているから、俺がおっちゃんをゆすって起こした。

 

「おーい、おっちゃーん。これでいいよな?」

「はっ!あ、あぁ、これは文句なしだな・・・」

 

そう言いながら、おっちゃんは手に取るのも恐ろしいと言わんばかりに上から見るだけで確認を済ませ、俺に5000円を渡した。

 

「んじゃ、またな」

「おう・・・」

 

完全に意気消沈してしまったおっちゃんを尻目に、俺たちは屋台が多く並んでいる通りに向かった。

 

「・・・神崎君のすごさが、改めてわかったよ・・・」

「そう、ね。本当に規格外なのね・・・」

 

後ろでは本条と白峰が戦慄の視線を俺に向けていたが、俺はなるべく無視するようにして歩いていった。




あっちこっちのネタを使ってみました。
この作品、自分はとても好きです。

ちなみに、自分は型抜きをやったことは一度もありません。
まぁ、手先は不器用な方なので、あったとしてもやらないと思いますが。

それと、これを書いた時に調べて知ったのですが、型抜きの型を作っている会社は1社だけなそうな。
あれ?このおっちゃん、実はリアル異常枠?
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