弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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新年(後編)

型抜きのおっちゃんから今回の資金である5000円をふんだくってから1時間ほど、俺たちは思う存分に屋台を遊びまわった。

その結果、

 

「ふぅ、大量大量」

「今年もえらい儲けたなぁ」

 

俺があらかじめ用意した大きめの袋に、景品がこれでもかと詰め込まれている。

モデルガンからゲームソフトのような高価なものから駄菓子のような子供向けの安価なものまで、その種類は多岐にわたっている。

俺の荒稼ぎを目の当たりにして、本条と白峰は途中あたりから瞳から色が消えていた。

 

「なんか、最初は神崎君がすごいって感じだったけど・・・」

「途中から、栞奈も同じような感じになったわね」

 

どうやら矛先が俺だけじゃなくて栞奈にも向いたようだ。

 

「え~?そんなにドン引くほどやないやろ」

「いやいや、射的とか、神崎君と協力撃ちなんてしてたよね。ていうか、やろうと思っても普通できないよね」

「あと、イカサマを見抜いて軽く恫喝してたりもしたわよね。けっきょく通報してたけど」

 

本条が言ってたのは、射的で俺と栞奈が同時に発砲して大きめのひよこクッションを落としたことを言っているのだろう。

あぁいう巨大な景品には、重心を狙って同時撃ちすれば意外といける。栞奈もこういう屋台はノリノリで参加するため、俺と共に技術と磨いた結果だ。

白峰が言っているのは、クッションをゲットしたのとは別の射的と宝釣りだな。

小さい的を狙って棚から落とす類のものだったのだが、コルクの弾の跳ね返り方と的の倒れ方がおかしかったから店員さんを揺さぶって、その結果、的の裏にテープを張って的が絶対に落ちないようにしていることが判明した。

店員さんは景品を1つ上げるから通報しないで欲しいと言われたが、景品をもらった後にしっかり通報させてもらった。

宝釣りの方は、栞奈が紐の束の部分と景品の繋がり方がおかしいことにいち早く気づいて店員さんに問い詰め、そこでも束に高額景品の紐がないことが判明。こちらも景品をぶんどった後で通報した。

協力撃ちはともかく、イカサマ破りはちょっと心外だな。

 

「別にいいだろ。これもバイトのうちだ」

「バイトって?」

「主催者から頼まれてるんだよ。こういうイカサマをやってる屋台がないか確かめてくれって」

「給料はでぇへんけど、そこの屋台で景品をぶんどっても見ないふりをしてくれるって話や」

「「はぁ・・・」」

 

俺と栞奈の説明に、2人は気の抜けた息を吐く。

実はここで警備をしている警察官と道場つながりのよしみで、たまにこういう依頼を受けることがあるのだ。

だから、俺と栞奈はこういう悪徳屋台を軽く脅しては景品をぶんどり、警察に引き渡している。

 

「まぁ、ぶっちゃけ、稼ぎ過ぎても消費に困るんだけどな」

「普段使わんもんばっかやしなぁ。ゲームはともかく、モデルガンってどうすればえぇねん」

 

こういうのって子供は喜ぶんだろうけど、高校生にもなれば処理に困る。

基本的に俺も、ここで手に入れた分は売って小遣いの足しにすることがほとんどだし。

それを言ったら、どうしてやるんだという話になりかねないのだが、

 

「まぁ、小遣い稼ぎと考えればちょうどいいよな。別に転売してるってわけじゃないし」

 

買ったものを高額で売りさばいているわけじゃないから、セーフなはず。

元値よりちょっと低いくらいでも、十分利益になるわけだしな。

あと、実は悔しがる店員を見るのがちょっと楽しかったりするのだが、それは言わなくてもいいか。

 

「まぁ、そろそろ持ちきれなくなってきたし、これを置いてから今度は食べ物の屋台をまわることにするか」

「それがえぇか。んじゃ、さっさと行こか。ほら、2人もいくで」

「う、うん」

「え、えぇ」

 

ドン引きしている2人をなるべく気にしないようにしながら、俺は道場の方で決めてある荷物置き場に今日の収穫を置いて、食べ物の屋台を見に行った。

 

 

* * * * *

 

 

透が荷物を置いてから、うちらはいろいろな屋台を見て回った。

 

「おい、透!こっちの甘栗買ってけ!今年のくりは美味いぞ!」

「おっちゃん、くりの旬は秋だぞ。それで今美味しいって言われてもなぁ。まぁ、買うけど」

「毎度!」

「ほら透ちゃん!うちのたこ焼きも買っていきな!」

「悪い、うちでもたこ焼きは出してて、もう食っちゃったんだ」

「あらま、それは仕方ないね。だったら、今度うちの店で食べに来な!サービスしてあげるから!」

「あぁ、覚えてたら行くよ」

 

その道中、透は屋台の人(主におっちゃんやおばちゃん)からひっきりなしに声をかけられとった。

 

「なんか、すごい人気だね」

「神崎君って、気遣いできない人間じゃなかったっけ?」

 

理沙の割とひどい正論にうちは噴き出しそうになりながらも、その辺りのことを説明した。

 

「それはそうなんやけどな。それでもやっぱ、透は人気なんや。たしかに問題を起こしかけたこともあるんやけど、それ以上に尊敬されたりすることの方が多いんやなぁ」

 

祭りの治安を守るなんて、そんな大仰なことやあらへんけど、結果的にみんなが祭りを楽しめる環境を作っているっていうのには変わりあらへんし、強い透は一種のヒーローみたいなもんなんやな。

屋台の変な挑戦状と暗黙の縛りも、出禁にしない裏を返せば透に楽しんでほしいってことやろうし。

今となっては、ささやかやけど気遣いもできるようになった分、さらに株が上昇してる感じもするし。

 

「そういうわけやから、もしかしたら2人もなんかサービスされるかもしれへんな」

「えっ、本当!?」

「虎の威を借る狐みたいになっちゃうけど、もらえるものはもらっちゃいましょうか」

 

その後は、透の威厳もあっていろんな人からサービスを受けながらも屋台を楽しんでいった。




今回はあっちこっちの同時撃ちと暗殺教室の業の恫喝(合法)です。
実際、こういうイカサマとその処罰ってあるんですかね?
少なくとも、自分は現場を目撃したことはないですね。
まぁ、普通なら「屋台はそういうもん」って割り切って通報しないことがほとんどだとおもいますが。
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