「あっ、クラルくん!」
ある日、いつものようにギルドホームに顔を出したら、メイプルが声をかけてきた。
それなら、まぁいつものことなのだが・・・
「おう。それで、そこで突っ伏してる2人はどうしたんだ?」
テーブルの方に目を向けたら、そこには暗い空気を醸し出しながらテーブルに突っ伏しているサリーとシオリの姿があった。
似たような光景は何度か見たことがあるが、こういう場合・・・
「えっとね、この前、新しい装備を手に入れて、それを見てもらったんだけど・・・」
「・・・あぁ、またか」
やっぱり、またトンでもスキルを引っ提げてきたか。
いや、逆に考えれば、これもいつものことと言えるか?ついこの前、【百鬼夜行】を引っ提げてきたばかりだが・・・。
「それで、どういうものなんだ?」
「えっとね、これだよ」
そう言って、メイプルはインベントリから見たことがない大盾を取り出した。
黒い十字架に白い円卓をかたどった見た目で、それだけならまだプレイヤーメイドでも見かけそうな感じだが・・・。
「どういう性能なんだ?」
「えっとね・・・」
俺の問い掛けに、メイプルがザックリながらも新しい大盾の性能を説明し始めたのだが・・・
「メイプル、お前はいったい、どこまで・・・」
結局、俺もこっちの2人みたいにテーブルに突っ伏すことになってしまった。
もうさ、運営はどうしてこういう装備を実装しちゃうんだよ。悪ふざけは身を滅ぼすってメイプルで学んでいないのか?
「・・・それで、試してみたのか?」
「ううん。それはまだ。せっかくクラルくんが紹介してくれたところで見つけたから、初めて使うときはクラル君も一緒がいいかなって」
無邪気な笑みを浮かべながらの言葉に多少は癒されるが、回復量がダメージに追いついていない。
メイプルは一体、どれだけ俺の胃と心臓を破壊すれば気が済むんだ・・・。
とはいえ、ここでメイプルの提案を突っぱねるわけにもいかない。
「わかった。それなら、さっそく行ってみようか。・・・お前らはどうする?」
「・・・行くわ」
「・・・できるだけ、早い段階で確認しときたいしな」
サリーとシオリも、このまま蚊帳の外にいるよりかは一緒に行くようで、のろのろとした動きながらも立ち上がった。
いろいろと不安になりながらも、俺たちは今回のスキルの試運転にちょうどいい場所を探した。
この第5階層は、雲の上ということで森のような視界を遮るのにちょうどいい場所が少ない。それに加えて、今回得たスキルは見た感じ、それなりに広範囲に効果を及ぼすようだから、ちょうどいい場所はかなり限られてくる。
結局選んだのは、雲の盆地のような場所のど真ん中だ。ここなら広い場所も確保でき、周囲の雲を登られない限りは他プレイヤーの目に入らない。
モンスターが少ないこともあって、基本的にプレイヤーはあまり来ない。
ここなら、問題なくメイプルのスキルを試せると思ったのだが・・・
「ん?クラールハイトに、メイプルたちも、どうしたんだ?」
「・・・それは、どちらかといえばこっちの台詞なんだがな。ペイン」
なぜか、こんな辺鄙な場所にペインが1人で剣を振っていた。
だが、持っているのは見たことのない黄金の長剣だ。
「ていうか、なんだそれ?」
「これか?これはだな・・・」
まさか、ペインも何か変な武器を手に入れたのか、そう警戒して尋ねたのだが、ペインが口を開くよりも先にメイプルが指を差して叫んだ。
「これってもしかして、エクスカリバー!?」
「メイプルは、これを知ってるのか?」
ペインが思わずメイプルに尋ねると、例の円卓に座っていたアーサー王が持っていた剣とうり二つなことから、まさかと思ったらしいが、当たりだったらしい。
「これは、あの城のクエストで手に入れたものだったんだが・・・まさか、メイプルも?」
「えっと、私はこれなんだ」
そう言ってメイプルは、インベントリから【円卓の盾】を取り出した。
「俺たちがここに来たのは、こいつの性能を確かめるためだったんだが・・・」
「そうか・・・それなら、俺もこの【エクスカリバー】の性能を見せるから、その大盾の性能を見せてもらってもいいか?」
思わぬペインからの申し出に、俺は少し迷った。
ペインの手の内を知れるのはまたとない好機だが、だからといってメイプルの手の内を晒すのも気が引ける。
とはいえ、それを考えるのは俺じゃなくてメイプルだ。
「メイプルは、どうしたい?」
「私は・・・はい。いいですよ!」
メイプルも、ペインの新しい武器の出所が同じクエストだからか、その申し出を受けることにしたようだ。
にしても、同じクエストなのに報酬が違うのか・・・もしかして、ステータスとか武器で変わるのか?メイプルはVIT極振りだから大盾なのも頷けるし、ペインも長剣でなおかつ【聖剣術】があるから、エクスカリバーが報酬でも不自然ではない。
1人納得していると、まずはペインが性能を見せた。
「【
ペインがスキル名を叫ぶと、【エクスカリバー】が透明になって見えなくなってしまった。
「なるほど、武器を隠せるのか」
「それ以上のことは教えないけどな」
それもそうだろう。自分からデメリットを話すはずもない。
とはいえ、武器が透明になるのはシンプルに強いな。
ペインの口ぶりから、何かしらのデメリットがあるようだが、よっぽどでない限り気にならないだろう。
初見で間合いを計れないのは、それだけでアドバンテージになる。
「【解除】」
ペインが違うスキルを唱えると、再び黄金の刀身が現れた。
「あとは、これで終わりだな」
ペインがそう呟くと、エクスカリバーを体の前で垂直に構えたと同時に、刀身が輝き始め、ペインの周囲に無数の黄金の光の粒子が浮かんできた。
「【
スキル名を叫ぶとともにペインがエクスカリバーを振りぬくと、放たれたのは黄金の光の砲撃。
その先にある程度モンスターが歩いていたが、それらすべてを消し飛ばして閃光が駆け抜けていった。
閃光が止むと、光に包まれた範囲にいたモンスターはすべてが消え去っていた。
「なるほど。とうとうお前も範囲殲滅を獲得しちまったか。ミィでもあるまいし」
「それを言ったら、クラールハイトだって同じようなことはできるじゃないか」
たしかに、俺も似たようなことはできるな。
ペインと違うのは、俺が上空からの爆撃に対して、ペインは直線状の砲撃だってところか。
それにしても、あの城でここまで武器を手に入れることができるのか・・・ちょっと興味が湧いたが、俺には【備前長船長光】があるし、騎士だと言うなら弓矢があるとは考えづらいか。
それは、シオリも同じだな。西洋の片手持ちの突撃槍ならあるかもしれないが、両手持ちの槍があるとは考えにくい。そして、シオリのSTRだと片手持ちの突撃槍は装備できない可能性もある。
残念だが、こればっかりは俺とシオリは諦めようか。
「すごいです、ペインさん!」
「これくらいなら、メイプルもできると思うけどな・・・それじゃあ、今度はメイプルの番だな」
ペインの新しい装備を見せてもらったから、約束通り、今度はメイプルが新しい装備を見せる番だ。
「それじゃあ、まずは、【
メイプルがスキル名とともに大盾を地面に振り下ろすと、メイプルを基点として、俺たちを囲むようにして高さ4mほどの円形の城壁が現れた。
メイプルはちょうど門の位置に立っており、城壁を包むようにして青いオーラのドームが覆っているから、おそらく上からの攻撃も防げるのだろう。
「これはまさか、城壁の中にいるパーティーを丸ごと守れるのか?」
「実際はそれだけじゃないが・・・HPを消費する必要がないってのも、【身捧ぐ慈愛】より優れてるよな」
その代わり、こっちは1日に1回しか発動できないが、カウンターもできることを考えれば、デメリットを差し引いても強力すぎる。
「それじゃあ、クラルくん。試しに攻撃してもらってもいい?」
「はいはい、っと。んじゃ、まずはパーティーから抜けて・・・」
俺はメニュー画面を操作しながら、いったんメイプルたちのパーティーから抜けて城壁の外に出た。
メイプルからおよそ50mくらい離れたところで振り返り、【ボムアロー】を3本つがえた。
「【ピアーシングアロー】」
さらに防御貫通のスキルも使用し、メイプルに向けて矢を放つ。
放たれた矢は狙いたがわずメイプルに直撃し、次の瞬間、俺の眼前に光の壁が迫ってきた。
「【超加速】!」
俺は咄嗟にAGIを上昇させてその場から退避した。
規模はペインの【
「お~!すごい!とてもかっこいいよ!」
「メイプルが気に入ったようで、何よりだ・・・」
俺がメイプルたちのところに戻ると、メイプルは新たなスキルの使い心地に興奮していた。
対するペインは、軽く頬を痙攣させながら分析していた。
「なるほど、広範囲カバーに加えて、カウンターもできるのか・・・しかも、カウンターの攻撃は盾から直接放たれるから、近接攻撃や隙の大きい砲撃は危険か」
「さっそくシミュレーションか?」
「まぁな。そのための提案だったわけだし。まぁ、さすがに思ったよりも凶悪な性能だったが・・・」
「何を言っているんだ?まだあるぞ?」
隠してもいいのだが、ペインが2つ見せてくれたのだから、こっちも2つ見せなければ不公平というものだろう。
メイプルも俺の言葉に頷いて、もう一つのスキルを発動した。
「【
次の瞬間、。メイプルを中心として横並びに12人の騎士の影が現れ、さらにメイプルの背後に同じ甲冑を身に纏う騎士の影たちが出現した。
おそらく、【
300人のモブ騎士はともかく、12人の円卓の騎士たちの存在感は半端ではない。
中には、エクスカリバーを持ったアーサー王さえいる。
そして、他の騎士たちも1人1人がアーサー王に引けをとらない強者ばかりだ。
実際のステータスはどれくらいかわからないが、これを召喚できるってのはやばすぎだろ・・・。
さすがのペインも、これには完全に硬直してしまった。
「これは・・・どうすればいいんだ?」
「どうしようもなくね?」
一応、この状態だと1時間全ステータスが半減するが、それでも貫通スキル以外でメイプルの守りを抜くのは困難だし、そもそも並みのプレイヤーだと蹂躙されて終わりだ。
俺としても、ペインとメイプルの真っ向勝負には興味があるが、ペインには悪いけど、やっぱり俺にはメイプルが負ける姿が想像できない。
結局この日は、そのまま街まで戻ってペインに雲菓子をおごって解散した。
ペインがエクスカリバーで得た自信をメイプルが粉々に吹き飛ばしたみたいで、ちょっと気の毒だったし。
前回言ったこともあって、いっそペインに持たせることにしました、エクスカリバー。
まぁ、【楓の木】だけ強化を集中させるのもあれですし、多少はね?
それでも、メイプルの方がやばく見えてしまう不思議。
こうなったら、いつかはミィの強化も考えないといけない。
でも、FGOで炎系って、太陽系込みになるとぶっ壊れが多すぎるんですよねぇ・・・。
カルナとかケツァルコアトルとか、どっちもやばすぎる。
しかも武器がミィにそぐわない。
方や槍、方やプロレスもどきですからねぇ。
fate設定だと天照=キャス狐もなしではないんですが、ミィの場合こじつけ感が半端ない。
それと、【円卓の盾】に【破壊不能】を追加しました。
やっぱり、これがなきゃですよね。