「へ~、そんなことがあったんだ」
メイプルとペインの新たなスキルを目の当たりにした翌日、そのことを昨日いなかったメンバーに話したところ、案の定「またか~」な大人勢と「すごいです!」と興奮するユイマイ、いつもの反応のカナデに分かれた。
だが、カナデとしては他のことが気になったようで、顎に手を当てながらたずねてきた。
「そう言えばさ、円卓の騎士のクエストなら、あの人はいなかったのかな?」
「ん?あの人?」
「ほら、1人いたじゃん。魔術師の人がさ」
「あぁ、マーリンか」
マーリン。
円卓の騎士に置いてアーサー王と同レベルで名を知られている魔術師だ。アーサー王に選定の剣を抜かせた張本人で、剣術や治政術なんかを教えた人物でもある。
厳密には、たしか人ではなく半分は夢魔だったはずだが。
そんな円卓の騎士、特にアーサー王と関わり深い人物なら、いてもおかしくはないだろうが・・・
「だが、マーリンはたしかどこかしかに封印されたんじゃなかったのか?」
文献によって細かい違いはあるが、基本的に封印されるというオチは変わらないはずだ。
であれば、あの円卓にいなかったとしてもおかしくはない。
「もしかしたら、この階層のどこかに封印されている可能性もあるが、今のところ、そういう情報はどこにもないからなぁ・・・」
「逆に言えば、情報を探せば見つけられるかもしれないってことだよね」
たしかにそうかもしれないが、だからと言って見つけられるものかね。
「よしっ。それじゃあ、ボクはさっそく図書館に行ってくるよ」
だが、カナデはやる気になったようで、さっそく立ち上がって図書館へと向かっていった。
その背中を、俺は微妙な表情で見送った。
「まさか、カナデも何かとんでもないスキルを手に入れて戻ってきたりしてな」
「クロム、笑えない冗談はやめてくれ」
ただでさえペインとメイプルがとんでもないスキル、というか装備を手に入れたばかりなのに、カナデまで何か手に入れて戻ってくるとか、マジでパワーバランスが崩れるぞ、おい。
とりあえず手に入れるなら、せめて穏便なスキルであってほしい。これ以上、この階層で俺の胃と心臓を破壊するようなスキルは持ってきてほしくないものだ。
* * * * *
さっそく第5層の街の図書館に入ったカナデは、例の城にまつわる文献を中心に探して読み漁った。
文献を読み解くと、やはりマーリンに関わる文章がちらほら出てきて、少なくともマーリンが存在しているということは明らかになった。
だが、それだけだ。
マーリンという人物がアーサー王を導いたとか、円卓の椅子に施された呪いはマーリンによるものだということは書いてあっても、マーリンが今どこにいるかという情報はまったく載っていなかった。
「う~ん、これは難敵だね」
カナデは人より優れた記憶能力を持っているが、イコール情報収集能力が優れているわけではないし、整理するにしてもそれなりに時間がかかる。
それに、図書館の本はすべて読めるというわけではないが、読める分だけでも相当の量があるから、1日ですべて読みきるのはほぼ不可能だ。
「そうだなぁ・・・今日のところはもうログアウトして、ネットで調べてみようかな?」
調べるのは、NWOの円卓の騎士もそうだが、現実のマーリンの情報も含まれている。
そこである程度情報を絞ることができれば、それなりに時短できるはずだ。
そう考えたカナデは、本を元の場所に戻してからログアウトした。
その数日後、少し間を開けてからログインしたカナデは、再び図書館で目星をつけた本を探した。
今のところ、カナデの中での有力候補は2つに絞られていた。
1つは、『アーサー王の死』内で書かれた大きな石。
この雲の世界に石があるかはわからないが、史実を再現したのであれば可能性はあると考えた。
そこで、フィールドに存在する大きな石に関する文献を探したが、結局それらしきものはなかった。
そこで、今度はもう1つの候補を重点的に探した。
そして、それは当たりだった。
「・・・あった」
カナデが見つけたのは、『妖精郷 アヴァロン』と記された本だ。
あくまで創作物の内容でしかないが、マーリンは質の悪い妖精によってアヴァロンの塔に幽閉され、マーリンは自ら塔を封印したというエピソードがあった。
原作とはかなり違う部分があるが、ゲームらしいという意味では十分にあり得る。
そして、その本を読んだところ、マーリンがそこにいるという文章はなかったものの、アヴァロン自体はこの階層に存在し、行くこともできることが判明した。
他の本も探して読んだことで、アヴァロンの行き方も目星がついた。
「それじゃあ、さっそく行ってみようか」
有力な手掛かりを手に入れたカナデは、新たなスキルの取得できる可能性に心を躍らせながら、アヴァロンに行くための準備を始めた。
続いてカナデの強化に入ります。
カナデさんにはマーリンさんの力を授けることにしました。
強力な味方バフのキャスターと言ったら、やっぱりこの人しかいないですからね。