弓兵と槍兵を人外にして魔境に放り込んだ結果   作:リョウ77

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花園

アヴァロンへの入り口がある場所は、フィールドの端にある小さな花畑。

この階層はフィールドの外に出ると落下死する判定になっており、よっぽどのことがない限り近づくプレイヤーはいない。

 

「ここだね。よし・・・」

 

念のため、周囲にプレイヤーがいないことを確認してから、カナデはアヴァロンへの扉を開くための合言葉を口にした。

 

「星の内海。物見の台。此より先は全てを癒す理想郷。罪なき者のみ通るがいい」

 

カナデが合言葉を言い終えると、花畑の中心に転移の魔法陣が現れた。

カナデはためらうことなく魔法陣の上に乗り、光に包まれて転移された。

転移されたのは、小さな浮島だった。

遠くにアヴァロンである大きめの島が見えるが、橋も舟も見当たらない。

それなりに距離も離れているため、【水泳】のスキルレベルが低いままのカナデでは途中で溺れてしまうだろうことは容易に想像がついた。

だが、カナデの表情には焦りも困惑もない。

 

「なるほどね、これが“妖精のいたずら”ってことか」

 

アヴァロンとは妖精によって成り立っているものであり、そのため外部からの侵入者は基本的に“いたずら”によって追い返されてしまうらしい。

こうしてアヴァロンにたどり着けないようになっているのも、そのいたずらの一環なのだろうと、カナデは納得していた。

そして、カナデはすでにどうすればいいか見当がついていた。

この浮島は、先ほど転移された小さな花畑と同じであり、カナデは一か所だけ花の色が違うことに気付いていた。

カナデがその花を摘み取ってアヴァロンの方角に投げると、花は真っすぐに島へと向かっていき、花が通った後は虹色の橋がかかった。

 

「お~、メイプルが見たら喜びそうだね」

 

最近、白鬼戦で探索のモチベーションが著しく下がっているメイプルに見せてあげればと思い、写真を撮ってから橋を渡った。

一瞬、渡っている途中で落とされたりしないか心配になったが、カナデの通った後がカナデのスピードに合わせてゆっくり消えていくだけでその心配はなさそうだとホッと息を吐きながらも、自分のペースで長い道のりを歩いていった。

道中ではイルカのような海生哺乳類やカモメっぽい鳥たちの歓迎もあり、カナデはメイプルへのお土産代わりにと写真を撮っていく。

そんなこんなで、ゆっくり歩くこと数十分、ようやくアヴァロンにたどり着いた。

 

「お~、これはすごいね!」

 

アヴァロンは見渡す限りすべて花で埋め尽くされており、あちこちで妖精が飛び回ったり遊んだりしている。

カナデ自身も興奮しながら写真を撮っていると、遠くに塔らしい建物があることに気付いた。

 

「あそこかな?」

 

他には何もないことから、マーリンがいるとすればあの塔しかない。

期待を胸に、カナデは塔に向かって歩き始めた。

その道中も、写真を撮ることは忘れない。

しばらく歩き、ようやく塔に近づくと、そこでもまた立ち往生することになった。

塔は完全に浮遊しており、下部は結晶の柱のようになっていて登ることもできない。

それなりに高さもあるため、【フレアアクセル】あたりを使っても届くかは微妙なところだ。

さらに言えば、今回は先ほどのようなヒントになるようなものもない。

 

「うーん・・・あれ?何これ?」

 

塔の周りをぐるぐる回っていると、土台のある所に10×10の正方形のマス目が描かれていた。

これが塔に登るための鍵かもしれないと、カナデは重点的にそのマス目を調べることにした。

だが、マス目に触れたところですぐに変化が現れた。

触れたところからいきなりマス目が光りだし、そこから10×10×10のルービックキューブが出現した。

 

「あ~、なるほど。これを解けってことね」

 

それなら話が早いと、カナデはさっそくルービックキューブを手に取ってガチャガチャと回し始めた。

色の位置を瞬時に記憶し、始めから解き方が分かっているかのように色を合わせていく。

カナデにとってルービックキューブは、たとえマス目が増えても解き方が確立されている遊びで、手順は多く複雑になるが、10×10×10のルービックキューブなら問題ないレベルだった。

 

「よし、できた」

 

ルービックキューブを解き始めてから10分弱、カナデはあっさりとルービックキューブを完成させた。

集中可能な時間ギリギリだったとはいえ、ある程度解き方が確立したルービックキューブだったこともあって、そこまで疲労することもなかった。

カナデがルービックキューブから手を離すと、ルービックキューブはぷかぷかと浮かんでマス目が書かれていた壁面に近づき、まるで鍵穴に鍵を指すかのように溶け込んでいった。

すると、地面に再び魔法陣が現れた。

 

「さすがに、これで終わりだと思いたいね」

 

浮島に来てからの情報はなかったこともあって、若干慎重になりながらも魔法陣の上に乗った。

再び転移の光に包まれると、転移されたのは建物の中らしき場所だった。

というのも、壁も窓もなく、円状に手すりに囲まれているだけの簡素な場所で、どちらかといえば外に近いからだ。

 

「よくここまで来たね」

 

不意に、正面から声をかけられた。

前を向くと、いつからそこにいたのか、白を基調としたローブを身に纏った白髪の青年が立っていた。

 

「私の名前はマーリン。ここで世界の行く末を見ている魔術師さ」

 

自己紹介によって、目の前にいるのが目的の人物であることを理解したカナデは、黙ってマーリンの話に耳を傾けた。

 

「さて、ここまで来た君には何かしらご褒美をあげたいが、生憎、ずっとここにいる身だからね。してやれることは少ないんだ。だから、君には私の力の一部を授けよう」

 

マーリンがそう言うと、突然周囲に花びらが舞い上がり、カナデの体を包み込んだ。

だが、それもわずかな間で、花びらの奔流はすぐに治まった。

 

「君に私の魔法を授けた。叶うなら、自分のためではなく、大切な誰かのために使ってほしい」

 

その言葉を最後に、今度は視界が埋め尽くされるほどの花びらがカナデを覆い、気づけば転移される前の元の小さな花畑にいた。

周囲に誰もいないことを確認してから、カナデは自分のステータス画面を開いて新しい魔法を確認した。

 

永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)

発動者を中心とした半径10m以内のパーティーにHP自動回復・MP自動回復倍加・全ステータス1.5倍を付与する。

この効果は、範囲内にいる間は永久に持続するが、範囲を出たら1分で効果は消滅する。

 

効果は仲間のバフ。それもかなり強力だ。

もちろん、相応に消費MPも大きいが、それに見合った内容だ。

支援役としてさらに強化されたことに、カナデは満足げに大きくうなずいた。

 

 

 

「あれっ!?写真が1枚もない!」

 

この後、撮った写真を確認したらすべてなくなっていて、メイプルに見せれなかったと軽く落ち込んだのだが、それはまた別の話である。




最初は合言葉をマーリンの詠唱の丸パク・・・リスペクトにしようかと思ったのですが、それだとアヴァロンではなくマーリンの本質になってしまうため、部分的に抜粋するに留めました。
次に強化を施すのは、第6回イベントが終わってからになりますかねぇ。

余談ですが、一番マス目の多いルービックキューブは33×33×33だそうな。
画像も見てみましたが、いっそ置物ですよね、あれ。
絶対に解かせる気がない。
しかも何が凄いって、それが手作りってことですよね。
10日近くかけて作った制作者さんはマジですごいと思います。
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